コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

最終回、行ってみましょう!(カルカーロ)

こんにちは、たまには真面目な挨拶をしようと思いたったコネクトにございます。
最終回なんですし、たまにはこんなのもいいでしょう?(したり顔
まぁ、長い間ほったらかしてたやつがいうことじゃありませんが…w


いきなりですが、個人的には今回、つまり第一章のテーマは「信頼」だと思います。あくまで個人的にですが、その理由は本編で。
そう当てはめると、第二章は「愛情」、第三章は「意志」ですかね?
まぁ、第3章はまだ地盤が固まりきってないので何とも言えませんが、おそらく意志を軸に進むと思いますー。


さて、先述の通りに今回でリメイク版カルカーロの戦士たちは完結と相成ります!
ですが終わるわけではありません。この後にはまだ第3章も構えていますし、さらに4章の構想m…すんませんなんでもないです。


ちなみに今回、マビノギの時のようにテーマ曲的なアレを用意しましたw
曲は「僕は想像する」。
再生は
http://www.youtube.com/watch?v=NsHgFUO8lao
http://www.nicovideo.jp/watch/nm20662521?ref=search_tag_video
でどうぞー。
再生するタイミングとしては
「――自分の命がこんなにどうでもいいものだと思えたのは、いつぶりだろうと想像しながら。」
からがいいかと。
では長らくお待たせしました、本編開始しますー。


*********


#Last 血戦の果て


相棒がひときわ甲高く吼え、最後の数メートルを一気に駆け上がる。
タイヤが空転する音を耳に感じながら、俺はビルの屋上へとたどり着いた。正確には、後ろにアイシャを乗せてだが。


だむ、という着地音を引き連れながら無事に平坦な床へと降り立った俺は、改めて周囲の惨状に気が付いた。
めちゃくちゃになった床がところどころえぐれ、コンクリートをはがされ、一部に至っては大穴を開けている場所もある。
何より俺の目を惹きつけたのは、先ほど俺が邂逅したものと同一のものであろう超大型機甲種が、ぼろぼろの体躯を
横たえていたことだ。いったい誰が――という推察は、すでに終わっていた。
おそらく、ここにいたのであろうアハトとゼクス。その戦いの余波に巻き込まれたのかは不明だが、ともかく
二人の攻撃によって撃破されたと考えるのが妥当だろう。
「……すごい光景ですね」
バイクから降りたアイシャが、茫然とつぶやく。まったくもって同感だが、俺にはまだやることがあった。
「…………アハトさんは、一体……」
その問いかけは、遠い言葉で帰ってきた。
「―――さっさとくたばれ、このバカ兄貴いぃぃぃぃ!!」
「―――とっととくたばれ、この大バカ者おぉぉぉぉ!!」
二重の叫びとともに、バシィ!という殴ったのか殴られたのかわからない音が響いた。音が聞こえたのは、この上。つまり――
「――こいつの上か!」
バイクを停車させて、俺は超大型機甲種へと駆け寄った。甲板と思しき場所に上がるために設けられていたらしい
段差をジャンプで駆け上がり、たどり着いた頂上で―――俺は首を傾げた。
「うおおおあぁぁぁっ!!」
「ずええりゃあああっ!!」
先ほど聞こえてきたサウンドは、どうやら二人がなぐり合っていたから発生していたものだったようだ。が、
その当人たちの表情は、なぜか鬼気迫る笑顔だった。
とにかく、どう形容すればいいのか、まったくわからない光景だった。あえて言うならば、殴り合いという名のスポーツを
やっているかのような、そんな笑顔だった。
ぽかんと見つめている俺に疑問を持ったのか、アイシャもこの光景を覗きに来た―――直後に硬直する。
口みたいな栗――じゃない、栗みたいな口になりながら、眉をひそめてこの光景を呆然と見ていることから、彼女も
この状況が呑み込めないようだ。
とにもかくにも、彼らを制止しなければ現状を把握できないと踏んだ俺は、甲板に足をつけて二人の場所へと走り出した。



「「くたばれええぇぇぇぇぇっ!!」」
「ストオオォォ―――――ップ!」
勢いよくクロスカウンターでも決め込もうかとしていた二人の間に、これ以上ないくらいにいいタイミングで滑り込めたのは、
奇跡といっても過言ではなかったと信じたい。
俺の制止が効いたのか、二人が拳をぴたりととめてこちらを見やる。かたや驚いたのかうれしいのかわからない表情を、
かたや驚愕に満ちた表情を返されたのはちょっとばかり納得いかなかったが、とりあえず止めることには成功したようだ。
ふぅと一息はくと、間髪入れずに髭の中年男性――とどのつまりゼクスが口を開く。
「……お、思ったより早かったのだな、少年」
まだ驚愕の残滓がのこる顔を不敵にゆがませ、こちらに向けてひらと手を振る。まるで、今のは見なかったことにしろ、とでも
言わんばかりに。
複雑な表情でそちらを見やると同時に、逆方向からアハトの声。
「こ……コネクト、それにアイシャ!?もう、ここまで……?」
アハトもまた、少なからず驚いていたようだ。まぁ、その理由は後ろから来た少女に向いている割合が大きいのだろうが。
「に……兄さん、大丈夫ですか?!」
彼の顔面傷だらけな彼の容体を見て、アイシャの顔が若干青ざめていた。だばだばと甲板に上がり、兄と呼ぶ青年のもとへと駆け寄る。
「おう、このくらい大丈夫さ。……しかし、どうやってここまで?下は、こいつに吹っ飛ばされてたと思うんだが」
アハトのさすこいつとは、つまるところ足元で死んでいるこの大型機甲種のことだろう。
ところどころ黒こげになっているそんなものの上で殴り合っていたあんた達こそどうやったんだ、と聞きたい感情を押しとどめ、
説明のために口を開く。
「俺が、バイクを使って外壁を突っ切ってきました。おかげでバイクも俺も、ボロボロですよ」
「…………そう、か。お前がアイシャリアと……」
なにやら感慨深く頷くアハトが、不意に「ぷっ」と噴出した。何がおかしいのかと突っ込もうと思ったが、その直前に
ゼクスが先に突っ込みを入れる。
「何がおかしいんだ、アハト?」
「い、いや……。さっき言ったろ?こいつは特別だって」
「……言っていたな。それがどうしたんだ?」
「そのままさ。兄貴も、こいつの行動の偏屈さがわかったろ?」
面白おかしく話すアハトだったが、文脈の一部分が胸に引っかかった。
―――今、彼はゼクスのことを何と言った?
聞き違えでなければ、彼は間違いなく、目の前の敵を―――ゼクスを、自分の兄だと、そう言った。
まさか、そんなはずがない。そんなことがあるのは、どこかの下手な小説家崩れが書いたシナリオの中だけだ。
「……まぁ、確かにな。さすがに、ここの外壁をバイクで駆け上がる大バカは、お前以外にはいないだろうし」
「おい!まぁだバカって言い足りねえのかよこのバカ兄貴!」
「は、冗談さ。もう子供みたいにバカバカ言うつもりはない」
いや。
いや、確かに今言った。ゼクスのことを―――兄貴、と。
「……あの」
「「ん?」」
同時にこちらを向かれて委縮しつつも―あの鋭い眼光を向けられて怯まないやつはいないと思う―、俺は恐る恐る聞いてみた。


「二人は……兄弟、なんですか?」
俺の一言で、彼ら二人は同時にお互いの顔を見合った。そして、異口同音に「そうだ」という答え。
そこで、俺は久しぶりに自分の勘違いをこっ恥ずかしく感じた。
いや、そもそも思い返せば、最初からマークゼクスが「敵」だという確証なども存在しなかった。
もし彼がアハトを拉致した理由が、仲間に引き入れるためだったら?
ここに来た理由が、アハトを説得するためだったら?
この場所の情報を俺に流したのは、もしや俺のこともついでに引き入れようとしていただけだったら?
思い返せばきりがない。羞恥で熱くなる顔を片手で覆い、赤いであろう顔を必死に隠そうとする。
「……まぁ、腹違いという意味では、本当の兄弟ではないがな」
「でもま、同じ場所で、兄弟として育てられたんだ。誰も俺たちのことを兄弟じゃない、なんて否定できないし、させないさ」
その一言に、俺の中の何かが反応してしまった。先ほどの光景を思い出しながら、俺は感情のままに言葉をぶつける。
「で……でも、アハトさんっ!ゼクスは……ゼクスは、俺たちの敵なんじゃ!?」
その瞬間、しまったと心の中でつぶやいた。いや、叫んだと言ったほうが正しいだろうか。
過去の言動や、俺との会話をかんがみれば、明らかに彼が、ゼクスが敵だという証拠はないのだ。それを、感情だけで
敵だと決めつけてしまった。ひどい性格だと痛感し、直そうと誓う。
一方、そんな俺の内心を知らないマーク兄弟は、いたってのんびりした会話をしていた。
「…………敵?そうなのか、兄貴?」
「おま……はぁ。なぜそこで俺に振るんだこのバカ弟。確かにそれっぽく振る舞ってはいたが」
「ならコネクトが間違えたのは兄貴のせいだろ。謝れよバーカ」
「兄にバカというバカのいうことは聞けんが、まあ確かにこちらにも非があるな。すまなかった、少年」
いきなり謝られて、俺はぎくっとする。
「え……あ、い、いや、こちらこそ、勝手に誤解してすみませんでした、ゼクス
そう返した後、不意に彼のことに気が付いた。同時に、彼に関する小さな、それでいて俺にとっては大きなエピソードも思い出し、
恐る恐る彼に聞いてみた。
「……覚えていますか?あの時……15年前のアクセシアで、あなたがちっちゃな子供を守ってたこと」
「む?…………あぁ、あのときか。そういえば、そんなことも……ってまて、もしかして、少年は……?」
どうやら、覚えていてくれていた。気づいてくれたらしい。伝説の英雄に覚えていてもらえたとは、という感慨と、
してやったりの感情が同居した声色で、俺は不器用にはにかんで返す。
「えぇ。……あの時は、ありがとうございました。今さっき、恩を仇で返してしまいましたが、ね」
なんのことだかわからないアハトとアイシャをよそに、ゼクスは一人驚きと歓喜が混じったような、複雑な表情をしていた。
次いで、そうかとしきりに首を縦に振る。
「そうか、そうだったか。少年がまさか、あの時のちびっこだったとはな。いや、うむ。大きくなったものだ。
可愛らしかったあのチビが、今ではアハトの、なぁ……」
なぜか、彼が泣きそうな表情になっていた。それを見たアハトが、ここぞといわんばかりに小突く。
「兄貴、何涙目になってんだよ?ガキ一人救って、そこまで感動するもんかよ?」
「感動するとも。お前にはまだわからんだろうな」
そんなゼクスの表情を見て、俺もどこか感慨深くなる―――が、直後に異変は起きた。
「ふーん、そんなもん………………―――っ!?」
突如、アハトがその場で膝をついた。あまりに突然の出来事だったので、俺たち四人はそろって硬直する。
彼がその場でうずくまっていたのは一瞬のことだったが、首をもたげた彼は、明らかに顔色を悪くしていた。目ざとく気づいた俺は、
遠慮がちに声をかける。
「……どうか、したんですか?」
少しの間返事は帰ってこなかったが、やがて独り言のように、アハトはつぶやく。
「…………なんだよ、この光景。なんで俺がカプセルに入ってるんだよ。なんで脳ミソいじくられてんだよ!
……なんで、あめがいるんだよ。なんだよ……TAH-08って……このタグは。
俺の名前は―――そんな、機械みたいな名前じゃねえっ!!!」
最後の叫びは、どこか悲痛なものを含んでいた。ただならぬ気配を感じた俺は、いたたまれずにゼクスへと視線を送る。
――あなたは、兄弟のあなたは、何か知っているんじゃないか?
その思念は、どうやら無事に伝わったようだ。アハトに近寄り、彼の瞳を見据え、重く、低い声で囁く。
「……覚悟して聞け、アハト」
「――――兄貴、知ってるんだな!?教えろ!……なんなんだよ、この映像」
「落ち着け、説明する。……が、一つ確認だ」
再度、強い瞳が彼を射抜く。
「……お前は、何者だ。記憶を知る前のお前は、何者だった」
答えが示されたのは、一瞬の間を置いた、すぐ後だった。
「人間だ。……俺は、人間だ」
アハトの言葉は、ゼクスをうなずかせた。すくと立ち上がったゼクスの、その背中。
そこが、突如として盛り上がった。何が起こったのかを理解する暇もなく、くたびれたコートの背中側が千地に引き裂かれ、
開いた大穴からは、左右三本ずつ、計6本の、昆虫の脚部に似た漆黒の翼が生えた。その形状は、少なく見積もっても
横にいるアイシャのそれと、色は違えどほぼ同じ形だった。
禍々しく、それでいて鋭利な翼をはためかせながら、ゼクスは口を開く。
「―――俺は、俺たちは人造人間『ハウンド』。少年もアイシャも、この単語は知っているだろう?」
うなずく。当たり前のことだ。ハウンドといえば――
「4種族大戦危機の際、ヒューマン陣営が極秘裏に開発した、人を駆逐する人のこと……。正式名称は『Human Of Ultimatum No dead』。
意訳すれば『死ぬこと許されぬ究極の人類』。……と、アークス研修生時代に聞きました」
怪訝な表情のまま解説した俺に、ゼクスが一つうなずくと、説明を再開する。
「そう。キャストもニューマンも、果てはダーカーも殲滅せんと開発された、ダーカーとヒトの混合兵器の通称だ。
過去に9体製造され、最終的にはすべてが破棄処分となった……と、表沙汰には語られている。まぁ、こうしてまだ生きている個体が
ちらほらといるんだがな。ちなみに俺は『開発コードTDH-06型/決戦用ハウンド:タイプ6号機』。……コードネームを、マークゼクス
まさか。胸中で、俺はその一言しか呟けなかった。
先ほどゼクスが自ら説明した通り、ハウンドというのはヒューマン以外の全種族の殲滅のために作り上げられたとされている。
そしてそのすべては、大戦危機後に廃棄処分とされ、すでに歴史の遺物となっていたはずなのだ。
だが、実際にハウンドとなった彼は、ゼクスやアハト、アイシャはここにいる。
「―――どういうことだよ、兄貴。俺が……俺たちがハウンドって、どういうことだよ?」
アハトはただ一人、自分が人造人間だったこと、破壊兵器だったことを、呑み込めないでいた。
いや、それも当たり前のことなのだろう。人間だと思って生きていたら、実は違った。
よくよく似た、別の何かだった。
そんな事実を突きつけられたら、俺だってあんな状態になる――否、誰だってああなるだろう。
だが、そんな気持ちを掻き消したのは、話を続けようと口を開いた、ゼクス本人だった。
「―――だが、違う」
ゼクスの口から放たれた言葉が、俺の、アハトの顔を引き揚げさせる。
「アハト。お前はさっき言ったな。俺は人間だ、と。……俺はこう考えている。たとえ自分がどんな境遇に置かれていても、
どんな過去を持っていたとしても、どんな人柄を持っていたとしても。……お前が、お前自身を人間だと信じる限りは、お前は人間なんだ」
その一言が、彼の心をどれだけ救っただろう。
その一言が、どれだけ俺を安心させただろう。
「……そうですよ、アハトさん」
つい、口が動いてしまった。安堵は、彼を勇気づけるための言葉に代わる。
「たとえ、兵器として生み出された存在でも。たとえ、本当の意味で人間でなくても。
……あなたは、俺たちが知っている『マークアハト』、『印野エイト』本人です。……違いますか?」
俺の言葉に何かを覚えたらしいアハトが、少しうつむく。が、次の瞬間には盛大な溜息を返してきた。
「……ったく、お前はいつから俺に口答えできるほど偉くなったんだよ?」
「すくなくとも、今はあなたより偉いですよ。……偉い人が下の人を元気づけるのは当然の務めです」
「おーおーそうかい。んじゃ、そのお気持ちに甘えさせてもらいますかな!」
はっきりそう言い切ると、アハトは軽く地を蹴って、俺にサムズアップを向けた―――と思ったら下に向けられた。
どうやら、大丈夫だったようだ。内心でほぅと安堵する間に、ゼクスの顔はアイシャに向く。
「それと。わかっているとは思うが、アイシャリア。お前もハウンドの一人だ」
続く彼の言葉に、俺はまたしても戦慄を覚えた。
いや、ここまでの戦闘を鑑みれば、ましてゼクスとアイシャの羽を比較すれば、その事実はたやすく分かったはずだ。
なのにわからなかったのは、わかりたくなかったからなのか、それとも考えもしなかっただけか。
そんな俺の思惑をよそに、アイシャは静かにうなずく。
「はい。……この体は、作られたものなんですね。そして、ダーカーの血が流れている」
静かに肯定したゼクスが、続けて口を開いた。
「だが、これからの生き方によっては、お前は人間にもダーカーにも、ハウンドにもなれる。すべては、お前次第だ。
お前が信じた生き方をしろ。それが、ハウンドに与えられた最後の使命とでも言おうか」
その言葉に、アイシャは静かにうなずいた。すべてを受け入れてなお毅然とした顔で、やさしく微笑んで見せる。
それにともないゼクスが、今度は俺と、アハトのほうに顔を向けた。その眼は、真剣な色をたたえて。
まるで、何かを懇願するかのように揺らめくハイライトを伴って。
「……アハト、少年。いよいよダーカーは、ある目的でお前たちの街を…………カルカーロを襲撃するつもりだ。
……こんなことをして許しを請うつもりはないが…………せめて、過ちは償いたい。協力しては、くれないか」
物悲しげな感情を含んだゼクスの言葉に、しかしアハトがふんと鼻を鳴らした。
「バカ言うんじゃねえよ。……どれだけの命を奪ったか、兄貴はわかってんのかよ?どれだけ償おうと、失われた命はもどりゃしねぇ。
それをわかって、言ってるんだよな?」
「…………無論だ。俺は、破壊するだけのダーカーとは……駆逐するだけのハウンドとは、違う!」
真剣な面持ちで、兄弟が、二人が互いを見つめあう。やがてふぅと息を吐いたのは、アハトだった。
「……わーったよ。その馬鹿正直すぎて笑える顔に免じて、手伝ってやるよ。……ま、元っから俺は、ダーカーどもをぶっちめるつもりで
ここにきてたんだがな。それが知った場所に来るとなりゃ、好都合だ」
そう言いながら、アハトはにこやかにほほ笑んだ。すでに吹っ切ったのだろう。これならば、俺が心配することもないだろう。
いや、もとから必要などなかったのかもしれないな。そう考えて苦笑しつつ、彼に続いて俺も口を開く。
「そうとなったら、俺たちも動かないわけにはいかないですね。……ゼクス、いやゼクスさん。俺たちを、クルーニクスをここまで
振り回したんです。落とし前つけてもらわないと、何するかわかりませんよ?」
「そのとおりよ。……まったく、アタシたち抜きで、なーに楽しそうなことしようとしてるんだか」
突如降ってきた後方からの声に、俺は振り向いて―――戦慄した。
まさか、なぜここに?どうやって?
そこにいたのは―――カルカーロで俺たちを待ち、静かにアークスとして戦っていたはずの、チアキだった。しかもその後ろから、
アリサもユウナもリクウも、あろうことか全員が出てきたのだ。呆然としつつ、俺はぎくしゃくしながらなんとか言葉をつなぐ。
「な……な、なっ、なんで、チアキさんたちが、ここに…………?!」
必死に紡いだ俺の問いかけは、至極あっさりしたチアキの言葉に粉砕される。
「なんでって、そりゃああなたの船に潜入してきたのよ」
続けて、後ろにいたリクウたちの言葉が次々と降ってくる。
「しっかし、コクトがあんないい船持ってるとは知らなかったなぁ」
「ですね。……まぁ、私はここの突破が大変だったほうがよく覚えてますけど」
「ほんとに!ダーカーも機甲種もごちゃまぜで襲ってくるから、もうへとへとだよー」
ひとしきり感想を述べた後、仲間を代表したのかチアキが一歩進み出てくる。その顔には、どこかあきらめに似た感情が混じっているのが
見て取れた。どうやら、この表情は俺とアハトに向けられた物のようだ。
「……二人とも、そこに直りなさい」
とたん、予想だにしなかった言葉。普段より数段トーンの低い、つまりいうとドスの利いた声。とっさに俺は正座してしまったが、本来は
アハトのように抗議するのが正解なのだろうか。
「お、おい、ルッ」
「言い訳無用!」
「ひっ!」
まぁ、ああして玉砕するのは勘弁こうむりたいが。
俺たち二人が(指示されていないものの)正座したのを確認すると、とたんにチアキの声色が柔らかくなった。
「……あなたたち二人が、アタシたちに迷惑をかけたくないって思っているのはわかっているつもりよ。でもだからと言って、頼れないなんて
思ってもらっちゃ困るのよ。…………アタシたちは、六人で一つのチーム『クルーニクス』よ。そりゃ、簡単にいえる悩みじゃないだろうけど……
だからって、相談くらいはしてほしい」
まるで心の中を見透かされたような気分だ。横で正座するアハトも同じような気持ちなのだろう、顔色がよろしくない。
確かに俺は、ここまでの戦いで誰かを頼ろうとはしなかった。カルカーロ襲撃の際も、政府を頼らなかったことで然り、
ゼクスとの邂逅の際も、仲間を頼らなかったことで然り、アハト追跡の際も、同じく仲間を頼らなかったことで然り。
―――この戦いも、アハトを頼って任せきりにしなかったことも、然り。
はぁ、と心の中でため息をつきながら――かなわないなと思いながら、俺は静かに口を開いた。
「すいませんでした」
思ったより、清々しい声色で言えた。もう少し陰湿な声になると思っていたが、自分自身怒られることに理不尽は感じてはいないようだ。
「……す、すんません」
納得いかなそうな顔をしつつ、アハトも口を開いた。彼のほうも納得していないだけで、理解はしているのだろう。
「わかればよし」という明るいチアキの声で、俺たちは正座を解かれた。
確認したゼクスが、再度口を開いた。
「……さて、問題はどうやってダーカーの侵攻を阻止するかだ。現在、奴らは俺たちが根城としていた超弩級戦艦を『ハイヴ』という根城にし、
近づくものを根絶やしにしている状況だ。すでに俺ともう一人が使用していたハイヴはダーカーのものになっていて、
俺の手でも近づくことは容易ではない」
少々諦めの混じったかのような声に異を唱えたのは、やはりアハトだった。
「なら、俺たちの船で突っ込んでやろうじゃないか。誰のものになっていたにしろ、しょせんただの戦艦さ。
だったら話が早い、外壁をブチ破って」
「無理だ」
が、その言葉は途中でゼクスに切られる。その理由は、すぐに本人の口から語られた。
「……ハイヴという名前は、ダーカーのものとなった戦艦の通称なんだ。すべてがダーカーのためのものに換えられたあの船には、
生半可な攻撃は通用しない」
なるほど、先ほどの諦めたような口はこのことを意味していたのか。腑に落ちた俺は、しかし薄く笑う。
「でしたら、いいものがあります。これを使えば、アハトさんの言ってたことが可能です」
ダーカーが苦手とするもの、すなわちフォトン
俺には、秘策があったのだ。かつて幾度となく襲い掛かってきたダーカーたちを、何度も退けた「壁」が。


 * * * * * * 


「―――見えたぞ。あれが奴らの巣窟『ハイヴ』だ」
目の前には、漆黒色に染まり切った、戦艦に似た形の何かが浮いていた。推進装置の類が見受けられないのにもかかわらず、
虚空をゆっくりと進んでいるのは、ダーカーの力ゆえか。
ゼクスの言葉は、俺の「トレイルブレイザー号」に設置しておいた無線機の向こうにかけられていた。数秒遅れて、すぐに
前方を先行する船――コクトの所有船で、ヒロイックな外見が内心羨ましい「アークセンチネル」という船だ――の主である
コクトが応答する。
≪はい、こちらも視認しました。……予想よりずいぶんと大きいですね≫
予想外だと言いつつも、その声色は余裕に満ちている。先ほどあいつが明示した「秘策」というものに、ずいぶんな自身があるようだ。
その声色に、俺は少しだけ口角を上げる。


  ***


実のところ、俺は少しだけ不安になっていた。
ただ兄貴を追いかけていただけだったのに、気が付いたらこんなに規模のでかいことになって。
いや、客観的に見れば予想できた光景だろう。兄貴がダーカーと、その裏の誰かと繋がっているというヒントは、
そこかしこに散らばっていた。ただ、その種が芽吹く前に踏み潰して、走り去ってしまっただけ。
兄貴と再会して、コクトや皆と再会して、最後の難題を突き付けられて。
俺の胸中は、ただ一つの疑問に埋め尽くされていた。
――――この戦いは、はたしてここで終わるのだろうか。


だが、そんなことを考えている暇はない。すでに、俺は走り出している。
止まってはいけない。
止められることはない。
止まってやるものか。
俺は、俺が信じる正義を討ち果たし、正義の味方として―――。


  ***


≪―――行きますよ!作戦通り、お願いします!≫
「おう、任しとけ!―――いいか!俺たちに失敗は許されない。もちろん死ぬこともゆるさねぇ!命令は二つ。見敵必殺!それと
生きて帰ることだ!!」
コクトの声に、俺は悩みを吹き飛ばすための、威勢のいい声で答える。虚勢を、必死に闘志へと変換して。
これで終わるのだろうか。これで、俺は正義の味方になれるのだろうか。
答えは、誰にもわからない。


 * * * * * * 


「対障害用フォトンフィールド展開。形態は船体前面一点に固定。フォトンチャンバー解放、全出力をフィールドに回す」
切り札を発動し、にわかに騒がしくなった計器類をチェックしつつ、俺は「フォトンフィールド」のコントロールに専念する。
これが、俺の切り札だった。相手が存在をダーカーに変質させたというのならば、それを撃ち砕くための術を持って対抗する。
数刻の後、船体に大きな衝撃が走った。船内を照らす蛍光灯が一瞬で消え、赤いランプの非常蛍光灯に切り替わる。


俺が提案した作戦はすなわち、「フォトンで生成したシールドごと船体をぶつけ、外殻を突き破って突入する」というものだった。
いくら強大な外殻といえど、大出力のフォトンの奔流に巻き込まれれば無傷では済まないはず――という俺の予測は、的中してくれた。
「―――っととと。……三人とも、無事ですか?」
俺の後ろで立ち上がったのは、チアキ、アリサ、リクウの三人。ユウナ、ゼクス、アイシャはアハトの船に乗り込み、
急ごしらえで取り付けたフィールドを使用して、別の場所から突っ込んでくるはずだ。
その間、俺たちはゼクスの言っていた「コア」という物質を探し出さねばならない。
コアというのは、正しくこの戦艦の核と言ってもいい物体らしい。痛みを持たず、ただ侵攻するダーカーを食い止めるには、
破壊するほかないとゼクスは語った。
そしてその役目は、俺たちの肩に託されていた。幾万もの市民を守るため、アークスとして剣を振るう。
そのプレッシャーは計り知れないだろう。事実、リクウの顔が緊張からかこわばっている。
だが、俺は違った。
「……この戦いは、俺のため。俺は、故郷を守る。仲間を守る。―――ついでに、人も船団も守る!!」
決意するようにそうつぶやき、俺はブリッジから直接外に出るための非常隔壁を解放した。
とたん、流れ込む異様な空気と殺気。すでにダーカーたちは戦闘態勢だ。本気でかからないと、すぐに殺されてしまうだろうな。
ふとそう考えると、なんだか笑いがこみあげてきた。
――自分の命がこんなにどうでもいいものだと思えたのは、いつぶりだろうと想像しながら。
「――――さぁ、派手に行くぜ!!」
俺は、剣を掴んで地を蹴った。














小一時間ほどだろうか。それだけしかたっていないというのに、既に俺を含める仲間たちは息を荒げ始めていた。
理由は至極単純。敵が、多すぎるのだ。
屠っても切り裂いても焼いても壊しても壊しても壊しても壊しても壊しても壊しても壊しても壊しても。
ダーカーたちは、壁や天井から無尽蔵にわいてきたのだ。まるで、クローン兵士の大群と戦っているかのような錯覚を覚える。
数十体の「エル・ダガン」が、球場に固まって襲い掛かってきた。とっさにマウントポーチから「キャリバー」をとりだして
刀身でガードする体制に入り、そのまま重量に負けて吹っ飛ばされる。
素早く起き上がって、ふと真横にいた影に気が付いた。
それは、アルバクレイモアを背負ったアリサだった。短くも長い戦いの間でいくつか傷とススのついた顔をふと緩ませ、笑顔を作る。
「……このままじゃ、埒があきませんね」
「あぁ。けど、突破するしかない」
俺の言葉に、同意ですと小さくうなずいた。直後、アリサはとんでもないことを口に出す。
「三人は先に行ってください。ここは、私が食い止めておきましょう」
「な―――――、いま、何て言った?」
俺の言葉をさらりと無視しながら、彼女は微笑んで言葉をつづける。
「……最初にこのチームに入ったとき、なんだこの滅茶苦茶なチームは、って思いました。協調性もなければ共通点もなし、
趣味の共有のためだけに作られたみたいな雰囲気を、私は嫌っていました。
でも、今はどうでしょう。あんなに嫌いだったチームが大好きになって、いつしかみんなを仲間と呼べるようになって、
―――それが、無性に嬉しくて」
誰も、神楽の言葉を遮るものはいなかった。居るとすれば、変わらず襲いくるダーカーたち。
「だから。だから……私のことを、どうか信頼してください。頼ってください。むしろ泣きついてくださってもかまいません。
――――あなたには、信じて頼ってほしい。私は、必ず生きて、合流すると」
その言葉が、不意に俺の背中をやさしく押した気がした。
これだけの戦力差を前に、アリサはバカなことをやろうとしている。本来ならば止めるべきはずの行為を。俺は、
「―――頼む」
それだけ言い残すと、チアキとリクウを引き連れて、その場から脱出した。
「……生きて、帰りましょう」
遠くなる彼女の姿が最後に残したのは、大きな、とても大きな爆音。






長い廊下を、三人だけの部隊は駆け抜ける。
道中で襲い掛かるダーカーを撃ち貫き、切り裂き、えぐり散らす。
息の合った連係は、ダーカーの付け入るスキを全く乱せないほど、強固なものだった。
だが、それも長くは続かない。たった三人で何千の部隊の只中を突破しようなど、余程の馬鹿がやることに違いない。
―――そのバカは、ここにいる俺なのだが。自嘲気味に胸中でつぶやき、キャリバーから持ち替えた「アルバグレイヴ」で、
フォトンアーツ「スピードレイン」を発動する。巻き込まれたダーカーたちがあえなく霧散するが、すぐに行く手は阻まれてしまう。
「えぇい、減らないな!」
クウガ毒づきつつ「ディフューズシェル」を発動。前方広範囲にばらまかれたマイクロ弾頭が大量に突き刺さり、ハチの巣になった
ダーカーたちの後ろから、新たにダーカーが湧き出てくる。
「でも、戦局的に見れば俺たちのほうが有利だ!このまま―――」
「コクト君」
俺の言葉を遮ったのは、ここまでほぼしゃべろうとしなかったチアキだった。先ほど別れたアリサとは対照的に沈痛な面持ちで、
静かに口を開く。
「あなたは先に行きなさい。アタシたちはここに残って、こいつらを殲滅する」
「―――――何を考えてるんですか、チアキさん!」
戦局的に有利と言えど、それは三人で戦っている実情あってのことだ。仮にこの中から誰か一人が抜けてしまえば、
すぐにこのパワーバランスは瓦解してしまうだろう。もちろん、不利な方に。だからこそ、俺は怒鳴った。
彼女は、それをわかっているはずだ。なのに、なぜ生存確率が低いほうを選ぶ?そんな胸中の叫びを聞いたのか、
チアキは諭すようにつぶやいた。
「……今回くらい、信頼しなさい。アタシたちは、何があっても故郷を救って、帰ってやるわ。それは、あなたも同じでしょう?」
そうだ。
そうだ、その通りだとも。その我儘(わがまま)を通すために、一人になってアハトを追ったのに。ここまできたのに。
―――信頼したく、頼りたくなってしまうじゃないか。
頼ることなんて、俺には許されないはずなのに。
再び、チアキの声。
「―――アタシたちは仲間なのに。頼らないのは、損だと思うわよ」
仲間。
俺は、本当に仲間の一員なのだろうか?


でも。
頼りたい。
頼らせてくれるのか。
俺を、仲間として認めてくれるのか。


「―――――頼みます」
小さくそうつぶやき、俺は持ち替えた「キャリバー」でフォトンアーツ「ライドスラッシャー」を発動する。
キャリバーの上に乗った俺は瞬間的に加速し、その勢いでルート上のダーカーを切り裂いて、進む。
加速終了間際にだめ押しでキャリバーを一回転させ、そのまま回転しつつ着地する。
「―――任せろ、コクト!!」
聞こえたのは、ずいぶんと頼もしく聞こえる、リクウの叫び。




 * * * 


紫電がうごめいている。
ダーカーたちはフォトンにからめとられ、雲散霧消する。
「……まだ足りない」
小さくつぶやき、人影はぼそぼそと言葉を紡いだ。
瞬間、手に持っているフォトンの刀が、蒸気を上げて変質した。
フォトンの刃は黄色から赤に変わり、その刀身はきらめくフォトンによって、何倍にも拡張される。
「すぐに来る。すぐに殲滅する」
一人つぶやきながら、人影―――アリサは、掌中に握った「アルバクレイモア」に似た武器を振り、ダーカーたちを再度霧に返す。
「……こちらAH-001。予定通り突入を要請する。現在地はCCZ-6、予定の目標PTHは現在、ターミナルポイントにて停滞中。
コアの生成率は88%と推測。現在、神宮寺コクト達クルーニクスが破壊のため向かっています」
アリサは無線に向けてつぶやきながら、「神殺し」の異名をつけた真紅のアルバクレイモアをふるう。
「目標ATHは、現在MTH、並びにPMHとともに別ルートを進行中。こちらは気にしなくて大丈夫、回収班はPTHを優先しろ」
ひとしきり無線との会話を終えると、アリサは焦土に等しき光景の中を走り出した。


 * * * 















盛大な爆発音とともに、俺は中枢へのものと思しき扉を爆砕し、中に転がり込んだ。
「――――っ!」
そして、俺は見つけた。
広いドーム状空間の中に、俺の対岸に位置する場所の隅っこに。
毒々しい深紅色に染まる、ハイヴのコアが、不気味に脈動していた。
それに近寄ろうと思った矢先、俺はそこに、もう一つのものを見つけた。
人影だ。
人影が俺に背を向けて、ただ屹立している。
もしや、アハトかゼクスだろうか。そんな淡い期待は、すぐに砕かれた。人影が、ゆっくりとこちらを向く。
その人影は、男だった。ただし、ずいぶんと異形な形をしている。
背中からは、甲虫の鎌にも脚部にも見える、独特な形状を持った8枚の羽根が、ばさりとひとつはためいた。
「――――来たか、侵入者よ」
その声は、重く低く響く。俺の聴覚をびりびりと震わせる声を紡いだのは、その容貌から一目で歴戦の猛者とわかる男に違いない。
彼は、ゼクスと似た風貌だった。ゼクスが6枚羽根なのに対して、彼は八枚羽根だというところが違うが、他はあまり変わらなかった。
くたびれた鉄灰色のコート、怪しい色に輝く双眸(そうぼう)―――。
だが、決定的に違うところがもう一つあった。それは、男の右腕。
まず見積もって、あれだけの大きさを持った腕を持つのはキャストぐらいだろう。それくらい、男の右腕は異形だった。
生物的な、流線形のフォルムを持った、刺々しい「銀色の腕」。
「……………………マーク、アイン?」
その形は、俺の脳裏から記憶の断片を引き上げた。
マークアイン。マークゼクスと並んで英雄とされる男。その通り名は「銀腕のヌアザ」。
銀腕のヌアザとは、かつて旧人類たちの間で信仰されていたとされる神話に登場する、文字通り銀の腕を持った戦の神だ。
戦の神として祭り上げられてはいたが、ヌアザ本人は慈悲深く、弱きものを全身全霊を込めて守り抜く性格だったという。
マークアインの通り名は、ヌアザと同じく慈悲深く、弱きを助ける精神からつけられたものなのだ。そんな人間が、なぜここに。
「驚いているな、人間の戦士。……無理もないか」
そんな俺の心を見透かしたかのように、アインは俺に語り掛けてきた。
「……どうして、あんたがここにいる」
「どうして、か。ここまで来た君であれば、おおよそ察しがつくだろう?」
自嘲とも嘲笑とも取れる笑みを浮かべながら、アインは言葉をつづける。
「私はハウンド。……正式名称は『開発コード/PTH-01型、試作型ハウンド:マークアイン』だ。
……歓迎するよ、人の身でここまでたどり着いた少年」
重い笑顔の中に、彼は何を思っているのだろうか。そんなことは、今の俺にはどうでもよかった。
「……こいつを止めろ」
「無理だ。この船は私ではなく、ダーカーの意思で動いている。止めたければ、私を倒すことだな…………もっとも」
ジャリン!という音とともに、ゼクスの腰から武器が抜き放たれた。それは、身の丈をゆうに超える異形の大剣。
「ダーカーに身をやつしたハウンドとして、私も引く気はさらさらないがな」
それを見て、俺も剣を引き抜いた。ここまで酷使してきた様々な武器は、すでに摩耗して衝撃に耐えられるか怪しい。
ゆえに、俺は手に取った。ここまで使わなかった、仲間ができてからはただの一度も引き抜いたこともなかった、その刃を。
それは、一見すれば何の変哲もない、ガンスラッシュカテゴリに属する「アルバハチェット」だった。しかし、それは相手を油断させるための
カムフラージュにすぎない。
ここまでくれば、もはや偽装の必要もない。そう考え、俺はハチェットに力を込める。
直後、普段ならばオレンジ色のフォトン刃が形成される場所に、純白に輝くフォトン刃が生成された。その光は、目の前の敵を食い破らんと
猛々しく脈動する。
これこそ、俺の最強の切り札だった。以前ゼクスとの戦いでも使用した、俺が得意とする光のフォトンの力を、最大限に活用できる武器。
光の刃がほとばしれば、その目前からダーカーは、悪しきフォトンは消えうせる。
光の銃弾が放たれれば、その射線から敵は、敵対する者たちは吹き飛ばされる。
その異様な光景から、いつしかカルカーロの同胞たちにこう呼ばれるようになった。
「ダークリパルサー」―――闇を祓(はら)うもの、と。
もっとも、4年前に使用を封印して以来ひさしぶりの使用だったので、フォトン刃の発振がいまいちうまくいかない。
あらかじめ取り付けておいた補助チャンバーを開放し、時間稼ぎを行う。
(BGM:http://www.youtube.com/watch?v=l4TG-epVTzchttp://www.nicovideo.jp/watch/sm6589468?ref=search_tag_video
「…………闇を祓うは我が剣」
ついでだ。4年前に一緒に封印した、今となっては赤面ものの前口上もサービスすることにした。
「光の餓狼(がろう)は手に宿り」
マークアインも空気を読んだようだ。ハウンドといえど、やはり精神は人間によっているのだろう。
「力の波は悪を飲む」
不意打ちなど、卑怯なまねは嫌いだ。だからこそ、名乗りを上げて真っ向から挑む。


「寄らば慄(おのの)け、括目せよ!光の使徒がD-CONNECT(ディーコネクト)…………いざ、参る!!」
瞬間、俺は矢のごとく飛び出した。ハチェットの切っ先を突き立てんと正面に突き出し、アインへと肉薄する。
直後、実体刃とフォトン刃がぶつかり合う独特なサウンドと、まばゆい火花がドームを彩った。ハチェットの切っ先は、掲げられた
分厚い大剣の腹でがっちりとガードされている。そのまま怒涛の勢いで振り上げられる大剣から、俺は紙一重のところで逃れる。
そこから切り払いをはさみ、後方へとステップで後退する。が、この隙を見逃す相手ではない。
「ぬおぁっ!!」
異形の大剣が降りぬかれると同時に、空気が引きちぎられるかのような禍々しいサウンドが周囲を満たす。その危険性を悟り、
俺は瞬時に床に伏せった。それが功を成し、飛んできた不可視の衝撃波を避けることに成功した。
すぐさまうつ伏せの状態から飛び出し、再度肉薄する。今度はアインも受け止めることはせず、発動した「レイジダンス」の牙突
すべて回避してのける。直後に横殴りの衝撃が降りかかり、辛くもハチェットの刀身で受け止める。
重く、叩き潰されそうな途方もない衝撃を受けつつ、俺は横に吹っ飛んだ。体制をなおす暇もなく壁に激突し、数十cmほど壁にめり込む。
衝撃で内臓を刺激され、乾いたせきとともに口から血が漏れる。
恐ろしい威力だ。再度くらいでもすれば、その時には勝負がついてしまうだろうとうっすら予測できるほどの。
だが、ここでひるんではいられない。すぐさま壁から脱出し、ハチェットをガンモードに以降。少しの間様子を見ることにし、
そこから光のフォトンで構成された弾丸を撃ち込む。
しかし、アインに小細工は通用しなかった。撃ち込んだすべての弾丸は、背中から生えていた八枚羽にすべて防がれたのだ。
羽はダーカーのものと酷似しているが、損耗するどころか傷の一つも付いたようには見えない。
絶対無敵。久しぶりに、その言葉が似合う人間にあった気がした。そう考えると、途端に身震いが襲ってくる。
いや、これは武者震いか。強敵を相手にして、俺の闘争本能がうずいている。強敵を打ち破ってこそ強くなれるという、昔の思考が
よみがえったかのようだ。ならば!
「―――ぜぇぇいっ!!!」
直後、俺は地をけって弾丸のごとく飛び出した。狙うは、一撃で勝負を決められるのど元。
そこめがけて刺突を打ち込むが、やはりアインの大剣にはじかれた。が、俺の狙いは的中したようだ。
ゴバァッ!という地面が吹き飛ぶ音を聞きながら、俺は連続ステップで横っ飛びに飛ぶ。数瞬前まで俺がいた場所が、ものの見事に
えぐられている。このドームの直下にあった、通路の半分が露出するほどに。
ぞくり、と冷たいものが背筋を流れた。まさしく一撃必殺。正しく粉砕。
ふと、頬が緩んでしまった。極限の戦いの中で、タガを外してしまったようだ。昂ぶる、吼える、俺の本能が暴れ狂う!
「まだまだぁあぁっ!!!!」
瞬時にアインへと詰め寄り、フォトンアーツ「トライインパクト」を発動する。一段、二段、三段と斬撃がアインを襲うが、彼は
ひるむことなど一切なく大剣の腹で攻撃を相殺する。しかし、それは同時にアインの視界を妨げることを意味していた。
トライインパクトの終了に合わせて、俺はバック転で後退する。攻撃の気配が失せたことを察知したアインが大剣を持ち替えた―――その瞬間。
彼の至近距離で、「爆弾」が爆発した。衝撃波に揺さぶられ、たまらずアインが吹っ飛ぶ。
バク転は、攻撃のモーションでもあったのだ。自身も爆発に巻き込まれないように、「フォトングレネード」の圏内から退避して、
安全を確保したうえで攻撃する。
トリッキーなフォトンアーツ「スリラープロード」の動きは、さすがに見切れなかったようだ。
が、これをつかえる機会はもうない。手の内を見せた以上、次は確実に回避され、反撃を食らうだろう。ならば、息をつかせないまで!
「―――こいっ!!」
アインも、俺の意図を察したらしい。咆哮とともに大剣を振りかぶり、こちらへの反撃に入る。
「「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」」
瞬間、俺とアインは同時に地をけった。
即座にフォトンアーツ「エインラケーテン」を発動し、切り上げ攻撃からの弾丸を見舞う。切り上げこそ相手の威力を削いだものの、
弾丸は甲高い音とともにはじかれた。その直後に横殴りの暴風が襲い掛かってくる。間一髪でかわしたが、返す刃が再び襲い掛かる。
再度暴風が吹き荒れるが、吹き飛ばされることはなかった。全身全霊を込めた一撃を見舞い、アインの剣を全力で相殺したのだ。
途方もない衝撃。全身の細胞という細胞が悲鳴を上げ、ともすれば体ごと粉砕されそうな一撃を相殺できたのは、まさに奇跡だっただろう。
ゴゥ!という衝撃波が、ドーム中を駆け巡った。衝撃から生まれた突風が吹き荒れ、互いの髪をばさばさと揺らす。
暴風の中で、アインの驚愕した顔が、はっきりと見えた。
「――――シッ!!」
見逃さない。
逃してなるものか。
右に切りつけると同時にそちらの方向へステップし、着地と同時に180度体をひねる。そこから返す刀で再度切り付け、またステップ。
そこから踏みとどまり、再度気合の一撃を叩き込み、一撃目と同じ方向へとステップ。同じモーションでさらに四連撃目を叩き込み、
ダメ押しでさらに右方向へと切り裂く。
裂帛の気合いとともに放った五連撃は、確かにアインのガードを崩していた。大剣は後ろに弾き飛ばされ、あとから展開されていた
八枚羽は、3枚を残して断ち切られている。
「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
とどめの銃撃を強引にキャンセルし、刺突にすべてを乗せる。ダーカーへの憎悪を、護りたいという意志を、仲間の信頼を、託された思いを、
すべて乗せた一撃は。
甲高い音とともに、残された3枚の羽の多重防御に、はじかれた。
そこから展開された羽が、俺を貫かんと殺到する。
だが、俺は不敵に笑む。
俺の攻撃は、まだ「終わっていない」のだから。
瞬間、ハチェットが閃き、鋭い牙突を「連続で繰り出した」。
まったく予期していなかったであろう攻撃を受けて、アインの羽は抵抗なく破砕された。残る刺突はすべてアインの無防備な体を貫き、
幾多の血しぶきをあげて吹っ飛ばされる。
一か八かの賭けだったが、上手くいってくれた。かなり無茶をしたが、相応の見返りはあったようだ。
が、仮にも相手はハウンド。この程度で倒れるわけがない。血反吐をはきながら、アインは立ち上がった。
「ぐ、ふっ……ふふ、仮にもここまで来た人間か」
不敵な笑みを漏らしつつ、アインはふらふらとおぼつかない足取りで俺に近寄ってくる。とっさに構えるが、もう相手に殺意は見えなかった。
不審に思いつつも警戒を解いた直後、俺の方にその銀の腕が乗せられる。そのままの体制で、アインが口を開いた。
「……今、ダーカーから思念が送られてきた。間もなくこの船をいけにえに、『黒腕』を生み出すそうだ。
奴が起動すれば、君たちはもちろん私も死ぬだろう。だから、私は目的を達しに行く」
黒腕というものが何を指すのかはわからないが、つまりは俺に、ひいては俺たちに脱出を促しているのだろう。
そう察して、俺は彼の銀腕を軽く握る。
「……また、いつか会おう。生きていればな」
去り際にそんな声が響いて、振り返った時にはもう、彼はいなかった。


 * * * * * * 


突如、途方もない衝撃がハイヴ中を揺るがした。
その衝撃から考えて、どうやらコネクトがハイヴを破壊したらしい。
これで目的は達せられた。あとは、全員そろって脱出してハッピーエンドを迎えるだけだ。
身をひるがえし、いざわが船へと思った、その時だった。
「……少し話を聞いてくれないか」
俺の目の前に、銀色の腕を持った男が立っていた。どこかで戦ってきたのか、その体はボロボロだ。
が、俺には分かった。この男は、ハウンドだと。自身の血が、本能が、直感が、そう告げている。
「…………あんた、マークアインか」
「そうだ。……久しいなアハト。といっても、お前は覚えていないだろうが」
そういいながら、身をひるがえして歩き出す。俺もそれに倣い、ともに歩き始める。周囲は衝撃に揺さぶられているが、数分ならまだ大丈夫だ。
「……お前もハウンドである以上、この船―――ハイヴの力は感じているだろう」
「ああ。……ずいぶんと、強烈なモンだな」
肯定の意を示すと、アインはうなずいて言葉をつづける。
「お前に忠告だ。……この力を、利用しようとしているやつがいる。それも、この力の危険性を知ろうともしないやつが」
「……それで?俺にどうしろっていうんだよ」
「なに、ただの気まぐれだ。もしお前がそいつに遭遇するならば、止めてやれ」
正直、アインのいうことを理解はできなかった。だが、彼とはどこか近しいものを感じる。
おそらくは、同じハウンドだからこその感覚なのだろう。血はつながっていないのに家族のように感じるとは、不思議なものだ。
が、その感覚に浸っている暇はなかった。二度目の大きな衝撃が、ハイヴを揺るがしたのだ。
「っ…………。時間稼ぎが過ぎたか。アハト、走るぞ!」
「お……おうっ!」
アインにいわれるまま、俺は走り出した、その直後だった。
後方から、何かが突き進んでくる。それは人の身の丈をゆうに超える、巨大なダーカーだった。
まるで、神話に出てくる多頭の龍ヒドラのような見た目だった。三つの首の先には、赤い瞳を爛々と輝かせる龍の頭。
腹のコアを隠すように、前かがみに二本足で突き進んでくる光景は、シュールさとともに途方もない畏怖を覚えさせた。
「おい、あいつは何だ!?」
俺は先を行くアインに怒鳴りつける。アインのほうも余裕がないらしく、時折ふらつきながら俺にこたえる。
「奴がこのハイヴの中枢だ。俺が時間稼ぎをして、結果的に誕生させたんだ。……もっとも、あいつが生まれた以上このハイヴは
力を失う。宇宙に棄てられるか、あいつに食いちぎられるのが嫌なら走れ!!」
必死の形相で、アインは叫んだ。それだけ、この状況がまずいということなのだろう。
それに倣って走りながら、俺は無線にどなる。
「アイシャ、兄貴、あめ、聞こえてるか!二人ともさっきの衝撃は感じたはずだ。死にたくなきゃ今すぐ船まで戻ってこい!!」
それだけ言うのが精いっぱいだった。正直、足が震えている。
ヒドラもどきから発される強烈な殺気が、俺の本能を揺さぶっている。



もうすぐトレイルブレイザー号につこうかという頃、突如としてアインが速度を落とした。
「……お前は先に行け。私が足止めをしておこう」
「な……おい、何言ってるんだよ!?」
ここで足を止めるということは、すなわちここからの脱出を諦めるということだ。ましてあの化け物と戦うなど、自殺行為に等しい。
それがわかっていながら、なぜ止まるのか。その意味を、真意を、俺ははかりかねる。
が、俺のほうも立ち止まっている余裕はなかった。ヒドラ頭が、すぐそこまで迫っているのだ。
「――――最後の忠告だ」
振り返る寸前、アインが呟いた。
「ノインに気を付けろ―――兄弟」
ふと、そこで何かがすると落ちた気がした。





「「アハト!」」
「兄さん!」
トレイルブレイザー号の目の前までたどり着いたとき、俺を呼ぶ3つの声が聞こえた。間違いない、俺の仲間だ。
長く恐怖が続いたように思えたが、ようやく帰ってきたのだ。それに安堵し、力の限り叫び返す。
「てめぇら、とっとと帰るぞーっ!!!」
その時だった。突如俺の後方から、遠く轟音が響いてきたのだ。思わぬ出来事に、びくりと硬直する。
直後、遠雷のように響く轟音の中から、それは姿を現す。間違いなく、先ほどのヒドラもどきだ。
「ち……もう来たのか」
が、先ほどとは違う点があった。左右の2つの首が、根元から寸断されていたのだ。切断面はきれいとは言えず、何十回も
刃をたたきつけたような痕跡が見える。つまり、アインの抵抗の証。
相手も、アインのせいかすでに疲弊していた。このままおめおめと逃げおおせるのは、趣味ではない。
それに、アインは言っていなかったが、俺はこいつの正体をすでに悟っていた。同族の血が、直感を聞かせているのだろうか。
いろいろと考えながら、俺は背に吊った「ザンバ」を引き抜いた。ここまでの戦いで、持ちうる武装はすべて使い、破棄してきたのだ。
ゆえに、これが俺の最後の牙。最後の抵抗の証。
一人覚悟を決める俺の横に、ふと3つの人影が並んだ。
「……何してるんだよ」
静かに言い返す。こいつらがしようとしていることは、もうわかっている。この言葉は、ただの確認だ。
「アハト、お前一人を逝かせるわけにはいかないだろう?」
「ええ。兄さんは私が守ります」
「記憶がなくても、アハトはアタシのパートナー。だから、どこまでも付き合うよ」
三者三様の、力強い返答だった。いうことは、何もない。
「なら、あのドラゴンもどきに見せつけてやろうじゃねえか」
ぶん、と風切り音を鳴らし、ザンバを大上段へと持ち上げて。
「ハウンドの実力をよぉ!!!」
そして、振り下ろした。
























どれほど続いただろうか。
どれほど消耗しただろうか。
どれほど、血を流しただろうか。
フラフラになりながらも、何とか俺たちは生きていた。すでにザンバは中ほどからへし折れ、下半分は船の外壁に突き刺さっている。
兄貴たちもまた、得物を失ってなお奮戦していた。すでに、全員に戦う力はない。目の前には、虫の息になったヒドラ
勝ったのだ。その感慨が、すぐそこまでこみ上げる。だが、勝利の余韻に浸っている余裕はない。
すでに、激戦の中でハイヴが中ほどまで崩れ落ちていたのだ。このまま数分でここに閉じこもっていれば、まとめてお陀仏だ。
「……帰るぞ、お前ら」
短くつぶやき―――アイシャと兄貴を、船の中へと押し込んだ。
「―――兄さん?」とつぶやくアイシャの声は、ざくりという肉が裂かれる音に掻き消えた。
扉を閉める直前に見えた、二人の驚愕の表情は忘れることはないだろうな。そんなことを思いながら、俺は後ろの人物に問いかける。
「……一応聞く。お前は、誰だ」
そこにいたのは、俗にいう「カタナ」と呼ばれる武器を俺の胸に突き刺している、ユウナだった。
くすくすと静かに笑いながら、ユウナは―――ユウナの姿をした何者かは、口を開く。
「……わたしはマークノイン。君の妹」
そう、マークノイン。ずっと感じていた、ユウナの負の感情。
最悪の場所で、最悪のタイミングで、彼女の裏の顔は力を取り戻したらしい。だが、幸いにも最悪の結末は避けられた。
ポケットに忍ばせてあった遠隔操縦用のリモコンで、トレイルブレイザー号が残骸を引き連れて抜けていく。
それを見届けながら、ノインはつぶやいた。
「安心して。あとは、わたしが全部背負ってあげる。アハトの荷物、みんなわたしのもの。わたしが、アハト」
外壁にあいた大穴から、空気が流れ出ていく。が、その空気は爆発をはらみ、わずかな猶予を作り出す。
「……そうか。俺の荷物は…………重い、ぞ」
つぶやきながら、俺は力なく倒れた。すでにノインはおらず、突き刺さっていた刀が音を立てて落ちるだけだ。
周囲で、爆発が連鎖する。ハイヴが、崩れていく。
俺たちは勝ったのだ。ダーカーの脅威から、カルカーロを守った。
ハッピーエンドとまでは言えないが、おおむねトゥルーエンドといったところか。だが、それで十分だ。
俺は、かつての罪を払拭できたのだろうか。考えるうち、俺の視界はカルカーロを映し出した。
星のまたたきに照らされ、ぼんやりと青く光っている。そこに向かう、近くを通りかかった橙色の戦艦。
「―――きれい、だ、なぁ」
それが、俺の最後の言葉だった。もう、何かを話す気力もない。



ふと、何かが集まってきた。
それは、形のあるものではない。ハウンドにだけわかる、ダーカーの意志だろうか。


―――よう、お前ら。
いつか、また会おうぜ。


*********


エピローグに続きますー。