コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

短編(連載予定小説)迷い込んでMMO


西暦2050年。
ゲーム業界はヴァーチャル・リアリティ――通称「VR技術」の実用化に成功し、現実さえも凌駕するほどの壮大な世界と、重厚なストーリーを
持ったオンラインゲームが、現在の世間の流行となっていた。
そんな、少しだけ便利になった世の中では、とあるゲームが注目の的となっていた。


ゲーム名を「AnotherWorld(アナザーワールド)」。
既存のゲームとは一線を画す、という謳い文句の元で発売された本作は、ゲーム雑誌の期待とレビュアーの高評価にたがわぬ
人気の爆発っぷりを世間に見せつけた。
世界観は、ありきたりな中世のもの。魔法があってモンスターがいて、国家の複雑な事情と人間模様が絡み合う、複雑で
重圧なストーリー。
しかし、世間を惹きつけたのはそのどれでもなく――鳴り物入りで導入された「フリービルドシステム」だった。
現在の技術では不可能ともいえるほどのとんでもないシステムを実装された本作は、無類の人気ゲームとなる。
フリービルドシステムというのは、いわば「ゲーム内の物体を自らの手で創造できる」ものだ。
冒険者――つまりプレイヤーが使用する武器防具から、日用品として使われているとされる回復薬や雑貨、果ては魔法に至るまで、
プレイヤーの想像力次第で様々なものを作り出せるというシステムは、大反響を呼んだ。


そして、とあるプレイヤーは言った。
「ここまですべてを創造できるなら、いっそプレイヤーで国を作ってみてはどうか」と。


果たして、その言葉は現実となった。
その言葉に興味を持った運営側が独自に新たなサーバーを設立し、運営によって作られた世界とつながったもう一つの世界、
すなわち「天空世界」を作り上げるという異例の出来事がまきおこったのだ。
大小さまざまな浮島で構成された天空世界は、自らの国を作りたいと願う多くのプレイヤーを引き寄せた。
結果さまざまな国が様々な島の上で誕生し、交易が栄え、国同士の争いが起こり、やがて国は三つにまで減る。
一つはプレイヤー名「ジョー」が立ち上げた「飢狼(ガロウ)」。
一つはプレイヤー名「ストライク」が立ち上げた「アークエンジェル」、通称AA(ダブルエー)。
一つはプレイヤー名「ゼウス」が立ち上げた「ドレイク」。
三つの国のもと、プレイヤーたちはだんだんと運営の手という名の世界を離れ、やがてはすべてのプレイヤーが天空世界に移住した。


新たに生まれ変わったAnotherWorldは、新運営と名乗った酔狂なプレイヤーたちによって運営から運営権を委託され、
プレイヤーの要望や不満点について真摯に対応する姿勢からプレイヤーはさらに増加した。
そんな新体勢になった世界に、どっぷりとはまり込む一人のプレイヤー。


***


「チェストオォォォォォ!!」
甲高い声でおっさんのような雄たけびを上げる女が、黒地に金のラインが走ったコートをはためかせつつ
右手に持った真紅の剣を振りぬいた。
ズザン!という爽快なサウンド・エフェクトが周囲いっぱいに轟き、女の目の前にいた巨竜「ブリザードリザード」の胴体を、
ほとばしったライト・エフェクトが真っ向からぶった切る。
ぐるぅうおおぉぉぉぉぉ、という弱々しい悲鳴を上げながら、竜は重圧な音響とともに地に伏す――と同時に、冷気をまとったエフェクトと共に
爆散、無数の雪のような結晶を舞い散らせ、消滅した。
ふー、と詰めていた息を吐く女に、後ろから声がかけられる。振り向いた先にいたのは、金髪に緑の瞳を持った青年だった。
「お疲れさん『レヴァンテ』」と声をかける男に、レヴァンテと呼ばれた女は「お疲れー」と簡単な返事を返す。
そんなだらけたような様に苦笑する男が、軽く人差し指を突き付けて指摘した。
「……ったく、そろそろもう少し女キャラっぽく振舞えよ。じゃないと、せっかくネカマプレイしてる意味ないんじゃね?」
そう、レヴァンテと呼ばれたプレイヤーは、女キャラを駆る男性――世間的に言われる「ネカマ」であった。
だが、そう指摘されたレヴァンテは心外げに反論する。
「うっせーなー。俺はただの女キャラ使いだって何度言わせるんだよ。ネカマっつーのは、中身も女だって装うからネカマなんだよ。
ネットのオカマだからネカマ、ってのは知ってるだろうよ、ゼウス?」
「って言ってもなぁ……確かにレヴァンテの中身は知ってるけど、だからって苦渋でガッツリ削った胸くらいには虚勢張れっての」
「余計なお世話だい。削りすぎたから後悔してるんだよ現状」
面倒くさげにそう言いつつ、レヴァンテは腰に吊った鞘に真紅の剣を収めてから、ゼウスと呼んだ目の前の青年に一瞥をくれてやった。


二人は、天空世界一の戦力を保有する国「ドレイク」近隣では有名人だった。
それもそのはず、レヴァンテの横でけらけらと笑うゼウスは、そのドレイクの国王なのだから。
レヴァンテのほうはレヴァンテのほうで、火炎の魔剣「レーヴァテイン」を引っさげた、「ドレイク最強の女剣士レヴァンテ」として
ドレイクはおろか、飢狼やアークエンジェルの人間にも名が知れているほどの有名人だ。
そんな二人がわざわざ二人だけで討伐や任務などに出向くのは、二人が小学校時代からの盟友同士だからでもある。
表向きの理由としては、倒された場合に莫大なデスペナルティ――国王がプレイヤーの攻撃で死んだ場合は国にもペナルティが課せられる――
があるため、その国王の護衛としてレヴァンテがついている、という体裁だ。
むろん本来は国王が負けることはほぼない――というか、三大国家最大の軍事力を誇る国王が弱いわけもなく、過去には
攻め込んできた義勇兵を名乗るプレイヤーたち、総勢42人をたった一人で一蹴した……という伝説も残っている。


そんな伝説や噂話は露ほども気にしない二人は、このアナザーワールドに来てからも親友同士なので、ゼウスが持ち掛けた
「最強の軍事国家を作って誰にも侵略できない国を作ろう」という提案のもと、ただ二人の状態から並み居る強豪プレイヤーを併合
――半数はゼウスとレヴァンテの強さにあこがれて強くなった者だそうだ――し、今や居住プレイヤー総数一万人を誇る
大国の国王になっていた。と言っても国王はゼウスなので、レヴァンテはあくまでも近衛騎士のようなものなのだが。


そして現在は国を守る防壁の強度を上げるためのクエストのため、周囲に出没する「ブリザードリザード」を討伐し終えたという状況だった。
周囲を見回したレヴァンテが、ふぅとため息をつく。
「……さて、これで終わりか?」
「ああ、終わりだな。俺はこの後直帰(ちょっき)して達成報告に行くけど、お前は?」
問われたレヴァンテは、ワイルドに顎をさすりながら答えを述べた。
「俺はちょっとキャラメイクやり直してくるよ。やっぱ巨乳のがいいっしょ」
「ごもっとも。……帰ってきたら触らせろよ」
「黙れハラスメント野郎。んじゃなー」
「またあとでー」
ひとしきりいつも通りな応酬を行った後、レヴァンテは光の柱に包まれて消滅した。


***


「……んーっ、さすがにドラゴンタイプは時間かかるなぁ」
こきこきと体をほぐしながら、ヘッドギア風の機械を頭から外した青年――レヴァンテの中の人が立ち上がる。
事前に購入していた課金用の電子マネーのコードが書かれたカードを持ってパソコンに向き直り、課金のためのページを開いて
コードを入力。キャラメイクのために必要な「転生の小箱」を購入すると、青年は手近なところにあった
飲みかけのりんごジュースを一思いに飲み干し、再度ヘッドギアをかぶってVR世界に「ダイブ」していった。


「よっしゃ」という言葉とともに少しばかり顔を引き締めた青年――改めレヴァンテから一時的に汎用アバターに切り替わったレヴァンテが、
目の前に配置されたオブジェクトになったレヴァンテの周りを歩き回りつつ、眼前に展開されているホロウィンドウを使って
レヴァンテを微調整していく。
ほんの少しだけ前より小顔に、釣りすぎた目を少し緩めて、身長はファンタジーな世界観に合わせてか気持ち低く、
髪の毛の色を明るいクリアレッドから気持ち明るめのレッドへ変更する。それらの項目を決定するだけで、実に10分の時間が経過した。
改めて、青年はレヴァンテの姿を見る。
「……よく再現できてるよなぁ」と、青年は感嘆の溜息を洩らした。
昔、自由帳に書いていたお気に入りのキャラクターが、自分の体となって動き回るのは、いつみても感動ものだとしみじみ感じていると、
不意にVR内で使用できるブラウザが呼び出しコールを鳴らす。何事かと思い、メールを確認すと、差出人は――旧運営の名前だった。
それを見た途端、いやな予感が背筋を冷やす。旧運営がメールをよこすのはままある事態だと青年は知っていたが、
なぜいちプレイヤーたる自分に?という疑問は、解消されることはなかった。
メールの内容は、簡単なものだった。短く、一文だけ、




「アナタハエラバレタ」と。
瞬間、青年の意識は闇に落ちた。


*********


こんちはーっす、もはやほかの小説をほっぽり出してしまっているといっても過言ではないコネクトです。
……いや、マジなんですよこれが。全ッ然構想が浮かばないんです。やっぱりクールタイムは必要なんですかねぇ……。
最近はまたも影響を受けて近未来ものを書こうとしたんですが、結局はかねてより温めていたこちらを公開することになりました。


この「迷い込んでMMO」は、昔(というかこの前)打ち切った小説である「ソードアート・オンライン 電光の仮想騎士」を
打ち切ったところから温めていた「VRMMOの世界を題材にしたい」という気持ちと別のいろんなものが入り混じって入り乱れた結果
誕生した小説です。タイトルがどこかで聞いたことあるようなものなのはご愛嬌。
元ネタとしては「小説家になろう」に掲載されていた小説から大々的にパクったのですが(オイ)、内容としては
オリジナルとして機能させていくつもりです。
なろう風にタグをつけるなら「残酷な描写あり」「ファンタジー」「冒険」「VRMMO」「性転換」ぐらいが適切ですかね?
まぁ、まだ連載確定ではなくて予定なので何とも言えませんがw


というわけで今回はここまで。
新連載予定の「迷い込んでMMO」をよろしくお願いしまーす。
ではではまたあいませうー ノシ




おまけ…主人公と周辺人物紹介


・レヴァンテ
 赤い髪と同色の瞳、黒地に金のコート(レアドロップ品の見た目用、つまりアバター装備)、フリービルドシステムにて作成された
 完全ワンオフの片手長剣「魔炎のレーヴァテイン」が特徴の女剣士。リアルではさえない高校生。
 幼いころからVRに慣れ親しみ、様々なシチュエーションに慣れてきたためクソ度胸を身に着けているが、発揮される機会が
 少ないせいで結局ただのさえない高校生。
 AnotherWorldでは持ち前のクソ度胸とVRで鍛え上げた瞬発力にものを言わせて天空世界最強と言っても過言ではない地位にまで上り詰め、
 周囲のプレイヤーからは「殺戮あるところにレヴァンテあり」と言われて恐れられているとか。
 ある日、レヴァンテの微調整を行っていたところに届いた不気味なメールを開封したと同時に意識を失うが……。


・ゼウス
 金色の髪に緑の瞳、国王としての証である真紅のマントと白金色の鎧が特徴的な好青年。リアルではレヴァンテと同じ高校に通う
 腹立つくらいのイケメン。ただし性格は残念。
 一国を率いるほどのリーダーシップを持ち、その力とひと時の廃人プレイを経て、軍事国家「ドレイク」を治める国王となった。
 国同士の戦争なんて知ったこっちゃないという持論を持ち、ゆえに強国家を収めながら戦争を行ったことは一度もないという。
 ただしPvPに関してはびっくりするぐらい強い。レヴァンテでも一分で負ける。


・リンドヴルム
 正式名は「Lindworm」。白い髪と赤い瞳、真っ白な法衣が特徴のロリ魔術師。中身はやっぱり男。
 リアルではゼウスには及ばないもののイケメンの範疇。やっぱり性格は残念。
 レヴァンテたちの親友の一人で、彼女らと同じくドレイクに属する強プレイヤーの一人。風魔法を得意としており、そこから
 ついたあだ名は「旋風のリンドヴルム」。
 レヴァンテとは違い完全なネカマプレイヤー。ただし妙に似合うのでなおさらイラつくとはレヴァンテ談。
 魔法技術の生成のためにプレイヤー人生を懸けており、リンドヴルムのおかげでドレイクの魔法技術も栄えたんだとか。