コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

【新連載予定】ヴァーチャル・ウォー

銃声がこだまする。



駆動音が、無人の荒野に響く。



鋼鉄の足音が、広い世界に轟く。



≪すまねぇ、あと頼んだぞ大介(だいすけ)っ!!≫
声が聞こえると同時にノイズが走り、次いで遠くから爆発音が響いた。どうなったのかを察した彼は、歯噛みする。
撃墜されたのだ。開始から10分間、ずっと三人で持ちこたえた前線は、ついに瓦解した。残るは、彼一人だけだった。
直後、スラスターの音響が外部スピーカーを通して聞こえてくる。モニターに表示された敵機の数は、およそ33機。
なんということはない、今まで何十回も相手をしてきた数。これよりも多いときは、それこそ何百とあった。
――いつものことだ。そう自分に言い聞かせて、彼は握りしめた操縦桿のトリガーを引き絞る。


数秒ののち、轟いたのは。
閃光と、
銃声と、
爆発と。




近未来。
ネット世界が「第二の世界」として定着し、ネット世界と現実世界を行き来して生活するのが当たり前になった世界。
ある日発売された最新ハードを用いたゲームが、爆発的なヒットを飛ばしていた。
その名は「ゼクター・オンライン」、通常Zo。プレイヤーは巨大ロボット「ゼクター」を操るパイロットとなり、プレイヤー同士で
開催される戦争……「ゼクトウォーズ」を戦い抜く。
VR技術を惜しみなく投入したリアルな戦場と操縦、高い戦略性を兼ね備えたそのゲームは瞬く間にヒットを飛ばし、いつしかZoは
世界を代表するゲームとなった。
活躍次第でリアルマネーも稼げるという内容は、それまでゲームに興味がなかった層さえも引き込み、中には仕事さえもやめて熱中する
人間が出てしまうほどの作品となったZoは、界隈で「魔のゲーム」とさえいわれるほどに発達した。


そんな時代が続いて4年。
あまた作られたプレイヤーチーム、通称「レイド」の一つは、今日も負け戦を行っていた。



Virtual War
section1 弱小レイドと名工



「あぁークソッ、あと一機で相手全滅だったのに……」
頭をかきながら、少年がログイン用の機械――プレイヤーが復活するためのリスポーン地点にもなる――から歩み出てきた。目の前には
レイドで使用する共同のロビーがあり、そこには三人の先客がいた。
「お疲れ大介。まぁ、あの数はしょうがないよ」
そういって飲み物を手渡してくるのは、大介と呼ばれた少年と同じレイドに所属する彼の親友「天海誠(あまみまこと)」。
狙撃特化のゼクターに乗り、的確な照準合わせ(エイム)で目標を打ち貫いている彼だが、戦闘になると決まって最優先で狙われてしまい、
いつも一番最初にこの拠点へと戻ってくる苦労人だ。
普段からローテンション気味なしゃべり方をするのが特徴的だったが、現在の彼はそれに輪をかけてローテンションになっている。
暗緑色の短い頭髪と人懐っこそうな顔は、現在進行形で失意に沈んでいた。
「そろそろ戦法変えたほうがいいかも……っても、俺ら他やったら弱いよなぁ」
誠の横で頬杖をついて愚痴る体格の大きな少年は、同じく大介の親友である「坂東義一(ばんどうよしかず)」。索敵型のゼクターに乗り、
的確な探知と情報伝達の技能を持っているのだが、偵察機ゆえの脆さとメンバーの少なさからくる戦力不足により、誠と並んで
早くに拠点へと戻ってきてしまう。
生来の楽天家であり悔しがったり落ち込んだりすることは稀なのだが、そんな彼も現在の状況には滅入っているらしい。燃えるような赤の
頭髪を掻きながら、何か両案はないかと頭を回転させている。
「というか、フレ専だからってボコるのやめてほしいよなー。タダでさえこっちは戦力少ないのに、なんだよ今回の4体48って」
口を尖らせながら飲み物を飲んでいるのは、メンバー最後の一人であり同じく親友の「沢辺祐樹(さわべゆうき)」。
遊撃型――というよりは突撃型、といったほうが正しいが――のゼクターに搭乗して前線を押し上げるのだが、二人の仲間が先んじて
撃破されてしまうことからよく弾切れに陥ってしまい、結局死に戻りになってしまう。単独での同時撃墜記録――乗機が撃破されるまでに
撃墜した敵機の数のことだ――では最高で33機という腕を持つ彼も、現在は愚痴でうっぷんを晴らしていた。
まばゆい銀色の髪と同じ瞳は、失意の色に沈んでいることをありありと示している。
「やっぱりさぁ、大介も前線出たほうがいいって!背水の陣でいきゃあ何とかなるだろ?」
「……まぁそうなんだけどな。でも、少しでも長く生き残って相手を全滅させるほうが、まだ勝機はあるんだよなぁ」
敵をみんな潰せるかは別だけど、と付け足しながら椅子に座るのは、四人で運営されるフレンド用レイドの
リーダー「矢代大介(やしろだいすけ)」。拠点防衛用の重ゼクターに搭乗して戦う傍ら、自ら自分用のゼクター設計と開発も行っている。
最後尾で戦う都合上撃破も一番最後になるのだが、その散り方が毎回壮絶だとよく語り草にされているらしい。
黒金のようにつやのある真っ黒い髪と、その下から除く黄金色の双眸は、最近の状況によってすっかりくすんでいた。


机を囲んでため息をつく彼らが抱えている問題。
それは、彼らが運営するフレンド用レイド「クリュサオル」が、ここ最近必ず敗北を喫してしまうということだった。
このZoにて行われるPvP――プレイヤー同士の戦いは、すなわちレイド対レイドの「大規模戦争」である。当然人数が多ければ強く、
少なければ弱い。
だが、少し前までの彼ら「クリュサオル」は違った。一人一人が突出した技能を持ち、連携の制度も相まって、破竹の勢いで
レイドランキングを勝ち上がっていたのだ。
そんな彼らの栄光はすでに風化し、今はただ資源を絞り出すためだけに戦争を挑まれる始末だ。クリュサオルと当たったレイドは
それだけでレイドランキングを一つ二つ上昇させられる、といううわさが流れるほど、彼らは敗走を重ねに重ねている。
負け続けによるテンションの降下も敗走の原因の一つだったが、おおもとの原因は別にあった。すなわち、「ワンオフ型ゼクターの増加」だ。
このZoでは全プレイヤーの目標の一つであるとも言われるワンオフ機だが、つい最近になってその数が爆発的に増加する傾向にある。
理由は近日公開されるアップデートのため、と言われているが、そのあたりは彼らにとっては関係ないことだ。
それよりも問題なのは、生み出されるワンオフ機がどれも高い性能を持ち、圧倒的な戦力となることである。トップレイドなどになれば
全員がワンオフ機を有し、ワンオフワンオフ大戦争が繰り広げられることでも有名だ。
その点、クリュサオルは劣っていた。工匠としての腕を持つ人間がいるにはいるが、その大介の腕もまだまだ未熟と言って差し支えない。
4人中2人が、量産機である砲撃機「ゼノン」と遊撃機「クーゲルバレル」を使用している現状では、人数の少なさも相まって
大敗を喫するのも無理はない事実なのだ。


一足先に拠点のロビーを離れ、大介はゼクターの格納庫へと赴いていた。彼の仕事はチームを運営することと、全員のゼクターの整備である。
そのことに関して、大介は文句をつけていない。むしろ幼いころから機械いじりが大好きだった彼は、ゼクターを整備することも
楽しみの一つとしてとらえていた。
破損が一番激しい機体は、決まって祐樹が搭乗している「クーゲルバレルc(カスタム)」だ。前線を押し上げ、なおかつ先行して敵と接触
撃破を行いつつ、近接戦闘能力に乏しい二人の機体を守るため、縦横無尽に戦場を駆ける。
高い技術を持つ祐樹ならではの戦法だったが、結果としてそれが早期脱落の原因となっているのは、内心複雑だろう。そう考えながら、
大介は機体データをチェックするための端末を一瞥して、修理用装置に修理作業の命令を行った。
クーゲルバレルcの修理が開始されたあとは、続けて誠が搭乗する「ゼノンc」のチェックを行う。狙撃用のスナイパーライフルを装備して
遠距離の敵を撃ち貫くことに特化している機体は、大抵装甲面が貧弱なため一撃で沈められてしまうのだ。
誠のゼノンcもその例に漏れず、破損した部分はコクピットブロックただ一か所だった。こりゃ上半身ごと持ってかれてたな、などと
余計な想像をして身を震わせながら、クーゲルバレルcの時と同じように修理命令を飛ばす。
並行して修理作業が進む中、次に手を付けたのは義一の搭乗する機体「アビオン・デ・レコノシミエント」、通称ADRだ。この機体は
ほか二人の機体とは違い、すべてのパーツ――さすがに内部ソフトや主機関は市販品を使っているが――を大介が手掛けたワンオフ機である。
広範囲の索敵と探知に優れた高性能な偵察機だが、電算装備にキャパシティを割いたおかげで武装、装甲ともに貧弱な仕上がりとなっている。
それでもまぁパイロット本人は大満足していたのでよしとしながら、手早く修理命令を済ませて、大介は自身の機体であるワンオフ
「フール」の修理に取り掛かった。
愚か者の名を持つこの機体は、その重量と装甲、搭載した超火力武装の数々から、挑んできた敵ゼクターをほとんど破壊するほどの
戦闘力を秘めている。代償として身動きがほぼ取れないのだが、それを補って余りある攻撃性能を手に入れた機体だ。
だが、最近ではその重装備もデメリットと化しつつある。機動力のあるゼクターが増加し、フールの攻撃そのものが外れてしまうことが
多くなったのだ。
そろそろ高機動型の砲戦機でも組もうかと考えつつ、修理命令を飛ばした大介は、格納庫の隅に設けられた休憩スペースに横になった。
ここ最近は、修理が完了したそばから「ランダムマッチ」と呼ばれる対戦カード決定方法で呼び出されることが多くなった気がする。
ただでさえボロ負け状態なのに何度も挑まれるのは、資材消費の量と疲労の割に合わない。ゆえに、大介を初めとしたメンバー
ここ最近かなり疲弊しているのだ。
控えめな照明に照らされながら、額に腕を当ててふぅとため息をつく。大介は特に、資材のやりくりや軽蔑の目線から逃れるために
仲間たちよりも気持ち多く疲労を重ねていた。いくばくもせずに、睡魔が彼を襲う。
その時だった。大介の腰に取り付けられていたゲーム用端末、通称「ファイル」が着信を知らせる電子音を鳴らした。ここ最近端末が
鳴ることもなかったので、ぎょっとしながら何事かと飛び起きる。
音源に気付いて端末を取り出すと、起動させてメールボックスの欄をチェックする。予想通り、そこには今しがた受信したメールがあった。
だが、差出人は不明――アンノウンと示されている。おまけに、件名も空欄だ。
いたずらメールか何かか。そう結論付けつつも、中身を気にした大介はメッセージを開封する。だが、メールの内容は彼の予想とは
おおよそかけ離れたものだった。
『矢代大介へ
 突然のメールごめんなさい。
 実は、あなたにお話ししたいことがあります。予定が入
 ってなければ、今日の18:00にフリーチャットサーバー
 08のレストコーナーに来てください
 予定があるなら、このアドレスに返信お願いします
 では、会えるのを楽しみにしています        』
「……なんだ、こりゃ」
思わず、大介はつぶやいた。こんな内容のメールは、生まれてこの方頂戴したことはない。いたずらにしても、ずいぶんと丁寧な文章だ。
ならば釣りかスパムかと推測するが、しばし考えても理由は見つからなかった。純粋に呼び出しているのかという考えに至ったのは、
それから10分ほど経過した後だったということは言うまでもない。


***


謎のメールが示していた18時になる五分ほど前。大介はメールに応じることを決めて、指定されていた場所である
「フリーチャット」と呼ばれるコミュニケーション用サーバーへと赴いていた。
町の中央広場をイメージした、近未来的な建物と溢れる緑は、プレイヤーを現実というしがらみから解放してくれると評判である。
傍らの広場では、ブーメランパンツにヒゲという傍から見れば恐ろしいアバターが変なポーズを連発していた。嫌なものを見たなと
震えながら、大介は足早にレストコーナーへと向かう。
レストコーナーはその名の通り、仮想の食事をとることができる場所だ。基本的に空腹や満腹という概念が存在しないこの世界では
食事という概念の意味はないのだが、多くのスポンサーが提携しているらしくコーナーには所狭しと店が立ち並んでいた。
現実の時間が夕食時ということで、人数も少なく閑散としているとはいえ、目的の人間を探すには少し苦労しそうだと大介は思う。
「あんた、矢代大介かい?」
だが、またしても彼の予想は裏切られることとなる。すぐ後ろ――ドリンクバーに相当する場所から、涼やかな少女の声が聞こえてきたのだ。
振り向くと、そこには声色通りの少女が、ドリンクのストローを咥えながら佇んでいた。アバターとしてカスタマイズされているのであろう
髪は、金属のように艶のある鉄灰色。一目でさわやかな印象を与えるアイスブルーの瞳は、じっと大介を見つめていた。
身長からすれば15,6歳だと思われるが、その瞳に宿るどこか達観したような意思は、彼女の年齢をあいまいにしている。雰囲気から見れば、
大介と同年代だろうか。
何者だろうか。そう考えつつ、彼は口を開く。
「あんた……俺を呼び出した人か?」
「あぁ、やっぱり君だったんだ!いやー、実際に会えて嬉しいよ」
回答になっていなかったが、その口ぶりは間違いなくメールを送ってきた人間であることを物語っていた。こんな少女が俺に
何の用だろう、と考えつつも、大介は少女の言葉を待つ。
「とりあえず、立ち話もアレだから適当に座ろうよ」
「あ……あぁ、わかった」
少女に促され、釈然としない顔をしながらもつれ立って適当な席を確保する。


「それで、君は俺に何の用なんだ?」
飲み物をとってきてひと段落ついた後、大介はさっそく本題を切り出した。そもそも相手が何の目的をもって彼に接触したのか、
それさえもわからない状況で話を進める気には、到底なれない。
「ん、そうだね。とりあえずそれを話す前に、まずは自己紹介しておくよ」
そういうと、少女は一つ咳払いを挟んで再度口を開く。
「あたしは『涼風翼(すずかぜつばさ)』。レイドをまたにかけるさすらいのゼクター工匠さ。よろしくな」
少女――翼の名前を聞いた大介は、びっくりして椅子から転げ落ちそうになった。慌てて体制を直しつつ、その名前を鮮明に思い出す。
涼風翼。またの名を「溶断剣を愛する名工」。
その技術はトップレイド所属の工匠とも比肩し、彼女の作るゼクターは正しく一騎当千の性能を誇るとも言われる、知る人ぞ知る名工だ。
今やメジャーなカテゴリとなった、高周波で発生した熱を利用した格闘兵器「ヒートブレード」の原型を作ったことでも有名であり、
彼女を確保したいと動くレイドは後を絶たないらしい。
「…………涼風、って、あの涼風か?!マジで!?」
驚愕のあまり声を荒げながら、大介は翼に勢いよく問いかける。問われた本人はその勢いに若干のけぞりつつも、笑顔で応対した。
「まぁね。あたしとしてはそんなに有名なつもりもないんだけど、周りが勝手に騒ぐからいい迷惑だよ」
あはは、と笑いながら飲み物に口をつける翼を前に、大介は一人別の驚愕に見舞われていた。
メジャーな噂では、涼風翼は男性だといわれている。むろん大介もそれを信用しているのだが、目の前で翼と名乗る少女を見て考えが変わった。
オーラ、とでも呼べばいいのか。彼女から感じられる一種のオーラにあてられて、彼の感が目の前の少女が本物だとささやいている。
だが、仮に彼女を本物と仮定して、そんな有名人が一体自分に何の用なのか?大介の脳裏では、基本的に嘲笑されるか
イヤミを言うだけ言われてさようなら、というケースが浮かんでいた。なぜそんなケースなのかというと、実際に起きた出来事だからである。
今までも名工と名高い人々が訪ねてきて、自作した機体を鼻で笑われたことは何度もあった。この少女も例に漏れないのかと
ひそかに警戒していると、追って彼女が「んじゃま、本題に入るよ」と言った。いったん思考を切り替えて、翼の話を聞く体制に入る。
「単刀直入に聞くよ。……君たちの『クリュサオル』って、リーダーの君から見てどんな感じ?」
投げかけられた質問は、大介の想定していたパターンとは全く違うものだった。内心で驚きつつも、素直な感想を返す。
「……ぶっちゃけた話、今のままでは戦力不足だと思う。ゼクターもそうだけど、何より人手が足りないんだよなぁ」
それは、本心からの悩みだった。フレンド用レイドであるものの、その中身は人手不足も甚だしい状況だったのだ。
拠点の防衛装備を動かす人間もいなければ、侵攻に出る人手も足りない。あと一人でも多ければと考えたことは、何度あったかわからない。
散々な現状を思い出してげんなりしていると、ぱんと翼が手をたたいた。
「じゃあ、話が早い。……君たちクリュサオルさえよければ、あたしをチームに加入させてくれないか?」
「……へ?チーム、に?」
提示された提案を、大介はしばしの間理解しかねた。そして数刻の後。
「え――――えぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
派手に驚愕した。その音響たるやレストコーナー全体に響き渡るほどだったが、幸いにも現在人影は二人以外存在しなかった。
己の行動を恥じつつも、大介は驚きを隠さないまま質問を重ねる。
「な、な、なんであんたみたいな有名人が!?うちに?いやいやいやおかしいだろ!当てつけか、当てつけなのか!そうじゃなけりゃ
踏み台か?どうして俺らなんだっつのおぉぉぉ!」
質問、というよりは、半狂乱といったほうが正しいのかもしれない。騒がれた当人は慌てつつも、大介をなだめる。
「ちょ、ちょちょちょ落ち着いて!何も君たちを蹴落とそうなんて思っちゃいないから、ね?」
それから大介が収まるまで、軽く5分の時間を要した。


「……エフン。ともかく話を戻すけど、あんたはどうしてうちに入りたいっていうんだ?」
おさまった大介が一思いに飲み物を飲みほし、改めて翼に問いかけた。問われた当の本人は、いやぁと少し照れたような表情を作る。
「いや、まぁ、その……言いにくい話なんだけどねぇ」と前置きを置いて告げられた言葉は、衝撃的なものだった。
「……実は、前にいたレイドを解雇されちゃってね。路頭に迷ってたんだよ」
解雇。つまり、これほどの腕を持ったゼクター工匠を、クビにしたということ。その事実に、大介は何度目とも知れない驚愕に見舞われた。
「――――マジで、解雇?」
「マジで、解雇。……いやはや、恥ずかしい話だけどね。向こうのリーダーさんに、あたしの性格が合わなかったらしくって」
「……ハァ?そ、そんだけで解雇ォ?」
再び、先ほどとは別種のベクトルの驚愕が大介を襲った。
いや、冷静に考えれば、それもよくある話なのかもしれない。ゼクター工匠を生かすも殺すも、すべてはレイドリーダーの一存だ。
そのレイドリーダーが気に入らないのなら、いくら腕が良くても切られることはある。もっとも、本当に腕がいいのならば
性格だけできるようなことはないはずなのだが。
もしかすると、この少女を偽物だと仮定しての解雇だったのだろうか。そう考えながら、大介は顎をさする。
「うーん……いやまぁ、ウチに受け入れるのは構わない、っていうかむしろこっちから頼みたいくらいだけどなぁ」
大介の脳裏には、ここ一週間で積み上げた連続敗北記録がちらついている。はたして彼女を受け入れることは、彼女のために
なるのだろうかと考えて――ひとつ、首を振った。
「……ま、そっちが入りたいなら歓迎するよ。俺らのことを知ってるのなら、な」
「もちろん知ってるさ。あたしは情報収集にたけているんでね。……過去にゼクトウォーズ界で一世を風靡した、期待の
四人組レイドのチームに加入できるなんて、あたしは中々運があるのかもねー」
はたして、本当に分かっているのだろうか。そんな不安を覚えながら、大介は端末を操作してチーム勧誘を行う。


これが、彼らの運命を変えることとなるとは、露ほども知らずに。


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またまた新小説でこんにちはー、コネクトにございますー。


はい、始まってしまいましたよオリジナルロボット小説!
かねてよりアイラとは異なる「完全新規のロボットもの小説を書きたい」と考えていましたが、このたびついに実現することとなりました!
といっても実は、基幹部分は盟友であるアハト氏の作品をパクリスペクトさせていただいております。ついでに言えば、実はこの小説
もともとはアハト氏が執筆している「In this trivial very small world」という小説のスピンオフとして制作する予定だったんです。
が、仕事場で構想を考えているうちに突如設定の神様が脳内に降臨し、それを自分で独自に練りこんでいるうちに
アハト氏の作品からだいぶかけ離れてしまい、結局一部設定をパクりながらオリジナル小説として完熟させた次第にございます。
スピンオフを了承してもらっているのでこれも大丈夫だと信じながら、ともかくは連載する「予定」として執筆していきますー。


本小説は「ロボットもの、戦争ものの新しい形」というテーマを掲げております。っつっても設定が出尽くした感のある
ロボットものでそのテーマを謳うものはごまんとあるのですが、その中でも特に新しいものとして描いていくつもりです。
物語の舞台である「ゼクター・オンライン」の元ネタは「PvPの戦争があるゲーム全般」と「アーマード・コア」、「アーマード・コアVD」
が基盤となって生成されたという経緯を持っております。このためロボットのカスタム要素が存在し、またガンダムのように
ワンオフで作成された機体も存在する、というややこやしいゲームです。
もっとも、カスタムもワンオフも作成するのはプレイヤーであり、売り出されているのはどれも量産機、という設定ですがね。
すみません自分でも言ってることが分からなくなってきたのでここで打ち切りますw


第一話である今回は登場人物の紹介と、主人公とヒロインの出会いを描いてみました。昔っからロボットに乗る主人公の横には
ヒロインがいましたからね。セオリーってやつですw
そして主人公とともに歩むゆかいな仲間たち。彼らがこれからたどるのは、栄光の道か破滅の道か。
そんなことをほのめかしながら、今回はここで終了とします。
それではまた次回あいませうー ノシ