コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

アイラ02anotherstory―水晶に込めたモノ―

プロローグ



「各員に告ぐ。これより本艦は、『オペレーション・リバイブ』を発動する。任務に当たる隊員は和歌山沿岸海底を集中捜索。
なんとしても『抗った者』とその箱舟を見つけだせ」
穏やかな波がさざめく海上に、肉眼では捉えづらいほどに隠蔽された何かが浮いていた。
その何か―――ステルス化された「空中戦艦」からロープが伸び、それを伝って人影が降りていき、海中へと飛び込んでいく。
その様を、空中戦艦に乗った男が見つめていた。
その男のそばに、黒い髪の女性が立つ。
「……しかし、珍しいですわね?貴方が新たな仲間を欲するなんて」
少しばかり色っぽい声で、女性は男性に嘯く。それを耳に入れて、男は少しばかり微笑んだ。
「なに、ちょっとした気まぐれさ。……僕らは何としても、『Fノイド』たちから地球を取り返さなければならない。
そのために戦力を補充するのが、今のところ無難な作だと考えたからね」
男は、ただ静かに作戦が展開される様を見つめていた。だが、一つため息をつく。
「……問題は、お姫サマの軍勢だ。彼らに介入されると、かなり厄介だからね。各員、ローゼンベルグ一味の襲撃には
十分に警戒しておけ」
男の指示に従い、隊員たちは三々五々に作業を開始する。


 * * * * * * 


同じころ、空中戦艦の真下―――海中。
一人の少女と男性が、すこし険しい顔をして時を過ごしていた。
そしてその直後、二人のいる部屋に一人の男性が入ってきた。その男の顔を見て、二人が胸をなでおろす。
「報告します。親衛隊の捜索班が、該当機体と思われる大破した装機を回収しました。……データ照合の結果、間違いなく
ターゲットと思われます」
その報告に、少女のそばに付き添っていた男性がうなずく。
「……では、いらぬ横やりが入らぬうちに私たちは退散するとしましょう」
少女の言葉に男が再度うなずき、腕にはめていたブレスレット型無線機に向かって、毅然と命令を飛ばす。
「総員に告ぐ!作戦は成功した。ただちに始動にかかれ!」
命令が伝わった直後、ゆるりと水中の何か―――戦艦が、動き始めた。


―*―*―*―*―*―*―


数時間後、男女と男は回収された装機のもとへと赴いていた。
彼女らの目の前には、ボロボロになった装機が鎮座している。
紫色に輝いてたのであろう、海水でくすんだ装甲。ひしゃげ砕けて、右のアイカメラがむき出しになった、バイザー付きの頭部。
力をそがれ、それでも対抗していた証である、無くなった右足、左ふくらはぎ、左腕。
すべてが、彼女らには雄々しく、美しく感じた。
「……これが、影なる英雄」
その光景に、思わず少女に付き添う男が息をのんだ。少女は目を輝かせ、男は何か感傷に浸るように、それぞれ見入る。
だが、それも長くは続かなかった。
「失礼します。……たった今この機体の中から、有機反応が検出されました」
隊員と思しき人間の声で、その場に緊張が走る。
「……まさか、中のパイロットが生きているというのか?」
「確証はありません。……ですが、反応の大きさからして、少なくとも腐敗はしていない模様です」
「すぐにコクピットハッチを解放しろ。生きているのならば、これ以上の成果はない」
慌てた男の声で、すぐに隊員たちが動き出す。数分すると、すぐにその胸にあった白いカバーが開き、青い装甲が左右に割れる。
そこからせり出てきたコクピットのシートには―――少年がいた。
「――――っ!?」
その場が、沈痛な静寂に包まれる。
死んだようにピクリとも動かない少年の体を、報告を行っていた男が慎重に抱き上げる。そこで、再度男が驚愕した。
「…………生きています。彼は、コールドスリープに入っていたようです」
「なん、だと……?ならば、すぐに部屋を用意するんだ。彼が目覚めしだい、誰でもいいので順次報告をしろ!」
にわかに慌ただしくなる格納庫内で、少年を抱き上げる男は一人感傷に浸る。
「……君も、つくづく大変だな」
虚空に向かってつぶやいた男は、そのまま少年を抱えつつ格納庫を後にした。


この日、少年は「世界へと舞い戻った」。