コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

小説版ドラゴンクエストX 黒金の夜想曲〈ノクターン〉

エストX」の二次創作小説であり、物語は全てフィクションです。
実際にゲーム中に登場する人物(プレイヤー名)、地名、登場モンスターなどとは異なるものがございますので、あらかじめご了承ください。


#3 旅立ち


「……ふむ。案外と、なんとかなるものだな」
魔障の悪霊と化していた若葉の精霊が消滅し、もとの静けさを取り戻した木漏れ日の広場で、アイネスは小さくため息をつく。その中には、死なずに済んだという安堵とこれからどうなるかの不安の、両方が混じっているように、ヒマワリは聞こえた。
「っつつ……あークソ、手こずらせてくれるぜ」
広場の奥から、半ば身体を引きずるような状態でコネクトが歩み出てくる。衝撃波と度重なる攻撃により、現在のコネクトは這々の体といっても過言ではない状態だった。
「なんだ、生きてたのか。私はてっきりアレが致命傷になったかと思ったが」
「あんなんで死んでちゃ世話ねぇよ。これでも戦士だからな?」
にも関わらず、いつも通りのやりとり。本当にこの2人は仲が良いな、と苦笑するヒマワリの耳に、複数の足音が聞こえてきた。振り向いて見えたのは、ツスクルに勤める教師たち。その中には、ツスクルの主たる巫女ヒメアの姿もある。
「三人とも、無事か!……あの怪物は?」
木漏れ日の広場を管理していた老師が問うのは、先ほどコネクトたちが撃破した魔障の悪霊のことだろう。それを察して、ヒマワリが至極簡潔に説明する。
「あの変異した怪物なら、私たちで撃退いたしました。もう出現はしないと思いますが、警戒は怠らないでください」
しれっとそう言ってのけるヒマワリに面食らう老師を置いて、巫女ヒメアが優美な動作で前に歩み出てきた。その顔はどこか誇らしげでありながら、安堵のようなものが含まれていると、ヒマワリが直感する。
「……三人とも、お疲れ様でした。ツスクルの村の代表者として、あなた方に感謝を述べさせてもらいます」
一呼吸置いた後でゆっくりと、小さく頭を下げてから、ヒメアは再び口を開く。
「色々と聞きたいことはあるでしょうが、ひとまずは村にお戻りなさい。傷ついた体を休めるのも、冒険者の仕事ですよ」
そう言って、ヒメアはヒマワリたちに蒼い石を手渡した。注意深く石の中を覗き込むと、その中にぼんやりとツスクルの風景が見える。
「その『ルーラストーン』には、ツスクルの村の情報を記憶させてあります。魔力を込めて天にかざせば、すぐにでも村へと帰ることができますよ」
「……アンタはどうするんだよ、巫女様」
ヒマワリ経由でルーラストーンを受け取ったコネクトが、訝しげにそう問いかけると、ヒメアはゆるりと微笑む。
「私たちは少し、世界樹の調査を行います。明日には村へと帰りますので、それまでお休みなさいな」
そう言われたコネクトたちは顔を見合わせつつも、ヒメアの言わんとすることに納得し、ルーラストーンを使って帰還していった。

***

「コネクト、起きているか?」
その日の夜。
続いた戦闘によってフラフラだったコネクトは、さっさとやるべきことを済ませて床についていた。そこに、間仕切りの奥からアイネスの声が割り込んでくる。
「……うっせーぞ魔女。俺ぁ眠いんだ」
不満タラタラにぼやきつつも、コネクトはロウソクを手繰り寄せ、火をつけた。暗闇が瞬時に退き、オレンジ色の優しい灯りが二人を照らす。
「で、何だよ」
布団の上に胡座をかいて座り直し、コネクトが聞く。問われたアイネスは間仕切りの奥で横になったまま、前置きを飛ばして質問を投げかけた。
「……あの怪物の件だ。お前、アレの原因は何だと思う?」
アイネスの質問に、コネクトは顎に手を当てながら答える。
「そりゃ、魔障しか無いだろうよ。つーか、アレはそれ以外考えられん」
魔障。それは、このアストルティアの厄災の根源とも言える物質のことだ。
いつ頃から発生したのかは詳しく語られないが、この世界に存在する魔物へと力を与えること、万一人が触れれば無事ではすまないことから、アストルティアでは有害な存在として認知されている。
ツスクルでの勉強で知ったことだったが、その危険性からコネクトもよく覚えている単語の一つだ。
「お前もそう考えるか……」
「あぁ、悪いか?」
含むものがあるアイネスの物言いに、コネクトは半眼で間仕切りの向こう側を睨みながら答える。しかし、アイネスの言葉は少しの間をおいて再び紡がれた。
「……私はな。どうにも裏がありそうな気がしてならないんだ。それもコネクト、お前を中心にした事件として、だ」
突然申告された推測に、コネクトは怪訝な顔で問う。
「どういうこった?まさかとは思うが、あの怪物が現れたのが俺のせいだ、何てことでも言いたいのか?」
「そうだ。……考えてもみろ。あれほどタイミングよく若葉の精霊が乗っ取られることなどあるか?」
続くアイネスの言葉に、コネクトは押し黙る。言われてみれば、若葉の精霊の変異はコネクトと戦いだしてからだった。
「推測に過ぎないが……若葉の精霊は、若葉の試みよりも前に乗っ取られていたとみて良いだろう」


「コネクト、お前を葬るためにな」
唐突に告げられた一言。それに適切な反応を見出せず、コネクトはがしがしと頭を掻く。
「……どこをどう考えたらそんな意見が出るんだよ。だいたい、俺なんざ狙ってもカケラの価値がねぇんだぞ?」
ますます怪訝な顔になるコネクトに向けて、間仕切りを退けて寝間着姿で現れたアイネスが淡々と述べる。
「お前はあの日、記憶がないと言ってここに転がり込んできたな。命を落としたはずのコネクト、あいつの体と名前を使って」
それは1年前、コネクトが命を落とし、エルフの青年として目を覚ました後のことだ。ツスクルの村を訪れた際、記憶を無くしたという嘘を付いてこの村へと転がり込んだのが、そもそもの始まりだとコネクトは記憶している。それと今回のことで何が関係あるんだ、と聞こうとするその前に、アイネスの口が動いた。
「何故記憶が無いのかは知らん。だが私は、お前が無くしたと言う記憶に……もっと言えば、お前の魂の根底に、何か謎がある。そんな気がするんだよ」
その言葉のうちに、果たして何かの感情は込められていたのだろうか。コネクトには、どことなく彼を哀れむようなものが含まれているように見えた。


***


「お入りなさい」
翌日。アイネスから告げられた言葉の意味を考えている間に眠れなくなり、寝坊しかけたコネクトは、現在巫女ヒメアの居へと足を運んでいた。理由はただ一つ、外の世界でも通用する実力を保証する証である「一人前の証」を手に入れるため。
大きめの二枚扉を開くと、目の前には力の技に赴く前にもその様相を見た、薄い垂れ幕のようなものが下げられていた。その奥には、不明瞭ながらもヒメアの姿が見える。
そしてその手前には、先んじて到着していたヒマワリの姿もあった。彼女に習い、コネクトたちも横一列に正座する。
コネクトたちが揃ったことを皮切りに、ヒメアを覆い隠していた垂れ幕が持ち上がった。その奥から、ヒメアの浮世離れした美貌が覗く。
(……そういえば、ここまでじっくり顔を見れるのは初めてだな)
見当違いなことを考えるコネクトを尻目に、ヒメアはゆっくりと口を動かし始めた。
「コネクト、アイネス、ヒマワリ。先日は、大変ご苦労様でした。……悪しき力に侵され、魔の使徒と化してしまった若葉の精霊を開放してくれたこと、誠に感謝致します」
ひとつ深く頭を下げたヒメアが、続けて小さく微笑む。
「そなたたちは、あの魔を前にしても恐れず立ち向かいましたね。……何物をも恐れぬその偉大な勇気は、きっとこれからの世に必要とされることでしょう。……その勇気を讃え、あなた方を合格とし、一人前の証を授けます。さぁ、冒険の書を前に」
ヒメアに促されて、三人は懐から一冊の本を……「冒険の書」と銘打たれた本型の物体を取り出し、眼前へと置いた。その冒険の書に向けて、ヒメアが静かに言葉を紡ぐ。
「大いなる風よ、そして育みの大地よ。世を渡り歩くに値する力を持てしこの者たちに、その証を与えたまえ……」
詠唱とともに、冒険の書の表紙に燐光が収束し、そして弾けた。光が去った後の表紙には、世界樹を象った一人前の証が、しっかりと刻まれている。
「それを持てば、異国の王との謁見なども許されることでしょう。その証に恥じぬよう、ただしき行動を心がけるのですよ。…………さぁ、お行きなさい。この学問の村が誇る、新たなる若葉たち。そなたらの未来に、世界樹と風の守りがあらんことを」
学徒から一人前の冒険者となった三人の若葉は、ヒメアに向かって深く例をした後、ヒメアの屋敷を出て行った。


***


「……うっし、これで準備完了か」
翌日の明朝、コネクトは旅じたくを済ませ、最終確認を行っていた。
恐らく、ここから旅立てば二度と戻ってくることは無いだろう。そう考えて、不退転のつもりで準備を整えていたのだ。
「やくそう良し、どくけし良し、鈴と小瓶も少ないが良し。その他纏めてオールOK、と」
道具の点検を終えたコネクトは、それらを新調した旅の衣装に詰めていく。定期的にやって来る商人に頼んで作ってもらった、コネクトのための旅装束だ。
道具を持ったコネクトは、最後に傍に立てかけてあった剣に手を伸ばし、腰へと取り付けた。こちらは、世話になった師が特別に用意してくれたという、名高い匠が鍛えた剣だという。
「さて……と」
ふと、コネクトは1年前、エルフに転生する前のことを思い出した。
兄を、村の仲間を、そして自分を殺した悪魔の顔は、自らの五感に焼き付けている。居場所などは皆目見当もつかないが、きっとまだこの世界にいるだろう。コネクトの勘が、そう告げていた。
「……待ってろよ、みんな。必ず、仇は取ってやる」
ぐっと強く拳を握りしめて、コネクトは一年を過ごした部屋を出た。



「待たんか」
ツスクルの村の出口に差し掛かったその時、不意に背後から声がかけられた。声の主は聞き間違えるはずもない、あの声。
「……一応聞いとくぞ、魔女。何の用だ?」
そこにいたのは、コネクトと同じく冒険衣装に身を包んだアイネスだった。赤い装束とニーハイブーツ、そして背中に背負った赤い長杖が目を引く格好のアイネスが、ふんと鼻を鳴らす。
「言わなくても分かるだろうに。お前はか弱い女を一人で旅させるとでも言うのか?」
「ぜってーか弱かねぇっつの……」
当然と言わんばかりに胸を張るアイネスに、コネクトはげんなりした表情でツッコミを入れる。が、その横から思わぬ人物も乱入してきた。
「コネクトさん。二人旅だと言うんでしたら、アズランまでついていっても構いませんか?なにぶん、僧侶の一人旅というのは不安でして」
コネクトたちと同じように、冒険衣装に身を包んだヒマワリが、名案とばかりに笑みを浮かべてそう問いかけてきた。
「あぁ、構わんぞ。いざという時はコイツを肉壁にしろ、メラくらいは防げる」
「待てや魔女コラ!パーティリーダーは俺だぞ、俺がいつこいつの同行を許可した!いつ何日何時何分何秒!!」
「お前に決定権は無いぞ肉壁兼馬。せいぜい私たちを楽に旅させることだな」
「だあぁぁれが馬じゃあ!別にこいつの同行くらいなら構わんがテメェは別だ、大人しくパーティリーダーに従わねぇと刺すぞ魔女!!」
「言ったな?その前に私の魔法がお前の息の根を止めるから覚悟しろよ?」
「……と、ともかく宜しくお願いしますね?」
果たしてこの二人について行って大丈夫なのだろうかという不安と、いつになっても変わらないなぁという開きなおり気味の安堵を胸中に抱えつつ、ヒマワリは歩き出したコネクトとアイネスを追った。


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どうもお久しゅうございます、コネクトですー。
どうにもスランプ気味らしく、今回はグダグダ文章でお送りいたしますw


さて、いよいよコネクトたちが本格的に冒険を始めることとなります。ここからが夜想曲の本番と言っても過言ではありません。
現在のメンバー
コネクト…片手剣戦士
アイネス…両手杖魔法使い
ヒマワリ…スティ+槍僧侶
の構成です。ヒマワリは次々回あたりで離脱してしまいますが、新たに回復役がレギュラーに加わる予定だったりw


書くことがないので、今回はここまで。
またあいませうー ノシ