コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

短編 ありがとう



あるところに、裕福でも貧困にあえぐでもない少年がおりました。
至って普通の暮らしを満喫し、いたって普通の学園生活を満喫していた彼は、ある日興味本位で
いつもの帰り道をはずれ、裏道へと寄り道をして帰ろうと思い立ちました。


ふと小さなゴミ捨て場に目を留めると、薄汚れた小さな女の子の姿をした人形が捨てられていました。
捨てられていたといっても、きれいにしてやればまだまだ新品で通るはずの、ほとんど痛みのない人形です。
深紅の瞳がほほ笑むそのあどけない顔を見て、なぜか少年は心が痛みます。
思い立った彼はその少女の人形を拾い、家へと持って帰りました。


きちんと手入れをしてやり、関節の調整をし、重心の調整をして飾ってやると、それはそれはかわいらしい人形でした。
ほんのりと白い肌と、藍色の髪の隙間から除く真紅の瞳。無垢(むく)に微笑むよう造形された顔は、少年を思わずドキマギさせます。
いつまでも大切にしてやろう。そう少年は心に決めるのでした。


「だめだ!こいつは……こいつだけは絶対連れて行く!」
「いらんと言ったらいらん!いつまでも子供でいられると思うな!」
それから数年がたったある日、少年は住んでいるマンションを引っ越すことになり、それを期に部屋の荷物を一新することになりました。
ところが、当たり前のように少女の人形を持って行こうとしたその時、父親が猛反発したのです。
いつまでも赤ん坊のやるようなことをするな、と父親は言いますが、少年はかたくなに反対します。
「ったく…………貸せ!」
「あっ、父さんっ!?」
その時、父親が唐突に少年が握る少女の人形をひったくったかと思うと、なんと窓から捨ててしまいました。
激怒した少年が、父親を殴りつけます。が、それを意に介さずに荷物まとめを再開する父。
泣くことさえ忘れた少年は、無我夢中で家を飛び出し、捨てられた窓の直下にあった茂みへと人形を探しに行きました。
幸いにも茂みのすぐそばで倒れていただけでしたが、拾い上げてみると、それはそれはひどいことになってしまっていました。
高所から砂地に打ち付けられ、へこんでしまった髪の毛のパーツと無垢に微笑んでいた顔。
衝撃で吹っ飛んでしまったのであろう膝から下はなく、左の手も無残に折れてしまっていました。
そこで、少年は初めて目から涙をこぼします。
「…………帰ったら、ちゃんと……ちゃんと、直してやるからなっ」
人形をそっとポケットに入れて、少年は片付けが終わろうとしている旧自宅へと戻りました。


引っ越しも終わり、そろそろ年も開けようかという寒い日のこと。
自室で一人ベッドに寝そべっていた少年は、ふと枕元にある本棚を見上げてみます。
そこには、ところどころ破損が残っていながらも、ほとんど元の状態に修復された少女の人形が立っていました。
彼女のためだけに独力で修復方法を学び、何とか元の形に近い状態へと戻してあげていたのです。
(……でも、あの顔だけはどうにもならない、か)
ですが、かつて笑っていた顔は歪んでしまい、口は真一文字に引き結ばれていました。
ほほえみを浮かべていた目元も、口の形の影響か、ただ澄ました顔になってしまい、どうしようもなくむなしい気分になります。



数年がたち、試行錯誤を重ねても、どうしても表情は元に戻りませんでした。
やがて少年には思春期が訪れ、自身の感覚に疑問を持ち始めてしまいます。
ふとある日、部屋の模様替えをしようと思い立ちました。そして真っ先に目についたのは、少女の人形でした。
冷たく部屋を睥睨(へいげい)している深紅の双眸(そうぼう)が、なぜかすごく気に食わなく感じました。
「………………どうせ、もう直らないんだよ」
そう吐き捨てるようにつぶやくと、少女の人形を引っつかみ、押し入れの隅に設けてある小物入れへ突っ込もうとしたときです。
『ありがとう』
どこからか、そんなささやきが聞こえてきました。はっとした少年は手を広げると、そこには少女の人形の姿。
ただ一つ違うのは、その顔が純真無垢な、明快な笑みを浮かべていたことでした。
『ずっと大切にしてくれて、ありがとね』
また、小さくささやく声。今度こそ少年は、声の主を悟ります。そのまま手の内の人形に目線を落としましたが、
すでに人形は笑っておらず、ただ冷たい目で少年を見つめるだけでした。
ですが、不思議といやにはなりませんでした。代わりに口から出たのは、回答の言葉。


「……こちらこそ、ありがと。おれと一緒にいてくれて。……これからも、一緒だぞ」
小物入れに片付ける代わりに、そっと手前に飾って、少年は押入れを閉じました。
たとえ場所をともにしなくとも、その感謝は聞こえるから。



*********


うっはぁ、キモォーイ!!
書いてて顔から火が出そうでした(真顔)。まったく、我ながらおっそろしい核ミサイルを撃ってしまったものですw


ちなみにこの小説を書いた経緯を話すと、


武装神姫のポーズを考えている途中、ふと霊的な話を思い出す

そういえば、使い込まれたものには魂が宿るんだっけ、的な考えを浮かばせていると、ふとどこからか「ありがとう」と
聞こえた(気がしただけですがw)

大切にされたものが最後に「ありがとう」って言ったら、なんか癒されるよなぁと思うと同時に、なぜか小説ネタが浮かぶ

以下本文


となりました。
最初は恩返しをテーマに書こうと思いましたが、思いつくまま書いていくうちになぜかテーマがずれてしまいましたw
つまり何が言いたいかといいますと、ものは大切にしようぜ!プラモ壊しまくってる自分が言えることじゃないけど!!


それではまた次回〜 ノシ