コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

PSO2異伝 Over Border Warrior

プロローグ 約束


「――本当に、帰っちゃうんだな」
 深い白銀の景色が気配を消していき、徐々に若葉が芽吹き始める、そんな季節。
 都心にほど近い場所の街に存在する高等学校の一角で、少年は目の前の少女にそうつぶやいた。
「はい。こればっかりはどうしようもないです。それに、元々こっちへの留学は期限付きでしたから」
 少女は呟きに対して、屈託のない笑みで答える。しかしその眉尻はゆるく下がり、どこか残念そうな雰囲気を見せていた。理由はもちろん、言うまでもない。
「……思えば、もう半年くらい経つんですよね」
「だな。……色々あったよなぁ」
 少年と少女は向かい合いつつも、半年の中で決して埋まり切ることのなかった距離を縮めることなく、二人で築いた半年間の思い出を反芻し、お互いに笑いあう。たとえ関係が進展することが無かったとしても、二人は友人同士であり、同じ時間を過ごした、大切な人間であることに変わりはなかったのだ。
「ああ、本当に色々あった。……ティアに出会って、俺はこうやって幸せな時間を過ごすことができて、ホントに楽しかった」
「もう、過去形はやめてくださいよ。正直な話、私もまだこうしてケイ君と一緒に過ごしていたかったんですから」
 ティア、と呼ばれた少女の言葉に、ケイと呼ばれた少年が、意外そうな顔をしてから照れくさそうに頬を掻く。
「ずいぶんお高い評価だことで」
「当たり前ですよ。私にとっては、ケイ君は初めての友達なんですから」
 ティアがふわりと、自然な動作で花が咲いたような笑みを浮かべると、気恥ずかしくなったのかケイがふいとそっぽを向いてしまった。その反応がどこかおかしくて、ティアがまた笑う。
「だから、そんな悲しそうな顔をするのはやめてください。私だって、お別れするのが寂しいのを我慢してるんですから」
 そうして呟いた言葉に、しかし今だにケイは複雑そうな表情を作っていた。説得してなお、いつものように煮え切らない態度のケイを見て、不意にティアがはっと何かを思いつく。すぐさまポケットの中を改めて、目的のものがあったのを確認すると、小さく安堵してから再び口を開いた。
「そうだ、これを渡しておきますね」
「え?」
 ティアの言葉に視線を戻したケイは、彼女の小さく、可愛らしい手のひらの上に載っていた物を見て首をかしげる
「これは?」
フォトンドロップ、っていう鉱石です。私の故郷でしか取れなくて、インターネットにもめったに乗らないマイナーなものですけどね」
 説明と共に、一歩進めて突き出された鉱石、それを加工して作られた、緑色の結晶が美しいペンダントを、ケイがおずおずといった態度で受け取る。フォトンドロップのペンダントが彼の手にいきわたったことを確認すると、少しだけ得意げな表情を見せたティアが再び口を開く。
「それ、ケイ君に預けておきますね。それで、次に私が戻ってきた時に、それを返してもらいます」
 言葉の中に込められた意味に、ケイが気付くのと同時に、ふと柔らかな微笑みに表情を切り替えたティアが、締めの一言をケイへと託す。
「――また会おうって、約束です」
「あ――」
 言わんとするセリフを取られた故か、それとも少女の微笑みに魅せられたのか。ちいさな呟きを残して呆然としていたケイだったが、やがてその顔が力強く、毅然とした意志を持ったものに――ティアと言う少女が知る、彼女と出会って変わっていた少年の表情へと戻っていく。
「……ああ、わかった。このペンダント、大切に預かっとく」
「はい、お願いしますね。……まぁ、ぶっちゃけちゃうとそこまでの価値が在る物じゃないんですけど」
「だと思った」
 ティアの申し訳なさげな暴露に、苦笑を返すケイをみて、もう大丈夫だと少女は確信を胸に抱いた。そのまま、心配などかけさせるまいと、再び笑みを浮かべる。
「でも、私の大切な思い出です。だから、ちゃんと預かっててくださいね?」
「当たり前だよ。――だから、ちゃんと戻ってきてくれよ。あんまり長いと、なくしちゃうかもしれないから」
「善処します」
 冗談めかして笑いあうと、不意にティアが手首を一瞥し、ゆるりと踵を返した。その動きを察したケイが、どこか泣いてしまいそうな表情で、最後の挨拶を口にする。


「また会おうな。――また、二人で一緒に居よう」
「はい。――約束です」


***


「……夢か」
 懐かしい――つい二か月ほど前の、彼にとって最も印象深かった別れの思い出を夢に見て、少年――ケイは、小さくため息を付いた。
 そのままグッと身を起こすと、自分が眠っていたのは自室のデスクの上であり、つけっぱなしの部屋付パソコンが煌々と輝く暗闇の中だったことに気が付く。
 のんきにも昼間から寝こけてしまい、夜になってしまったらしい。長い昼寝もあったもんだな、と、ケイは一人苦笑した。
「――ティア」
 次いでその口から漏れたのは、今は離れ離れになってしまった、大切な友人の愛称。たった二か月ほどしか経過していないのに、ケイにとってはまるで何年も前の出来事のようで、しかしつい昨日の出来事だったかのように思い出せる、不思議な思い出だった。
「やっぱり、君が居ないと寂しいや」
 それはさかのぼること、半年以上も前の話になる。夏休みに入る一月ほど前の学校に、彼女はやってきたのだ。
 星のきらめきをそのまま金糸にしたような、セミロングに切りそろえられた美しい金髪と、潤んだ虹彩を輝かせる翡翠色の瞳。美人と言うよりも愛らしい顔立ちと、幼げな顔が浮かべる人懐っこく愛らしい笑みは、クラスの男子たちを一瞬で虜にしていた。そう、ケイは記憶している。
 正直な話、あれほどの美少女は日本中を探そうとお目にかかれないだろう。そんな少女の儚げながらも気丈げな立ち振る舞いと、誰にでも分け隔てなく接する丁寧な態度を見ながら、ケイは彼女と友人に慣れたらどれほど楽しいかと、漠然と考えていたのだ。


 果たして、その願いは意外な形で叶うこととなる。
 本当ならば隣同士の席、ということ以外の接点もないまま、ただの知り合い程度の認識で終わっていたはずの繋がりが、何の因果かケイを気に入ったティアによって、再び強固につなぎ直されたのだ。
 それ以来、二人は様々な場面で行動を共にする、名実どもに友人の関係に収まることとなる。ケイにとってもティアにとっても、その境遇からまともに友人と呼べる人間が居なかったこともあり、意気投合した二人が互いを親友と認識するのは、そう遅いことではなかった。
 一時期は恋人同士と間違われ、二人で必死に否定したりもしていた――実際のところ、ケイとしてはまんざらでもなかったのだが――のも、今では良い思い出の一つである。
 しかし、そんな少女は二か月ほど前に、家族の都合で故郷の地へと帰って行ってしまった。
 別れ際、彼女が少しだけ涙ぐんでいたのを、ケイはしっかりと覚えている。だからこそ、再開の約束を互いに結び合い、二人の友情を固く確かめ合い、涙を見せずに別れていったのだ。
 ――思い出は美化されていくものだと、そう言ったのは誰だろう。益体もないことを考えながら、ケイは立ち上がって一つ伸びをすると、夢に見た過去の残滓を振り払うように身を震わせてから、自室として使っている学生寮の部屋を出た。


 懐から、学校支給の機能限定版スマホを出して確認すると、時間的にはすでに学食の時間は終わってしまっている。幸いにも購買に関しては営業している時間だったので、ケイは軽食を買って晩を済ませることにした。
 正直なところ、午睡と夢のせいか意識してもほとんど空腹を感じなかったので、あまり学食でがっつり、という気分にもならなかったのが、ケイの本音だ。
(……なんか、食べるものあるかなぁ)
 敷地内に敷かれた、街灯輝く石畳の道を歩くすがら、ふとケイは不安を脳裏によぎらせる。遅くまで開いている購買は、それだけ学生たちの利用も多い。ピーク時こそ沢山のものが置いてあるが、その時間を過ぎた現在、果たしてケイのお眼鏡にかなう商品があるのか、と言うのが、ケイの不安だった。
「ま、なんなりとあるだろ」
 ひとしきり不安の種を思い浮かべてから、ケイは大雑把にそれらを頭の中から追い出す。うじうじ悩んでもしょうがないし、何より不安が杞憂であることも往々にしてよくあるのだ。なんとでもなる――と考えたところで、ケイはふと目の前から歩いてくる「なにか」に気が付いた。
「……ん?」
 それは、まるでそれ以外の形容の仕方を必要としないと言わんが如き姿を――「影そのもの」の様な、そんな異形の姿。日ごろから見慣れている、真っ黒い影がそのまま立体物となって、人の形をしたまま移動していたかのような、そんな漠然とした不気味さと異常さを、はっきりと周囲へと放っていた。
 当然、そんなものを見たケイの歩みは、たたらを踏んだように停止する。その影の正体が何かを探ろうと目を凝らすよりも前に、ケイの背筋を冷たいものが駆け抜けていったのだ。
 悪寒のせいか、ケイの足がゆるりと後ろにずり下がる。その行動を読んでいたかの如く、黒い影は滑るように前へと――ケイの方へと歩を進めた。
(――――ヤ、バい)
 ひきつる表情筋が、こわばる身体が、けたたましく警鐘を鳴らす第六感が――全身あらゆる全てが、かかわるべき現象ではないと全力で訴えかける。そのままぎこちない動きで後ずさると、再び影はケイめがけてゆるりと動いた。
 よく見ると、人型の影はこちらを向いており、その顔に当たる部分には、目と思しき二つの光点がぼんやりと浮かんでいる。――まるで、光に照らし上げられた血の様な、粘っこく暗い深紅の色をした二つの光点。それは紛れもなく、ケイのことを見据えていた。
 本能的に、足がすくんでしまう。同じところがけたたましく警鐘を鳴らしているのに、別の部分がまるで凍り付いてしまったかのように、身体への指示を妨げていた。
 どきり、どきりという心臓の鼓動が、痛いほどに耳へと響く中で、しかし体の末端から闇が這い上がってくるかの如く、感覚が遠のいていく。得体のしれない恐怖を前にして、ケイは行動するという概念を奪われたかの如く、動くことができなくなっていた。
 逃げないと。
 逃げないと。
 逃げろ。
 逃げるんだ。
 

 逃げろ!!
 頭の中で響く、もう一人の自分が発した叫び声で我に返ると。


「              」
 ケイの視界はすでに、底のしれない深い黒と、両目を覆わんと言うかの如き至近距離まで迫った、赤黒い二つの光点で埋め尽くされていた。
「ぁ」
 何か、何か行動を起こさなければ。うるさいぐらいに訴えてくる本能の声が、うすらと消えていく。同時に、視界の端でいまだに見えていたはずの夜の風景も、いつの間にか消えていた。
 意識が、視界が、自我が遠のいていく。今から自分の身に起こることがなんなのか、ケイには知る由もない。しかし、恐怖でおかしくなってしまったらしい自意識の部分は、どこか諦観したような姿勢を見せていた。
(あー……俺、死ぬのかぁ)
(人って、死んだらどうなるんだろ)
(死ぬのはまっぴらだったんだけどなー……)
 だからかもしれない。途絶えかけの意識の端で、なんとものんきな心境でそんな間延びしたことを考えることができたのは。


《――見つけたぞ》
 だからかもしれない。薄れて消えていく自我の中で、まるでもう一人の自分が語り掛けてきたかのような、自分とよく似た声を聴きとれたのは。



「――――ケイ君っ!!」
 だからかも、しれない。
 途切れてしまいそうな全身の感覚が、浴びせられた懐かしい声を――居るはずのない声を、あるはずのない可能性を手繰り寄せたことを、知覚することができたのは。


 まだ、彼は知る由もない。
 自らに宿った力を。
 己が背負い続ける因果を。
 世界が繰り返している輪廻を。
 紡がれ続けた一つの物語を。
 その主役が、自分であることを。


 今まさに、彼の中にある、動くはずのなかったさび付いた運命の歯車は、軋みを上げて動き始めたのだ。
 それがやがて、世界と世界が繰り返す輪廻を、大きく変えることになることになるとは、誰も知らないままに。



 Phantasy Star On-Line 2 The Another History
  Over Border Warrior


*********


と言うわけでこんにちはー。久しぶりにPSO2小説を描こうと思ったら、殊の外詰まりまくって投稿が遅れてしまったコネクトにございますー。
設定ばっかり先行すると、少々書きづらくなるのはいつものことですね……こうならないよう精進しないと。


と言うわけで、今回より堂々と、新小説「PSO2異伝 Over Border Warrior」の始動を宣言いたします!
本来は完全オリジナルのストーリーを展開する予定だったのですが、コネクトとサブキャラのシューティアにあてがっていた設定が全面的に削進されたので、それに合わせて小説の方も新たに作成し直し、新たな物語として再始動を行うことになりました。それがこのOBWです。


本小説のコンセプトは、ズバリ「原点回帰」。
かつてコネクトが作成した、PSO2小説の原点となる二次創作小説「カルカーロの戦士たち」で、軌道変更される以前に予定していた「メインストーリーを独自解釈と一緒に追う」ということを念頭に置いて作成することとなります。
リメイク以前の小説にて、意味ありげに登場したシオン(文章)とかは、まさしくストーリー追走の為に出したものです。その当時はストーリークエストなんてロクにやっておらず、シオンとマタボしか記憶に無かったので、あんな形になりはしましたがねw
で、本作はそんなリメイク以前の最古のカルカーロをオマージュしつつ、コネクト独自解釈の元でガンガンとストーリークエストを攻略?していく方針です。カルカーロと同様、コネクトをはじめとしたたくさんのプレイヤーも登場する予定ですので、もしコネクトと懇意にしているフレンドさんは、登場を楽しみにしてくださいませ。……え、出すなって? そこはコネクトさんの気分ですのであしからず。


ちなみに、サブタイトルであるOver Border Warrior(オーバー・ボーダー・ウォーリア―)は、意訳すると「境界を超える戦士」。
今回のコネクトの境遇と重ね合わせたサブタイであり、同時に今のところ予定しているEP4の小説にもかかるタイトルになっております。考えるのに一週間ぐらいかかりましたw


と言うわけで、今回はここまで。
次回は再会、そして本当のプロローグの始まりとなる、ナベリウスの修了試験へとつながることとなります。もしかするとそこまではいかないかもしれませんが、その時は悪しからず、と言うことで。
それではまた次回会いませうー ノシ

Blue Bright Blade―蒼の煌刃―

「はあぁぁぁッ!!」
 快晴の元。
 魔動機の残骸が転がり、露出していたはずの草地の大部分が埋められた草原の一角で、デルタは一人戦っていた。
 旅路を共にしているレイとナギトは今、傍にいない。数えることが億劫になるほどの大量の機械兵が投入された結果、気づかないうちに分断されたのだ。
「ぐッ……邪魔だぁっ!」
 咆哮を切っ先に乗せて、デルタが握るキュアノエイデスが中空に蒼い軌跡を描く。鉄の塊であろうと難なく切り裂くその切れ味は、衝撃に弱い機械兵にも十二分に通用した。塊となってとびかかってきた機械兵たちが、一瞬にして真っ二つの屑鉄に変わる。
「はあ、はあ、これで、何体目だ……っ?」
 全身に張り詰める緊張の糸を緩めることなく、デルタはキュアノエイデスを構え直した。その周囲に展開しているのは、どれもこれもが無個性で、無味乾燥な灰色の肌を持った、隊列を乱すことを知らない機械兵の軍団。
額の汗を袖で拭い取り、再び掌中で煌めくキュアノエイデスの切っ先を振るう。息つく間もなく襲い来る機械兵たちは、蹴散らすことこそ容易いものだったが、底のしれないその物量は、精神を摩耗させるのに十分すぎた。
「ぐっ!」
 集中の糸が切れたデルタの身体を、機械兵の腕から発振された魔力の刃が浅く傷つける。冷や汗を頬に一筋浮かべながら、慌てて後退したデルタへと、逃げるエサを逃すまいとする獣の如く、無数の機械兵が群がってきた。
「この――ッ!!」
 そうして中空に躍り出た機械の体躯が見せた隙に、デルタは迷いなくキュアノエイデスを叩き込む。刃はしなやかに蒼い軌跡を描いた直後、無数の機械兵を一太刀の元に両断。そのすべてを魔力反応の爆発へと変じさせた。
 そしてその爆発に乗じて、デルタは後方へと素早く離脱する。倒せど倒せど無尽蔵に湧き出てくる機械の軍勢は、一介の少年を疲労させてなお有り余る物量だったのだ。
 このまま戦い続けるだけでは、勝機を見出すことはできない。ゆえにデルタは体制の立て直しを図るため、戦略的撤退を図ることにしたのだった。


***


「よ、っとぉ……コイツで全部か!」
「そのようだ。もう展開用の魔術方陣も、周囲には見えない」
 同じころ。絶え間ない機械兵たちの濁流に押され、付近にあった雑木林付近まで後退を余儀なくされたレイとナギトは、しかし攻勢を緩めた機械兵たちをすぐさま薙ぎ倒し、ものの十数分ほどでそのすべてをただの鉄くずへと変じさせていた。
 分離させた鎌をホルスターに仕舞い直してから、ナギトはしかし乱雑に後頭部を掻く。
「クソ、やべぇとは思ったけど、まさかデルタが単独で引きはがされちまうとはな……」
「オメガの子息であるデルタを先んじて捕らえるか、はたまた何らかの障害になるとして排除にかかっているか。……いずれにしても、喜ばしい事態というわけじゃないな」
 周囲を見回して、やはり仲間の一人である蒼い髪の少年が見つからないことに嘆息する二人。その顔にはいくらかの憂いも浮かんではいたが、次の瞬間には毅然とした意志を宿したものへと移り変わる。
「ともかく、引きはがされた方に逆戻りしよう。デルタも機械の雑兵程度に後れを取りはしないさ」
「まぁな。んじゃあそうと決まれば――」
 そこまで言葉にしかけて、しかし口をつぐんだナギト。怪訝に思ったレイが彼の方を見やると、何やら警戒した表情でナギトが周囲を見回していた。
「……嫌に粘っこい殺気が飛んで来やがる。どこかにデルタのオヤジさんの刺客が来てるっぽいぜ、レイ」
 レイとナギト。一見相反する性格故に相性も悪そうな二人だったが、実のところ二人がパートナーを組む時は、決まって良い戦績を叩き出していた。その最たる理由は、二人がお互いに無いものを持ち得ているからである。
 レイが有しているのは冷静な観察眼と、過去の旅で培った経験からなる、戦局の把握。対するナギトが有するのは、天賦の才とも言える圧倒的な本人の戦闘センスと、それを十全に補うための野性的な感覚――つまるところの「発達した第六感」だ。
 逆にレイが持っていないのは、努力ではカバーしきれない才能の差と、理を重んじる故に強くは発揮されないい直感。そしてナギトが持っていないのは、如何なるときであろうと波立てることを良しとしない心と、技を磨くためであったが故に培われなかった観察眼。
 それぞれに持ちえないものを、それぞれが持ち得る技能によってカバーし合うことで、二人はただの兵士が束になってかかろうとも易々打ち倒せるほどの、強靭なコンビネーションを発揮することができるのだ。
 本来ならばここにデルタを加え、三方からの攻撃に対処できるようにして初めて完成と言える陣形ではあったが、なまじ二人の実力が飛びぬけている分、即席であろうとコンビネーションは抜群だった。その連携が、再び到来した殺気へと視線を送る。
「……ち、やっぱし雑兵じゃあアンタらは倒せないか」
 そこに立っていたのは、明らかに今までの機械兵とは姿かたちを異にする、生身の人間だった。


***


「……っはぁ、はぁ、はぁ……撒いた、かな」
 ほど近いところにあった、獣道を舗装して作られた街道。その一角に建てられた看板に背中を預けて、デルタはひたすらに荒い息を吐く。
 すぐ近くには村の門と思しきものがあったが、流石に大量の機械兵に追われる身でそこへと踏み入るのは良心が痛んだ。ゆえにデルタは、人気の少ない獣道に座り込んで、そのまま周囲を警戒していたのである。
 ほどなくして、周囲には機械兵の影が見えなくなっていたことに気付く。どうやら向こうも追撃を諦めたのだろうとあたりを付けたデルタは、今度こそ全身を弛緩させようとして、すぐに気を持ち直した。
「いけない、レイ姉たちに合流しないと……」
 しかし、それはすぐには実現できない。何しろデルタが居るのは、近場であれど村の全景をうすらと見渡せるほど、見通しの良い草原。にもかかわらず、レイもナギトも遠景に見とめることさえできない状況なのだ。
「……どうしよう」
 手だてを見失い、思わずデルタは呆然とする。ちらりと脳内に万事休す、の文字が浮かぶが、しかしすぐさま頭を振って強引に思考を切り替える。
「いや、決めつけるより前に行動だ!」
「……何をしてるんだ、お前?」
 自分自身に言い聞かせつつ、走り出そうとしたその矢先に、背後から呼び止めるような声音を受けて、たたらを踏むようにデルタの足が止まる。振り向いてみると、そこにはくすんだ金髪の男性が居た。
「あっ、ご、ごめんなさい。……僕、このあたりで仲間とはぐれちゃったんです。方角は分かってるんで、向こうまで合流に行こうと思ってたんですけど」
 突然の邂逅に、多少慌てた様子のデルタが様子を説明する。怪しい者と思われないための一通りの弁明を口にすると、疑念はあるものの男性は納得してくれたらしい。
「ああ、旅の人間か。よくもまぁ、こんな物騒な島に来たものだ」
「来た、っていうよりは、この島の住人なんですけどね。訳あって、カレストを目指してるんです」
 仮にここで自分がオメガの息子だと公言でもすれば、心無い人間によってここから先への道を閉ざされてしまうかもしれない。そう直感で判断したデルタは、あえて旅の理由をぼかすことにした。
「そうか。まぁ、気を付けることだな。どこにオメガの兵士や腹心が居るとも限らん」
 結果として、要らぬ誤解を生むことは避けられたらしい。内心で安堵していると、男性が改まって自己紹介をする。
「俺はニュー。ニュー・ベルシャングだ。そこのエーディンの村付き用心棒をしている」
「あ、デルタです。……用心棒ってことは、このあたりには?」
「ああ、周辺の警戒にな。ここのところは沈静化しているが、警戒するに越したことは無い」
 なるほどとデルタは思う反面、それが自分の身内のせいだと考えると、どうしても申し訳ない気持ちになってしまうのが本音だ。自分が父親に代わって謝罪したい、という気持ちを押し殺して、デルタは小さく笑いかける。
「こんなバカなこと、早く終わればいいんですけどね」
「全くだ。……ところでお前、人を探しているんだったな?」
「え? あ、はい。厳密には、ついさっきはぐれた仲間ともう一度合流するためなんですけど」
 言外に「早く解放してほしい」という意味を含ませた言い回しをしてみるが、ニューという男性は突如、妙案を思いついたような顔をデルタに向けた。何故か、次の一言がデルタにも予想ができる様な気がして。
「ならば、その場所まで俺もついていこう。不測の事態が予想されるんだ、戦力は多いに越したことは無いだろう」
 その通りの言葉を受けて、デルタは思わず苦笑をもらした。


「この辺りか?」
「うん、この辺りなんだけど……」
 ニューの質問に肯定を返して、しかし周囲を見回すデルタは疑問を浮かべる。
 確かに、周辺には所狭しと打ち捨てられた機械兵の残骸がたむろしていた。しかし、そこにいたはずであろう二人の姿は、すでになかったのである。
「もう、僕のことを探してどこかに行ったのかな」
「やられた、と言うわけでは無いだろうな。この量を相手取れるなら、そうそう遅れは取らないはずだ」
 もっともな意見を受けながら、再度注意深く周囲を見回す。すると、機械兵の残骸は点々と、一方に向けて転がっていた。
「あっちは……」
「森林の方だな。追い立てられて向こうに行った、と考えるべきか」
 再び、ニューの意見に賛同するデルタが、強い意志を秘めた瞳で森林の方角を見つめる。
「僕はこのまま追いかけていく。ニューは、どうする?」
 元々ニューは警戒がてらに同伴してくれているだけで、本来ならば巻き込むべき人間ではない。それを考慮しての問いだったが、しかしそれに返ってきたのは言葉の返事ではなく、空間を薙いだ風切り音だった。
「えっ?」
「後ろを見ろ、デルタ。何かが来るぞ」
 音の正体は、ニューがどこからか生み出した、斬打突すべてをまかなえるポールアーム――俗に言う「ハルバート」に分類される、黒い大槍。その切っ先が突きつけられた方向を見ると、すぐさまデルタは懐からキュアノエイデスを取り出し、蒼い刀身を生み出した。
 その行動の答えは単純明快――「機械兵を生み出す魔術方陣」が、青い空の一角でまがまがしく輝いているからにほかならない。ニューに関しては、そのそぶりから機械兵関連のものとは認識していないようだったが、デルタとしては忌まわしき負の遺産の象徴。ゆえにその出現に際して、彼はひと際闘志をみなぎらせていた。
 やがて、出現した魔術方陣からは、まるで操られる屍のごとく、大量の機械兵が生産されては草原を埋め尽くしていく。ひとしきりの量を吐き出し終えた後、最後に二つの影を吐き、その姿を消滅させた。
「こんなところにもか……!」
「多分、僕らみたいな反抗勢力を潰しに来てるんだ。……今なら間に合う、ニューは村の警護に」
「断る」
「へっ?」
 立ち上がり始めた大量の機械兵を目前にして、デルタの注意勧告を受けたニューはしかし、その言葉を一蹴する。直後に見せた表情は、研ぎ澄まされた鋭利な刃物の如き、冷たく鋭い戦闘の顔だった。
「――へーぇ、オレらを見て逃げねぇバカがまだ居やがったか」
「愚かしき矮小な生き物めが。蛮勇だけは一流ということだ」
 そして、最後に立ち上がった影――周辺に群れる機械兵とは明らかに違う風貌を持つ、二体の機械の剣士が、以前デルタを襲った翼の機械兵のように、流暢な言葉で二人に語り掛ける。二体の機械剣士の様を見て、本腰を入れてきたのだろう、とデルタは直感で察していた。
「……対話型とはな。ずいぶんとまあ、無駄な機能を付けるものだ」
「は、減らず口をほざくんじゃねえよクソゴミ。ごちゃごちゃ言ってるとなます切りにしてやんぞ?」
 対するニューは、機械剣士の脅迫じみた一言を、鼻で笑って一蹴に伏して見せる。
「ほざけ。束になろうが強化されようが、所詮は機械の雑兵にすぎんからな」
「……あー、そうかいそうかい。お前はそう思っちゃってるわけね」
 カウンターの皮肉を受けると、機械剣士が明らかにいらだったような声音をもらした。そのまま剣を振りかぶると、勢いよく中空を薙ぎ、威勢よく一歩を踏み出した。


「上等だコラァ! 人間風情と俺らマシンドール様の格の違いってのを、このラオ様たちが見せてやんぜェ!!」
「侮辱されて良い気分にはならない。愚かな大馬鹿者に、このレオたちが鉄槌を下そう」
 そのまま並び立ち、堂々と名乗りを上げた機械剣士――ラオとレオが、伴った機械兵たち共々、一斉にデルタとニューへとびかかってきた。


*********


と言うわけでお久しぶりにございます、オリヴィエに続いて半年間も更新をサボってた腐れノロマのコネクトですー。
本当ならばもっと早くお届けするつもりだったのですが、色々とリアルの事情があったり、展開を思いつかなかったりで、本日のこの時まで公開が遅れに遅れてしまいました。
BBBはコネクトの代表作になる作品、といっても過言ではないので、どうしてもきっちりした形でお届けしたいのですが……いかんせん上手くいかない物です。


さて、今回はデルタとレイ、ナギトが分断されてしまい、そこから一時共闘する新たな仲間の登場と相成りました。
本当ならばこの回だけでニューとの共闘は終了になるはずだったのですが、思った以上に文章量が多くなってしまったため、結果的に前後編のような形に変更となりました。長くなって嬉しいやら、悲鳴を上げたくなるやら……w
そして今回登場となった機械兵ラオ、レオのコンビですが、こちらも前身作である剣物語に登場したキャラクターとなっております。
当時もパーティ三人のうち二人が離脱状態で、ナギト(ヤイバ)が共闘する仲となるキャラと共に立ち向かう、と言うストーリーでした。大まかな筋が変わらないのは、実のところ全く想定していなかった事態である故、不思議な繋がりに困惑していますw


次回はデルタ、ニュー対ラオ、レオの戦闘です。
まるまる戦闘の回になる予定なため、個人的には楽しみな反面、若干悲鳴を上げたくなるのを我慢しつつ、執筆に励もうと思いますー。


……え、いつ公開になるのかって?


それでは今回はここまで。
またあいませうー ノシ

護星のオリヴィエ

「セルジュ?」
 はっきりと聞き取った名前を、カーティアと呼ばれた白い少女は口にする。その顔に、感情らしいものの色は見えなかった。
「ヴァナルガンド、被験体E-7を発見した。……様子から見るに、精神的に危いところらしい」
 そんなカーティアのことは気にも留めず、セルジュは上司へと無線のコールをよこす。すぐさま応答した相手は、呆れ気味の溜息を洩らした。
《ま、フォルテの連中にとっ捕まった可憐で幼気な少女だからねぇ。全く、どんな実験されたのやら》
 胸糞悪い、と今にも吐き捨てそうな上司の言葉に、セルジュは人知れず苦笑する。彼の上司は、傭兵というグレーゾーンに片足を突っ込んんだ家業をやっているにもかかわらず、こういった非人道的なことを許さない、不思議な性格の人間なのだ。
 ひょっとすると、今回の依頼はその上司が「こんなことするなんてふてぇ野郎だ」と憤った結果、自分ででっち上げたものかもしれない。ありえそうな予測に内心で苦笑を浮かべつつ、セルジュは目の前で小首をかしげるカーティアに語り掛けた。
「カーティア・シュトロハイム。いきなりだが、俺はお前をここから連れ出さなければいけない」
 セルジュの言葉に一瞬だけ顔を上げたカーティアだったが、しかしすぐに伸びきった白髪で瞳が伏せられる。セルジュからは見えなかったが、その顔はひどく陰鬱気な印象を抱かせるものだった。
「……私は出られない。もうここ以外に行く場所も、居られる場所もないから」
 ごく簡潔にまとめられた言葉に秘められたかすかな闇を――自分が抱えるものとよく似た闇を、セルジュは敏感に感じ取った。
「だったら、お前はここで永遠に操り人形になるのがお望みなのか?」
 セルジュの問いかけに、少女は力なく首を横に振る。いまだにその表情に差した影が晴れてはいないが、しかしその瞳には確たる意思が宿っていた。
「……もう、死にたくない。」
「なら、俺と一緒に来い。お前の居場所も、これからも、俺ならなんとかできる。……何より、お前をここから連れ出すのが、俺が受けた任務だからな」
 そう告げた青年の顔を、はじかれたように振り上げられたカーティアの持つ眼が――生気もわずかだったワインレッドの双眸が貫く。
 幾ばくかの後、耳にした言葉を信じられなさそうに、カーティアは好き放題に伸び、ろくに手入れもされていない新雪色の髪を揺らしながら小首をかしげた。
「出る? ここ、から?」
「ああ、そうだ。……悪いけど、お前の意思は関係ない。穏便に済ませられるならそれが一番だが……最悪、縛りあげてでもお前を連れていく」
 最後の単語に、びくりと華奢な体が竦み、わずかに後ずさる。悪手だったと悟ったセルジュは、即座に言い回しを穏やかなものへと置き換える。
「まぁ、それはお前がここに居たい、といった時の話だ。……お前に家族がいたことは知っている。もう一度、彼らに会いたくないか?」
 怯えた表情を見せていたカーティアの顔が、今度は驚きに染まる。ただ、どうも驚きのベクトルが想定とは違い、困惑の色を多分に含んでいたことをセルジュは感じ取った。
「……だ」
「ん?」
「やだ。会いたくない」
 明確な否定の言葉を聞き取り、セルジュは密かに驚く。
「帰っても、私は必要ない。……私はここに居ればいいの。私はみんなには必要ないから」
 次いで口走った理由を聞いて、彼は内心で納得した。ヴァナルガンドからよこされた情報の中には、彼女がこの施設に来るまでの簡単な経緯も在ったからであり、その情報と彼女自身の理由を照らし合せれば、十分に合点を得るに足る内容となったからである。
「……10歳の時、村の人々が見ている前で、家族にさえ何も言ってもらえないまま、ここに連れてこられたそうだな」
「っ……」
 セルジュの言葉に、カーティアが再び身をすくめる。
「そうして心身ともに、お前は拷問を受けた。新しい能力の実験のために」
「やめ、て」
「殺されそうになったんだな。何度も何度も、何十回も何百回も。いっそ死ねばいいと考えるくらいに」
「やめて……」
「誰にも人として扱ってもらえないまま、お前は今この瞬間まで、実験を受けるためのモノとして生き続けていたんだよな?」
「やめてッ!!」
 情報として知った彼女の歩みを、ただ機械のように冷徹に読み上げるセルジュ。その声は、半ば金切り声になった叫びで中断された。
「違うっ、私はモノじゃない! 私は生きてる!」
 そのまま、まるで野獣が吼えるかのごとき剣幕で声を荒げたかと思うと、カーティアはふらつきながらも立ち上がり、セルジュめがけて突進してくる。
 どしん、と弱弱しい衝撃を受けたセルジュにしがみつきながら、カーティアは怒りとも怯えとも、悲しみともつかない光を宿した瞳で、頭一つ高いセルジュの顔をにらみつけた。
「私だって、やだ! ――もう、二度と死にたくない!!」
 怒りを表していた顔は、次の瞬間にはくしゃりとゆがめられ、次々に大粒の涙を流し始める。
「……やだ……ここから出たい…………もう、死にたくないよぉ……」
 嗚咽をこらえながらも振り絞った言葉は確かに、彼女が抱える素直な感情の一片だった。それを確認して、セルジュは小さく顔をしかめた後、やや遠慮気味に少女の頭に手を置く。
 ぼさぼさの髪は枝毛も目立ち、女性の身だしなみという物には無縁のセルジュにも、相当髪質が傷んでいることは理解できた。
「――なら、俺とこい」
 そのまま、ぶっきらぼうにわしわしと頭を撫でつつ、静かな諭すような声音で声音でセルジュがつぶやく。
「家族に会う、って言うのは、あくまで将来の一つだ。……お前が望むのなら、持てる物すべてを駆使できるのなら、お前にはもっとたくさんの路がある。……そうだろう、べリル?」
 言いつつ、セルジュは耳に取り付けていた小型無線の出力口を周囲全体に向けて設定した。直後、タイミングを見計らったかのように、べリル――先ほどまでヴァナルガンドと呼ばれていた、青年の声が響き渡る。
《働き口を探してやるのは俺かよ、ったく。……まーそういうことさ、不死身のお姫サマ。それに、そこのセルジュお兄さんは君を誘拐しにやってきたんだ。どのみち君に、そこから出る以外の道は無いってこった》
「人聞きの悪い言い回しを言うな、顔面犯罪者」
《誰がロリコンだぉオン!?》
「誰も言ってない」
 そのあとも喚くべリルの声が聞こえないように無線をいつもの設定へと戻した後、頭を掻きながらセルジュが口を開いた。
「……言い回しはあれだが、あながち間違ってはいない。さっきも言ったように、俺は君をここから連れ出しに来た。強硬手段は、あくまでも君が外に出たがらない場合だけど……」
 探るような声音でつぶやかれた言葉に、カーティアは一瞬だけ躊躇の表情を見せる。しかし次の瞬間には、ぐっと唇を真一文字に引き結んだ、幼くも凛々しさを見せる顔つきに代わっていた。
「……セルジュに、付いていく。もう、利用されるだけの人生は嫌」
「そう来ないとな」
 そのまま、肯定の言葉と共にセルジュにしがみついたカーティアを見て、任務の成功を確認したセルジュが不敵な笑みを見せる。すぐさま静かにカーティアを引き離し、通路外の様子を伺いながら、口元は無線のマイクへと声をかける。
「こちらセルジュ、ターゲットの確保完了。これより帰投する」
《りょーかい。迎えの小型艇はポイントG-66、外れの飛行場に降ろすから、あとは適当に頼むわ》
「了解。オーバー
 通信網から場所の逆探知などをされないよう、無線の電源を切った後、振り返ったセルジュはカーティアに向けて手を伸ばす。


「来い、カーティア!」
「――うんっ」
 差し出された青年の手を、少女の生白く、折れそうなほどにか弱い手が、自由への渇望を体現するかのように、しっかりと握りしめた。


*********


というわけでお久しぶりですー、たった一話更新するだけに半年も費やす体たらくをやらかすことに定評のあるコネクトですー。
っていうかそもそも、最近のコネクトさんが創作しなさすぎなのが原因ではあるんですけどね……。


今回のオリヴィエは、カーティアを連れ出すまでの一連のお話です。最近は小説を描いてないせいか少々腕がなまっておりまして、たった三千文字強の本話を書くのにもドエライ苦労しました。
どうも昔の記憶を頼りにして書いているせいか、ところどころの人物の動きが色あせてしまっておりまして、それが結果的に亀以下の更新速度を招いてしまったのですが……。


次回はセルジュ、カーティアの脱出劇と、今後オリヴィエを通しての宿敵となるキャラクターが初お目見えとなります。
また機会があったらラムダみたいにイラスト描かないとな……もう5年近く描いてないからな……w
と言うわけで今回はここまで。
また会いませう― ノシ

天咲ヒナタ 詳細設定

ヒナタ

名前:天咲ヒナタ(あまさき-)
性別:女性
年齢:不明(外見年齢14〜15歳)
身長:164cm
誕生日:4月22日
能力:「閃雷破撃」
好き:飛行船関連(操舵や整備など)、人の手助け、味噌ラーメン
嫌い:虫、魔法関連の技術(苦手)、水上船
解説…
独立傭兵団「フェンリル」の団長であるベリルのパートナーにして、フェンリル最強の腕を持つ少女。
頭頂部ではねたアホ毛のついた長い金髪と、空色の瞳が特徴的。普段はモノトーンを基調にしたエプロンワンピースを好んで着用しているが、任務に赴く際は、魔力を織り込んだ特殊繊維の仕事着を身にまとう。


性格…
目的のためなら手段を選ばず、持てる手すべてを使って達成することがポリシー。
それが目的達成の障害となるならば、たとえ人であろうと躊躇いなく殺せる冷徹さを持っている。
普段は物静かで口数も少ないが、心優しいお姉さん気質。直接の手助けはあまりしないが、特訓に付き合ったり助言を与えたりするなど関節的に助け舟をだすことはしばしばあるという。
べリルと二人だけの時は饒舌になり、引き締めた表情も綻んでいるらしく、一度その顔を見たフェンリル団員が仰天していたこともあるんだとか。


人物…
傭兵団フェンリルの団員であり、高い実力を有してはいるが、名前も知れているセルジュとは違い基本的に裏方に徹することがほとんどなので、あまり顔が知れることは無い。
ただし実力はセルジュさえも凌駕するほどであり、実質最強の立場にある。もっとも彼女自身はそれをひけらかすことは無く、よっぽどのことがない限り全力全開で戦うということは無いという。



能力…
◇閃雷破撃(ブリッツインパルス)
体内や周囲の魔力から構成した紫電を自在に繰り、攻防に転用する固有進化魔術。
志向性を持たせた電撃や定点への落雷、周囲への放電に移動速度の増強など、シンプル故の汎用性に長ける。
ヒナタはもっぱら速度の強化や相手への牽制、感電による敵の拘束など、あくまでも補助技として使用しているが、スタイルを変えれば電撃のみでの戦闘も可能。
▽閃雷・瞬華(センライ・シュンカ)
 自身に魔力の電撃を宿すことにより、稲妻の如き速度で空間を駆ける技。
 敵の攪乱、懐への急接近など、機動力を重視する場面で使用する。
▽閃雷・炸光(センライ・サッコウ)
 志向性を持たせた稲妻を放ち、電撃による遠距離攻撃を行う技。
 単純ながら電撃の威力は相応にあるため、牽制から本命打まで様々な状況で使用できる。
▽閃雷・痺撃(センライ・ヒゲキ)
 手足など体の一部に電撃を纏い、攻撃によって相手を感電させる技。
 隠し武器的な扱いで使用することが多く、威力は望めないが不意打ちには非常に有用。



パラメータ・戦闘スタイル…
攻撃:A+
防御:C
敏捷:S
技量:B−
魔術:B
能力:A-
総合:S-
***
機動力を活かし、相手の懐に潜り込んで瞬時に撃破するというスタイルのため、とにかく足が早い。
反面これと言った防御手段を持たないため、攻め込まれると苦戦したり、撤退を余儀なくされるのだとか。
小太刀二刀流による近接格闘戦と、如何なる状況下であろうと相手を切り裂く機動力と瞬発力が最大の武器。そこに能力の電撃攻撃を加えた、相手を絡めとって叩き潰すスタイルを得意とする。


武装
・戦小太刀ライキリ
 ヒナタのメイン武器で、忍者刀のような形をした直刀。
 普段は仕事着の腰ベルトに吊っており、それぞれ一本ずつ両手に持って使用することがほとんど。一本だけで使用することはまれ。
 刃こぼれを起こしにくい設計になっており、長期間の使用に耐える構造になっている。
・エナジーブレイド
 仕事着用ブーツの中に仕込まれたいわゆる隠し武装で、戦小太刀を使用できない状況下で展開、使用する。
 つま先から魔力の刃が飛び出るような構造になっており、使用の際にはブレイクダンスに似た独特の舞を披露する。
・煙幕手榴弾
 仕事着用ベストの裏に隠されている逃走用の武器。
 基本的に目くらましにしか使われないが、ヒナタはそれを利用して相手の懐に入り込み、そこから一撃で倒す戦法を得意としている。その都合上逃走用で使われるほうがまれ。
・マルチワイヤー
 仕事着用のリストバンドに隠された特殊兵装。
 高い硬度を持った合金で作られたワイヤーであり、移動や相手の拘束など、様々な状況で使用を可能としている。
 リストバンドに直接収納されているわけではなく、携帯物資倉庫の技術を応用して格納している。使用の際には先端についた多目的アンカーがマイクロバーニアによって射出、標的に向けて飛翔する。


生い立ち…
過去の経歴は一切不明。かなり昔からベリルに付き添っていたらしいが、いつからの付き合いなのかは不明。


主な人物関係…
・ベリル
仕事のパートナー、兼彼の側近、兼恋人。
互いに互いを信頼しており、また両者とも高い戦闘能力を持っているため、二人で組んで失敗したことはほとんど無いという。
・セルジュ
仕事仲間で部下。
平時はあまり
・カーティア
彼女の身元引受人であり、彼女にとってのお姉さん的存在。
カーティアの身にまとう服はヒナタが選んであげたもので、それが縁となって慕われている。


余談…
・服装、髪型などの詳細画稿

・昔描いた普段着姿

・言わずと知れた、製作者たるコネクト一番のお気に入りキャラ。素体であるヒナタ本人のデザインの可憐さ(自称)と、各種衣装がよく似合うことからお気に入りになった。
・名前の元ネタは、絵に描き起こされた際の原型衣装の明るさから。太陽のように明るい衣装だったので、そこから転じてヒナタになった。
 苗字は後付けで、天に咲く太陽の花、という意味で天咲となっている。
・ちなみに天咲ヒナタの名前は、ベリルが元の名前は呼びにくいからという理由と、とある理由から考案したもの。由来は太陽のように明るい輝く金髪から。
 本来の名前は「フレメア・ホートレック」であるが、既に捨てた名前のためこちらの名前で呼ばれることはほぼない。
・仕事着の元ネタは、「ナイツロード」の原作者である「うまそう」氏の所有しているキャラクター「ルナ・アシュライズ」の旧衣装。数回ほどにわたって独自に改修、改造を施している。
・代わって普段着の元ネタは、Yahoo画像検索で見つけた人形の衣装から。シンプルなエプロンワンピースに出来たのでお気に入り。
武装に関してはほとんど案がなかったのだが、服装を書き起こした際に「忍者」のイメージが頭から離れなくなってしまい、それならばと忍者刀を持たせたのが始まり。そこから後付で武装が増えていったという経緯を持つ。
・実は意外と少ないロングヘアーキャラ。髪の色を銀か金で迷っていたが、初代仕事着のベースカラーを決めた際「どうせだから暖色で」という軽いノリによって金髪になった。



・実はヒナタは、現在のアリルフェイトが構築される前、つまり「古代文明がまだ生きていた時代」の人間。
 そこで出会ったベリル=大介と共に文明の崩壊から逃れて、長い時を共に過ごして来た、という経緯を持つ。
・ヒナタになる前のフレメアは、徴兵されて間もない新米兵士だったのだが、古代アリルフェイトにうんざりしてきた大介が助手を欲してほっつき歩いていたところ、たまたま目をつけられて友人となる。
その後、幾度目とも知れない戦いが起こりかけた直前、友人が望まない戦いで死ぬことを良しとしなかった大介により誘拐され、そのまま行動を共にするようになった、という経緯を持つ。
・大介と行動を共にすることとなった後、彼のそばにずっと付き従うために、大介から不死身となる力を授かっている。このため、自分より高位の存在に自らを抹消されない限り、どれだけ肉体を破壊されようと再生が可能。
 ただ相応の痛みは伴うため、できることならそんなことはしたくないと考えている。もっとも、そんなことをさせるのは許さないとべリルが豪語しているが。

オメガ・アリーシア 詳細設定

※本記事は小説「Blue Bright Blade―蒼の煌刃―(以降BBB)」完結後のオメガに関して記述しています。能力、生い立ち、人間関係など一部にBBBのネタバレを含みますので、閲覧の際はご注意下さい。


オメガ

本名:オメガ・アリーシア(omega alleyria)
性別:男性
年齢:39
身長:176㎝
誕生日:5月13日
能力:なし
好き:家族、自分の会社と仲間、魔動機いじり、コーヒー
嫌い:魔術関連、紅茶
解説…
魔導科学の技術を使い、高性能な魔動兵装(マギアアームズ)の開発を手掛ける小さな兵装企業「アリーシア商社」の代表取締役で、Blue Bright Blade(BBB)主人公デルタの父親。
かつてはデルタたちの倒すべき敵として描かれ、棒バトでも何度か対峙。BBBの原作であるSwordStoryでもラスボスの立ち位置に立っていたが、大幅な設定変更を加えられた末、ちょっぴり親バカな良き父親として再設定された。
片目が隠れるようにカットされた茶髪と、デルタにも遺伝したらしい黒曜石のような黒目、顎から生やした無精ひげが特徴。あまりかっちりした服装を好んでおらず、社内外関係なく基本的に私服を着用している。


性格…
機械いじりが好きな性分で、高性能な魔動機械を見かけると思わず熱くなってしまうほどのメカオタ。
同時に家族や一人息子であるデルタのことを賭け値なく愛しており、それが行き過ぎて親バカに片足突っ込んでると言われることもしばしば。
いち会社を立ち上げ、己の身一つで経営するなどカリスマや手腕は申し分なく、部下たちからは子煩悩なところも含め、よき上司として見られている。
BBB本編中ではラムダ・ネプチューンの手で洗脳され、自らを「偽りの神への挑戦者」と称し、世界征服の為に行動。
冷酷な殺戮者として振る舞っていたが、最終的にはその姿勢を疑問視したデルタたちにより洗脳を解かれ、元の子煩悩メカオタに戻った。


人物…
前述通り、アリーシア商社の代表取締役
企業としての規模は決して大きいと言えるものではないが、高品質、高性能な魔動戦機を手掛ける会社の社長という立場に加え、オルフェスト解放戦争が引き起こされた発端となった人物であることから、良くも悪くもその知名度は高い。
現在はオメガ自身の努力や、彼を信頼する部下たちの手によって社会からの信用は回復傾向にあり、徐々に悪評も収まってきているとのこと。



異能…
特殊能力などは無し。基本的に非戦闘キャラクターであるため戦闘は行わないが、社や家族を脅かす者には敢然と立ち向かう強さを持っている。


パラメータ・戦闘スタイル…
攻撃:D
防御:C
敏捷:D
技量:A+
魔術:D-
能力:-
総合:C+
***
非戦闘員キャラであることと、40代手前ということもあり、全体的にパラメータは低め。
ただし機械いじりや魔動戦機の知識で右に出る者はおらず、加えて戦闘センスも決して悪くはないため、社の防衛などを行う際には自ら魔動戦機群を持ちだして戦うこともある。
体力も多くはないため激しい動きはできないが、魔動銃や自作のトラップ・設置武器等を、状況に合わせた形で展開することが可能。


武装
・ファルセダー
 オルフェスト解放戦争時、洗脳状態でデルタたちと対峙した際に乗り込んだ、魔動搭乗戦機(ミスティカフレーム)と呼ばれる人型機動兵器。全高12m、総重量2t。
 陸戦に特化していながらも軽量であり、社屋の上で飛び跳ねたり激しい機動を行っても床を踏み抜くことなく戦えるという特徴を持つ。
 圧倒的な堅牢さと火力でデルタたちを苦しめたが、最終的には変化装煌の力を得たデルタが放った渾身の一撃で破壊された。
・魔動戦機
 文字通り、彼が手ずから開発した魔動戦機たちのこと。
 自分が手掛けたものである故に使い方、有効活用法、弱点も熟知しており、それぞれをカバーするように複数種類を同時に運用することが可能。
 ただしオメガ自身、センスはともかく戦闘が得意と言うわけでは無いため、対処法を看破されると一気に形成を盛り返されるという弱点も。


生い立ち…
旧名オメガ・ジェレン。
元々は世界を旅する放浪の技術屋として活動していたが、ある時立ち寄ったオルフェスト島の豊かな自然に魅了され、島の首都であるカレストに腰を落ち着ける。
同時期にカレストへと上京してきたアレファの村出身の女性シータ・アリーシアと恋に落ち、やがて結婚。夫婦となった後、二人の名を冠した企業としてアリーシア商社を起業した。
デルタを子に持ち、流行り病でシータが急逝した後、親元を離れて暮らし始めたデルタを見守りつつ経営を続けていたが、ある日突然現れた謎の青年の勧誘がきっかけとなり、青年の能力によって洗脳され、支配下に置かれてしまう。
偽りの神への挑戦者を名乗り、世界征服の足掛かりとしてオルフェスト島を支配しようとしたが、異変を察知して打倒のためにやってきたデルタたちにより、洗脳から解放されて正気を取り戻した。
その後は信頼を回復するために奔走し、最終的にはすべてを元通りにして見せる。現在は世界を飛び回るデルタを影ながら見守りつつ、変わらずアリーシア商社の社長として日々を過ごしているという。


主な人物関係…
・デルタ
実の息子。急逝したシータとよく似た面影を持っているせいか、はたまたただの親バカかは不明だが、彼に対してはかなり甘い態度で接している。
・シータ
妻。流行り病で急逝してしまったが、今でも変わらず彼女のことを愛しているらしい。
・ラムダ
自らを洗脳した張本人であり、オルフェスト解放戦争の一連の黒幕。
彼に対してはデルタ共々、自分たちの手で決着をつけたいと考えているらしく、ラムダを追うデルタをサポートしながら、オメガ独自の情報網をもって彼の行方を追っているらしい。


余談…
・解説の項の通り、かつてはデルタの仇敵として設定されていた。
 初出はうごくメモ帳でコネクトが制作した棒バトの7作目、9作目。当時はどちらも一瞬の登場だったが、のちに12作目で正式に登場と相成った。
・右目が隠れる髪型なのは、棒人間時にビジュアル面で追加される前髪を人キャラに落とし込んだ結果。棒人間時は後頭部がとがっているが、どうやって表現すればいいのかわからないので髪型は普通のものになっている。
・昔は自ら魔法を用いたり、手足にブレードを取り付けて格闘戦を行うこともあったが、設定の改定に合わせて非戦闘キャラとなった経緯を持つ。
 デルタが主人公を務める作品ではたいていの場合ラスボスを務めていたが、現在は設定改稿によってその役目を別のキャラに譲っている。
・コネクト系キャラには珍しいオッサンキャラ。なのだが、普通に書いても画力の都合でオッサンらしくなくなってしまうので、中年らしさを際立たせるために無精ひげが追加された。