コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

アイラ02anotherstory―水晶に込めたモノ―

―section1 英雄再臨―


〜episode1 目覚め〜




真っ白い世界。


何もない。


でも、なぜか心地いい。




ただおぼろげに浮かぶ。


ふと、誰かを感じる。


―――誰だ?


私だよ。
さぁ、彰(あきら)。あなたは目覚めないといけない。


なんでさ。
俺は、ここにいたいのに。
すごく心地いいのに。


彰はもう、私の中にはいない。
もう眠り続けることはできない。
けど、彰の目で、体で、世界を感じることができる。


感じて、どうなるんだ?


世界を知るの。
姿を、形を、あり方を変えた、この世界を。


さぁ、いってらっしゃい。
私もすぐに、おんなじところにいくね。



待ってくれよ!
真理(まり)――――――!





 * * * * * * 





「…………ん、ぅう……」
目を開けて視界に入った初めての光景は、控えめな装飾が施されたシャンデリアだった。
その眩しさに少し目を細め、すぐにもとに戻す。眩しさのせいか、少しだけ涙が出た。


――――あれ、俺は何をしていたんだっけ?
ふとそんな疑問が沸いたので、ともかく今自身が覚えている情報を整理する。
自分の名前は――覚えている。「小絵島彰(さえじまあきら)」。
人の想像力を食らい、成長する異形の生物「ファンタズマ」に侵略されゆく世界で活躍する、人型の巨大ロボット「装機」のひとつである
伊邪那岐イザナギ)」に乗って戦っていた。
そもそものイザナギとの出会いは――覚えているからよし。
しかし、そうなると現状の記憶と自身の現在の境遇(きょうぐう)には齟齬(そご)が生じることとなる。
俺の記憶が正しいものならば、俺は件のファンタズマの王たる存在「ジェネシス」と戦い、力尽きて命を落とす――まではいかないが、
少なくとも乗機であったイザナギの中にいたはずだ。
だが、視界に写るのはどう見ても中世的な部屋。不審に思いつつ上体を起こそうとすると、投げ出されていた左腕の上に重みを感じた。
何事かと首を動かして――あぁと納得する。俺のすぐ横に、投げ出した左腕に小さな頭を乗せて眠る少女がいたからだ。
彼女の名は「真理(まり)」。俺の乗機であるイザナギに搭載された電子頭脳(AI)の思考をを代弁するための「生体端末」と呼ばれる
存在であり、イザナギと出会ってからの半年間を共に過ごした仲でもある。
しかし、なぜこんなところに居るのだろうかという疑問は、ますますもって膨らむこととなる。俺と真理の二人は、汚れひとつない
シーツが張られたベッドの上に寝かされていたのだ。とりあえずは上体を起こし、周囲の状況を確認する。
調度品の少なさから見て、おそらくは使われていない客間なのだろう。そこかしこに見える中世の貴族風の装飾が、異国に来たかのような
居心地の悪さを覚えさせる。一通り見まわして、どうしたものかと首をかしげていると―――不意に、背後に相当する場所にあった扉が開いた。
びくりと身をすくませつつも振り向くと、そこにいたのはいかにもな執事装をした男。
オールバックにした灰色の髪と、黒い執事服に片眼鏡―――いわゆるモノクルという組み合わせが似合う、中年のような男性だった。
その男の目が、驚愕からかわなわなと震える。
俺が起きたことがそんなにも驚くことなのか―――と聞く前に。
「――――お目覚めですか!どこか痛むところはありませんか?記憶に関して不審な点はございませんか?混乱されておりませんか?
私のことはきちんと確認できておりますか!」
と、マシンガンもかくやの勢いで言葉が浴びせられた。興奮のあまり鬼気迫る顔になっている男を少しばかり押しのけ、とりあえずはうなずいて
話を中断させる。
「だ、大丈夫です。……あの、ここは?」
俺のその言葉に、男はハッとした表情を一瞬見せた後、すぐに入室してきたときのような精悍(せいかん)な顔になる。
「し、失礼。私としたことが、驚愕に取り乱してしまいました……。えぇと、まずは自己紹介をさせていただきます」
その言葉とともに立ち位置を変え、胸を張った体制で礼儀正しく名乗ってくれた。
「私は『ディア・ラ・プラム』。ここ『ローゼスノア』にて、主であるローゼンベルグ嬢の執事を行わせていただいております。
以後、どうぞお見知りおきを。……よければ、あなた様のお名前をうかがっても」
「あ、はい。小絵島彰、って言います。……あの、聞いてもいいでしょうか?」
「すまない、君の質問の前に伝えておきたいことがある。よろしいかな?」
という俺の言葉は、続いて入室してきた何者かによってさえぎられた。何者かとそちらに顔を向け――――驚愕する。
「……あ、なっ、士郎さん!?」
そこにいたのは、半年前にイザナギと出会った日、ともに装機を駆ってファンタズマと戦い、戦闘後のイザナギの処分を手伝ってくれた
いわば恩人でもある男性「飛鷹士郎(とびたかしろう)」だった。
その時見せた温厚な父のような笑みと、軍属の人間らしい顔つきは、何ら変わっていない。変わったとすれば、少し老けたくらいか。
俺の驚愕をよそに、士郎はディアと名乗った男にうなずき、俺のそばに近よって来る。
「まずは、礼を言わせてくれ。……ありがとう、君のおかげで、多くの人間が助かった」
士郎の言葉の意味を一瞬測り兼ねたが、すぐにそれがジェネシスと関連のある一件だと感づいた。彼にそんな言葉を言われるということは、
世界は救われたのだろうか?若干の安堵を覚えながら、しかし俺はかぶりを振る。
「……別に、助けるため戦ったわけじゃありません。俺は、俺の目的のために戦っただけですから」
結局のところは、それが正直な気持ちだった。
イザナギと出会ったあの日、あの場所で、俺はファンタズマに友人を奪われた。
その憎しみを糧にして、悔しさを力にして、俺はあの日まで戦っていたのだ。
途中別の人間から願いを託されるというイレギュラーもあったが、最終的に動く理由は「復讐のため」に他ならないのは事実である。
だが、士郎は首を振った。振ってくれた。
「いや、君の行いは結果的に多くの人を救ったんだ。謙遜(けんそん)しないでくれ」
その言葉に、俺は返事を返せず沈黙してしまった。肯定と取ったのか士郎が一歩後ろに引き、ディアにうなずきかける。
「……それでは、まずは彰様に現状を説明させていただきます。準備はよろしいですか?」
ディアに促されて頷きかけたその時、不意に背中に何かが当たる感覚。
びっくりして後ろを向くと―――背中に体を預けて、じっとディアのことを見つめる真理だった。アメジスト色の瞳が、ディアに向けて
警戒の色を見せている。
「真理、起きたのか」
「うん。……彰、この人は?」
真理が指すのは、すなわちディアのことだ。士郎に関して何も言わないところから、真理のほうも記憶の喪失などは起こっていなかったらしい。
すこし安堵していると、ディアが改めて自己紹介をする。
「私は、当『ローゼスノア』にて、現当主様の執事をさせて頂いておりますディア・ラ・プラムと申します。以後、お見知りおきを。
……さて、改めて説明をさせていただきます。士郎様、例のものは?」
ディアが問いかけると、士郎は懐からタブレット端末を取り出した。
「はい、用意しております。……彰くん、これを」
そういって士郎から手渡されたタブレット端末は、俺がふれると同時に起動する。数秒ののちに表示された画面には、何やら
古代の壁画のような、不思議な絵が表示されていた。
「そちらは、この世界に伝わるひとつのおとぎ話とされています。もっとも、その出来事は現実に起こったものですが」
と説明するディアの指が、画面に触れると同時にその画面の中の映像が動き出した。動画だったのかと少し驚きつつ、流れてきた音声に耳を傾ける。


≪――遠い昔のお話です≫という切り口から、物語は始まる。


*********


というわけで新連載こんちはーっす!コネクトにございますー。
ついに、ついについに始めてしまいました「アイラ02AnotherStory―水晶に込めたモノ―」、略して「アイラ02A」!
かねてより(具体的には前作完結直後あたりから)構想を重ね、プロットを練り、ようやくこうして始動と相成った次第にございます。


本作のコンセプトは、大まかにいうと「共存の願い」ですね。
本作には謎……という名の設定が存在しており、それが本作品のコンセプト、そして主題となる予定です。
しかし、執筆を開始した第一章…冒頭では「Section1」と表記したんですが、このS1ではその主題は書きません(何
というのも、このS1はいわゆる「長いプロローグ」に位置しており、本格的に主題が絡んでくるのは次章Section2からの予定になっております。
そもそもこのS1もきちんと完結させられるかどうかがはなはだ謎なのですが、そこは頑張りたいと思うのでよろしくお願いしますw


アハト(小説家になろうではうなにゃぎ兄妹)様、本小説の作成承諾、および本編とのクロスオーバー感謝いたします!
かなーり前の話なのでもしかしたら忘れちゃってるかもしれませんが、こうして再びお世話になることをお許しくださいませ。
またお世話になりますが、どうぞよろしくお願い申し上げますー。


それでは今回はここまで。
またあいませうー ノシ