コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

短編小説 異世界トリップした俺の相棒は、一振りの剣でした。


 ふと、意識が戻る。

 はて、自分はさっきまで何をやっていたんだっけ? そう思いながら身を起こせば、そこには火の消えた焚き火と、遠くにそびえる山の合間から顔を出し始めている、太陽の姿があった。

「おはようございます、我が主《マイ・マスター》。よく眠れましたか?」

 ほど近い場所から聞こえた声に振り向いてみれば、そこには一振りの剣が、抜身のまま地面に突き立っている。眼前に広がるその光景を見て、ようやく俺は自分が野営をしていたことを思い出した。

「あぁ、おはよう。おかげさまでよく眠れたよ。……その様子だと、特に何もなかったみたいだな」
「はい。魔物も賊も現れませんでした。とても平和な時間でしたよ」
「そうか、ありがとな」

 女性、というか少女の容貌を想起させる涼やかな声は、先ほど俺が見やった「剣」から聞こえてくる。当然であるかのように――実際、俺にとっては当たり前なのだが――返事をした俺は、その場でうんと一つ伸びをして、凝り固まった身体を軽くほぐしつつ居すまいを治した。

「今日はどうしますか?」
「ん? まぁ、とりあえず昨日と同じだ。このまま街道に沿って、次の街をめざす」

 剣が喋る、なんて異常現象が当たり前に感じてしまうほど、付き合いの長くなってしまった相棒に向けて語りつつ、俺は剣の側に立てかけておいた荷物を漁り、一切れの干し肉と地図を取り出す。一口かじり、強い塩気で眠気を覚ました俺は、ルート確認を兼ねて地図に示された街道のマークをなぞっていった。

「今がこの辺りだから……そうだな、あと二日も歩けば街だろう。しばらくは、そこで資金繰りだな」
「いえ、マイマスター。それは「朝から夜まで通しで歩いた時の距離」です。……以前それで歩き疲れて、不注意から遭難しかけた時の事、忘れていませんからね」
「……訂正する。あと四日だ」
「はい」

 人の姿も視線も感じないのに、無言の威圧感を感じてしまった俺は、素直に訂正する。相棒はそれで満足してくれたのか、威圧感はすぐに霧散した。

「……まぁ距離はともかく、そろそろ汗の一つも流したいからな。途中に川があるから、一度はそこで野営だ」
「そうですね。運が良ければ、魚も取れるかもしれませんし」
「まぁ、そっちはおまけ程度だろうけどな」

 相棒と今後の打ち合わせをしながら、俺は干し肉を加えて準備を進める。置いてあった荷物を改め、内容物に不備が無いかをチェック。一通りの確認を終えたところで、突きさしていた剣《あいぼう》の柄を握って、勢い良く抜き放った。

「じゃ、今日も宜しく、相棒」
「了解です、マイマスター」

 軽く掲げた相棒と言葉を交わし、背中に背負い直した鞘に納めてから、俺は朝靄の残る平原を歩き始めた。

 


「……そういや、川と来たら魚もいるんだよな。焼いて塩か醤油をかけて食べたいんだけどなぁ」
「マイマスター、ショウユとはなんですか?」
「あぁ、俺の故郷にあった調味料だよ。料理にかけて食べるとウマいんだ。……あぁ、思い出したらなんか無性に食いたくなってきた」

 雑談を交えつつ、俺は一人平原を歩く。さんさんと降り注ぐ暖かな日差しを浴びながら、俺の心はかすかな郷愁の念にとらわれていた。

 


 元々、俺は「この世界」で生まれ育った人間ではない。地球は日本の片隅で生まれ育ち、争いや危険とは無縁の環境で育ってきた、一介の日本人なのだ。
 「平凡な一般人」だと自分でも豪語できるほどにつまらない人生を送っていた俺は、しかしある日この世界へと落ちてきたのである。
 この世界に呼び寄せられた理由は、いまだにはっきりしていない。それこそ俺の感覚では、寝落ちして目が覚めたらこの世界に居た、レベルなのである。

 異世界に呼び寄せられ、途方に暮れていた俺を助けてくれたのが、今の俺の背に収まっている「相棒」だった。
 彼女――聞こえてくる声が少女のものなので、暫定的にそう呼んでいる――は、俺が目覚めた遺跡に安置されていた不思議な剣であり、この世界に来た俺が最初に見つけた物体でもある。
 当時の俺は状況も把握できておらず、訳も分からないまま「持っておけば何か役に立つかもしれない」程度の認識で持ちだした。それからしばらく遺跡の付近を彷徨っていたのだが、突如現れた怪物、こと「魔物」に襲われあわやと言ったところで、眠っていた相棒の意識が覚醒。最終的には彼女の助力もあって、どうにか窮地を切り抜けることができた、というわけである。
 その後、どうにかして人のいる場所にたどり着いた俺は、そこでこの世界に「異世界人《エトランジェ》」という概念があることと、「異世界人」が元の世界に帰れた事例は、現代にいたるまで確認されていないということを知り、どうしようもなくなってしまう。 よもや帰れないとは思わず、俺は一時期精神的に不安になったのだが、その間真摯に俺に付き合ってくれた相棒の勧めもあり、現在はこうして、自らの居場所を見つけるために旅をしているのだ。

 

 

「……マイマスターは、やはり故郷に帰りたいのですか?」

 相棒の、どこか不安と憐憫が混じった問いかけを受けて、俺は肩をすくめる。

「そう、だな。正直なところ、今でも帰りたいって気持ちは残ってるよ。あっちの世界は平和で暮らしやすいし、少ないけど残してきた友達もいるからな」

 魔物や賊と言った脅威があり、なおかつ「魔法」を基盤とした文明レベルも、まぁまぁ高いが現代日本には数段劣っている。平和な世界で争いとは無縁の生活を送ってきた俺にとって、この世界は非常に過ごしづらい世界であることに違いはないのだ。

「――でも実のところ、それ以上に今が楽しいなって、そう思うんだ」
「楽しい、ですか?」
「あぁ。だってそうだろ? 平和な世界に居たら、今みたいな旅や命のやり取りなんてできないからな」

 だが、幸か不幸か、俺はこの世界への順応に成功する。そうすれば後に残ったのは、未知なる世界への尽きない好奇心と、初めて経験した戦いがもたらす、平和な世では知りえない、戦いのスリルだった。
 そもそも俺は、変わりばえのない日常に鬱屈とした感情を抱えていた人間。口では平和が良いと宣いつつ、その内心では「何か刺激的な出来事が起きないか」と考えていたのだ。

「平和もいいけど、俺は俺が望むままに生きたい。だから、それができるこの世界を離れる気は、今のところないよ」
「……そうですか」

 飾らない本音を語ってみせると、相棒はそれだけ呟く。彼女の内心を見透かすことはできないが、その声音は何処か安堵したようなものだった。

「……なんにせよ、この世界に居る限り、俺は戦わなきゃいけないんだ。だから相棒、これからも宜しくな」
「……仕方ありませんね。これからも宜しくお願いします」

 どうやら、お互いにこの関係は好ましいものらしい。
 そんな今更な事実を実感しながら、俺は目的の街へと一日も早く到着するために、街道をひたすらに歩いて行った。

 

*********

 

 というわけでこんにちはー、コネクトです。

 久しぶりに短編小説を書きましたが、やっぱり短編だとオチの切りかたに苦労しますね。うまい具合にオチを付けられる人は本当に尊敬します。

 

 さて、今回は前述通り、久しぶりの短編としてちょっとした異世界モノを書かせていただきました。

 取り扱う題材はズバリ「人間と人外のバディ物」。やっぱりというかなんというか、最近(コネクトの中で)流行している題材を採用することとなりましたw

 元ネタにしたのは、現在まで交流が続いているマークアハト氏(現在は別名義)と一緒に考案した、とあるゲームで私たちが使用する武器の設定です。その武器は自我を持っており、方向性は違えどそれぞれの主人に尽くしている……という設定を書き綴っていました。

 その後、その設定はコネクトが当該武器を手に入れられなかったことからあえなくお蔵入りとなってしまい、結局日の目を見ることはなくなってしまったのですが、ありきたりながら魅力的なその設定を惜しく思ったコネクトは、長いことに多様な題材で物語を書いてみたいと考えておりました。その結果、生まれたのが今回の小説となっています。

 実は元々長編として描く予定もあったため、もし気力が生まれたら続き……というか連載版になるかも知れません。その時は「またバカなことやってるなー」みたいな感じで応援していただければ幸いです。

 

 それでは今回はこの辺で。

 またあいませうー ノシ

勝手に☆自作小説紹介

 

どうもこんにちはー、コネクトです。

最近はちょっとリアルの方がごたついていて、創作に精を出す暇がなかなか取れないのが現状です。どうにか解消したいところですが、しばらくかかりそうなのが歯痒いです……。

 

さて、そんな状態で送る今回のブログは、タイトル通り「自作小説の一言紹介」記事!

私が手掛けた小説は数あれど、何がどういう小説なのかを正確に把握できている方はほとんどいないと思われます。なので今回は、作者である私自ら、自作小説の一部を紹介し、その魅力を語って行こうという記事にございます。

自画自賛?間違ってません。

タイトルと共に、該当の小説のページやまとめた記事にジャンプできるURL添付するので、もし紹介を読んで興味を持っていただければ、該当のページで読んでいただけると作者として嬉しいですー。

 

***

 

小説版 ナイツロード

小説版 ナイツロード - コネクトの雑記保管庫

・コネクトが有するオリキャラ「デルタ」が活躍する二次創作小説にして、コネクトの小説活動の原点となった作品。デルタを筆頭に、ビットやサジェロなど、様々な作者様のオリキャラの活躍を描く。

・何と言っても見どころは恐ろしく稚拙な文章。文法も文体も読みやすさも一切合財を投げ出して、楽しむためだけに執筆された文章は一見の価値あり。

・当時の作者曰く「これがナイツロード小説の決定版」なのだが、正直なところ見返してみると黒歴史感がマッハ。ただ、この作品の功績は非常に大きいので、一概に黒歴史とは言えない微妙な立ち位置にある。

・本作だけに登場して、以降の作品で抹消されたキャラも多い。ブレイド(現レイ)やルミネス(現ソニア)など、他のオリジナル作品で活躍したキャラやコネクトのお気に入りキャラなど以外のオリキャラは、そのことごとくが抹消の憂き目にあっている。

・意図したわけではないが、本作のデルタは結構なメアリー・スー。並み居る強キャラたちを押しのけて活躍したり、本作のとある場面で行方知れずとなった際は色んなキャラから悲しまれたりなど、挙げてみれば枚挙にいとまが無かったりする。

 

学園天国繋録

学園天国繋録 - コネクトの雑記保管庫

・コネクトが手掛けた小説の二作目にして、初の完全オリジナル世界観での一時創作小説。架空の学校「桜流学園」を舞台に、非現実に巻き込まれた少年少女たちの戦いと青春を描く。

・本記事投稿時点では数少ない「現代学園モノ」の要素を取り入れた作品。「異能」の設定などにもかなり凝っており、本作からのちの作品にフィードバックされた要素もちらほらとある。

・本作がきっかけとなって、コネクトの文才も相応に上昇。ようやく読み物として読めるレベルにまとまっている。その上達ぶりは作者が読み返して自分でも実感できるほど。

・コネクト作品の中でも非常に珍しく、女性主人公を全面的に押し出している本作を通じて女性主人公の難しさを痛感しており、これ以降女性主人公が登場することはほぼなくなった。

・なお、内容に関してはやっぱりメアリー・スー。主人公ユウとは別に、作者を模したキャラとして異能者の少年セツがいるのだが、執筆したお話の大部分でセツがユウの活躍を食うという場面が多々起こっている。

・打ち切りとなって描かれなくなった後半部分では「ユウがセツを追い抜く実力を発揮する」という構想もあったのだが、打ち切りの憂き目に遭ったことで描かれることは永遠になくなった。

・ちなみに、コネクトの友人である「マークアハト(現在は別名義)」氏と「コルト・ソーコム」氏の両名によって、本作を題材にした二次創作小説が描かれている。どちらも非常に面白い内容なので、一見の価値あり。

 

PSO2小説 カルカーロの戦士達 シリーズ

PSO2小説 カルカーロの戦士たち - コネクトの雑記保管庫

カルカーロ第2章 鋼鉄の瞳 - コネクトの雑記保管庫

PSO2小説 カルカーロの戦士たち第1章 デュアルフェイス - コネクトの雑記保管庫

・コネクト二作目の二次創作小説であり、初めてオンラインゲームを題材とした小説。PSO2の世界に生きる作者のアバターを主人公に据えて、彼を取り巻く様々な事象を描く。

・マークアハト氏執筆の二次創作小説「PSO2 ダークハウンド」シリーズと、世界観、ストーリーを共有する合作……なのだが、その実態は設定やストーリー展開を丸投げにしただけ。一応、企画自体はコネクト発案なのだが、氏の描くストーリーと設定に多大な魅力を感じ、現在の形に落ち着いた。

・第一章である無印、第二章である鋼鉄の瞳、一章のリメイクであるデュアルフェイスの三作品から成る。本来は完結編として第三章が予定されていたのだが、あまりにも原作との乖離が激しすぎたためお蔵入りとなった。

・一章のリメイク作品であるデュアルフェイスは、しっかりと書き込んだだけあって(原作からかけ離れた設定を除けば)現在でも読むに耐える良作。ただ、新たに取り入れたダークハウンド側のストーリー描写はほぼ文章の整理や一部設定の改変だけで終わったのに対し、コネクト側のストーリー描写はキャラを削るわ戦闘描写を継ぎ足さなければならないわ、短いくせして無駄なシーンばっかりだわで、自分で自分の首を絞めるという珍事が発生。結果、最終的にはほぼほぼ全面改稿という形で落ち着いた。

 

アイラAnotherStory―獅子を狩るモノ―

http://ncode.syosetu.com/n1439by/小説家になろうへジャンプします)

・マークアハト氏のオリジナル小説「アイラ」の世界観を借りて執筆した二次創作小説。友人を喪い、力を手に入れた少年彰の復讐劇を描く。

・コネクト初の「ロボット物」を取り扱った小説。やりたいことも描きたいこともだいたい全て書き切れたため、コネクト的な満足度は非常に高い一作。

・本作執筆にあたって、原作者であるマークアハト氏とはかなりの協議を重ねた。結果的に完成度向上の一助となったため、客観的な意見の大切さを痛感できた作品でもある。

・書き始めてからストーリーを決める「見切り発車」が基本のコネクトには珍しく、しっかりとプロットを固めてから執筆に乗り出した作品でもある。結果、中編とはいえ二か月というスピード完結に加え、大きな破綻もなく終幕を迎えられた稀有な作品でもある。

・本作のヒロインである生体アンドロイド真理は、以降のコネクトに多大な影響を与えた罪深い存在。アンドロイドやサイボーグ、人工生命体のようなキャラクターが好きになったのは、だいたい彼女が原因だったりする。

・なお、本作の続編として、遠い未来での戦いを描いた「アイラ02AnotherStory―水晶に込めたモノ―」を連載する予定があったのだが、原作側の更新が止まったことと、本作を執筆したことで作者が完全に満足してしまったため、現在のところ一話だけ公開したまま停止している。当ブログにインポートされているため、興味のある方は探してみるのも一興かも。

 

異世界行ったら門前払い食らいました

https://ncode.syosetu.com/n7986bx/小説家になろうへジャンプします)

小説家になろうへと移行してから始めて執筆した、完全オリジナルの連載小説。異世界に召喚されるも、勇者ではないためポイ捨てされた少年タクトが、自分を捨てた人々を見返すために世界を巡る物語。

・「矢代大介」としての処女作であり、なろうに投下した初めての連載作品であり、初の完全オリジナルのファンタジー作品であり、初めて50話を超えて完結した長編であり、初めて正式な評価を貰った作品。色々な意味で、現在のコネクトの原点となった小説となっている。

・本来ならばもっとゆったりと進む作品になる予定だったのだが、途中から主人公に明確な目的がある方が動かしやすいことに気付いたことで、本作の方向性ががらりと変更された。

・本作のヒロインとしてカノンという少女が登場するのだが、上記の軌道修正が行われた辺りで「ヒロイン蛇足じゃね?」となり、最終的にはいちパーティメンバーという扱いに格下げされてしまった。その代わり、タクトに好意を寄せる女性キャラクターがちらほらと顔を出すことになった。

・本作主人公であるタクトのコンセプトは「一歩踏み違えてる王道主人公」。単純な王道主人公とならなかったのは、本作執筆以前に生まれた短編小説に起因している。

・現在は当ブログの片隅で埃をかぶっているが、門前払いの大本となったのは「たまたま」コネクトが執筆した同名の短編小説。同短編小説をなろうに投下してみたところ、初めてポイントを貰ったことがきっかけとなって、門前払いという大作が生まれることとなった。

・なお、実は続編としてテンプレチーレム物小説「異界の華を彼女(キミ)たちに」という作品が構想されていた。本作の劇中でタクトが一言だけ言及した友人が主人公となり、同じ世界でチーレムな物語を展開していくという物になる予定だったのだが、「これ面白くならなくない?」と思った結果、あえなく没となった。

 

夢の異世界生活、始めました。

https://ncode.syosetu.com/n8227eh/小説家になろうへジャンプします)

・上述した門前払いの遺伝子を受け継ぐ作品として執筆された、コネクト二作目のオリジナルファンタジー小説異世界にトリップした主人公エイジが、新たな世界でたくましく生きていく物語。

・本作はこれ以前に執筆された「剣と魔法な異世界漫遊記!~記憶喪失、異世界ぶらり旅~」のリメイク作品。物語の大筋は変わっていないが、大部分の設定が変更となっている。

・原案となったのは、上述した「門前払いの続編」。「不幸な生い立ちを持つ主人公が、異世界で報われて幸せな人生を送る」というコンセプトが引き継がれている。

・リメイク前、リメイク後共に筆を折ってしまっているが、本作主人公である少年エイジは、ヒロインであるユレナやチルと合わせて、コネクト屈指のお気に入りキャラ。いつの日か本作をリメイクして、彼らの物語を完結させたいという野望を持っている。

 

PSO2外伝 絆と夢の協奏曲

PSO2外伝 絆と夢の協奏曲〈コンツェルト〉 - ハーメルンハーメルンへジャンプします)

・前述したカルカーロシリーズの後継作として執筆している、PSO2の二次創作小説。ゲーム本編のストーリーにおける空白期間に起きた事件を、主人公コネクトの視点で描く物語。

・元々は作成の予定すらなかったが、カルカーロシリーズを打ち切った際に思った「このままPSO2の二次創作を終わらせるのはもったいない」という思いに加え、友人であるマークアハト氏が「新作を執筆する」と表明したことに影響を受け、便乗する形で作成された。

・当初はいつも通りの見切り発車を予定していたが、執筆中に一度休載し、ストーリーを全面的に改訂。現在の形に落ち着くこととなった。

・本作の主人公とヒロインは、共にコネクトが使っているアバター。両者の設定がそこそこに固まっていたことも、本作執筆の一助となった。

 

 

黒騎士、異世界に行く

https://ncode.syosetu.com/n3023es/小説家になろうへジャンプします)

・とあるなろう小説に影響を受けて執筆した、異世界ファンタジーものの小説。突然ゲームの世界に迷い込んだ青年が、偶然出会った少女と共に異世界を渡り歩く物語。

・「オンラインゲームの世界に迷い込んだ主人公」という題材を取り扱った初の作品。主人公のアステルは元廃ゲーマーという設定を持っているのだが、廃プレイをしたことが無いコネクトが執筆しているため、なんともちぐはぐな主人公になってしまっている。

・ちなみに、本作の主人公とヒロインの容姿イメージは、コネクトがプレイしているオンラインゲーム「ドラゴンクエスト10」でコネクトが使用しているアバターたち。本作の題名である「黒騎士」も、ゲーム内のコネクトが装備している鎧が元ネタとなっている。

 

落ちこぼれの冒険者だけど、地上最強の生き物と共に最強を目指すことになりました。

・コネクト四作目のファンタジー小説。とある理由から出会った二人のはぐれ者が、最強を目指して世界を駆け巡る物語。
異世界トリップや異世界転生と言った要素を含まず、現地の少年を主人公とした作品。これに限らず、今作は上記の要素が登場しない、純粋な「異世界が舞台の作品」として描かれている。
・本作執筆のきっかけとなったのは、某所でコネクトが読んだSS。「魔法剣士が竜との出会いをきっかけに自分の個性を獲得する」という内容のもので、ストーリーラインもそのSSに寄せている。
・ヒロインであるアスセナが人外なのも、上述したSSが原因。その他、「人外ヒロインっていいよね」と考えたことも理由だったりする。

・タイトルが無駄に長いのは、なろうで読まれやすくするための措置。本来想定しているタイトルは「魔纏の剣士と白竜姫《ドラグニア》」なのだが、これだと知名度は上がらないだろうと考え改訂された。

 

Blue Bright Blade―蒼の煌刃―

(そのうち作成)

・コネクトの原初のオリキャラであるデルタを主役とした小説。とある目的のために旅をするデルタが、手がかりとなる事件へと関わったことをきっかけとして、巨悪を打倒する戦いに身を投じる物語。
・原案となったのは、かつてコネクトが生み出した作品「SwordStory(ソードストーリー)」。DSiのソフトウェア「うごくメモ帳」で作成していたストーリー作品や、それを小説化した作品を基に、削進した世界観の元で新しいデルタたちの物語を紡ごう……と考えた結果、本作の誕生と相成った。
・作品タイトルの意味は、サブタイの通り「青く輝く刃」。無理やり語感を合わせるために、輝くの部分を「Bright」に挿げ替えている(一応、輝くという意味も含んでいる)。
・BBBとして削進されて以降も何度かリメイクされており、細かい設定やストーリーが何度も変更されている。恐らく、今後も安定することはない。

 

***

 

とりあえずの紹介はこんなところでしょうか?

今後も小説は増えていくと思いますので、その時はここで紹介した小説共々宜しくお願いします~。

 

それでは今回はここまで。

またあいませうー ノシ

ブログをインポートしました。

 

ブログの方では大変お久しぶりにございます、コネクトでございまーす。

 

 さて、いきなりですが皆様も「はてなダイアリー」という物をご存知かと思います。

このたび、そちらのはてなダイアリーサービス終了を発表されました。

 

2019年春「はてなダイアリー」終了のお知らせと「はてなブログ」への移行のお願い - はてなダイアリー日記

 

中々に唐突な発表でありましたが、うごメモと言いコネクトがプレイしてきたいくつかのオンラインゲームと言い、提供されているサービスというのはいつか終焉するのが世の常。

 

それはそれとして受け止めましたが、そうなると問題はかつてのダイアリーの処遇について。

幸い、はてな様の方でこちらの「はてなブログ」へとインポートすることができたので、コネクトもそれに習って環境をはてなダイアリーからはてなブログへと移行させていただきました。

 

で、ツイッターや少し前から設営している雑記保管庫など、いくつかのサイトに掲載したリンクも、こちらの新しい雑記帳(ブログ)の方へと移行させていただいております。

遅くなりましたが、ブログの形式が変わっているのは上記に伴う仕様となりますので、閲覧中の皆様におきましては、何卒ご理解とご了承のほどを宜しくお願いいたします。

 

ダイアリーは終了し、新たにブログを開設する運びとなったコネクトですが、やることに関してはこれまで通りへたくそな創作です。

これからも常時毎日平常運転で行かせていただきますので、ひとえにお付き合いいただければ幸いです。

 

 

そうそう、先ほどせっかく雑記保管庫のことに触れましたので、せっかくだからお話させていただきます。

以前より、ここコネクトの雑記帳や小説家になろうハーメルンなどの各所で作成し投稿している自作の小説や、うごメモ時代より連綿と受け継ぐ我らがデルタ君を初めとしたオリジナルキャラクターの設定などを、ひとまとめにして公開しているサイトが存在しております。

その名も「コネクトの雑記保管庫」!

connectnozakki.wiki.fc2.com

特に力を入れているのは、デルタをはじめとしたオリジナルキャラクターに関する設定。かつてこちらのブログ(旧ダイアリー)で公開していたモノよりもさらにぎっちりと詰め込んだ設定記事を、いくつかの種類に分けて投稿しております。

コネクトが生きている限り彼らの設定も更新されていくと思いますので、興味のある方はぜひ上記のリンクから覗いてみてください。

 

それでは、今回の記事はここまでとさせていただきます。

今までの記事もこれからの記事もまるっと全部合わせて、新生したコネクトの雑記帳をこれからも宜しくお願いいたします。

ではまたあいませうー ノシ

Blue Bright Blade―蒼の煌刃―

episode5 デルタの決意



「よぉマザー、戻ったぜ」
 神に祈りをささげるために建造されたと思しき、小さな神殿らしき建造物の最奥部。そこに、一人の男――左半身を覆い隠すボロボロのマントと、盾と戦爪の二つの機能を備える盾爪を右手に装備する、アレファの村を襲った男の姿があった。
 男が神殿の奥に広がる暗闇に声をかけると、カツン、カツンという足音を響かせて、一つの影が明るみへと歩み出てくる。
「おかえりなさい、ラムダ。首尾はどうでしたか?」
 それ自体が光を放っているかのような煌びやかな金の長髪に、地の底で凝縮された宝石のような、どこか作り物めいた赤に輝く瞳。見る者すべての目を覚ますような、浮世離れした美貌を持つ「女性」がそう問いかけると、男――ラムダと呼ばれた黒髪紅目の男は笑いかける。
「仰せのままに、ってな。何人かは逃がしちまったが、村自体はぶっ潰したぜ。「力の核」になってたっぽいのも、しっかり壊しといたよ」
「それは重畳です。よく頑張りましたね、ラムダ」
 肩をすくめて、少し大仰なしぐさでラムダが自分の戦果を報告すると、マザーと呼ばれた女性はゆったりとラムダに歩み寄り、その頬を撫でながら笑いかけた。
「へ……俺は、他の奴らとは違うからな。こんな任務、朝飯前さ」
「あら、大きく出ますね。……えぇ、貴方は本当に優秀。私の望みを、しっかり叶えてくれますから」
「そう思うんなら、もうちょっとイイ物寄越してくれてもいいんじゃないか? …………あぁ、そういえば」
 互いに力を抜いた緩い笑みを浮かべ、しばし恋人が逢瀬を楽しむように笑いあっていた二人だったが、ふとラムダが思い直したように口を開く。
「逃がした連中は関係なさそうな雑魚ばっかりだったが、一人だけ妙なことがあってな。そいつだけはどうなったのかわからないんだよ」
「と、いいますと?」
「なんつうかな……「光ったと思ったら消えた」んだ。そいつが叫んだら、突然周りが滅茶苦茶眩しくなって、気づいたらそいつだけが居なくなってたんだ」
 奥歯に物が詰まったような物言いのラムダに、マザーは驚いた表情を見せながら彼を問い詰めた。
「まぁ……その消えた人間の特徴は覚えていますか?」
「たしか、尻尾みたいな長い青髪は覚えてるぜ。魔動戦機の剣っぽいのを使ってたのは確かなんだが……弱い奴に興味なんてないからなぁ」
 ラムダの簡単な説明を聞いたマザーは、しばし口元に手を当てて思案する。やがてラムダが軽いあくびを口にしたころ、何かを決意したかのような表情で、マザーは口を開いた。
「――そう、ですか。わかりました。……本当ならばあなたを行かせたいところですが、別の任務もあります。人探しにもっともふさわしい人員を充てることとしましょう。ラムダ、貴方は下がっていいですよ」
「あぁ。もっとイイ褒美が貰えるように、頑張るとするさ」
 退室を促されたラムダは、ひらりと手を振ってその場を後にする。出口を包む闇に消えていくラムダを見送ったマザーは、すっと虚空に視線を向けると、小さく呼びかけた。
「ガンマ、此処に」
 再び、凛とした声音が神殿の中に響き渡る。幾ばくかの空白の後、不意にマザーの目の前の空間が淡く輝いたかと思うと、直後にそこから一つの影が降り立った。
「呼びましたか、マザー」
 マザーの前に降り立ち、膝をついて首を垂れるのは、先ほど退室したラムダとはまた違う、さらりとした滑らかな髪質を持つ黒髪と、マザーの持つそれとよく似た、作り物めいた深紅の瞳を持つ男性。伏せられた顔から読める感情は乏しく、身に纏ったシャツやネクタイ、地味な色のジャケットが、彼――ガンマと呼ばれた青年に、生真面目そうな雰囲気を纏わせていた。
「ガンマ、貴方に新しい使命を与えます。……尻尾のように長い青髪を持つ、魔動戦機の剣を持つ者。それを、探し出してください」
 自らに向けて傅くガンマにむけて、マザーは手短にまとめた用件を伝える。目を閉じたまま、その言葉をしかと頭に刻み付けたガンマは、静かに顔を上げた。
「わかりました。……見つけた場合の処断は、いかがいたしましょう?」
「殺してしまってかまいません。私たち「メシア」の悲願成就を妨げる要因は、残らず排除するのです」
 問いかけるガンマに、マザーは毅然とした表情でそう告げる。虚空めがけて腕を一振りするマザーを見つめながら、ガンマはひとつ静かにうなずいた。
「はっ。――「複製の天〈ウラヌス〉」の名にかけて、必ず勅命を果たします」
 それだけを告げると、彼は空中に手をかざし、現れた時のように淡く輝く燐光の中に消えていく。


「……この現世でも、私の邪魔をするのですね、アスール」
 残されたマザーは、一人虚空に視線を投げだして、ぽつりと独り言を口ずさんでいた。


「ならば私は、貴方を殺してあげましょう。そして、生まれ変わった世界で、本当の貴方と――」






 * * * 






「…………っ、う……」
 ゆっくりと目を開けた彼は、開いた瞼越しに視界を照らす小さな明かりを見て、動かない頭に疑問を浮かべた。
 眠ってしまう前の光景は、いったいどんなものだったのだろうか。少なくとも、自分の家で床に就いたような記憶はない。そう考えて、もう一つの疑問の花を咲かせた直後、再起動してきた脳裏に、眠る前の――気を失う前の最後の光景が、瀑布のような勢いを持ってよみがえった。
 空を覆う影。
 村を焼く爆炎。
 立ち込める死の臭い。
 迫りくる影。
 殺意。


 凶刃。
 


「――――ッ!!」
 覚えている限りの光景をすべて思い出した彼――デルタ・アリーシアは、まるで悪夢から醒めた時のように、横たえていた身体をがばりと起こし上げた。
「っは、っは、っは……?」
 浅い呼吸のまま、迫っていたであろう凶刃が何処にもない――どころか、最後の光景とはまるで違う、自身の周囲の風景に、デルタは困惑する。きょろきょろと周囲を見回せば、そこが布張りの小部屋――よく言う野営用のテントの中だということは、ほどなく理解することができた。
 自身の居る場所について理解したデルタだったが、すぐさま新たな疑問が湧き上がる。どうして、あの男に殺される運命にあったのであろう自分は、こうしてテントの中で眠りこけていたのだろうか、と言う疑問だ。
 記憶に間違いがなければ、自分はアレファの村で謎の男に襲われ、今まさに殺されんとしていたところだったはず。だというのに、自分はこうして生きている。それが彼には、たまらなく不思議だった。
「……ん」
 ふと思考の海から浮かび上がり、視界を動かしてみれば、テントの入り口になっている部分が開いており、その先に小さなたき火らしいかがり火が見て取れる。
 もしや、自分はあの後誰かに助けられたのだろうか。それとも、もっと別の何かがあったのか。疑問を抱えたまま、好奇心に突き動かされて、デルタはテントの外へと出てみることにした。


「……あ、起きたんだね! よかったー、心配したよ。大丈夫? 具合はどう?」
 テントの外に出て、青い空を頭上に臨むデルタの視界へ最初に映り込んだのは、たき火を前にして小さな椅子に腰かけ、ゆったりと本を読んでいた、一人の少女。短く切りそろえられたふわふわの茶髪に、空よりも濃い深青色の瞳が、何よりも印象的だった。
 そんな少女は自分に気付いて本を閉じて立ち上がり、安堵の表情で二、三歩近づいて問いかけてくる。軽快な動作に合わせて、着込んでいる白無地のパーカーとデニムスカートの裾が、ふわりとなびいた。
「あ、うん。……えっと、君は?」
 よもや、すぐさま人と話すとは思わなかったデルタが、驚きながらも首をかしげて口を開く。名を訪ねられた少女は、はっとした表情のまま快活な笑みを浮かべた。
「あ、ごめんね! 驚かせちゃった。私は「アリア・ルファーナ」。縮めてアルファ、って呼んでほしいな」
 そう言いながら、アルファと名乗った少女は両手を後ろでに組み、にっこりと微笑む。幼さを色濃く残す整った顔立ちは、綺麗と言うよりも可愛らしいという印象が先立つものだった。
「ねぇ、キミは何て名前なの? どうしてあんなところで倒れてたの?」
 矢継ぎ早に質問されて、ようやく自分が名乗っていないことを思い出し、デルタは改めて少し距離を取り、口を開く。
「あ、僕はデルタ。デルタ・アリーシアだよ。……えぇと、倒れてたってのはどういうこと?」
 自己紹介がてら、デルタは彼女との会話に出た、気になる単語について問いかけると、アルファは疑問のにじむ表情のまま、おとがいに手を当てながら答えた。
「あれ、覚えてないの? 私が見つけた時、広ーい野原の真ん中に倒れてたから、多分訳ありだと思ったんだけど……」
 彼女の証言と、自身の記憶にある最後の光景から続くであろう現状。そして、本来ならば周囲に存在するであろう光景と今の光景。どう考えても、食い違うことは明白だった。
 いったい何が起きたのだろう。デルタの頭がますます混乱の一途をたどる中、不意に再びアルファが歩み寄り、にこりと微笑んだ。
「ねね、良ければ聞かせてくれない? 意見を出し合えば、答えも見つかるんじゃないかな」
「あ……うん、そうかもね」
 わからないことだらけの現状だったが、ともかくは答えに繋がる何かを探すために、デルタは己の身の上を、できる限り事細かに話し始めた。


***


「……っていうわけなんだ」
 自身の住んでいた場所。それまでの村の様相。そこに居たはずの人々。
 突然の異変。突然の襲撃。突然の敵意。突然の殺戮。
 一通りの身辺情報と、自身が気を失う前に体験した一連の出来事をすべて話し終えてから、ようやくデルタは一息ついた。
「……正直なところ、僕にも何が起こったのかはさっぱりわからないんだ。――確実に言えるのは、なぜか僕だけが助かった、ってことだけ」
 その言葉と共に、デルタの脳裏には再びあの時の情景が鮮明によみがえる。
 あの時、もっと自分が強ければ。
 あの時、不意打ちで男の攻撃を貰っていなければ。
 あの時、二人にしっかりと危険を伝えていれば。
 考えれば考えるほど、彼の胸の内には溢れんばかりの後悔が襲い掛かってきた。
「そっか……いろいろ大変だったんだね」
 声につられ、いつの間にかうつむいていた顔を上げると、目の前に座るアルファの表情は、少しばかり憐れみの色を込めた、悲しそうなもの。
 暗く陰る彼女の表情に、しまったとデルタが何事かを口にしようとする前に、アルファは一度小さく頷いたかと思うと、くるりと表情を元に戻した。
「えっと、情報を整理すると……デルタはアーシア大陸北部のオルフェスト地方、アレファの村出身。変な奴らに襲われて、殺されそうになったところで気を失って――気が付いたらここに居た、ってことであってる?」
「うん、そんな感じ。……ねぇ、気になってたんだけど、此処ってどこなの? 見た感じ、近くに村とか街は見えないけど」
 言いつつ、周囲を見回すデルタの視界に映り込むのは、何処までも続いていそうに錯覚する草原と、デルタらの使っている野営地から少し離れた場所に存在する、獣道を舗装して作られたらしい街道。
 遠景に見える山にはまばらに雲がかかり、山と反対の方向に視線を映せば、そこには遥かな彼方に水平線を描く海が、小さく風景の端へと映り込んでいた。
「ここはアーシア大陸の南部にある、フランディア地方だよ。オルフェスト地方は、大陸首都の「エルシウス」を挟んで、もっともーっと北の方だね」
「ふら……?!」
 現在地を聞いて、デルタは衝撃に揺らぐ。
 それも当然の話。デルタの住まうアレファの村を擁する、他の地方と比べても比較的小さな地方であるオルフェスト地方は、この「アリルフェイト」という世界を構成する三大陸の一つにして、最も広大な大陸である「アーシア大陸」の中でも、かなり北の方に存在していた。
 しかし、アルファの口から出てきた「フランディア地方」は、アーシア大陸の中心部付近に位置する、大陸の中でも最も大きな街である大陸首都「エルシウス」からは遠く離れた、大陸の南部に存在している。そして同時に、オルフェスト地方とはどう考えても接点のない、遠く離れた場所。
 要するに、如何なる不可思議な奇跡が起きたところで、デルタが住んでいたアレファの村から、アルファと言う少女に拾われたっこのフランディア地方の片隅に移動することは、物理的に考えて不可能なのだ。
「…………どう、なってるの? 長距離移動用の魔法なんて、それこそ街に在る設置型の転送魔術駆動装置<テレポーター>じゃないと無理なのに……」
「そうなんだよねー。デルタ君の話を聞いてたけど、大陸の北の端っこから南の端っこまで飛ばされるなんて、何をどうしたってありえないよ」
 わなわなと震えながら、どうにか現状を分析しようとするデルタだったが、アルファが口をとがらせて唸りながら先んじて結論を口にする。考えるよりも前に出ていた結論を目の前の少女に突きつけられたデルタは、理解を超えた現象を前にして、どさりと椅子(アルファが用意してくれた予備の折り畳み椅子である)に腰を落としてしまった。
「こんなところで倒れてるなんて、よっぽど訳ありなんだろうなって思ったけど……デルタ君は何かもっと、普通とは違うことに巻き込まれちゃったみたいだね」
 摩訶不思議な現象に首をかしげるアルファだったが、その声は呆然自失と言った表情のデルタには届かないらしかった。微妙に焦点の合っていない目のまま、北であろう方面を見つめた状態で固まっていた。
「……らなきゃ」
「んー?」
 アルファが目の前で手を振っても反応のなかったデルタだったが、まずは落ち着いてもらおうと考えてお茶を入れ始めたアルファの耳に、彼のぼやきらしき言葉が届いた。
「そうだ、村に帰らないと! 村に行って、みんなを殺したアイツを追わないと――」
「うーん、今から行ってもその仇……爪の男は、もう遠くに逃げちゃってると思うな。ここからオルフェスト地方に行くにしても、一か月以上はかかっちゃうし」
「う……」
 座っていた椅子を蹴倒さんばかりの勢いで立ち上がったデルタだったが、冷静に分析したアルファの言葉で、再び勢いを失ってがっくりと肩を落としてしまった。
「……ヒドい言い方になっちゃうけど、ね? たぶん、滅ぼされちゃった村に行っても、何かがあるわけでもないと思うんだ。生き残った村の人たちも避難してるだろうから、何か特別な道具があるとかでもない限り、村に行くのは危険だから、やめておいた方が良いと思うな」
 気遣うような口ぶりのアルファに諭されて、一瞬だが目の前の少女が少しばかり憎らしい存在に思えてしまう。
 君に僕の何がわかるんだ、という言葉が喉元まで出かかって、デルタはすんでのところでその言葉を飲み込んだ。
 アルファはあくまでも、客観的に物を言ってくれているだけ。冷やした頭でそれを理解して、うなだれたままのデルタは小さく頷く。悪いことを言ってしまった、と言いたげな彼女の困り顔が、デルタの胸にちくりと刺さった。
「…………これからどうしよう」
 やり場のない感情を言葉に乗せて、気落ちしたままの表情でデルタはぽつりとつぶやく。手も足も出ないまま無様に転がされ、守るはずだった村人たちを目の前に虐殺され、あげく自分は仇敵である爪の男に殺されかけ、無様に逃げおおせてしまう始末。奇跡が起きたがゆえの偶然の産物であり、結果的に助かったのは事実だったが、今のデルタはそんな運命を仕組んだ神様を、恨んでやりたい気持ちでいっぱいだった。
「……ねぇデルタ君、ちょっといいかな?」
 やりきれない気持ちをため息にしていたデルタだったが、不意にアルファが様子を伺うようにして口を挟んできた。
「デルタ君さえ良ければなんだけど、さ……よければ、私と一緒に旅をしない?」
 続けて少女の口から出てきたのは、意外な誘いの言葉。一瞬、その言葉の意味を図りかねるデルタだったが、文字通りの意味を理解して、こてんと首をかしげた。
「え……どうして?」
「ん、別に理由なんてないよ? ただ、デルタ君がこれからどうしようって悩んでたみたいだからさ」
 理由を問うと、帰ってきたのは至極のんびりとした回答。デルタの胸中を知ってか知らずか、アルファの浮かべる笑みもまた、非常にゆるいものだった。
「――それに、デルタ君は村を襲った奴の行方を追いたいんでしょ? 何の手がかりもない今、長旅になるのはもちろんだし、そんな長い旅を一人でするのって、結構厳しいと思うんだ。だから、お互い一人旅のリスクを軽減するためにも、一時的でいいから一緒に旅をしないか? っていう理由なんだけど……どうかな?」
 しかしその次に続いたのは、旅人として過ごしている故か、不思議としっかり現実を見据えた言葉。遠慮がちな誘いではあったが、彼女の言い分は至極まっとうなものである。
 そしてそれ以上に、彼女の言葉はデルタを奮起させるものとなった。


「――追う。そうか、追えばいいんだ」
 どうやら、あまりにも思い詰めていたせいか、すでに爪男の行方を知るための手がかりは存在しないと、そう決めつけてしまっていたらしい。冷静に考えればすぐに思い至りそうなもので、その選択肢を見出すことのできなかった自分を知って、図らずもデルタは、己の未熟さを痛感することになってしまった。
「……アルファ、だっけ? ――僕、これからの目的、決まったよ」
 そうとわかれば、すっかりしぼみ切っていた胸中の灯火が、再び燃え上がる。しかと感じられる熱を瞳に宿したまま、デルタは続きを口にした。


「僕は、あいつの行方を追いたい。だけど僕は村から出たことが無かったし、この広いアリルフェイトの中を、一人で旅するのは無茶だ。……だから、少しの間だけで良い。アルファさえよければ、僕の旅に付き合って欲しい」
 それは、明確な決意の言葉。一度は恐怖と絶望に塗りこめられようとした少年が、再び立ち上がらんとする、再起の宣言で。
「うん、もちろんいいよ。――私も元々、武者修行以外に目的のない旅だったからね。デルタ君の目的が達成されるまで、一緒に付き合ってあげる!」
 それに答えるアルファは、にこりと朗らかに微笑んで見せる。快諾の言葉を受けたデルタが静かに手を差し出せば、彼女のたおやかで小さな手が、デルタの手をしっかりと握り返した。


「しばらくよろしくね、アルファ」
「こちらこそよろしく、デルタ君!」
 これが、世界を巻き込む大きな戦いに繋がるなどとは、知らないままに。


(――レイ姉、ナギ兄、みんな、見ててね。僕は絶対に、あいつを倒すから……!)
 強く固めた決意を、黒い瞳に秘めるデルタは、一人、遥か北の空を見つめていた。


*********


 というわけでこんにちはー、実に一月半ぶりの更新となりましたコネクトです。
 最近は他の小説の執筆を進めていたおかげで、こちらの方は遅々として進んでおりませんでした。お話自体は完成していたのですが、悩みに悩んだ結果大幅な改稿を加えて公開と相成りました。


 さて、今回からBBBの物語は、ようやく新章に突入します。ずっと前から出演させたいと思っていたメンバーの一人も、今回でようやく登場となりました。
 新キャラである棒術使いの女の子アルファは、かつてコネクトが棒バトを描いていたころに生み出されたキャラであり、デルタに次いで付き合いの長いキャラクターたちの一人でもあります。それゆえ非常に愛着も強く、いつかしっかり小説にも出演させてあげたいな、と思っておりました。ようやくその願いが叶ったので、作者としては感無量、といったところでしょうか。
 ……ちなみに、全く関係のない裏話になりますが、アルファはもともと男キャラという設定でした。ところが、人化させたときのイラストが(当時基準から見て)あまりにも可愛らしい系の顔立ちだったことがコネクトの中のどこかにクリティカルヒット。紆余曲折を経て、現在の女キャラになった……という経緯があります。詳しくは個別のキャラ設定記事で語っているので、興味のある方は探してみてください。


 次回は箸休め的な回を一つ挟んで、新たなレギュラーメンバー二人との出会いを描く予定です。
 彼らもまた、デルタやアルファ共々長い付き合いのキャラクター。ようやく本筋に関わらせることができるので、今から執筆が楽しみなのは内緒ですw


 というわけで今回はここまで。
 また会いませうー ノシ

Blue Bright Blade―蒼の煌刃―

episode4 奪われたモノは


「くっ……!」
 躊躇こそあれど、先の連撃は紛れもなく、男を殺さんと放った一撃。それを食らって、なお男を仕留めきれなかったという事実に、レイは少なくない驚愕と、ためらいを持ってしまった自分への憤りを覚えていた。
「おいおい、終わりだと思ってんじゃねぇだろうなァ!!」
「っ――!」
 お互い、次の一手を考えるために睨みあおうとしたその直後、レイの真横をくすんだ銀髪が駆け抜ける。銀閃を煌めかせ、男めがけて襲い掛かったのは、両刃鎌を振りかぶり、男の首を取らんと肉薄するナギトだった。
「クソがッ!!」
 毒づく男が盾爪を構えた直後、その表面で両刃鎌が無数の火花を散らす。満身創痍にも等しいその様相で、なお生きながらえている男を見て、ナギトはあからさまな表情のまま、一度下がって距離を取る。
「おいレイ、二人がかりだ。気に食わねぇが、一人ずつじゃラチがあかねぇ」
「それ以外に手はないか……いいだろう!」
 得物を構え直したナギトが、隣に並び立ったレイにそう提案する。やむを得ない、といった面持ちのまま承諾したレイもまた、己の得物である剣をしかと握りしめ直した。
「っへ、怪我人に2対1は卑怯なんじゃねーの?」
『黙れ』
 痛手を負ってなお、男は二人の行動をあざ笑おうと口を回すが、二人の一言が男を黙らせる。
「貴様のような悪辣な輩に、くれてやる慈悲なぞない!」
「テメェがしでかしたこと、テメェの命で償え!」
 言葉と共に、二人が男へと肉薄する。
「クソッ、ここまでか……!?」
 対する男は、膝をついた体勢のまま、動かない。

 やがて、二人の振るった鈍色の軌跡が、男の首元を――








「なーんつってな」
 切り裂くことは、なかった。

「っが……!?」
「う、ぐっ……?!」
 次の瞬間、事態を静観していたデルタや、生き残った村の人間たちが見たのは。

 紫色の光が爆ぜ、それが生み出したと思しき衝撃波に吹き飛ばされる、レイとナギトの姿だった。
「え……?」
 デルタが驚きの声をもらすのもつかの間、二人の身体は宙で大きく弧を描き、デルタが待機していた場所の近くへと墜落する。
「げふっ……っつぅ。クソッ、いったい何が……!」
「ぬ、くっ……っち、一杯喰わされたか!」
 いち早く体勢を立て直したレイがにらみつける先には、先ほどの満身創痍と言った言動が嘘のように、こきこきと首を鳴らしながら、左手――盾爪を持たない空いた手に「紫色の光」を灯す、男の姿。その顔には、脂汗を滲ませていた先ほどまでとはまるで違う、息とし生けるものすべてを見下しているかのような、嘲笑の表情が張り付けられていた。
「あーあ、結局お前らもその辺のゴミと変わらないんだな。報いだの償いだの、ベラベラベラベラバカバカしいことばっかり……耳障りなんだよ、それ」
 心底呆れたような口ぶりのまま、男はやれやれと首を振る。まるで新しいおもちゃに飽きた子供のような態度を見せた直後、紫色の光を灯した左手をデルタたちの方に向けてから、男はひとつ、口を開いた。
「んじゃ――そろそろ纏めて消えろ」
 言葉と共に、男の左手に灯された光は、一条の閃光となって、空間を駆け抜ける。空気が焼き切られたかのような音が一泊遅れて響いた、その直後。

 デルタたちの眼前で、光の着弾した場所が、紫色の閃光と共に、大きく爆ぜた。
『うわああぁぁぁぁあぁッ!!?』
 稲妻が落ちたような爆発音と、空間が曲がったかのように錯覚するほどの猛烈な衝撃波が、デルタたちの五感を、身体を、滅茶苦茶に叩いて通り過ぎていく。強烈な嵐が収まった後には、一様に地へと倒れ伏した人々と、大きく抉り取られた地面だけが残されていた。
「っく……まさか、貴様も固有進化魔術持ちだとはな」
 爆発の痕に滞留した魔力が、バチバチと断続的なスパークを起こす中、いち早く立ち上がったレイは、男を睨みながら毒づく。――同じ「力」を有するものであったが故に、レイには男の放った正体不明の攻撃が「固有進化魔術によるもの」だと、察することができたのだ。
「そうさ。テメェのチンケな力とは違う、ホンモノの固有進化魔術……「裂閃極光〈ラスターエクスプロード〉」さ」
 左手に灯した紫の極光を揺らめかせながら、男は堂々とした口ぶりで言い放つ。それはとどのつまり、レイの放った一撃は自身の攻撃には到底及ばないという、宣告だった。
「チッ、まだ切り札を持ってやがったか。つくづくムカつく野郎だ」
 レイに遅れて、両刃鎌を支えにして立ち上がったナギトが、頬に着いたススを拭いながら毒づく。その忌々しげな表情を見て、男はニヤリと嗤ってみせた。
「お前らとの遊びに全力を出しても仕方ねぇからな。ま、暇つぶしにはちょうど良かったぜ」
 肩をすくめて、男は不敵に笑む。その光景を見た、デルタを含む村の面々は、内心に戦慄を隠せずにいた。レイとナギトからあれだけ激しい攻撃を受けて、なお余裕の面持ちで挑発し、今までの戦いを「遊び」と称したことが、にわかには信じられなかったのだ。
「……虚勢を張ったところで、貴様が手傷を負ったことに変わりはない」
「たかだか切り札の一枚や二枚、今更披露したって何か変わるこたぁねえよ」
 しかし、固有進化魔術の破壊力を目の当たりにしたにも関わらず、当の二人の戦意はかけらも揺るがない。それどころか、自分たちとの戦いを「遊び」と評されたことに対するあらん限りの憤りを、男めがけてぶつけてすらいた。
「あぁ? んだよ、まだやんのか? お前らの攻撃、ヌル過ぎて眠くなんだけどなぁ」
 しかし、二人の怒りを真正面から受けて、それでもなお男の態度には警戒心すら浮かばない。それどころか、二人の行動に呆れたような表情すら見せていた。
 左手でわしわしと髪を掻き、あまつさえ大きなあくびをするようなそぶりすら見せた、その瞬間。
 苛立ちを抑えようともしないまま、レイとナギトが地を蹴り、一息の間に男めがけて肉薄した。
「だから、さぁ?」
 直後、一瞬姿が掻き消えるほどの猛烈な速度で、男が斬りかかろうとする二人の懐へともぐりこむ。

「――――ヌルいっつってんだよ」
 そして、刹那の空白が通り過ぎた時。

 二人の身体は、纏めて近くの民家の壁へと叩き付けられていた。

「…………え?」
 一瞬。時間にして、ほんの秒すらもかからずして、村一番の腕利きである二人が、纏めて。
 瞬きも許さぬほどの勢いのまま、目の前で展開されたその光景を視界に納めて、しかしデルタの頭は、その現実を理解することができなかった。
 敗北。幾多ものアクリスと渡り合い、幾度となく村を危機から救ってきた二人が、たったの一瞬で。二人の活躍を熟知しているからこそ、一瞬のうちに起こった出来事を、にわかに信じることはできなかったのだ。
「っ、ぐ……!」
「ク、ッソがぁ……!」
 驚愕が生んだ沈黙が周囲を包み込む中で、響くのは民家の壁がひしゃげたことで生じる木材のきしむ音と、その中に身体を沈めたままの、レイとナギトのうめき声。強烈な一撃を貰ったにも拘らず、民家の壁面に中ほどまで埋もれた身体を起き上らせようとする二人を見て、しかし男は特段驚くようなそぶりも見せないまま、悠然とした足取りで二人の元へと歩み寄る。
 ――男の行動の意味を推し測ることは、容易だった。そして、その光景を見たデルタが、その先に予測できる結末を垣間見たデルタがとる行動は、一つ。
「――――させるかああぁぁぁッ!!」
 負傷によるダメージを男への怒りで打ち消して、デルタは走る。みたび魔動剣を展開し、青い軌跡をたなびかせながら肉薄してくるデルタに気付いた男は、はぁっとため息を一つ吐き出してから、デルタの方へと向き直った。
「ウザいんだよ!」
 男めがけて魔動剣の青い刃を振るうが、その攻撃の全ては事もなげに回避されてしまう。構うものかと再びデルタは魔動剣を振りかぶるが、その刃が新たな軌跡を空中に描くよりも早く、振るわれた鈍色の一撃がデルタの胸をしたたかに叩く。
「ぐっ……!」
 たたらを踏んで二、三歩後退するが、それでもデルタは体勢を立て直し、再び男めがけて攻撃に踏み切った。まさか踏みとどまるとは思わなかったのか、男が少なからず驚愕のを見せるが、次の瞬間にはすぐに苛立ちの表情に変わる。
「ウザいっつってんだろうが!!」
 更に、ダメージを負ったデルタめがけて、男が閃光――固有進化魔術による法撃を撃ち放った。
 すでに攻撃の体勢に入っていたデルタに、その閃光を避ける手段はない。直撃――は身体をひねることでかろうじて回避したが、足元直下の地面に着弾した閃光が生み出した大きな爆発に呑まれ、デルタの身体は再び宙を舞う結果となった。
「ぐああぁぁぁッ!?」
 黒煙をなびかせながら吹き飛ぶデルタは、数度地面で身体をバウンドさせてから、ゴロゴロと転がって停止する。衣服へのダメージこそ少なかったが、その中はすでに数度の攻防によって生じた、無数の大きな手傷。加えて、間近で食らったことが災いしたのか、魔力反応による紫色のスパークが、デルタの身体を拘束する結果となった。
「う……ぐっ……う、うぅぅっ……!」
 立ち上がらなければいけない。立ち上がらなければ、待っているのは最悪の結末。それを理解して、必死に立ち上がろうとするデルタの身体はしかし、その胸に宿した強き意思に反して、弛緩して地へと伏したままだった。
「チッ、雑魚がしゃしゃり出やがって」
 倒れ伏すデルタを一瞥してから、男は再びレイとナギトが身を埋める民家の方へと視線を向ける。その視線を追うようにデルタも目を向ければ、そこに居る二人はすでに、めり込んだ身体を民家の壁から引きはがし、再びその足で立ち上がっていた。
「よぉデルタ……ナイス時間稼ぎだぜぇッ!!」
 直後、ナギトが裂帛の咆哮を上げながら、男めがけて疾風のごとく襲い掛かる。遅れてレイも飛び出して、二人並び走りながら、男へと急接近した。
「この村でこれ以上、貴様の思い通りにはさせん!!」
「俺たちが守る――この村を!」
 抱いた決意を言葉に変えて、二人の戦士は互い違いに、息もつかせぬ連続攻撃を男めがけて叩き込む。デルタを相手取っていたせいで対応が遅れたらしい男は、驚愕と苛立ちが混じった表情のまま、全身に攻撃を浴びる。
「っぐ……、ダメ、逃げて……!」
 一見すれば、不意を突けたことによって、状況は優勢に傾いていた。しかしそれでも、デルタの胸のざわめきは収まることを知らない。それどころか、予想し得る限りの最悪の未来が、間近に近づいているように思えてならなかった。
 二人に逃げろと、大声で叫びたい。しかしデルタの身体は、固有進化魔術を間近で食らった影響からか、強烈な痺れに拘束され、指先の一つも動かすことができない状態だった。
 もちろん、身体が動かなくなるほどの痺れとなれば、まともに声を張り上げることもできない。どうにかしなければ――と思った、その矢先に。
「どらああぁぁぁッ!!」
 両刃鎌を投擲したナギトが、徒手空拳の構えを持って男めがけて鋭く肉薄する。そのまま両の拳による打撃を繰り出すが、その悉くが空しく宙を切るだけに終わった。
「クソが! いい加減くたばりや――がッ!?」
 最後の一撃で大きく体勢を崩したナギトめがけて、男が盾爪を振り下ろそうとしたその寸前で、がら空きになった男の背中を、弧を描いて戻ってきた両刃鎌が深々と切り裂いた。死角からの突然の攻撃で、大きな隙をさらした男めがけて、ナギトが身体ごと突っ込む。
「ちいぃぃぃッ!!」
「認めるぜ! お前は俺より、レイよりつえぇ! ――けどな!!」
 野獣の如き鋭い眼光を宿したまま、ナギトはひとつ叫ぶ。直後、拘束された男めがけて、長剣が――レイの一撃が、鋭く突きこまれる。
「クッ!」
 とっさに男は盾爪で防御を試みたが、度重なるダメージはすでに看過できないレベルに達していた。盾部表面に出来た大きな裂け目に、レイの剣が音高く突き刺さる。
「とどめだ。――今度は、外さん!!」
 ナギトの組み付きと、腕を覆うほどの得物に突き刺さった剣。二つの要因によって、軽業師のようにすべての攻撃をしのいできた男の身体は、この瞬間、しかと拘束された。
「さぁ、派手に行こうじゃねえか!!」
「我らもろとも、灰塵に帰するがいい――華炎大輪!!」
 直後、叫んだ二人の声さえもかき消す、決して狭くはない村の全てを照らし上げてしまいそうなほどの、巨大な真紅の大爆発が、巻き起こった。
「うぁ、ぐ…………っ、レイ姉!! ナギ兄ーっ!!」
 当然、その余波は相当なものであり、近場で倒れていたデルタもまた、渦巻く熱風と全身を叩く爆風にもみくちゃにされる。動けない身体のままで翻弄される中で、デルタは爆炎に姿を消した二人の名前を叫んだ。
 直後、天へと立ち上る黒へと変じた爆煙の中から、二つの影が飛び出す。
 デルタとは別方向に向けて墜落したそれは紛れもなく、デルタが名前を呼んだ二人の、ボロボロに傷ついた姿。互いの得物さえも失い、髪を焦げ付かせ、焼け落ちた服の下から覗く肌を黒く染めて、二人はうめき声の一つも上げないまま、倒れ伏していた。
「ぁ…………あ……」
 倒れているままのデルタには、二人の容体を詳しく見ることはできない。
 それでも、死力を尽くして戦った二人の現状は、痛いほどに理解することができた。

 おそらく、まだ死んではいないはず。
 だから、すぐに助けて、適切な治療を施すことができれば、きっと間に合う。





「……あーあ、残念だよ」
 そう信じるデルタの耳に、無常な声が届く。
 驚きと絶望を孕んだ目線を動かした、デルタが見たのは。


「死ぬ気で撃ってきた攻撃が、こんなショボいなんてな。もっと痛いかと思ったのに、見当違いだったぜ」
 立ち上る爆煙の中から歩み出て、心底失望したような目のままで倒れる二人を見つめる――まるで傷を負ったことを感じさせない、盾爪の男の姿だった。

 先ほどの攻撃が、二人が命を賭して放ったと言ってもいい、全身全霊の一撃だったことは、想像に難くない。にも拘らず、爆煙を背にして悠然と立つ男は、ズタボロの様相に反して、毛ほども堪えた様子も見せていなかった。
 信じられない。信じられるはずもない。デルタが知る中でもトップクラスに強い二人から、あれだけ攻撃を受けて、あれだけ深手を負って。それでもなお、男は立っている。デルタにはそれが、その事実が、何よりも信じがたかった。
「ま、せいぜいこの位が人間の限界だよな。……クソみたいな神様に勝手に定められた、クソみたいな限界だ」
 ゆったりと、狂いなき足取りのまま、男はレイとナギトが倒れている方めがけて歩いていく。

「――めろ……!」
 その行動の意味を、理解できない物はいない。

「やめろ……!」
 その行動を止められるものは、もういない。
 弱々しいデルタの叫びも、届くことはない。


 そうして、永遠よりも長い数刻が過ぎたとき。
 

「――じゃあな。最高につまらない時間をありがとよ」
 男の左手が、かすかに煌めいた。





「――やめろおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
 叫ぶデルタの声を空しくかき消す、紫色の爆発が、再び村を照らし上げて。


 世界が、轟音と閃光で塗りつぶされた。










 誰も動かない。
 動こうとしない。
 
 音も色も消えてしまったように見える世界の中で、動く物は立ち上る二つの黒煙だけ。

「……あ…………あ、ぁ……」
 その只中で、デルタは一人魂の抜けたような表情のまま、声にならない声で喘いだ。
 すでに身体を蝕んでいた紫色のスパークは霧散し、自由に動ける状態にある。しかしそれでも、デルタの頭は、身体は、動くことを拒絶するかのように、その場に縫い付けらていた。
「さて、と。邪魔者も居なくなったな」
 デルタの方に見向きすらせず、黒髪の男はごきごきと首を鳴らしてから、空を見上げる。今度は何をするのかと、つられてデルタが上を向くと。

「――んじゃ、再開と行くかね。どうせ暇な任務だ、パーッと派手にやっちまうとするか」
 全長にしておおよそ数百メートルはくだらないかと言うほどの、巨大な影が空に浮いていた。
 よくよく目を凝らしてみれば、それは一般的な物とは毛色が違うものの、「船」として解釈するには充分な形をしており、その姿や存在を知る者であれば、一目で「飛行船」と呼ばれる物体であることは理解できた。
 かつて人々が空を飛ぶ鳥に憧れていた頃、賢人たちと技術者たちのたゆまぬ研鑽によって生み出された、空を切り裂く鋼鉄の船。それが一隻、空を覆い隠すようにして、地上へと真っ黒な影を落としていた。
 直後、デルタの目が、空に浮かぶ影の中で、何かがうごめいたのを見止める。よく目を凝らしてみてみれば、それがいくつもの筒だと――魔力の砲弾を撃ち出すための「大砲」だということを、すぐに理解した。そして同時に、男の目的もまた、すぐに理解できた。
 まさか、とデルタが思ったその矢先、デルタや村人が見つめるはるか上空が、ちかりと煌めく。


 そしてその煌めきは、数拍の間を置いて、デルタの背後で轟音と共に巨大な閃光を生み出した。
「うわあああぁぁぁッ!?」
 直後に身を叩いた強烈な熱と風に、デルタは抵抗する暇もなく再び地へと転がされる。ひんやりと冷たい土に叩き付けられて、ようやく飛行船から砲撃が行われたことを理解することができた。
 同時に彼の背中に、熱風に晒されている最中にもかかわらず、ぞわりとした悪寒が走る。ようやく止んだ爆風に顔をしかめつつ、振り向いたデルタの視界に映り込んだのは。



「――――ぁ――」

 天へと立ち上る、黒々とした三つ目の黒煙。
 強烈な爆風によって吹き飛んだ窓ガラスと、熱風に晒されてか焦げ付いた家屋たち。
 そして、めくれ上がった石畳や地面の向こう、黒煙の上がる場所――人々が避難し、固まっていた場所から濃密に立ち込める、肉の焦げるような臭い。

 そこに広がっていたのは、先ほどまで確かに灯っていた命の灯火が掻き消えた、凄惨な村の姿だった。

「――ックハハハハハ! いいねぇ、派手な花火じゃねえか! どうせ何もないんだ、もっとバンバン行こうぜぇ!!」
 抑えきれない、と言った様子のまま、男が愉快げに腕を広げて見せると、空の飛行船から再び閃光が迸る。轟音と振動をまき散らす爆発が村の各地で起こるのを、男は楽しげに見つめていた。
 なおも爆発音の響き渡る村が、立ち上がりかけたデルタの膝を挫く。やがて力なく頽れたデルタの頬を、一粒のしずくが伝い落ちた。

「ハハハ……はぁ、良い傑作だったぜ。――――さて、そろそろ終わりにするか」
 背後から響いた男の声に振り向けば、そこに立っていた男の、鮮血のような瞳が、デルタを射抜く。
「あ、ぁ……!」
 石畳を踏み鳴らし、近づいてくる男の持つ鋭利な戦爪が、露わな殺意を受けてぎらりと光り輝いて。



「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁッ!!!」


そこで、デルタの意識はぷつりと途切れた。


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というわけでこんにちはー、前回よりは早めに更新できたコネクトですー。
本当はもうちょっと期間を開けて更新しようかと思ったのですが、次回である第5話が早く完成してしまったので、ならばとついでに公開を前倒した次第です。


さて、今回はアレファの村編に決着をつけると同時に、ついに起こってしまったメインキャラの退場を描かせていただきました。おそらく、私の作品群や私の創作における姿勢などを知っている方には、予想できない結末だったのではないでしょうか。
もちろん、コネクト自身もこの結末には思うところがあります。ストーリーの為でこそあれど、創作を始めた頃からの付き合いであるキャラクターたちを退場させてしまうのは、非常に心苦しく感じています。長い付き合いであるが故、その気持ちもひとしおです。
物語を盛り上げ、なおかつ後に控える正規メンバー達とのバトンタッチを行うための処置でこそありましたが、決して悪意を持って彼らを退場させたわけでは無いことをご理解願えればと思います。


今回でプロローグとなるアレファの村編は終了し、次回からは新たな正規メンバーであるキャラクターたちとの合流を描き、そして本格的に物語が動き始めることとなる第二部が始動します。
第5話では新たに、今回出てきた爪男の正体と、彼と同じく棒バト時代からの長い付き合いとなるキャラクターの一人が登場となります。彼女はキャラ主であるコネクトのお気に入りキャラの一人でもあるため、BBBのリメイク前から早く登場させたいなとよく思っていたのは内緒です……w


というわけで今回はここまで。
また会いませう― ノシ