コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

後編ですっ(学園)

学園繋録後編になります。
…話題なんてなかったw


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1章1幕
 第5話 覚醒への兆し(2/2)  by5/28午後


「炎……あの集団と、あのときの集団と、同じ…」
ユウの目に映るのは、不可解な炎を纏った友人。
それを共に見る友人の一人であるソウが、一人呟く。
「あーあ…こんなトコで蒼炎なんて、無駄な戦闘にもほどがあるぞ…?」
どうやらセツの纏う炎について知っている様子らしい。ユウは問いただす。
「えっ?そ、ソウさんは…あの炎っぽいやつのこと、知ってるんですか?!」
「あー、まあな。…流石にこんな状況じゃ、隠すに隠せないよな、うん」
色々呟き、一人で納得したあと、ソウはユウたちのほうに振り向く。
「ぅし!4人とも、下行くぞ」
「「「「は?」」」」
見事にハモりが響いた。
「つべこべゆーな。ほい、固まって」
「なっ、な、はあ?おいソウ、何を…」
リクの抵抗は無駄に終わり、全員が固められる。きついことはないが、お互いが結構近い。
「うわわっ!ちょ、リク近い…」
「しゃーねえだろ、ソウにこうしろって…」
そうこうして、(何の準備かは不明だが)準備は完了したらしい。
「じっとしてろよ!…うし、そらっ!」
ソウは念をこめるかのように停止したあと、固まった4人に向けて腕を振った。
するとその瞬間、ユウたちの周りに毒々しいまでの紅い炎が湧き上がってきた。
「わ、わ、わああ!ひ、火が!」
「大丈夫だ、触ってもどうもない」
そう言う間にも炎は上へ上へと燃え上がり、ユウたちを包み込んだ。
「人呼んで『フレイム・ポッド』。炎の防壁さ」
そういうとソウは中にいる4人に向けVサイン。
「いやいや!Vサインとか今は殺気立ってるようにしか見えねえよ!」
ものすごい勢いのリクの突っ込みに、思わずソウが噴出した。
しかしその突っ込みの直後、リクはあることに気づく。
「あ、あれ?ギンは?」
「えっ?」
ユウたちが周囲を見回すと、いつ抜け出たのか、ギンは炎の外に立っていた。
「な?!お前、いつ外に?!これつかわねえと降りられねえんだぞ!?」
そんなソウの言葉に対するギンの返答はというと、
「問題ない」の一言だった。
呆気にとられる一同をよそに、ソウはさっさと降下の準備をする。
ギンはおいて行くと判断したらしい。
「いくぞっ!」
ユウたちの入った炎のボールを引きつれ、セツのときと同じように、ソウも跳躍した。
その場に残ったのは、ギン一人。
「…よし、コツはもう分かっている。……いくぞ!」
ソウに続き、ギンもそのまま飛び降りた。
5人の向かう先は、最下層。


*********


「コネクーーーーっ!」
突然の上からの声に、セツははじかれるようにその方向に向いた。同時に、その手に纏った炎も掻き消える。
「…コルソー?!それに皆!…ギンまで!!」
男たちもその光景に仰天しながら見入る中、ソウは着地した。
それと同時に、ユウたちを囲っていた炎も消えうせる。
続けて降ってきたギンは、着地の寸前に猛烈な突風を起こした。
「どおわっ!?…『風』の異能?!」
一人もろに突風を受けたセツが、その風の正体に感づき、驚く。
トン、と小さな音を立てて、直立不動の体勢でギンは着地した。
「…風の異能者だとぉ?!」
この突風に関しては、男たちのほうが驚愕の悲鳴を上げた。
そんな男たちに向かい、ギンは言葉を放つ。
「そう、『風』の異能さ。…あんたらさっき『ガキは低レベルの能力しか使えない』っていってたな」
喋りつつ、ギンは近くに落ちていた箸ほどの長さしかない鉄パイプを掴み取る。
「…コレを見て、もう一度同じことが言えるか?」
ギンの言葉の終わりと同時に、短い鉄パイプの先から「刃」が飛び出た。
「っ?!てめえ、それは!」


「ビームの…剣?」
一部始終を見ていたユウたち。リクはその形状を端的に捉え、表現する。
ギンが今持っているものは、一見すればレーザーサーベルに酷似したものだった。
リクの表現はセツに詳細を喋らせる。
「違う。あれは『風』が集束させられて形成された風の刃だ」
「カマイタチ…みたいなものですか?」
「そんなところだな。…だが、アレは真空波の類とはまた違うものだ」
と言われても難しい単語の連続投球。分かるはずもないので、全員無理やりにでも納得した。
「焔…お前、やっぱりな」
続けてセツは、ギンに言葉を投げかける。
凡人には分からないのだが、今の彼の目は木漏れ日のような緑に変色していた。
「…だからなんだ?」
セツのわずかな言い回しをものの数秒で理解したギンは、ただただ冷たい目を向ける。
二人の間の微妙な膠着は、乱入してきた者によって破られる。
「ガキ共ぉ!!俺たちを忘れたとは言わさんぞ!!」
割り込まれた二人は、見事なタイミングで「すまん、忘れてた」と棒読み口調でハモッた。
切れたらしい。先ほどの驚愕はどこへやら、男は飛び掛ってきた。
「ちっ」
「…ウザい」
そう呟くと同時に、セツは渾身の右ストレートを、ギンは持っていた鉄パイプを投げつける。
「ふぐふぁっ!!」
両方同時に腹に命中し、男はまた吹っ飛ぶ。
「ち、こうなっちゃあ仕方ねえ…。おい野郎ども!!」
別の男の号令がとぶ。その瞬間、わらわらと同じような服を着た集団が出てきた。
「おわわっ!な、何だこいつら?!」
「多分、あいつのお仲間だろうな。…あーあ。こうなっちゃ、しょーがねえか!」
あきれたポーズの後、セツたちと同じように、ソウも両手に紅い炎を纏った。
「なんか、そろそろワケわかんなくなってきたぜ…」
「同感…」
「同じくです…」
呆けているリクたち三人を尻目に、「異能」を発現させた三人は動き出していた。


「食らいやがれ!『紅炎魔弾(こうえんまだん)』の炎っ!!」
ソウに飛び掛った三人の黒ずくめの男たちは、紅い炎を纏ったソウの一撃でぶっ飛ばされた。
その威力にたじろぐも、すぐに新たな黒服たちが背面から飛び掛ってくる。
「後ろからなんざ、古典的なんだよぉ!」
しかしその行動を予期していたらしいソウは、上体を勢いよくひねりぐるりと反転、
その手にあった炎を鞭のようにしならせ、黒服たちを一撃の下に叩き伏せた。
「へへへ、まだまだ足りねえぞ!!」


「セイヤアアアっ!!」
ギンの雄叫びとともに、緑の旋風を纏った竹刀が黒服の横腹を切り裂く。
吹っ飛んだ人間に変わり、四方八方からギンを抑えようと黒服たちが飛び掛る。
「ちっ、『旋風轟転切り』っ!」
なにかの技のようなものを口に出し、回転切りの要領で竹刀を振り切る。
その動きに合わせて緑色の風が発生し、ギンの周囲を取り巻いてリング状に形成された。
「セイヤアっ!」
形成されたリングが竹刀で断ち切られると、先ほどまでリング状だった風が一瞬で形を崩し、
すさまじいまでの速度で、周囲一帯へ吹き荒れる。
飛び掛ろうとしていた黒服たちは、全員旋風に絡めとられて吹き飛んでいった。
「円陣…一本、と」
竹刀を振り下ろし、ギンはつぶやく。



「『蒼炎光波(そうえんこうは)』、ストライク・バニッシャあああああああ!!!」
セツの右手に、黒服やソウのものとは違う、蒼い炎が絡みつく。
グローブ状に纏った炎を伴い、セツの拳が黒服めがけて飛んでゆく。
「どっせえええええい!!」
猛烈なまでのアッパーカットに、黒服は二階まで吹き飛ばされ、そのまま二階に投げ込まれ、派手に倒れた。
「おっとお、隙なんてやらせっかよ!『蒼炎光波』、レイ・ブレーードっ!!」
セツの叫び声で蒼炎は形を変え、揺らめく剣となる。
その瞬間に飛び掛ってきていた黒服に向け、蒼剣の一閃を叩き込む。
その一撃で、黒服は横殴りにぶっ飛ばされた。
「うっしゃあ、止めといくかぁ!『蒼炎光波』、クエイクウェーブ!」
右手に握り拳を作り、瓦割りまがいの体勢で停止する。
直後、セツの右手に幾重にも重なる蒼炎のリングが浮かび上がる。
「ウェェーーーーーーーーーーーーーイっっ!!!!!」
雄叫びと共にリングを伴う右手を、床へと打ちつける。
瞬間、重なっていたリングが分離、それぞれ膨張し、水の波紋のように高速で流れてゆく。
宙に避けた者も、斜めに飛んできた蒼炎に吹き飛ばされ、全員が壁に打ち付けられて沈黙した。
「うっし、ジ・エンドっと!」



「…なあ、ユウ、マナ」
「「何?」」
「……これ、現実だよな?」
そんな三人の状況を、リクたちは呆気にとられたまま見ていた。
「……ってかあいつ、あのラジオの質問に答えられたよな?」
そう言われて、ユウは昨日のラジオの発言を思い起こす。
――*――*――*――*――*――*――
《それは多分、ある種の超能力なんじゃないかな?正直なところ、俺にもわかんない、ってのが現状なんだ…》
――*――*――*――*――*――*――
「…ホントだ。なんであの時、分からないとか言ったんだろ…?」
思案する間にも、三人は戦いを続ける。
と、自身の相手を全員片付けたらしいセツが、飛び退ってユウたちの前に着地した。
「ふーっし、これで全部かね、っと」
額の汗を拭うようなしぐさを見せるセツに、リクが問いかける。
「セツ…お前、その炎、なんなんだよ?!」
「まあまあ、んなキレ気味になんなって。……終わったら、説明するよ」
その一言だけ言うと、セツは別の方向へ向き直る。
「…おい、セツ?」
今度は反応がない。否、反応をしていない。
無言のまま立つセツをリクが呆然と見つめていると、突然セツが声を放つ。
「どういうつもりだ…アンタ」
「はっ?」
いきなりの声に驚いたユウたちは、声の向けられた方向に目をやる。
「どうもこうもないさ…私らはただ、偉大なるあのお方の力を見せつけようとしている。
それだけの話さ」
セツたちの目前には、黒いトレンチコートを格好よく羽織った
一見すると中年のような男性が立っていた。
「しかし、驚いたよ…。まさかこんなところで『蒼炎のコネクト』に遭遇するとはね」
「……俺のこと、知ってるのか」
男の声に答えたのはセツだった。
「セツ…さん?」
ユウがセツの名を呼ぶ。しかし、先ほどのように返事は返ってこない。
セツはただ、男を一点に見つめる。
「俺は」
と、先ほどまで何の返答も返さなかったセツが口を開いた。
「俺は……セツ、なんて名前じゃない」
「「はあ?」」
いきなりそんなことを言われたので、ユウとリクはそろって固まった。
「その反応を返してくれるのを待ってたよ…」
予想通りにことが運んだらしく、セツが一人苦笑する。
あっけにとられる二人をよそに、セツは説明を続ける。
「今言ったとおり、俺の名前はセツなんかじゃない。
……『コネクト・バルダーディナス』。それが俺の名前だ」
まるで外国人のような名前に、二人は呆然とするしかできなかった。
「こんな名前だけど、俺はれっきとした日本人だよ。『world saver』に、別の名前をもらったのさ」
そんなこといわれても、といわんばかりに眉間にしわがよる。
横目で確認していたセツが笑うのを見て、リクがなんか負けた感じに浸っていた。
「雑談は終わったか?」
そんな会話に男が割ってはいる。
「ああ、もういいぜ。……じゃ」
「よし」
双方互いの意図を理解し、戦闘体制をとる。
「大人を舐めないほうがいいぞ、ガキがっ!」
一瞬の激昂の後、男の姿が消える。
「…『風』の異能、『疾風打(しっぷうだ)』か……へっ!」
一言で愚痴を吐くと反転、セツが右腕の蒼炎を自身の後方に振るう。
陽炎の揺らめきのように、男がセツの真後ろで姿を現し、にっと笑い、また消えた。
「だーもううっとーしい!ユウリクマナ、伏せい!」
かなりの早口で指示を出し、自身は直上に跳躍する。
一連の動作にあっけにとられていたユウたちだったが、指示を思い出し伏せる。
「『蒼炎光波』、ニトロスパイクっ!」
上空で右足に炎をまとい、そのまま地面へ蹴りを入れる。
その動作に直結し、幾重もの衝撃波が周囲一帯に響き渡る。
衝撃波に揺らされ、リクは全身の骨がいやな音を立てて軋むような錯覚を覚える。
するとまた、陽炎が揺らめく。
「そーこーかあああああっ!!」
今度は技の名を叫ばず、蒼炎で形成された巨大な拳を男に向かって放つ。
「んふふふ…まだまだ子供だねえ」
しかしその拳は男に当たることはなかった。巨大な炎の塊が柱の一つに激突し、粉砕する。
「うっげえ……やば、公共物壊しちまった」
全身で引いたポーズをとり、隙ができたわき腹に裏拳が叩き込まれる。
「ぐほっ?!………なんてな!」
だがその一撃も、セツの腕が阻んでいた。その腕が男の手をガッチリつかみ、
腕全体を使い男をホールドする。
「ほう……接近戦はずいぶんと得意みたいだね。感服だよ」
「そりゃどーも。で?どうせこの後中距離戦ってオチなんだろうよ。
大人はワンパターンだから困るんだよ……」
セツがやれやれ、というフリを見せる。しかしそれをさえぎるように、
男が不敵に笑う。
「そうか……なら、私が君の固定概念を覆してあげよう!」
「何っ?」
「『風よ、すべてを裂け』っ!!」
男が叫んだわずか0.6秒後、周囲の空気がざわめき始める。


「………この風のざわつき方……あの男か?」
別のフロアで戦闘を終了し、セツの動きを静観していたギンが、唐突に言う。
「あの男……お前と同じ風使いだな。気流の変化、わかるみたいだな」
その言葉には鼻を鳴らして答えるギン。
「……ともかく、セツがどう切り抜けるか、だな」


(この気流変化……俺は相殺できるとして、相対距離的にも近くにいるやつらが危険だ!
今近くにいるのは…………っは?!まずいっ!)
一瞬で長い思考を纏め上げ、声で支持を伝達するために口を動かす。
が――――口を動かすタイミングが、コンマ数秒、遅かった。
「ユウリクマナふっ―――」
3人を視界に入れたときには、もう……。



「「「うわああああああああっ?!!」」」
セツが指示するよりも早く、男の放った風が届いてしまった。
ユウたちの体は簡単に持ち上げられ、地に着いている、という安心を消し去る。
さらに、一度気流に乗っけられたせいで、そのまま横殴りの風に吹き飛ばされる。
「っうわああ!リク、前、前え!!」
リクが振り向く。眼前には迫る壁。
瞬間的に、ぶつかるということを悟った。
「っく!」
「えっ?」



ぶつかった。
それも思い切り。
「マナ!リク!ユウーーーっ!?」
セツの顔が、絶句で彩られた。
男はただただ、不敵に笑う。
しばらくその場には、冷たい沈黙が降りた。
その沈黙を破ったのは、瓦礫の煙が消えた後の光景だった。
「うう……痛ったあ〜……」
晴れてゆく煙を縫い、ユウが這いだしてきた。
「な…っは、ユウ!」
セツの顔から、安堵がもれた。
同時に男の顔がゆがみ、舌打ちがセツの耳に響いた。
しかしその二人の表情は、次に出てきた人物の容態で豹変することとなる。
「リクくん!……どうして!?」
マナの悲痛そうな声が響き、セツの顔が怪訝になる。
煙が晴れて、ようやく全景が見えたのと同時に、セツの顔は驚愕を作り出した。
「…………え?」
最初に這い出たユウも、その惨状に絶句する。
マナが必死にゆするのは、頭部から赤いモノを出してぐったりともたれかかるリクだった。
「「―――――――――リクぅ!!!」」
ユウとセツの叫びが重なった。
「いまだっ!」
「げっ!?」
セツが硬直したのを見計らい、男は拘束を振りほどき、セツを蹴り飛ばす。
体制を立て直そうとしたが、どうも力が抜ける。セツはそのまま派手に転げて倒れた。
「ぐっ……てめえ!まさかこれを見越して?!」
その言葉を待っていたといわんばかりに、男が笑みを強くする。
「当たり前じゃないか。そうでもしなければ、こんな広範囲技をむやみには使用しないよ」
セツが鋭くにらみつけ、歯を食いしばる。
―――自分が無力だったという事実を、もう一度悟る。



「リク!リクぅ!…ねえ!返事してよ!ちょっと、なんで寝てるのさあ!!」
大粒の涙をぽろぽろこぼしながら、ユウは必死に話しかける。
そんなユウの声も、リクに届いてるかわからない。
「う…………………ぅうっ………」
その瞬間、ユウの頭の中で何かがはじけた。



「うわああああああああああああああああああああああっっっっっ!!!」
突然の叫び声に、セツと男が身をこわばらせて反応する。
「今の声…………ユウ?」
とっさに、ユウの方向へ首を回す。


「………………は?」
そのとき、セツは目の当たりにした。
視界のすべてが、腐りそうなほどの黄金色に染め上げられている。
その中心には、
「……な、ユウ…?」
先刻叫び声をあげた、ユウがいた。
その目を、金色に爛々と輝かせて。
頬をつたう涙さえも、金色に染め上げて。


そして、その右手に――――――金色に光り輝く炎を纏って、
ユウは立っていた。




その毒々しいまでの金色の光は、上階にいたソウたちの目にも
まぶしいほどに届いていた。
「なんだ…この眩しいのは……?」
ギンは目を細め、周囲を見回す。
影で暗い場所さえあるものの、金箔を張り巡らされたかのように周囲が
金色一色に塗りつぶされていた。
そんなことはお構いなしに、ソウはただユウを見やる。
「何だ……?この…見たことないチカラは…………」
その光は、ソウにとって見慣れのない光。




「―――――――――――――――――――――――」
先ほどから、ユウは何一つ動かない。
セツが注視している、普段の彼女なら反応を返すであろうこの状況で。
セツは注視をやめ、先ほどまで真っ向から対峙しあっていた男のほうに目をむけ、仰天した。
先ほどまで余裕さえ見せて笑っていた男が、震えていた。
「………き、貴様……!な、な、なぜ、『金色』のチカラを……?!」
おびえた様子で、うまく呂律が回っていない。
そして、そんな男の問いかけにも、何一つ動向を―――――見せた。
コツッ、コツッと靴を鳴らし、数歩前に歩んだ。
「ひ、ひぃあああ!く、くるなあ!この、こ、この小娘があああああっっ!!」
明らかに、今のユウにおびえていた。
そんな男を尻目に、ユウは無言で右手を上に上げて、軽く振った。
その、たった一つの動作。
そのただひとつが、男のみならず周囲さえも飲み込む、巨大な金の火柱をうちあげた。
その凄まじすぎる熱波の中で、セツの目はそれを捉えた。
絶望した表情のまま、身を溶かしてゆく、あの男を。
消える節目、男がつぶやいたのは誰かの名か。
奇しくもその名を聞けたものは、誰もいなかったが。



――*――*――*――*――*――*――



空も茜に染まった帰り時。
「………………………む?」
ぱちり、とユウが目を覚ました。
周りは屋外で、空も赤色。いまいち状況の整理が追いつかなかった。
…ふと、横を見やる。
「………んごっ、ぐぅ………」
ひざを立ててその上に肘を置き、頬杖をついているというヘンな体制で、
セツが眠っていた。
ますます状況がわからなくなって思わず、
「はいっ?」
と声を出してしまった。
その一言で、今の今まで気持ちよさそうに寝ていたセツが目を覚ました。
「んが?……おーユウ、目ぇ覚めたんか、っよいっと!」
がばっと起き上がり、周囲を確認する。
「……ありー、全員かえっちゃっとるよ。薄情極まりねー」
そういわれて、改めて周囲を見渡す。
たしかに、今ここにはセツと自分以外誰もいなかった。
マナも、ソウも、ギンも、リクも。
………ん?
「あ、ああああっ!!」
突然大声を出したので、セツが派手に飛びのいた。
「どのあっ?!……どした、ユウ」
「り、リクは?!セツさん!リクはどこですか?!」
その言葉をきき、あっ、という顔になる。
それと同時に、背後から声がかかる。
「よお、俺なら無事だ」
聞き覚えのある声。ユウが勢いよく振り向くと、
「………っリクーーっ!!」
ユウが抱きついた。いきなりだったので、生きていたリク本人も動転する。
「おーやおや、おあついこって」
セツが思わず苦笑をもらすと、その横から声がかかる。
「まったくだよ。見せ付けやがってよー」
腕を組んでむすったれてるソウだった。
「あれま、帰ってなかったのな」
「コネク一人じゃ、なんかいろいろアブねえしな」
「オイまて、そりゃどういうこった」
「ベツニナンデモナイヨー」
いつもどおりの会話を交わしていると、不意に声がかかった。
「あの、セツさんにソウさん」
「「ん?」」
「その……リクのこと、ありがとうございました!」
固まった。
セツとソウが、凍ったように固まった。
そんな二人を見て、ユウとリクも固まった。
そして、4人で笑い出した。
日常の風景のように。


ひとしきり笑い飛ばした後、セツが帰宅を促す。
「まー、今日はいろいろあったしな!今日は二人とも、休んどけ!」
「…ん、んじゃあ」
「お言葉に甘えさせていただきます」
幼馴染同士、そろって帰宅していった。



二人が見えなくなるまで見送っていたセツも、家路につくべく
振り返る。が、進まもうとしない。
しばらく立っていると、ソウが横に並んだ。
そのまま、ならんで歩き出す。
「……いいのか?」
「なにが」
あの時と同じ、真剣な口調になって話し始める。
「ユウの炎の件だよ。…本人のためにも、話しといたほうが」
「いや」
ソウの話は中断される。
「今日はじめて『異能』を見たやつに、四の五の言ってもわからんさ。
それに、あいつらが興味を持たない限り黙っとけばいいさ」
「そんなもんで済ます気か?!『異能』の情報が1ミリでも流出すれば、国家的問題だぞ!」
「だから何も教えなかったんだろーが。
あいつらが『超能力者を見たー!』なんて騒いでも、『どうせ妄想話だろう』で片付くよ。
…ギンはもうセーバーからの規約も知ってるだろうし、
ユウ本人は使った記憶がない。流出はありえないさ」
言いくるめられて、ソウは黙り込んだ。
「……レポートは俺が書いとくよ。どうせコルソーは書きたくはないだろ?」
「…………ああ。今回も、任すよ」
「オーライ」
意味深な会話を残し、セツたちもまた、家路についたのだった。




そろそろ、日も落ちる。
一番星が、ちらちらと輝いていた。



―*―*―*―*―*―*―



「……うし、報告書送付、っと」
深夜、セツの部屋。セツがパソコンをカタカタいじっていて、今まさにそれが終了した。
「はー、星川のあれがインパクトありすぎたな……」
いじるのをやめ、背もたれにもたれて、一人昼の出来事を思い起こす。
(……まさか、一番開花率が低いと踏んでいたユウが一番乗りたあな…。
でも、リクも雪原も発現直前の症状が出てるしな。そろって開花するのもすぐ…かな?)
「……ま、いいや。もう寝よ」
パソコン前の席から立ちあがり、布団に向かおうとする。
すると、「only my railgun」のメロディ(というより原曲)が携帯から流れる。
「ん?この音は………ああ、雪原か。
なんやこんなヘンチクリンな時間帯に……」
ブツクサいいながら、届いたメールを確認し、驚いた。
「………『手が凍った』?!……………………ふふっ、ふふふ………」
布団にねっころがり、返信を打ち込みながら不敵に笑みを漏らす。
「……さあてリク、出遅れたのはお前だけだ。どうするよ……くくっ」
誰もいない部屋に、セツの笑い声が響いた。



ー**********ー



中間報告書
報告・および始末書
5月28日 アヤセスライドモールにて戦闘行為発生
コネクト、コルト・ソーコム、シルバー三名により撃退
同現場にて、サーチ状態にあった桜流学園生徒「星川 優」の異能発現を確認
以降、頃合を見て異能の概要、詳細を口達するとする
同現場にて、上記にある「星川 優」が未確認の異能を発現したことを確認
資料映像を撮り損ない、本人も発現法を忘れた模様
よって現時点では、異能の正体を断定することは困難と判断
以降、本人意思の発現があった場合、早急に資料をそちらに送る次第とする
以上

                   world saver 宛
      コネクト・バルダーディナスより

追記
今回の騒動により、マークしていた残り二人も開花が迫っている様子
要注意として監視強化を提案いたす





              第1幕 完
                    第2幕に続く


*********
やっとこさ更新しゅうりょーう!
書いてる最中に仮面ライダーオーズのコンボテーマ歌いまくってたのは内緒ww
さて、大体これで1章の大まかな世界観はすべて出しました。
ここから亀ペースでずるずる引きずりながら物語は進んでいきますので、
騎士道以上に長くなると思いますw
まあ、ナイツロードのほうはあんだけ書いてもラノベ一冊には足りてないと思いますがねwwww
今回はラノベ一冊分はかけるようにがんばっていく所存ですが…
終わるころには多分高校おわっとるな、うんwwwwwww
そんじゃ、今回はここまでです。
ではでは ノシ