コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

異世界行ったら門前払い食らいました

第16話 霧晴れる先に


「――っ」
目を覚ますと、目の前はすでに真っ白い霧だった。慌てて視線をそらそうとしたが、異常に気付いてやめる。
俺の背中に背負われている大剣から緑色のライトエフェクトが伸び、俺の周囲で幕を張るように渦巻いていたのだ。風の宝珠は、名前に違わぬ
力を持っているようだ。俺を助けてくれた馬みたいな精霊を思い出して一つ笑いながら、右肩後ろから突き出るように伸びていたグリップを
がっちりとつかみ、音もなく大剣を抜き放つ。
――――あれ、そういえばこれ使い方教わってないぞ。たしかウィンは「闘志と意志」でその力を顕現させる、とか言ってた気がするが、正直
どうしろっていうんだ。
とはいうが、ともかく行動しないと確認するものもできない。今のところ危険はないだろうから、一度発動の練習でもしておこうか。
「……ふぅっ!」
力を込めて、刃が形作られるのを思い描く――――はずだったが、さてどんな形にしたものか。そもそもどう使えっていうんだこれ。
踏ん張ってちっさい剣を必死に握りしめているという、言いようのないシュールな光景でしばらく固まっていた俺は、地を揺るがす振動で
はじかれるように顔を上げた。
何かいる。それもオオカミやゴーレムよりも、もっと大きい何かが。周囲を見回すが、周りは変わらず霧の只中だ。この視界の悪さでは、
同行しているはずのカノンやゼックを見つけようにも見つけられない――というか見つかっても二人とも幻で戦えないはずだ。
となると、第一目標はこの霧をどうにかすることになる。方法は、意外と早く見つかった。
手中の大剣にはめ込まれていた「風の宝珠」が、ちかちかと輝いているのだ。まるで、自分の力を使えとでも言わんばかりに。
迷っている暇はない。今この瞬間にも、振動はどんどん迫ってきているのだから。
伸ばした指で、はめ込まれていた宝珠をさらに深く押し込む。カチッ、という小気味いい音とともに、宝珠は深くはめ込まれた。
直後、くぼみに囲まれていた水晶のようなパーツ――ずっと灰色だったので何かわからなかった――が、一瞬で深い緑色に変化する。
宝珠の色と同じなことから、おそらくははめ込まれた宝珠の力を増幅する力があるのだろう。そう考えながら、今度こそ成功するようにと
両手で握った柄に思い切り力を込める。
瞬間、剣先に相当する部分から、ヴン、という機械的な音を立てて、半透明の緑色の刃が勢い良く伸びた。一瞬で切っ先まで生成され、
直後にプラモデルのクリアパーツのような質感を得て、大太刀のように長い刀身が生成される。
恐る恐る触ってみたが、どうやらこの刃には実体があるらしい。どうやったら実体化するんだと突っ込みたかったが、以前カノンの魔法で
激流に押し流された経験があるからやめておいた。
それよりも重要なのは、この刀身からわずかに風が吹いていることだ。体感では弱風に設定した扇風機みたいな風だが、もしかするとと思いながら
剣を大上段に持ち上げる。
「――――らぁぁっ!!」
振り下ろした剣から、ライトエフェクトを伴った旋風が巻き起こった。突風が霧の只中に消えたかと思うと、そこから霧そのものを
切り裂きながら突き進む。風圧の余波を受けた周りの霧もどんどん晴れていき、やがて周囲は先程まで見えていた森の中に景色を変えていた。
成功だ。風の力を持っているとは感じていたが、まさかこれほどまでとは。さすが精霊の力を結集した大剣なだけはある。
そして、霧の晴れた森の中で、巨体がうごめくのを確かに見とめた。


――龍、だ。
たとえるなら、某有名RPGに出てきた羽のないドラゴンの体に、フジツボのようなでこぼこがついたドラゴンとでもいうべきか。
毒々しい紫色の外殻から突き出た、小さな火山のような場所から、蒸気のような霧が噴き出ている――ということに気づき、俺ははっと顔を上げた。
そうだ。ここに迷い込む前、カノンから聞いた。俺たちが囚われていた魔障霧は、「ミストレックス」という名の龍が生成しているということを。
ということはつまり、目の前で立ち止まって霧を吹き散らしつつ、俺を憎々しげににらみつけるこのドラゴンこそ、カノンが言っていた
ミストレックスなのだろう。だが、どうしてこんな森の中で?
彼女から聞いた話では、ミストレックスは高山地帯にしか生息せず、起伏や道も険しいため下に降りてくることはめったにないはずだ。
しかも気性は荒く、こんな人の通り道に出没するなら絶対に冒険者による討伐隊が結成されているはず――――。
「……みんな、やられてるのか」
高山地帯などという危険な場所に住む魔物なだけあって、その強さはかなりのものだろう。勝てるだろうかと考え、冷や汗が額を伝う。
まだまだ新米もいいところの俺に、戦えるだろうか。不安に思う反面、心のどこかでは倒してやりたい、負けたくないという気持ちが
くすぶっている。
どちらにしろ、こいつを倒さない以上は先に進めないのだ。ならば――――!
「らあぁぁぁっ!」
雄たけびをあげて大剣を振りかぶりつつ、俺はまっすぐにミストレックスへと突撃する。相手はこちらの殺気に感づいたのか、短い前足を
振り上げて爪での攻撃に入った。が、その速度は走っている俺が目視で追えるほど遅い。
こういうのは威力が高い、というのがセオリーだが、当たらなければどうということはないと某少佐も言っていた。その教えに従って防御は行わず、
振り下ろされる直前に地を蹴って左方向へと跳躍する。
直後、ズドン!という強烈な音響とともに、ミストレックスが引っ掻いた部分がごっそりと抉られた。固い土を深々と、それもあっさり
削り取るのだから、生身で当たったらと考えたらとても笑えない。
冷える背中を気合で無理やり温めて、着地した俺は一直線に突っ込む。動作の緩慢さは、そのまま相手の挙動の遅さにつながると、
今までの戦い――言ってもイノシシやオオカミ、最下級ゴーレムという新米コースな敵ばっかりだけど――で学習していた。
「おおぉっ!!」
咆哮一発、俺が振り下ろした風の大太刀は、狙い違わずミストレックスの左前足を――ぶった切った。切り飛ばされたミストレックスの前足が
空中でくるくると回転しながら、先ほど前足にえぐられた場所に重い音を立てて落ちる。
……あれ、これ威力やばくない?ドラゴン系って硬かったり物理が効きにくいイメージあったんだけど、それをたった一振り――それも
ほかの冒険者に比べてまだまだ非力な俺の腕力だけで切り落とせるとか、どんなチートだよ!
という思考は一瞬のうちに蹴り飛ばしながら、今度はバックステップで後退する。足をつぶされたことで激昂したのか、ミストレックスがその
大あごで直接噛みついてきたのだ。ガチン、ガチン!という硬質な音と、こすれた衝撃による火花をまき散らしながらあごが迫る。
火花が散るほどの噛みつき速度ってどうよ。何、こいつ一般冒険者に勝たせる気さらさらないだろ?いやまぁ、野生生物なら当然か。
「んのやろっ!」
続けて飛来した左の前足に向けて、俺はほとんど無意識で大太刀の切っ先を突きつける。
瞬間、大太刀が無数の緑色の糸に変化したかと思うと、高速でミストレックスの足に飛び掛かり、その左足をバラバラに切り裂いた。俗に言う
衝撃波やかまいたちの類なんだろうが――――だから強すぎじゃないかと。そんじょそこらのチートよりひどいぞこれ。
ともあれ、そんなことを考えつつも、ミストレックスの解体は完了したのであった。
うん、ぶっちゃけて言うとどこからどうみてもいじめでした、本当にありがとうございます。


***


「失礼いたします」
暗がりがあたりを支配していた。
窓から見える景色は全体的に暗い紫色に包まれており、だれが見ても禍々しい、というイメージを抱ける様相を醸し出している。
そんな場所に、ここは建っている。
「……ガイルか。どうした」
そして暗がりの中には、人がいた。暗い金色の髪をウェーブにして、浅黒い体躯を漆黒の甲冑で包み込んだ、いかにも「黒騎士」という言葉が
似合いそうな男が、そこにいる。黒騎士の前にひざまづいて、忠誠を示す体制になったのは、魔導士のような服に身を包んだ男だった。
銀色の髪と冷たい鉄色の瞳は、頭を垂れているせいで黒騎士には見えない。
「緊急の報告です。……セラ森林に配置していた霧龍が、討滅されたとのことです」
男の簡潔な報告に、黒騎士はぴくりと片眉を持ち上げた。だが、その顔は関心のような、驚きのような表情に変わっており、とてもではないが
報告の内容に不服が存在したり、報告に憤慨するようなものではない。
「何者が討伐した」
「最後の観測隊によると、討伐したのは……」
そこで、男が一瞬言いよどんだ。それだけで黒騎士は何かを察したようだったが、口には出さず、男の報告が来るのを静かに待つ。
「光る大剣を背負った、人間だそうです」
「……そう、か」
光る大剣。
それは、黒騎士の苦い記憶でもあった。だが、今自分に仕えている男に話すような内容ではないと考えて、黒騎士は口に出そうとしていた
言葉を変える。
「その人間の行き先はヴォルケス火山だ。……レヴァンテを向かわせろ」
「は……ヴォルケス火山ですか?」
一瞬裏界を遅らせた部下を見据えつつ、そうだと繰り返す。
「この記憶が正しいならば、そこに炎の大精霊が住み着いていたはずだ。その人間は、かならずそいつに力を請いに行く」
説明して、ようやく部下は合点がいったようだ。鈍い奴だと内心で笑いながら、部下の言葉を待つ。
「承知いたしました。……内容は、大精霊の妨害で構いませんか?」
「ああ。大精霊とかかわろうとするものすべてを潰せ、と伝えろ。いいな」
「はっ!失礼いたします」
会話を終えた男は、そそくさとその部屋から退室していった。再び静寂が部屋を支配して、黒騎士は窓を見やる。視線の先には、
たった今奪還されたセラ森林が、戦いの場となるヴォルケス火山があるはずだ。
――レヴァンテで足止めになるかどうか。
一抹の不安を残しつつも、黒騎士は部屋を出た。自らの目的を、達するために。


*********


ということでこんばんはー、コネクトにございますー。
はい、どう見ても主人公チートです本当にありがとうございました。いやまぁ理由はあるのでおいおい説明しますが、先行して簡単に説明すると
「仲間の実力インフレに追いつくため」に他ありません(何
だってキャラ設定集見てくれた人ならわかると思いますが、この先タクトの仲間になる人たち揃いも揃ってスーパー人間ですよ?
そんな中に現代人の人間一人ってどうですか、主人公の面目丸つぶれでしょうw
といってもこのチートパワーはみだりに使用するつもりはないので、その辺はご安心くださいなー。


劇中に出てきたミストレックスですが、劇中の表現に倣って強さを表現すると「Aランク冒険者でも油断したら負ける」レベルの強敵です。
魔障霧の脅威はもちろん、本編で使用した物理攻撃の強烈さは、たとえSSランクでも当たればタダでは済まないというトンデモンスターですw
そんな強靭な四肢をもったミストレックスをぶった切れる大剣も大したものだといわれそうですがね!まぁ大精霊様の加護つきだから、ということに
しておいてくださいw


そして今回よりいよいよ始動した、ミストレックスを操った背後の存在。かの黒騎士はいったい何者なのか、その目的とは!
タクトたちに迫る魔の手は、果たしてこの物語をどう動かすのか!
なーんて予告をしてみます。終盤のやりとりは正直入れるか迷ったのですが、焦らしたほうが面白いという考えのもと、これからを
期待していただくために挿入しておきましたw
自戒を楽しみにしていただければ幸いですー。


お次は今回大活躍したチートアイテム、精霊の大剣を描いてみたのでご覧ください!

本体は黒い部分であり、伸びている白い刃は宝珠によって色が変わる、という設定になっています。基部の金色部分には六つの穴が空いており、
ここに宝珠をはめ込む方式になっています。劇中にてタクトくんが手に入れた「風の宝珠」は、グリップ方向を下に向けた絵で
一番下、つまりグリップのすぐ上にはめ込む形になってますー。基本どこにはめても同じなんですがねw


それでは今回はここまで。
またあいませうー ノシ