コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

短編 異世界行ったら門前払い食らいました

「シェアアァァァァッサイィ!!」
おおよそ雄叫びとは言えない雄たけびを口にしながら、俺は両の手に握った水晶の剣を同時に振り下ろす。
二つの刃にからめとられ、俺の眼前で人の身の丈をゆうに超す棍棒を振り上げていた巨大な生物――つまるところの「トロル」が、
ぶもおぉぉぉぉ……というテンプレートな悲鳴を上げてぶっ倒れた。
その光景を見て、俺は詰めていた息をふぅーと吐き出すと、不意にあたりを見回す。
先ほどまで俺の仲間が周囲に展開していたんだけど、どこに行ったんだか――とか思っていると。
「――お疲れタクト!」
「のあっ!?」
突如背後から迫ってきた気配に反応できず、気配の主である大きな斧を担いだ男性――正しく戦士、と形容できる格好と風貌を持った、
小麦色の肌の男性だ――が、俺の肩をバシンバシンとひっぱたく。アレよ、痛いんだよゴーシュ。
という俺の呟きが聞こえたらしく、すまんすまんとでも言いたげな顔で平謝りをかますのは、「この世界」に来てから知り合った
屈強な傭兵「暴風のゴーシュ」ことゴーシュだ。
大斧を力任せにぶん回し、周辺を暴力でなぎ倒すことからつけられたあだ名。らしい。正直なことは聞いたらゴーシュがブチ切れるから
聞かないことにしてる。
「お疲れさんゴーシュ。……あいつらは?」
「退避してるよ。まったく、お前は毎回暴れすぎだ」
お前に言われたかねーよと返してやりたいが、そんなことしたらいい笑顔で頭蓋骨粉砕されるぐらいの握力が俺の頭に襲い掛かってくるのが
何とも言えないぐらい理不尽だ。
これがあとの二人みたいに可愛らしい女の子だったら言うことないんだけどなー。
「なんだ、俺が女じゃないのが不安なのか?心配するなタクト、男同士でだって語り合える!」
「黙れ同性愛者!何が悲しくて男の胸板に欲情せにゃならんのだ!」
「そうだそうだー!タクトは私のものだーっ!」
俺が叫ぶのとタイミングを合わせて、背後から小柄な人影が俺の右腕に抱き着いてきた。
そのままぎゅうと腕を握りしめ、ゴーシュに向かって非難の声を上げるのは、仲間の一人にて、この世界で最初に戦友となったカノン。
先ほど小柄、と形容したことからもわかる通り、半分ストライクゾーンのロリっ子である。
しかも腕が押し付けられている場所には、たわわに実った大きな果実。これでもう少し年齢高いなら世間的にはいうことないんだろうが、
あいにく俺はカノンのこの愛くるしさがお気に入りだ。旅の癒しといっても過言ではない。
だがまぁ、そんなかわいいカノンとじゃれるには問題が山積みなわけで、今現在も飛来した矢をはっしとつかみ取ったところだ。
説明のひまくらい与えてくださいよアサギさーん。
「鼻の下を伸ばすな犯罪者。次やったらお前の目玉がくりぬかれると知れ」
胸中読まれました。
俺に鋭い流し目をよこしてくれるのが、「凍てつく瞳の狙撃手(アイシクル・スナイパー)」とギルドで噂される高名な女スナイパー、名をアサギ。
いわゆる美形のお姉さんなのだが、彼女はギルドでもあまりいいうわさが存在しないのだ。
やれ同性愛者だの、やれペドフィリアだと。いやまぁ、実際本当のことなんだけど。
つまるところ、残念な美人というやつだ。どうして俺のパーティには同性愛者ばっかなんだろうと時々泣きたくなる。
ゴーシュもアサギも黙っていれば超の付く美形――ゴーシュに関してはいかついタイプのイケメンだが――なのに、なんで中身は残念なんだ。


あれか、俺が「門前払いくらった勇者」だからか。なら仕方ない。


***


事の発端は、俺の滞在期間と感覚からして半年前のことだ。


そもそも俺は、トロルやらオークやらスライムやらゴブリンやらが跋扈(ばっこ)するこのファンタジー世界の住人ではなく、
フィクションなどではよく見られる、いわゆる「召喚勇者」という存在なのである。
元の世界――本名は「角宮拓斗(かどみやたくと)」という――では中学校三年生という、ある意味忙しいポジションに収まっていた俺は、
ある日家までの近道である商店街の裏路地を通っていたところ、突如目の前に出現した魔法陣に足を止めた。
たっぷり一分間その状況を思案して、「これはもしや異世界への招待状かッ!」なんて言いながら魔方陣に飛び込んだ自分を殴りたい。
というか今の俺を殴った。頬が痛いし心も痛いよ。


そうしてこのファンタジーな世界に迷い込んだ俺だったのだが、魔法陣から出てきた俺に浴びせられた第一声が――「帰れ」の一言だった。
何事だと聞く暇もなく、俺は衛兵と思しき甲冑騎士たちに城の外へと放り出され、あまつさえ門番に蹴っ飛ばされて
地面に転がされた。
いったい俺が何をしたんだと叫んだが後の祭りであり、飛んできた衛兵に鋼のガントレットで二度もぶん殴られた。親父にだって
ぶたれたことないのにとか言う暇も与えてくれないなんて薄情だ。


いろいろ去来した絶望に打ちひしがれていると、やってきた民間人の奥さんに家へと連れ込まれ、そこではじめて事情を聴いた。
いわく――この世界で復活した魔王を倒すために、俺を召喚した王家が勇者を探しているらしい。
ただしその召喚方法がめちゃくちゃで、手当たり次第に異世界から人をかっさらってきて適合者じゃなければポイという、
ブラック企業も真っ青な方法で勇者を探しているんだそうだ。
憤慨と勇者じゃない悔しさから俺は城に殴り込みをかけたが、奮戦むなしく衛兵に蹴っ飛ばされて終了。変えるすべも失った俺は
二週間ほど鬱(うつ)になりながら、どうにか吹っ切れて現在は冒険者ライフを満喫中、というわけである。
我ながらのんきなやつだと思うが、どうしようもなくなった俺に残された選択肢はそれしかなかった。


***


そんなわけで冒険者になった勇者(英雄もどき)の俺だが、不思議とこの現状はいやではなかった。
むしろ、勇者に仕立て上げられなくてよかったとさえ感じている。
勇者になったら魔王を倒すために東奔西走しなくちゃいけない、という異世界もののテンプレを思い出した俺は、
すこし……というかかなり、門前払いを食らったことに感謝していた。
――勇者になんてなったら、こうして仲間とバカなことをやれないからな。
「うっしゃあ、このままトロル絶滅としゃれ込もうじゃないかぁ!!」
「「「おーっ!」」」
だから、俺は少しだけクソ王家に感謝しつつ。


今のところは、平穏な冒険者ライフを満喫しています。
現実世界に帰りたいとは、今のところ思わない。


*********


ということでこんちはー、またしても変な小説を書いてるコネクトですw


今回のこの小説、実は地味ーに前作である「迷い込んでMMO」のテーマを受け継いでおります。
迷い込んでMMOは結局連載予定のまま終了になりますが、もしかすると新たにこの小説が連載になるかもしれませんw
そろそろオリジナルの小説を増設したいと思ってましたからねー。アイラAnotherもカルカーロも二次創作ですし、
たまには長続きして終わらせることができる小説を作りたいものですw

それでは今回はここまで。
またあいませうー ノシ