コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

最終章後編でっす!!

さあああてっ、いよいよ最終章ですねー!
最後の最後に壮大なオチを用意したかったんですけど、ストーリーのシリアスさに苦渋の思いでカット…。
まあそんな裏話はおいといて、これで長らく続いたナイツロードがようやく終わりを迎えます。
これで最後!ってことで、すべてのちからを(ry
ではでは、行ってみましょう!


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最終章 結 後編
  最 終 決 戦



黒い閃光が、一直線に駆け抜ける。
「目標相対距離、76…。もう少しだ。皆、準備はできてるかい?」
輸送機に乗る全員が、いっせいに頷く。
「よし…いくぞ!」
目指すは敵の本丸、飛空挺。



砕ける音と割れる音とひしゃげる音が織り交ざった轟音が、飛空挺の廊下に響き渡る。
ナイツロード最後の兵器である輸送機が、飛空挺の中に突っ込んできたからだ。
いまだにほこりを舞い上げる激突点にある輸送機の、口のようなハッチが開く。
出てきたのは、ナイツロードの最後の攻撃部隊。
「よし、ここからはばらけずに進もう。単独行動じゃ、いろいろ危険だ」
突入の先端を担うレイドが、全員に指示を出す。
「あの、質問が」
デルタの声に、レイドが説明をとめる。
「その、動力源を叩く、って言うのは賛成なんですが、ここは一つ、二手に分かれて
ブリッジと動力炉を同時に潰すほうが良いと思います」
その意見には、実はレイドも賛成したかった。しかし、賛成できない理由があった。
「その意見ももっともなんだけど、はっきり言って今はうかつに分散しないほうがいいんだ。
敵の総数が分からない、って言うのも一つなんだけど、大きな理由としては『この飛空挺の構造』にあるんだ」
「構造…ですか?」
電子機器関連に疎いデルタは首をかしげる。レイドはうん、と頷き説明を続ける。
「この飛空挺は、動力炉のみですべてのエネルギーをまかなってるんだ。
エンジンはもちろん、機械のコンソールとか補助動力、果てには兵装に至るまですべての制御を動力炉だけで
管制しているんだ。それだけ重要なところだから、もちろん警備も多い。だからこそ、
分散して各個撃破の戦法をとるよりは、雑だけどこっちのほうが確実性はあるんだ」
ふむ、とデルタは唸り、それでも自身の意見を述べる。
「ですが、それだけ厳重ならば人手も多いはずです。推測する限りでは、
そこにもっとも多くの人員が割かれてるはずですから、別の場所…
たとえばその次に重要なブリッジなんかを攻撃すれば、人手も少々は割かれるはずです。
大々的に攻撃を仕掛ければ、その被害を補うべく多数の人員が送られるはずなので、
移動中のその部隊に残りの味方勢を送り、交戦させれば…」
そこでレイドが言葉をさえぎった。
「いや、別働隊、って言うのは危険すぎるね。それだけの人員がいるなら、
補給として送られる人数もかなりのものだろう。
部隊を分けるなら、いっそ大きく二分したほうが…?」
べきり、というひしゃげたような音で、全員の動きが止まる。
途端、天井から瓦礫が崩れ落ちてきた。直上にいたデルタとレイドは、持ち前の瞬発力で回避する。
しかし、二人とも別々の方向へ回避してしまい、ともに行動するのは不可能となってしまった。
「げほっ…レイドさん!そっちは大丈夫ですか!?」
デルタの声に、反応する声があった。
「デルタ!こっちは全員無事だけど、そっちのほうは!?」
ビットの声だった。レイドの回避方向にいたらしく、瓦礫の向こう側から声がする。
そんなビットの声でデルタは振り返って、現在のメンバーを確認する。
現時点でデルタ側にいるのは、サジェロ、エレク、レイルの計4人。
この人数を抜けば、レイド側にいるのはビット、ルナ、グーロ、ハルスの5人だった。
「くっ……しょうがない!」
レイドの声に、デルタはまた瓦礫のほうへ向く。
「戦力が二分されたんじゃ、一斉攻撃はできそうにない!ちょっと危ないかも知れないけど、デルタ君たちは
その方面にあるブリッジに奇襲をかけてくれ!
人数はこちらのほうが多いから、僕らは動力炉を破壊しに向かう!」
レイドの案は渋々否決となり、デルタの案で行動することとなった。
「デルターっ!」
振り返り、先を進もうとした矢先に、ビットの声が響く。
「生きて帰ろうぜっ!」
その一言以降、言葉は聞こえなかった。


―*―*―*―*―*―*―


バタバタと駆ける音が、通路一帯に響き渡る。
「次はこっちだ!」
レイドを先頭に、ビットたちが続く。
彼らが向かうのは、この飛空挺のすべてを司る施設、動力炉。
しかし、敵もやすやす通してくれるほど甘くはない。
「レイドさん!後ろっからきましたよ!」
ビットの声にレイドが振り向く。追いすがってくるのは、やはり機械兵だった。
「くっ……次から次へときりがない!ビット君、伏せて!」
レイドの指示でビットが飛びのいて伏せる。
その動作と同時に、機械兵の軍団に大量のミサイルが打ち込まれた。
爆発で機械兵は吹っ飛び、その威力で通路に大穴が穿たれる。
「これで、後ろからはこれないはずだ」
その状況を確認するとレイドはランチャーをしまい、先を急ぐように走り出した。
心配そうに大穴を見やるビットだったが、
「どうしたの、ビット」
「ん…いや、何でも」
ハルスの声で、また走り出した。



「せえええいっ!」
エレクの声が響き、直後にドガン!という音が響いた。
「ふーっ、これで13体目か…何体いるんだよタリいなあ!」
レイドたちと別行動をとり、ブリッジを目指すデルタ一行。
こちらでもまた、機械兵の多さに苦戦を強いられていた。
「でも、今までの戦闘で通路に通行不可な場所がいくつかできてます。
後方からは、もうくることはないでしょうね」
なだめているかのような口調で、デルタが促す。
「デルタ、しゃべってる暇はないっぽいぜ」
レイルの声が届き、デルタは眼前を確認する。
「……ふふっ、やっぱり、通してくれるわけない、か」
わざと可愛らしく笑いながら肩をすくめ、懐から手榴弾を取り出す。
同時に機械兵が射撃の動作に入ったが、一歩早めにデルタがピンを抜いた。
「ふっとべぇっ!」
ピュン、と風を切る音と同時に、手榴弾は放物線を描く。
確認した機械兵たちが離脱の動作に入るが、やはり一歩遅かった。
耳をつんざく、とまではいかないものの、それでも大きな爆音が響き、爆風が周囲一帯を満たす。
しばらくたっても銃声などは聞こえず、煙が晴れた後には、爆発があったことを示す大穴があった。
ふう、とデルタが胸をなでおろす。
「そろそろ目的地に着いてもいいんだがなあ……デルタ、まだあるのか?」
サジェロの気だるそうないつもの声に、すばやく返答を返す。
「走って後2、3分。そろそろだから、がんばろ?」
「…………ああ」
何かもの言いたげなサジェロだったが、ため息をついてデルタたちの後を追っていった。



ところ変わって動力炉前。
デルタの推測どおり、扉の前は厳重を越えた警備がなされていた。
そこに、ひとつのボールのような物体が投げ込まれる。
キン、カラカラカラ…という、金属の上を金属が転がる独特の音に反応し、警備をしていた機械兵全員が
音のほうに振り向く。
途端、その球体が爆発。機械兵たちは操り糸が切れたかのように、ドサドサと倒れた。
「ひえーっ、作動阻害ボムのこうかは ばつぐんだ!ってか?」
倒れこんだ無数の機械兵を掻き分け、ビットたちがやってきた。
「やつらの兵器の稼動機構と一致したのが幸いだったね。もしかしたら利かないかも…なんての、
杞憂に終わってよかったよ」
作動阻害ボムというのは、レイドが開発した兵器のひとつ。
チャフグレネードの効果に加え、機械の動作を妨害するための特殊な鉄粉を飛び散らせ、
文字通り作動を阻害することのできる便利な手榴弾だった。
「帰ったら、それ量産しといてくださいよ。
結構便利そうだし、みんなにも好評かも知れませんよ!」
「そうだね。……でもできれば、こんなタイプの敵は二度と出てきてほしくないよ」
レイドが正論を返し、ビットたちが笑う。
「さあ!デルタ君たちの援護だ!いくよっ!!」
レイドの合図で、扉が蹴破られた。
それぞれ武器を持ち、いっせいに動力炉に突入する。
しかし、そこには妙な光景が広がっていた。
「…これは……?」
レイドたちがふんでいたとおり、そこには動力炉が存在した。
しかし、その動力炉の周りに、何か箱のようなものが据え付けられているのだ。
その形状を確認し、レイドの驚愕の声が響く。
「これは……TNT!?」
TNT――「トリニトロトルエン」。地形や施設などに設置し、離れたところから起爆する
いわばリモコン爆弾。
それが、動力炉の周囲に大量に取り付けられていたのだった。
「何?!そんなもん、いったい誰が……!」
ビットの驚きの声をさえぎり、何者かが機械の裏から歩み出る。
「私がやったのだよ」
その人物を知る者が、仰天した。
「あなたは……Dr,ジョウ・ロック?!」
声を出したのはハルスだった。
「なぜここに」を口で紡ぐ前に、眼前に立つジョウ・ロック―――ビットたちが知るところの
キーが、先に口を開いた。
「心配をするな。君たちを道連れにしよう、などという魂胆はない」
先に口を開かれたので多少面食らったが、それでもハルスが言葉を紡ぐ。
「い、いえ、そうではなくて…!なぜ僕らの依頼主であるあなたが、こんなところに!」
その言葉の何がおかしかったのか、キーはハハハ、と笑う。
「たしかに、私がここにいるのは不思議だな……。
だが、君たちに依頼をしたのも、ここに私がいるのも、すべては私の『ある計画』
のためなのだよ」
「ある……計画?」
少々意図を理解できず、ビットがオウム返しにつぶやく。
キーはうむ、と首を縦に振り、続ける。
「君たちは、『ミュー』という男を知っているかね?」
ミュー。その単語を聞き、今まで喋らなかったグーロが口を開く。
「……デルタから聞いたな。たしか、俺たちも会ったことがある」
うん、とルナも頷き、グーロの言葉を引き継ぐ。
「たしか、デルタ君たちを助けに行ったときに戦ったよね。
あいつ、なにかたくらんでるんですか?」
たくらむ、の一言を受け、またキーが喋りだす。
「馬鹿馬鹿しい野望を持った奴だよ。
…………あいつは、ナイツロードをのっとろうとしておる」
「「「はあっ?!?!」」」
本当にバカバカしい内容だったため、ビットとハルスに加えて、ルナも
そんな素っ頓狂な声を上げる。
対照的に、レイドは深刻そうな面持ちで口を出す。
「でも、現にそのミューって奴は、本部をほぼ壊滅状態にまで追い込んだ……」
またキーが頷く。
「そういう奴だ。自身がやると決めたことは、やり遂げるまで思索を怠らない……
まるで、デルタのような奴じゃよ」
一瞬だけ、沈黙が降りる。
「ともあれ、ここの破壊準備はできている。
あとは、向こうに行ったデルタ君たちを援護すればいい!」
レイドの言葉で、全員が顔を上げる。
「うっしゃ!そうと決まれば、いきますか!!」
全員が、そろって走り出す。
目指すはデルタたちの向かった場所、ブリッジ。




「ブリッジ前部隊、壊滅!じきこちらに突っ込んでくると推測します!」
あわただしく声が響き渡るブリッジで、ミューは一人歯噛みしていた。
(まさか連中、直接突っ込むとはな…………。それに、この飛空挺の構造を看破し、
あげく動力炉を掌握されるとは……!)
正直、彼にとっては誤算が大きすぎた。破壊しきったはずの兵器が、彼らに
残されていたのが、なによりの原因だった。
そしてそのなかに、彼の因縁の相手がいることも。
思考をめぐらせる彼に、クルーの声が通る。
「艦長!来ます!」
その一言を聞き、ミューは不穏な笑みを浮かべる。
(……やはり、お前と俺はつながっているな。……いいだろう、こい、デルタ…………!!!)
振り向くと同時に、正面のトビラが蹴破られた。
「お邪魔するぜ!悪党どもぉ!!」
帽子の少年、レイルが声を張り上げ、それを合図に3人が飛び込んでくる。
「応戦しろっ!!」
ミューの鋭い号令がクルーに伝わり、デルタたちに向けて無数の弾丸が放たれる。
「無駄、無駄ぁ!」
しかし弾丸はエレクの放った電撃に阻まれ、あたらない。
「いくよっ!」
「おうっ!」
さらにエレクの背後からデルタとサジェロが飛び出し、クルーの持つ銃器のみを
次々と破壊して回る。
「ちっ……まだだ!刺し違えてでも叩き潰せ!!!」
銃を失った者たちはそのままナイフに持ち替え、デルタたちの命を刺しつぶそうと飛び掛る。
「そんな構えじゃっ……傭兵は殺せねえよっ!!!」
その攻撃を、エレクがすべて受け止める。
「死んどけ!」
ナイフの刃を受けとめている長剣に電撃が走り、ナイフを伝って兵士たちを次々に倒してゆく。
「こんのぉ!!」
「っちぃ!」
デルタとミューも、その手に持つパーティクルセイバーの刀身を削りながら渡り合う。
「俺を刺す気か?!……できねえ、よっ!!」
「くうっ!」
以前にもまして鋭く繰り出される刺突を、苦しいながらもはじき返す。
「まだだ!前やられたボクとは……違うっ!」
ビョウッ、とセイバーが振りぬかれ、一閃がミューの頬を掠めた。
「くそっ!」
続けて繰り出される渾身の突きを、バック転でするりとかわす。
その動作と同調して振られるセイバーの一撃を見切り、刀身形成を一瞬だけ解除。
深く刺さったセイバーをすばやく引き上げ、また刀身を作り上げて斬撃を叩き込む。
もう一度振りぬかれた黒いセイバーとかすりあい、粒子が散ってあたりを埋める。
両者ともいったん飛びのき、体勢を立て直してセイバーを持ち直す。
「……なぜ…そこまで勝利に固執する…………?」
ぜえ、ぜえ、と息を切らしながら、ミューが疑問を投げかける。
「……愚問…だね。……理由なんて…………あって、ないようなものさ……!」
答えを返すデルタも、はあ、はあ、と肩で息をする。
それ以上会話は続けず、ぶつかり合うべくまた走り出す。
突きをいなし、斬撃を叩き込み、受け止められる。
突きの連撃をいなしかわし、おなじタイミングで振りぬき、互いの刃が交差した。
粒子同士の摩擦で止まったのは、双方の頬に触れるか触れないかの位置。
「なぜ……」
先ほどとは逆に、デルタが問いを投げかける。
「なぜ、お前はボクと同じ姿を……武器を持ってるんだ!」
一瞬、答えが返ってこなかった。
「………………簡単さ。俺は……」
ミューの口からは、驚愕の言葉が紡がれた。
「俺は、お前のクローンだからだ」
デルタの動きが、息が、数拍の間止まった。
「なぜ同じ容姿なのか?なぜ同じ武器なのか?なぜ性格だけが違うのか?
……簡単だろう?」
絶句したデルタが、答えを返さない。
「……俺は、ある組織によって造りだされた。……どこか、わかるか?」
ゆっくりと、デルタが首を横に振る。
「…俺は、あのキーの手で作られたんだよ」
「……………………っな?!」
デルタの体が、ようやく始動した。
「いつかあいつがお前に言ったこと、覚えているか?
…『殺戮兵器を作っている』と言ったことを」
殺戮兵器……その単語が、ほんの少し前に彼が、キーが言った言葉を脳裏に浮かび上がらせた。
「その殺戮平気って言うのはほかでもない、俺だよ。
奴はお前の能力を珍しく思い、研究者として研究を重ねた。『どうしたら、あんな人間を
作り出せるのか』ってな。
……そして最初に作られたのが、この俺だ。結果はいうまでもないだろう……、失敗だ。
失敗作は処分されるのがオチだ。だが俺は、それがどうしても許せなかった!」
心なしか、その激昂には悲しみの色が混ざっていた。
「……俺は、俺自身の存在意義が欲しかったんだ。
ただ実験の道具として造られ、そのまま捨てられる。そんな境遇が、たまらなく悔しかったんだ!
……だから俺は示した!俺の!俺自身の存在意義を!」
もはや彼に迷いがなかったことは、誰の目にもわかった。
そんな彼の頬に伝うものが、デルタの胸を苦しめる。
「……わかっていたよ。こんなことしても、存在意義を示すことにはならないなんて事はな。
だが俺は、こうすることしかできなかった!
失敗作として造り上げられ、悲しみのままに破壊欲をばら撒いて、その結果がこれだ!!
………俺は、もう自分がわからないんだよ……」
さらに感情をぶちまけようとするミューの手に、手が当たった。
驚き、顔を上げる。
「……そんなこと、そんなことないよ」
手の主はデルタだった。震える手を添える彼の頬にも、涙が伝っていた。
「そんなことないよ。…君は、失敗作なんかじゃ、ないよ!
……Drがどんなひどいことをしたかは知らないし、知りたくもない。
…けど、誰に見向きされていなかったとしても、捨てられた人間だとしても、
……たとえ誰かのクローンだとしても!……君は、『ここに存在している』んだよ」
デルタの言葉を受けたミューが、苦しそうに顔を伏せる。
「…………俺の存在を、認めてくれるのか?」
苦しさを表に出したその言葉に、デルタはただ、うん、と頷いた。
そのまま彼の肩に手を置こうとするが、振り払われた。
「……くく…ありがとう。…………でも俺は、走り出した後なんだ。
とまれやしないんだ!!」
悲痛な叫びとともに、ブリッジの天井が引き裂かれた。
「なっ!?『機竜兵』!まだ残ってたのかよ?!」
現れたのは、最後の一機と思われる機竜兵だった。
今ここにいる四人の武器は、大方が使用不可能に陥っていた。
「……そうさ、俺はもう、止まっちゃいけないんだ。
もう最後の最期まで、止まることは許されないんだよ!!!」
竜が、爪を振るった。
「それなら!!」
デルタの強い一言に、ミューが再び顔を上げた。
「……それなら、ボクらが壁を作って、君を止める!
破られようとも、君が止まるまで!何度も!何度だって!!」
「その……とおりだっ!!」
叫び終わるのとほぼ同じタイミングで、別の声が響いた。
同時に、振るわれた竜の爪が、砕けた。
「…………レイドさん!それにみんな!!」
爪を砕いたのは、レイドの放った高出力レーザーだった。
「……えらくひどいことになっているな、デルタ」
「ボクたちにも、少しは手伝わせて欲しいな!」
「エレク、それに二人とも!後は僕たちに任せてくれ!」
「遅れてすまねえな!デルタ!!」
「いよいよフィナーレだね!」
さらに飛び込んできたグーロに続き、ルナ、ビット、ハルスが続く。
「みんな!残りの兵士とあの竜をお願い!」
デルタの声に反応したのはビットだった。
「おう!あんなポンコツ竜なんざ、俺が片付けてやるよ!!」
そういうと、ビットが懐から何かを取り出した。
「…………あっ?!それは!!」
そう、ビットの手に持たれていたのは、この戦いが始まる寸前の任務で対象となってた
いつぞやのなぞのリング「グレイヴ・パスキューリング」だった。
「ああ。お前が渡すの忘れてたらしいな?……このチカラ、存分に使わせてもらうぜ!!」
ビットが右手にリングをはめると、周囲に電撃を散らしながらその姿を変える。
「う……おわあっ!」
あまりの衝撃波の強さに、デルタが顔をしかめる。
「さあて、ミンチよりひでえ状態にしてやるぜ!!」
鋭くなった声で言葉を紡ぎ、脚部に力を込めて一気に跳躍する。
「く…らあ…えええええええええええええええっっっ!!!!」
ゴオッ!!という強い風きり音とともに、猛烈なまでの速度で手から伸びる爪を振り回す。
「とどめえっ!!」
ガシュッ、という切り裂かれた音が響き、それを最後に竜は墜落していった。
飛びのいて着地したビットの姿は、いつの間にか元に戻っていた。



「そんな……機竜兵が…俺の切り札が!!」
その一部始終を見て、ミューが絶句した。
「言ったでしょ?…きみが走り続けるなら、ボクらが止める、って」
その一言で、ミューの表情が和らいだ。
「デルタ君……君の慈愛の心には、いつも驚かされるよ」
続いてかかった両者にとって聞き覚えのある声で、双方が同じほうに振り向く。
そこに立っていたのは、この騒ぎの張本人とも言える存在だった。
「…!Dr,ジョウ・ロック!?このっ!!」
だん!とすばやく体制を戻し、キーに詰め寄る。
「貴様…っ!!」
だが、感情をあらわにするミューとは打って変わって、キーはとても悲しそうな表情をしていた。
「…………すまない、ミュー」
「なにっ?!」
「……私は、知らぬ間にお前の心を蝕んでいたようだな。
お前の行動すべてが、自分の存在を示すためのものだったとはな……。
気づいてやれなかった自分が、つくづく悔しいよ」
遠い目で、空を見上げる。
しかし当然ながら、ミューには挑発にしか取れない。
「てめえっ!そうまで思っているなら、何であのときに俺の前で『俺を捨てる』なんて
言ったんだよ?!」
激昂するミューの肩に、キーがそっと手を置いた。
その体制のまま、静かに、諭すように、ミューは口を開く。
「……なぜ私が、君を捨てようとしたのか、その意味がわかるかね?
…失敗作という不遇から、君の心を救いたかったからなんだよ」
いきなりのことで、ミューにはわからない。
それでも、キーは話を続ける。
「欠陥を持った体では、この世界で生きるのはとても困難なものになり、
君自身が壊れる恐れがあった。だからこそ、君の魂を救うため、私は君を
捨てようとしたのだよ……。
道理が通ってないのは私でもわかる。…だが、道理が通らないからこそ、
私はただただ、君を救いたかったんだよ」
キーの話が終わってしばらく、ミューはうつむいたままだった。
心配そうに、デルタが見守る。


やがて、10分が経とうかとしたときに、ようやくミューがその顔を上げた。
「…………そうか」
そのミューの表情に、デルタが少しだけ微笑を持つ。
「……あんたの言ってることは、ぜんぜんわからない。
……でも、俺を救おうとしてくれてた。それだけは、よくわかったよ…」
その目の奥に宿ったものに、キーも静かに頷く。
そしてミューは、デルタのほうに向いた。
「……デルタ」
「何?」
一度だけ目を閉じ、何かを決心したように、目を開いた。
「ありがとう」
その言葉にこもった意味を、デルタはすべて理解した。
その手に、青い光の剣を構える。
「……今度は」
その動きをする前、デルタがぽつりと言う。
「…今度の君は、ちゃんと『存在がある』から、ね?」
「……………………ああ」



最期に彼は、静かに微笑んでいた。









「あっ!あの輸送機!おーい!!」
デス・レックスが墜落してまもなく、ナイツロードの輸送機が戻ってきた。
本部施設を攻撃していた機械兵はすべて活動を停止。
もうナイツロードを攻撃するものはいなかった。




こうして、少しの悲しみとともに戦いは終わった。
余談だが、この戦いの後、デルタたちナイツロードメンバー全員の
ランク上げが行われ、裏を知っていたレッドリガの計らいにより、
デルタ一人、二階級突進となったらしい。






               ナイツロード これにて完結。




*********


これで、デルタたちとも見納めか……。
これにて、1年間不定期的に連載してきたナイツロードは完結となります。
完全に趣味と勢いだけで造ってきましたが、正直楽しかったですw
まだ学園天国も始まったばっかりだし、新しい小説も作ってるし、
コネクトの活動はもまだまだ終わりません!
これからも、こんなへっぽこ作者をよろしくお願いします!
ではでは、いつの日かまたデルタたちに会えることを祈って!
ノシ!!