コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

【先行掲載】鋼鉄の戦騎<ヴァルキリー>

世界樹
それは、地球の五箇所に天高くそびえ立つ、巨大で、強靭な大樹のことだ。
長く続く人類史で、いつ世界樹が現れたのかは定かではない。ただ、人々気がついた時にはひょっこりと、その巨大な体躯を地に埋めていた。


そしてその世界樹からは、人々の想像を超えた、異形の生命体が姿を現した。
あるものは火を吐き、あるものは空気さえ凍てつかせ、あるものは空を切り裂く雷を操る。
人知を超えた生命体は、世界樹から生まれ落ちることから、舞い散る葉に例えられて、いつからか「ブラット」と呼称されるようになった。


奪われて行く土地を取り戻すため、そして種の存続のため、人々は自らを守る「剣と盾」を兼ね備えた、全長9mほどの、機械でできた騎士――搭乗式の人型兵器「メタルナイト」を生み出した。
高い汎用性と走破性、そして精緻な攻撃を可能とするポテンシャルは、ブラットたちと渡り合うことを可能にしたのだった。


それからいくらか経った、ある日。
物語は、動き出す。


Mission1:白い少女との出会い


遠くに見える世界樹と、それにかかる夕日を見やりながら、俺――「神原拓真(みはらたくま)」は、いつもと変わらない帰路を歩いていた。
周囲に目を向けると、見えるのは自分と同じ制服を着た学生たちばかりだ。その誰もが、例外なく二人以上の団体で、帰路を歩いている。一人なのは、俺だけだ。
小さな町である以上、近所付き合いも自然と多くなる。そうなれば友人が増えるのは当たり前なのだろうが、俺は違った。人が寄り付かないのだ。
普段学校でも町中でも孤立している俺の周りには、時たま奇妙なうわさが立つこともあった。ほとんどが気にされない程度代物だったが、最近では「盗撮していた」やら「犯罪者の息子」など、よく思いつくなと感心するような噂も出回っているらしい。別に何と言われようが、自分がやっていないなら恐れる必要は特にないので、現状スルー状態なのだが。
「おい犯罪者、面かせや」
たまにこうして現れる、自分よりも位の低い人間を痛めつけて優越感に浸りたい奴に関しても、特にやることはないので無視する。当然相手は追ってくるが、面倒なので軽い裏拳で黙らせて置いた。
どうしてこういう噂が流れるようになったのかは、今となっては確かめようがない。最初の噂の発信元が、すでにわからなくなっているからだ。特に追求する目的もないので放置しているが、たまにふと気になる。
――よくもまぁ、こんな暇なことをやれるなと。


家に帰ってカバンをベッドに放り投げ、制服から私服に着替えてテレビを付ける。毎日の生活で染み付いた日課は、滞りなく行われていた。
が、ベッドに寝転んでテレビでもみようと思ったその時、不意に聴覚が捉えたキャスターの声が、俺の動きを中断させる。
≪続いてのニュースです。度重なるブラット襲撃による、各市町村の被害拡大を防ぐため、政府は機動騎士団を率い、大規模な殲滅作戦を開始すると発表いたしました。今回の作戦は、政府役人として執務を行っている騎士団総統騎官、上遠野尊(かどのたける)騎官の主導で行われ……≫
ニュースを見ながら、俺は密かに感心していた。
政府と言えば、基本的に機動騎士団――全長9mほどの搭乗式人型兵器「メタルナイト」を操る、政府管轄の軍隊のことだ――に厄介事を任せ、自分たちは踏ん反り返っているだけの集団だ。が、今回は騎士団の騎官でありながら、政府の人間が自ら動くというらしい。
これはまたネット掲示板が盛り上がるな、なんてことを考えつつ、俺はしばらくテレビから流れるニュースに耳を傾けていた。


「散歩してくる」
俺が発した唐突な言葉に、母さんは目をパチクリさせ、次いでほわんと微笑んだ。
「わかったわ。夕飯までには帰ってきなさいな」
そういいながら、微笑んだまま顔を鍋へと戻す。動作の余韻に揺れる髪を見ながら、俺は玄関へと向かった。
母さんは、何かにつけてよく笑う。それは息子である俺の前だけならず、騎士団の高官である父さんにも、近所のおばさんにも、俺をなじる奴らだろうと、全く変わらない。俗にいう肝っ玉母さんなのだろう。
そんな母さんは、必要以上に俺を気にかけないようにしてくれている。話すことが苦手な俺のことをわかってくれているらしく、そんな細かい心配りが内心嬉しくもあった。我が母ながら、いい人だと断言できる。
そんな若々しい母さんのことをつらつらと考えながら、俺の足は町の郊外へと向かっていた。散歩と言えば、俺の場合人気のない場所に限られる。
この時間ならあそこで遊ぶバカもいないだろう。そう考えて、俺は町外れの建物へ――廃工場へと足を向けた。


***


予想の通り、そこには人っ子一人いなかった。ただ風の吹き抜ける音が、静かに俺の耳へと届く。錆びたトタンの板が鳴らす不気味な、しかし少し心地いい音を背に、俺はそこへと入り込む。
ここは数年前、新型のメタルナイトを開発する際に建造されたが、事故によって閉鎖されたらしい。その時の名残として、今でも探せば機械のジャンクが落ちていたりするらしい。最も、俺はそんなマニアックな趣味は持ち合わせていないので、人づてに聞いた話ではあるのだが。
見た目の不気味さとたびたび報告される幽霊の目撃証言によって、現在ではほとんど寄りつく人がいなくなったが、俺はこの場所が好きだった。
不思議と、落ち着くのだ。あえて形容するなら、冬の布団の暖かさを感じる、とでも言おうか。抜け出したくない落ち着きが生まれて、どうにも足しげく通ってしまうのだ。
なにか霊現象でも起こっているのだろうか、なんて取り止めもないことを考えながら、俺は誰もいない廃工場に――。


「……え?」
思わず、声が漏れた。
本当なら誰もいないはずの、寂れた廃工場に。
「……あなた、誰?」
人が、居たのだ。
じっとこちらを見つめるのは、くりっとした丸い眼。アイスブルーの透き通った、生気を感じさせる暖かい色が、俺をまっすぐに射抜いていた。


どれほどの時間そうして居ただろうか。不意に人影の艶やかな唇が、再度言葉を紡ぐ。
「ねぇ、あなたは誰?」
そこで、ようやく声の主が、俺よりも2、3歳ほど年下の少女だと気づいた。向けられる疑問の瞳に向かい、慌てて言葉を紡ぐ。
「あ、えっと……俺は拓真。神原拓真だ。君は?」
あんまりに唐突だったので、大した反応もできずにそのまま聞き返す形になってしまった。特に応答で怪しいところは無かったらしく、少女はふと微笑んで口を開く。
「ユキ。よろしくね、拓真」
「……あぁ、よろしく」
陽だまりのように暖かい笑顔に少し見入りながら、俺は突き出された手を握り返した。


***


「ねぇ、拓真はどうしてここにきたの?」
廃工場の一画に、少女――ユキとともに腰をおろした俺は、ユキからそんなことを聞かれた。どう答えたものかと思案して、結局正直に答えることにする。
「散歩さ。家に居てもやることが無かったし、ここに居たらなんとなく落ち着くから」
俺の言葉を受け取って、ユキはまた笑う。
「私と同じね。私も、ここは落ち着く」
自分以外にも、ここが落ち着くと感じる人間がいた。驚く反面、この不可思議な感覚を共有できる相手が見つかったことに、内心歓喜する。
「君はどこから来たんだ?……見たとこ、この町の住人じゃないっぽいけど」
通じ合える相手に次いで湧いて来たのは、その出自に関する疑問だ。
俺が知り得る限り、近所付き合いの濃いこの町で見かけるような顔ではない。まして白髪に碧眼など、日本人しかいないこの町ではかなり浮く存在だ。
そんな俺の内心を軽く察したのだろう、ユキは少し考えたあと、そっと口を開く。
「……人には言えない所から来たの。ごめんね、拓真にも言えない」
「そうか、なら無理に言わなくていいぞ。この町には、そういう連中もちらほら居るから」
自らが憐れみの目で見られることを恐れ、どこから越して来たかを隠したり、偽ったりするのも珍しくない。
彼女もまた、そういう人間なのだろう。なら、無理に聞くのは酷というものだ。
「拓真は、この町の人間?」
そんなことを考えていると、今度はユキから質問が飛んできた。瞳に目を向けると、アイスブルーの輝きは純粋な好奇心を湛えている。特に何か、狙いがあるような問いではないようだ。
「ああ、この町の人間だ。昔からここに住んでるけど……ここに来る人間がいるなんて思わなかった」
正しくは、ここにきて俺と同じ感想を抱く人がいるとは思わなかった、だが。それも、こういう所には近づかなさそうな少女が、俺と同じ感想を抱いているのは、少し不思議な感じだ。
「私もよ。ここが落ち着くって言う人は、私以外知らなかった」
まぁ、ここが落ち着くなんて言う奴は中々の変わり者だろう。類は友を呼ぶとか言うが、あながち間違いでは無いのかもしれない。


それから俺は、ユキとしばらく話し合った。別れ際、明日また会おうという約束を取り付けて。


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ということでお久しぶりにちわーす、コネクトにございますー。
最近は門前払いにかまけて他の小説を全く書いていなかったのですが、オリジナルの改造ガンプラを作った際に
久しぶりに創作意欲が刺激されて、こうして新小説をお披露目することと相成りました。
まぁこうやって第一話だけ公開してはお蔵入りになった小説は大量にあるんですが、これは続けられるだろうと
根拠の無い自信が湧いていますw


本作のコンセプトは「ロボット対モンスター」となっており、ある目的のために作られた新型のメタルナイトに関する事件に、
偶然巻き込まれてしまった少年の物語になる予定です。
シリアスかギャグかはまだ決まっていませんが、そんな小説でよければ応援お願いします!


それでは今回はここまで。
またあいませうー ノシ