コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

学園天国更新録w

ちはーす、コネクですよー。
現在、数回前の更新で発表しました「風といっしょに」のストーリーを構成中です。
UPするのはナイツロードが終わってからとなりますので、ご了承を。
……あ、もう終わってたかw


さて、繋録のほうもようやく第2幕に入れました!
主に第2幕は日常のみの編成となりますので、そこまで話数はないかと。
ではでは、更新ひあうぃごー!


*********


1章第2幕 日常と非現実
 第6話  異能のチカラ  by6/6



アヤセスライドモールの騒動から、もう1週間以上がすぎた。
俺たちは普段どおりの学園生活に戻ったワケなんだが、ちょっとばかし変わった所があった。
まず1つ。
ギンこと焔 銀二が、俺たちの前に現れなくなったこと。
次に2つめ。
これは俺の勘違いだろうけど、星川が俺たちとしゃべろうとすると
どういうことかちょっとどもっている気がする。
最後に3つめ。
他人には関係ないことだけど、woild saverから召集の知らせがかかったこと。


そこまで気にすることではないんだけど、人ってのはちょっとの変化が
気になるもんだ。
そんな状況が、かれこれ数日続いた今日……



* * * * * *



「おはよーさんっと」
微妙に声をこわばらせて、セツが教室に入った。
いつもどおり、自席にはユウとリクが座っている。
「おお、おはよう」
「おはよう、ございます」
二人の挨拶にかるく会釈し、セツも席にドッカと座る。
と、最近までセツを避けてきたようなそぶりをみせていたユウが突然、
「セツさん!」
ずいっと身を乗り出し、セツに顔を近づけてきた。
もちろんセツには想定外の出来事だったもので、
「うおっ?!」
と驚いてイスごとずっこけた。
「あ……すいません」
やったことを後悔するように、なぜか赤くなってユウが謝る。
「っでぇ〜…いや、いいよ。気にスンナ。
……んで?俺になんか用?」
イスを元に戻しつつ、セツが聞く。
答えたのは、ユウの横に立ったリクだった。
「……単刀直入に言う。といいたいんだが…」
「なんだ?」
「ここじゃ言いづらいから、昼に!」
話をはぐらかされたような気がして、セツがもう一度ずっこけた。



―*―*―*―*―*―*―



3時間目、授業中…
ぼさっと授業を聞いていたセツの前にいたユウが、突然こちらに顔を向けた。
「セツさん」
授業中なので、ばれないように小声で。
「なんぞ」
しばらく間が空く。
「…………えと、すいません。何でも……」
それだけ言うと、そのまま前を向いてしまった。
「……?」
セツは怪訝な顔をする。



―*―*―*―*―*―*―



「わりー、遅くなった」
昼休みの屋上。そこにやってきたのはセツとソウだった。
「ごめんなさい、急に呼びだして」
待っていたユウが、申し訳なさそうに眉尻をさげる。
「いーよいーよ。ところで、俺らに何のようだ?」
ソウがひらひらと手を振り、質問する。
答えたのは、やはりリク。
「………単刀直入に言わせてもらって、いいか?」
「朝もそんなくだりだったよな…。で?何だよ」
セツが少々引きつった笑顔を作る。自分の予想が当たらないことを願う。


「『異能』って、なんなんだ?」
リクの一言に、セツとソウの顔がこわばった。
「…答えられないなら、それでいい。だけど、これだけは教えてくれ。……お前ら、何者だ」
リクの目には、揺すっても動かせないであろう意思がともっていた。
しかしそんなリクの言動を受けてさえ、セツはおどけた様子を見せる。
「大体わかるっしょ?そんな真剣になるなよー。刑事ドラマの尋問なんかじゃあるまいし」
その言葉を受けて、さらにリクの姿勢が強くなる。
「ふざけるのもいいかげんにしろよ!!」
ちなみに、この激昂に一番驚いたのはユウだったりする。
「おいセツ、お前どこまで人をばかにすりゃ気が済むんだよ!!
質問にさえ答えられねえのか?お前は」
「瞬間湯沸かし器」
その一言がセツから発され、リクが硬直した。
「………戦いの場に身をおくヤツは、常に自分を理解して、すべてにおいて冷静に対応する必要がある。
今俺が言ったジョークも分からないようなやつに、俺らの正体を明かすことはできねえな」
一瞬前の飄々とした態度が一変、あのときの冷徹な目に変わる。
「……まあ、教えてもいいが、一つだけ注意事項がある。守れるなら教えるよ」
「えっと、その注意事項って…何なんですか?」
そこで声を上げたのは、なんとユウだった。
セツも驚くが、すぐに冷静な面持ちに戻る。
「簡単なことさ。……そして同時に、お前らの命の保証にもなる」
リクたちに、緊張が走る。
「今から言うことを、絶対に他人に漏らすな」
…………………………え?
「そ…………」
「それだけ…です、か?」
「ああ」
二人は一気に脱力した。
「な……なんだよ〜。お前、メチャクチャ真剣な顔して言うことがそれかよ」
「単純だが、それだけ信頼が必要になるからな。……とはいえ、お前らの口の堅さは知らないわけじゃないからな。
あえてこれだけにした」
「あの」
ユウの一言で、セツが会話を止める。
「もし破ったら、どうなるんですか?」
セツはああ、という風な顔でさらっという。
「三途の川の向こう側」
ほんのちょっぴりぼかした発言だったが、その恐ろしさは9割方理解したようだ。
特にユウの顔が面白いくらい引きつっている。
「大丈夫だ。詳細に喋ったらのことだよ。口が滑ってほんの一部分、くらいだったら大丈夫さ」
「そ、そう、ですか……」
セツのフォローで、ちょっとだけユウが落ち着きを取り戻した。
「さて、まずは何から知りたいよ?」
そう促すと、間髪いれずにリクが答える。
「大体全部…でいいか?」
かなりアバウトな発言だったが、セツは理解したようだ。「オーライ」といって頷いた。
「どこからがいいかなーっと……」
あごに手を当てて考えるセツに、ソウが話しかける。
「歴史のあたりからでいいんじゃないか?この二人なら、その辺からで大体わかるだろ」
「ん、そだな。うーし、じゃはなすぞ。
……この世界には、魔法なんて存在しない。そのことは知ってるよな?」
その言葉に、ユウとリクがそろって頷く。
「でも、厳密に言えば『最初から存在していた』んだよ。
ただ、人類がそれに気づかなかったわけで、な」
二人が理解したかは省略しつつ、話を続ける。
「そして、人の内に宿っていた魔法の力を解放すること、それを――」
「『異能』、という……か」
セツの説明をさえぎり、リクが一言口走った。
「そう。ただこのチカラは、あんまり普及させると今の科学技術や
人類の生活自体が衰退しかねない。そこで、異能を発現させられる者を集中的に集め、
その事実を匿名事項とした組織。それが、俺らがよく言っている『woild saver(ワールドセーバー)』
なんだ。……だいたいわかったか?」
「なんとか…。でも、それと歴史に何の関係があるんですか?」
そうユウが言うと、待ってましたといわんばかりに指をビッシィ!と指して説明を再開する。
「そこなんだ!実はセーバーの存在には、歴史の中で起こったある事件が根幹的に関わってるんだ。
……いまから16年前、異能の力による抗争が起きたんだ。
異能を普及すべきという者たちと、存在を限定的にしようとするものたち。
その2大勢力に分かれて、異能者どうしの大規模な戦争が起こったんだよ」
そこまで聞いて、リクが首をかしげる
「そんなこと、俺ら聞いたこともないけどなあ?」
「当たり前さ。…………二人とも、『常盤事変』っての、知ってるか?」
その単語は聞き覚えがあった。
「はい。たしか、オーバーテクノロジーと現代兵器の戦いで、
オーバーテクノロジー側の人員不足で現代側の勝利……でしたっけ?」
そう、とセツが頷き、対照的にリクが「あったっけ?」という顔になる。
「……厳密に言えば、その歴史事態、ウソだ」
「へ?」
目の前の人物がかなりぶっ飛んだことを言ったので、ユウたちは思わず面食らった。
「まー、戦いがあったのは本当だ。問題は、戦っていた連中さ」
「!……まさか」
察したらしいリクが声を上げる。
「ああ。さっき言った、異能者同士の戦争。
常盤事変っていうのは丸々、異能者同士の戦いなんだよ」
歴史の黒い部分を知り、二人が驚愕する。
「そして今のこの世界のとおり、異能者同士の抗争は現代派の勝利で幕を閉じたんだが、
戦いは終わってなかったんだよ」
てっきり終わりかと思っていたリクが、そこで面食らっていた。セツは気にせず話を続ける。
「その事件から13年後……今からちょうど三年前だな。
ある日突如として、異能者が各地で破壊活動をはじめたんだ。
……知ってるだろ?『世界同時テロ』」
知っているも何も、ユウたちにとってはつい最近起きた「身近なテロ」。
忘れるはずもなかった。
「あれも実は、異能者たちが関わってたんだよ。
報道ではたしか、新型の火薬が使われたとか報じてたよな?」
そこで答えたのはリク。
「ああ。痕跡を一切残さずに強力な爆発を生み出せる最新型の火薬が使われてたらしいな。
どこで製造されたのかは誰もわからなかったらしいけど」
そこまで喋って、つい数日前の事件を思い出す。
「あっ、まさか!」
「そう。そのとき使われたのは火薬なんてものじゃない。
異能の力だったんだよ」
「なるほどな……たしかにあの炎なら、痕跡なんて残らないはずだ」
合点がいったように、うんうんとリクが頷いた。
「で、そのときの事件も、13年前のように戦いで解決すると思われた。
――――――けど、今回はそうは行かなかったんだ。
理由は……わかるか?星川」
いきなり指されて、ただびっくりする。
「ふぇあっ?!え、えーと、えー…と……」
そのうろたえ方に若干後悔を覚えつつ、セツが説明を再開した。
「簡単さ。敵サイドに強力な異能者が現れた。それだけのことだった。
…言葉だけなら、すげえ単純に聞こえるだろ?でも実際は、それだけじゃなかった。
強力な異能者……つまるところ『異能の力が強大』だって解釈していたせいで、
現代派は思わぬ苦戦を強いられたんだよ。
なぜか?これこそ簡単だ。そいつが、優れた才能を持っていたからなんだよ。
突如として現れたそいつは、異能の強力さに加えて、その力を生かしきるだけの
『技量』も持っていたんだよ。
もともと数だけで、酷使しきれる人員も少ない。加えて全員の能力自体が貧弱だったせいで、
そいつに完膚無きにまで叩きのめされ、おまけにそれで自身を喪失したものが急増。
現代派部隊は総崩れになっちまったんだよ」
そこでまたも、リクが口を挟む。
「どれだけ強靭に造っても、一箇所の構造がだめになれば後は早い建築物…みたいな感じか」
「そのとおり。おかげでそいつの部隊にいいようにやられ、
もはや再起は不能になっていたんだ。
……でもそんなとき、現代派に希望が見出されたんだ。
…………すなわち、そいつと対等に戦える者が、現代部隊に加入したんだ。
…驚くなよ?」
その一言で、二人には予想がついた。
「……それが、俺とソウだった」
いやな沈黙が降りた。
「……って、ことは、もしかしてお前ら、英雄?」
唐突にそんなことを言われたので、つい「ぶふっ」と噴出した。
「…んまあ、たしかにこんな説明じゃそう思うよな。
……実際は違うよ。俺らのほかにもう一人、現代軍に加入した奴がいてな。
本来は、そっちが英雄扱いだよ。名前を『ターミナル・ディーハルス』っていってな。
連中以上に能力を使いこなして、革命軍を圧倒したんだよ。
で、能力を引き出せる奴に新しく定義を……あいや、ここはカットでいいな。
とにかく、そんな猛者三人が一気に加入したおかげで、現代軍は猛攻を再開できた。
そして、ようやく連中のボス………さっきまで言ってた『あいつ』のことな、その下まで
たどりつけたんだよ。
そいつは自分のことを『インフェルノ』と名乗った。
さすがにその軍をたった一人で指揮してただけあって、その強さはすさまじいもんだった。
…いやー、しのぎを削ってたのが懐かしいぜ」
セツが思い出に浸ろうとすると、すかさずソウが突っ込みを入れた。
「おいセツ、説明つづけい」
「おー、すまねえすまねえ……。
で、俺ら3人が束になってかかったおかげで、辛くも勝利を収めることに成功したんだ。
……で、13年前とそのときの経験と反省を生かして、今後はできるだけ異能者を監視して、
その能力使用を制限するっていう名目で、セーバーが発足されました、と!
歴史についちゃこんなもんだな」
セツにしては普通の説明をしたつもりだったが、常人には何かの授業かと思うほど
説明が複雑だった。二人とも半分も理解できてなかった。
「んまあ簡単に言っちまえば、異能者は危険だから抑制しなきゃ!って理屈。
どう、わかったか?」
最後が簡潔にもほどがあって、いやでも理解できたのが救いか。
キーン…コーン…カーン…コォーン……
「おー、時間ぴったり!んじゃ残りは放課後に回しますかねっと」
そういうと、一人さっさと屋上から出て行くセツだった。



―*―*―*―*―*―*―


その後、ゲーマー部部室。
もともと4人全員がこの部員だったので、集まるのはたやすかった。
「じゃ、昼の続きかな。
次はどっからがいいかね?」
その質問を受けて、ソウが答える。
「異能の特徴と使用法でいいだろ」
「オーケイ、じゃいくぞー。
えーと、俺ら人間は、生まれながらにして全員が異能を持っている……って、言ったっけ?」
先ほどの歴史の中でも言われてないような気がしたので、素直に答える。
「いえ、聞いてません。……っていうか、それほんとですか?!」
「ああ。現にお前も、自覚してねえだけでちゃんと異能を持ってる」
お前のは意味不明だがな、と心の中で付け足して、説明を続行する。
「それで、異能ってのは6タイプに分類される。
…順番に、炎、雷、氷、風、光、闇、って具合だ。
これだけ種類があるように、人それぞれ異能のタイプは違うんだよ。
……あのときのように、ソウは『炎』の異能を持っている」
そこまで説明すると、いきなりセツがトビラのほうに向かう。
「次。異能の使い方を説明するから、外に出よう」
それだけ言い残し、一人さっさと部室から出て行った。
「おい、ちょまちやがれ!どこ行きゃいいんだよ!!」
突っ込みながら、リクたちが続く。




「二人ともいるな。んじゃ、使い方を説明する」
校舎前にあるビオトープで、セツは説明を再開した。
「使い方は、長い間潜在していただけあってかなり簡単だ。
……ソウ、こっからはお前が頼む」
「あいよ」
そういうとセツが一歩横にずれ、ソウがあらたに説明を始める。
「異能の力を発現させるためには、最低条件を満たしておく必要がある。
まず当たり前だが、自身の異能が使える状態……俺らは『開花』って呼んでるな。
異能を開花させた状態でないと使用は不可だ。そしてもうひとつ。…こっちのほうが大事かな。
開花させた異能を発現させるには、『自身の異能タイプを知る』必要があるんだ。
大体は発現させたときに知るんだけど、まれに知らない奴がいるからな」
二人がへえ、と言ったのを確認し、また説明を続ける。
「さっき言った条件がそろって初めて、異能を使うことができるんだ。
…で肝心の出し方なんだが、セツが言ったとおり超簡単だ。
まずは、自分の能力……俺なら炎を『イメージ』するんだ」
「イメージ…ですか?」
ユウの一言にソウが頷く。
「ああ。それもただ単なる炎を想像すればいい。
……そして、そのイメージを出そう!という意思で…………っ!」
いきなりソウが右手を突き出すと、その手のひらに勢いよく炎がついた。
「「うわあっ!?」」
そのあまりの勢いと一連の動作の速さに、思わず飛びのく。
「これだけで、異能を『発現』させることができる。どうだ、簡単だろ?
でもって、いま俺の手が炎に包まれてるけど、他人が触ってもやけどはしない。
陸道、触ってみろ」
「お、おう」
リクが恐る恐る炎に近づくが、ちっとも熱さを感じない。
そして手を触れさせるが、炎が揺らめくだけで何一つ感じなかった。
「このとおり、今は幻に近い状態だ。けど、一度でも発現した奴の手を離れれば!」
ソウが近くにあった腐食の進んだ枯れ木に向けて、その炎を放つ。
ソウの手を離れた瞬間、強い熱気が一気に周囲に発生する。
あたるまでは一秒とかからなかった。直撃を喰らい、枯れ木が派手に爆散した。
「うおぉ……」
そのすさまじい威力に、リクがたじろぐ。
「このとおり、強力なパワーを発揮するんだ。使いどこを間違えりゃ、最悪死人が出るな」
そこで説明を切り、一歩下がった。
それと同時にセツが前に出て、説明を再開する。
「そんなわけで、俺たち異能者は危険な人間として、セーバーに管轄され、
その力を使うのを制限されてるんだ」
その説明に疑問を感じたのか、ユウが口を挟んだ。
「じゃあ、いまそんな威力の異能を使ったらまずいんじゃ……?」
その質問を受け、セツが続ける。
「たしかに、普通の異能者なら、な。
でも俺たちはちょっと違ってな。…えー、どう言えばいいかね。
あそうだ。本来なら異能を使用する際は、セーバーに使用許可を取る必要があるんだ。
だけど一定以上の実力を持てば、本人意思の元、自分で状況を判断して
自由に異能を使用することを許可されるんだ。俺らがその例」
続けて、ソウが説明する。
「自己判断に基づいて、最善の手を施工できるようになれば、いつでも使用することを
許可される。本部では通常の異能者と区別するために『ライセンス持ち』って呼ばれてるな」
「ああ。……で話を戻すぞ。いいか?」
聞かれて、ユウが頷く。
「最後に説明するのが、異能発現の『前兆』だ。
……その人物、たとえばAが炎の異能を持っていて、もうじき開花するだろう、っていう
状態だとしようか。炎の異能が発現する前兆として、『周囲で発生する炎が
普段より強力になる』ってのがあるんだ」
「強力に?」
リクのオウム返しに、セツが頷き続ける。
「理屈とかはめんどくさいしカットするけど、個々人の持つ異能の力によって、
発生する前兆の形態も異なるんだ。
…じゃー、いまから一覧を言うから、どれか当てはまってたら終わったあと言ってくれ」
ユウとリク、そろって頷いた。
「いくぞーっと。
ひとつ、さっき言ったように『周囲に発生する炎がやたら強い』。
ふたーつ、『自身に強い静電気が発生する』。
みっつめ、『気温を低く感じる、または触ったものがやたら冷たい』。
でもって四つ目ー、『周囲一帯に発生する風が強くなる』。
五つ目。『視界に入る光を強く感じる』。
最後。これはあんまないけど『視界が通常より暗く感じる』。
この6つ、と。どれか当てはまったか?」
その説明を受け、リクが何かを思い出したらしい。
「俺…当てはまった」
「どれに?」
セツの反応が早いことは気にせず、リクが続ける。
「ふたつ目の『静電気が強くなる』ってやつだ」
その一言を受け、そうかとセツが頷いた。
「なら、リクの持つ異能は『雷』だな」
「……へえー。俺、雷使えるようになるのか」
ずいぶんと関心がなさそうに、リクが返事を返した。
そんな気の抜けた返事を聞き、セツがちょっと肩を落とした。
「おいおい……そろそろ異能者になるんだぞ?自覚持ってくれよ……」
「っつわれても、なあ……。なんだ、実感が持てないんだよな」
リクにつられて、ユウも素直な感想を述べる。
「ボクも、リクと同じですね。
セツさんたちには悪いんですが、ちょっと信じられなくて」
そんなユウの一言を受けて、セツがピクリと反応した。
「そうかぁ……。つまりお前らが言いたいことは『あんまりにも現実離れしてて、
信用したくともなかなか信用できそうにない』ってことだな」
「はい。……すいません」
しおらしくユウが謝罪すると、当の本人はたいしてきにしてない様子である。
「まあ、そらそーだろうな!いきなりこんなワケわかんねえこと言われて
信じろなんて言うほうが難しいよな。うん」
気にしてないどころか、ユウたちの反応を予測さえしていたらしい。
「何も、いっぺんに信じ込めなんていわねえよ。とりあえず
『この世界には異能ってのが存在する』ことを知っといてくれればいいさ」
いつもどおりの軽い言い回しに戻ったセツに、二人も同意した。
「さあて、話すことは全部話したな。じゃ、さっさと部室で練習じゃー!おーっ!」
途端に平常運行に戻ってさっさと戻っていったので、お約束のように
その少年の後を追う羽目になってはいたが。



―*―*―*―*―*―*―



そしてその日の夜。
「……まだ外はぬくいなあ。星がよう見えとるわ」
一人ふらふらと、セツが散歩をしていた。
しかし今は夜の10時前。さすがにそんな時間から出歩くというような
奇妙な趣味なんてものはない。
「…ってか、なんだよセーバーめ!
こんな時間に連絡よこして『ソウエン市の神社付近をパトローれ』だあ?!
さすがに理不尽だっつーの!」
実は今回、セツにセーバーから「仕事」が入ったのだ。
その内容というのが「桜流学園の都市伝説『夜10時の少女』の真相を探れ」
というもの。
都市伝説の詳細は「静まりかえった夜の10時頃、月光寺の周辺で少女の笑う声が聞こえる
というなんだかガセくさいものである。
普段生真面目なセーバーがこんな依頼を送りつけてきたものだから、セツも少々驚いていた。
「…………月光寺ねえ。聞いたことはあったけど、行くのは初めてかね」
独り言を垂れ流しつつふらふら歩いていると、正面にある家から
誰かが出てきた。しかもその人物が、
「…………んなっ、星川!?」
「へ?……あ、セツさん!」
まずこんな時間に出歩くことなどないであろうユウだったものだから、それは仰天した。
ちなみに現在のユウの姿は、いつものかっちりした学ラン姿とは打って変わっていた
黄色地のシャツに下は黒いハーフパンツという、ラフだが外出には十分なもの。
ついでに普段がそうであるように、ちょっと少年くさい格好だった。
「おいおいおい、なんでこんな時間に外でてるんだよ?」
「セツさんこそ、なんでこっちに来てるんですか?」
お互いありそうになかった遭遇に戸惑っている。
「…俺は、セーバーの仕事でこっちに来たんだよ。…で、お前は?」
「えと、私はちょっと眠れなくって、気分転換に散歩でもーと……」
「ふーん、そうか……ってん?」
納得した後、何かが違うことに気づいた。
「お前、一人称変えた?」
そう、普段と一人称が違ったのだ。目ざとく気づいて、理由を問う。
「ああ、これですか?実は私、気分で一人称がころころ変わるもので……
今は多分気を抜いてたから、私って言う一人称になってるんだと思います」
自己分析しすぎだろう、と心の中で思ったが、あえて突っ込まないでおいた。
「あの、一緒に行っていいですか?」
次の一言を考えていたら、向こうから先に仕掛けてきた。
「ん?おー、いいぜ。…あ、せや、聞きたいことあった」
「なんですか?」
「星川って、『月光寺』っていうのしっとるか?」
月光寺?と聞き覚えがなさそうな顔をしたのでさっさとあきらめかけたが、
「ああ、この近くのお寺ですね。知ってますよ。……ついでに、そこの都市伝説も」
知ってたのかといわんばかりにずっこけた。ずいぶんなポーカーフェイス…
いや、これは自然に出るものなんだろう、と思う。
「んじゃあ話が早い。案内してくれねえか?」
「はい、いいですよ」




そうこうして案内されること数分。
「この上ですよ」
「おー、サンキュー」
そこは、すこしばかり標高の高い小さな山の山腹にあった。
登って空を見上げれば、さぞ星がきれいなんだろうとセツは一人思う。
しかし階段が長そうだ、と余計なことも一緒に考える。
「そういえば、なんでここに来たんですか?」
「ああ、さっきも言ったとおり、セーバーからの依頼さ。
『ここの都市伝説(笑)を調べてくれ』ってな」
都市伝説の調査という、日中説明されたセーバーとはイメージの違う依頼に
ユウがちょっと噴出した。
「迷信深いんですね、セツさんの言うセーバーって」
「おう。先月なんて『暴漢を退治しろ』だったしなあ。
俺らはどこぞの警察かって突っ込みたかったよ」
あきれたような声にまた笑いながら、ユウが後を追う。
セツがちらりと見やると、階段をひょこひょことはねるような動作で
微笑を浮かべながら楽しげにあがってきていた。
ちょっと可愛い、なんて余計な思考を頭の中からぶっ飛ばして、そのまま階段を上がる。
また後ろを見ようか、なんて思った矢先に、
「うわああっ?!」
「「!?」」
正面から声が聞こえ、青い閃光が煌いた。セツたちの正面といえば、月光寺。
「セツさん!」
「おうよっ!」
いままでの空気を一変させ、二人は残り少しの階段を駆け上がる。
ばたばたとあがりきってついたのは、古風な社の寺だった。
ところどころ古びている、風情のある建物が建っている。
しかし今はそれどころではない。セツは中央あたりまで来て、周囲を確認する。
だが、あたりをいくら見回せど、声の主が見当たらない。
「……一歩遅かったな」
セツが舌を打つ。
「……まさか、神隠し…?」
ユウがおびえて、セツの近くに寄り添う。
だが、ユウの予想は外れた。セツが、ここで何かがあった痕跡を目に留める。
「これは……」
「引きずった、後…?」
目の前にあったのは、敷かれた小石の上を何かが引きずられた後。
一本の線のようになって、境内の後ろに向かって続いていた。
おそるおそる、その後をたどってゆく。
「ん?」
「あれ…」
しかし、その線は森に続く土の道手前で止まっていた。
足跡や機械などの後もなく、完全にそこで途切れていたのだった。





夜10時半くらいになって、二人はようやく町に帰ってきていた。
先ほどから、二人には言葉はない。
その状態で帰ってくるうちに、ユウの家の前まで着いてしまっていた。
「じゃあ…ここで」
考えたいことがあるから、と付け足し、そのまま帰ろうと足をのばす。
「あっ…ちょ、待ってください!」
だが、おびえた声でユウが引き止めた。
振り向くと、ちょっぴり泣きそうな表情で、セツのほうを見ている。
「あの……リクのとこまで、連れてってくれませんか?」




その後、陸道宅前。
「そういうワケだから、お願いっ!」
リクに泊めてくれとせがんでいた。
「…というわけだそうだ。じゃー俺帰るし、あと頼むわ」
無情にも、セツは一人さっさと帰っていく。
ただ、その表情がとてつもなく悲しそうだったのは、二人とも知らなかったが。
さらに帰宅までの道中で、
「フラグバッキバキに折りやがってよぉ……」
とちょっと泣いていたのは言うまでもない。



結局ユウはその日リクの家に泊まったらしい。
そして翌日一日、セツから恨みがましい視線が向けられていたことをユウはは知らない。



*********


ここまででーす!
…最後については何も言うなw
一回、こういう恋愛フラグをバキバキに折ってみたかったんですww
いやあ、見事に粉砕できてうれしいのやら悲しいのやら^^;
ちなみにこの回の後半は、ある作者さんが書いてくださっている繋録の外伝と
直接リンクしています。
その作品が見たい人はhttp://d.hatena.ne.jp/nakajima-akito/へごーごー!


この中での異能に関する説明だけでは不明な点も多いかと思われるので、
後々設定をまとめて提出いたします。はい。
書き終わって気づいたらもう朝の5時だよ!w
生活リズムもどさねえとww
では ノシ