コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

旧ナイツロード小説 暇つぶしに改訂版

 蹴り飛ばしたコンクリートが伝える感触をいやに硬く感じて、「少女」は思わず足をもつれさせそうになった。
 日々たくさんの人間たちが訪れ、去っていく、商業を担う大型都市の一角。雑多な人影が往来する、広々としたメインストリートの只中を、その少女は息せき切らせて走っていた。時折対抗する人間にぶつかりそうになる身体をしなやかに動かし、まるで雑踏を縫う猫のごとき挙動を以て、ストリートを軽やかに駆けていく。
 少女の身を包むのは、おおよそ見積もっても少女らしいと言えば首をかしげてしまうであろう、男性よりの趣向の元に揃えられた衣服だった。無地の白いシャツと、同様に足のラインを見えづらくする白い長ズボンとスニーカー。ふわふわとしたファーを手首と襟に縫い付けた、前を前回にしたまま羽織られた上着が、少女の挙動一つに合わせてばさり、ばさりと鳥の羽音のような音を引き連れてはためき、翻る。
 少女の茶髪はさらさらと風に流れ、アクセントとして前髪につけられた二つのヘアピンを、まるで光る瞳の残光のようにして陽光に煌めいていた。

 しばらく走り、じりじりと息を切らし始めていた少女が、ふと視界の端に路地裏への入り口を発見する。同時にその身を柔に翻して、少女はストリートを外れて路地裏へと入り込んだ。やがて大通りから見えない位置に移動しきると、少女は手近な壁にばたりと背中を預け、胸に手をやって荒んだ息を大きく吐き出す。
 額に流れる汗を上着の袖でぬぐい、しばらく息を整えていた少女は、やがて整った息を細く吐きつつ、左の耳に取り付けてあった携帯端末――厳密にいえば「無線」という名のそれを操作し、周波数を合わせ始めた。
 無線の向こうの人間は、少女と同じく「仕事」を行っている。ゆえにすぐさま応答することは叶わないだろうと考えつつ、少女は全身に淡く力を籠め始めた。幾ばくもしないうち、少女の身に変化が起こり始める。
 陽の光を受けて栗色に輝いていた茶髪から色が抜け、数刻の後には頭上を彩る空のような蒼へ。
 上着の袖からわずかに覗く程度だった細くしなやかな指が、目立ちづらくも節くれだった力強い指へ。
 控えめながらもなだらかな曲線を描いていた肢体が、わずかに角ばった程よい肉付きのシルエットへ。
 柔らかいまなざしを印象付けるアーモンド形の眼は、薄く吊り上がった力強い形状へ。
 「少女」としてストリートを疾駆していた茶髪の人間は、わずかな時間を置いて、光を受けて鈍く輝くアイスブルーという、非常に強く印象に残る髪の色をした「少年」へと、変貌を遂げていた。
 変化を終え、節々に残る違和感の残滓を軽い準備運動でほぐしていた少年の耳に、ブツッ、という小さなノイズが届く。即座に反応した少年が無線を再起動させると、直後にその向こう側からは乾いた音が複数、聞こえてきた。火薬の爆ぜる音を、拳銃の発砲音と認識した少年が、わずかに顔をしかめながらも無線の向こうへと声を荒げる。
「こちらクリアネス2! クリアネス1、ビットっ、聞こえる!?」
 クリアネス2というコールサインを口にして、仲間のものであるコールサイン、ついでそのクリアネス1の本名を叫ぶ少年の耳には、コンクリートと思しき硬質な物体が崩落する音と、砂を踏み鳴らしたような音が綯い交ぜにされて届いていた。いくばくかのノイズが走ったのち、無線の奥からは通信相手である仲間――クリアネス1、ビットと呼ばれた青年の声が飛んでくる。
《げっほ……こちらクリアネス2。わりぃなデルタ、ちょっとひとりじゃこの量は無理だわ。……座標、わかるよな? 済まんけど、援軍頼むわ》
 ビットと呼ばれた青年の声は、苦しげな嗚咽と擦れた言葉で着色されていた。逼迫した状況の只中に居るのであろうビットに向けて、少年――デルタ、と呼ばれたアイスブルーの髪を持つ少年が、深めた眉間のシワを解さないままに応対する。
「足がないからまだ少しかかるけど、できるだけ早くそっちに行く。だから持ちこたえて! 死んじゃ嫌だからね!」
《わーってるよ。けど、ま、なるはやで頼むわ》
「すぐに向かう! だから、待ってて、オーバー!」
 通信修了の合図とともに無線を沈黙させたデルタは、踵を返して再び大通りへと飛び出した。直後に、少女だった時よりも向上した脚力を以て、目的地である、ビットの待つ場所――ビットが戦っている場所へと、走り始める。
(お願い……間に合って!)
 脳裏によぎる、不吉な予感。しかしデルタは一瞬だけぎゅっと目を閉じ、かぶりを振ってその不吉を頭の中から締め出す。
 嫌味なほどに明るい蒼天と、のんきにさんさんと地上を照らす太陽に、しかし言い知れぬ不安を覚えながら、デルタはぐいと歯を食いしばり、仲間の待つ場所へと走っていった。


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と言うわけでどうもお久しぶりです、コネクトにございますー。
最近はちびちびと漫遊記の執筆も再開し、久しぶりにイラスト作成に情熱を注ぎこみつつ、日々をのんびり過ごしておりますー。


さて突然ですが、皆様は私という小説家気取りのルーツをご存知でしょうか? 知らない人は次いでなんで暇つぶしに聞いてってください。知ってるならうすらぼんやりと思い出してください。そして笑ってください。
私、ことコネクトが小説という物に手を出し始めたのは、当時「うごくメモ帳」にて企画、運営されていたユーザー参加企画「ナイツロード」の影響が大きいです。中でも、運営者であるシュバ氏(現:うまそうす騎士丼す氏)のご友人たる「ぶしどーくん」氏が手掛けていらっしゃる、ナイツロードの小説こそ、私が「小説を描こう!」と決意したきっかけでもあります。
そうしてナイツロードの影響を多大に受けた私が勢い余って制作したのが、本ブログ最初の小説である「小説版 ナイツロード」でした。
(小説版ナイツロード目次:http://d.hatena.ne.jp/delta8428/20121212/1355333697
それからコネクトはいろんな小説に挑戦することとなりましたが、その辺は置いといて。


今回書きました小説は、昔の私をご存知ならば(たぶん)知ってるであろう、先述したナイツロードの小説をリメイク(というか全面改稿)したものとなっております。
いわば単なる暇つぶしである故、文字数の少ない一話のみの改稿。ですが、上記リンクや昔に本編(特に第一話)を閲覧した方には、コネクトの文才の向上っぷりを見ていただけたかと思いますw
(小説版ナイツロード第一話:http://d.hatena.ne.jp/delta8428/20110317/1300367869
ちなみに執筆途中、流れを再度把握するために旧本編を閲覧しつつ書いていましたが、
「小説初挑戦だしイロハも知らない状態なのは分かるけど、昔の俺の文章笑えるくらいヒデェなー」と何回も思いました。正直成長した云々通り越して、もう別人の域に入ってますw
昔のままの文章も味があったり、笑い話として楽しめたりはしますが、流石にナイツロードのは「マジで全面改稿してやろうか」と考えちゃうくらい酷かったです。それも含めて今の自分があると考えると、それはそれで感慨深いですけどねー。


というわけで本日はここまで。
よろしければ、みなさん自身で今回の一話と旧一話を比較してみてください。そして笑ってやってください。
それではまたあいませうー ノシ