コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

一気に完結まで進むぞーっ!!

どっせーい、コネクトですー。
頑張ってこのまま鋼鉄の瞳を完結させて、繋録や風といっしょにへと
バトンを渡したいです。


さて、前回の予告どおりに、ここから物語は一気に完結へと向かいます。
一応全10話構成として、ここから残り3話を書き上げていきますっ。
っつっても、いつ完結するかは全くわかりませんがね!
そんじゃ最後の3話、まずは8話へいってみよぃ!



*********


#08 人類始祖の星



「…うぅむ、受け入れたいのは山々なんだがなぁ」
「やはり、ダメでしょうか…?」
コクト達は、オラクル「エクスティオー」へとやってきていた。
人類始祖の星と呼ばれる星から最初に旅立ったとされるオラクルで、その稼動年数はなんと
228年というまさに骨董品級の船だ。
しかし、官邸の窓から見える町景色にはそんな様子は見られない。むしろカルカーロやレーヴァティーンよりも
綺麗に見えるのは気のせいだろうか。
など、オラクルへの感想を心の中で口にしていると、目の前にいる船団長が再度口を開いた。
「すまないなぁ。私としても力になりたい。だが、下の連中がどうにも堅物なものでね」
「いえ、まだとりあえず行く当てはあります。お心に感謝いたします」
曰く、エクスティオーの人民数はそろそろ限界近いらしく、新しく居住ブロックを増設しなければならないという
状態らしい。そこに人一人くらい分けないはずなのだと船団長は言うが、どうにも
幹部級の人間達が頭の固い者たちばかりで受け入れを許してくれないのだそうだ。
いくら船団長が話のわかる人間だろうと、下の全員を説得しなければならないとなると
受け入れてもらうのは一気に難しくなる。幹部の人間達に話し合いを持ちかられける権限がないからだ。
そうとなると、最終的に頼れるのは軌道上の延長船にいる故郷以外に受け入れてもらえる場所は
なさそうだった。丁寧にお辞儀をし、コクトは船長室を後にしようとする。
「あぁ、待ちたまえ。せっかくエクスティオーに来たんだ。町を観光してみてはどうかな?」
コクトの思考に「デジャヴ」の一語が浮かんだ。
以前同じ話を持ちかけられ、その言葉に甘えて観光を楽しんだ結果ホムラが拉致されるという
非常事態を引き起こしてしまったのだ。
しばしその場で迷う。素直に従っていいのだろうかという疑問が湧いてくる。
が、それに答えたのは新たに現れた人物だった。
「お言葉に甘えさせてもらおうじゃないか、コクト。どうせ食料なんかも補充しなくちゃならんだろう?」
先ほどから、この会談を隅で静観していたゼクスだ。
彼の目は、船団長の言葉を信じろと言っているかのようだった。
それを見て、コクトも決める。
「…では、お言葉に甘えさせていただきます」
「うむ。大したもてなしもできんが、楽しんできてくれたまえ」
朗らかに笑うその船団長は、誰かに似ている気がした。


―*―*―*―*―*―*―


「うわー、レーヴァティーンよりひろーい!」
その後、コクトたちは三人揃ってエクスティオーの町を散策していた。
先のホムラの言葉通り、エクスティオーは先日立ち寄ったレーヴァティーンよりも広く感じた。
理由はおそらく、建物の高さにあるのだろう。
エクスティオーの町は、緑豊かな景観を汚さないように建造物の高さは一定以下に抑えられていると聞いた。
それが結果的に、この町の広々とした印象を生んだのだろう。
官邸の窓から覚えた綺麗という感想は、あながち間違いではなかったらしい。
「こうも開放的だと、なんか自然と気分が晴れるなぁ」
コクトも大きく伸びをし、ホムラと同じように周囲を見回す。
唯一ゼクスだけが落ち着いた様子なのは、おそらくこういった景観を見たことがあるからなのだろう。
そうこうしていると、すぐに日が落ちてきた。オラクル標準時計を確認すると、もうそろそろ5時あたりだ。
「…出発はいつあたりにしようかなぁ」
ぼそっと呟くコクトの言葉は、ゼクスが聞いていたらしい。
「別に、あまり急ぐ必要はないだろう。ここは治安も良いようだから、ゆっくりしてから出発すればいい」
気楽そうにゼクスが言うと、コクトがふと問いかけてきた。
「…そういえば、何でこの町は安全だってわかったんですか?」
コクトにこの町への滞在を決意させたのは、他でもないゼクスである。
以前ゼクスが助けてくれたときとは、若干事情が違う。
「別に、わかったわけじゃあない。長年の勘が、そう言ってるのさ」
しかし、返ってきた答えは少々的外れなものだった。彼にも確信はないようだ。
「ねえねえコクト君、約束覚えてるよねっ?」
が、そんなことは無邪気なホムラを見てるうちにどうでもよくなってくる。
「…まあ、いいか」
起こる確証もないことについて考えるのは無駄なことだ。そう割り切り、コクトはホムラに引っ張られていく。



「ねぇ二人とも、これ似合うかな?」
なんでも買ってやるというコクトの言葉でホムラが向かったのは、コスチュームショップだった。
ここには通常の衣装などのほか、キャストたちが使用できるパーツや3種族共用の衣装なども置いてあるということで、
ホムラはここを選んだらしい。先ほどまで目移りさせつつ店内を歩き回っていたが、
やがてお気に入りの衣装を見つけたらしく、試着してみてはコクトとゼクスに似合っているかを聞いてくる。
聞かれた二人も嫌な顔ではなく、似合ってるかどうかを適切にホムラへと進言する。
そんなやり取りが数回続き、最後にホムラが手に取った衣装で購入が決定した。
「おぉっ、似合う似合う!」
「ほう、いいじゃないか嬢ちゃん」
彼女が選んだのは、アークス研修生に支給される制服のリペイント版だった。型は新月というらしい。
元のパーソナルカラーと絶妙にマッチし、統一されたカラーが見るものにクールな印象を与える。
着こなしを確認すると、本人も大層気に入ったらしい。
店から着て行くとごねたが、コクトがとりあえず説得し明日からということになった。


その後に向かったのは量販店。
ホムラのための買い物を済ませ、とりあえずは船に積み込むべき食料を調達する。
「…ん?コクト、保存食じゃなくていいのか?」
保存の利く缶詰などではなく、きちんとした食材を買うのには理由があった。
「ええ。アークセンチネルには食料保存とかのために冷蔵室を儲けたんですよ」
賞金稼ぎのデメリットは、一度オラクルなどの拠点を離れるとしばらくは補給が出来ない点にある。
そのため量の少ない缶詰などでは、下手をすると航海の途中で備蓄が切れてしまう恐れがあった。
現にコクトもカルカーロ以前のとき、食料を切らして餓死寸前の賞金稼ぎと出会ったことがある。
ゆえに基本は冷蔵室に食材などを積み込み、用途に合わせて適量を使用するのが暗黙の了解だったのだ。
「あー。たしか厨房の横にあったね、そんな部屋」
ホムラは船内の探索でそれを見つけていたらしく、うんうんと頷く。
なんとなく腑に落ちないらしいゼクスは置いておき、コクトはめぼしい食材を大型カートに積んでいく。


―*―*―*―*―*―*―


その後、購入した食料を纏めて船に積み込んだあとコクトたちは遅めの夕食をとっていた。
流石に連日食事を作るのは難しいので、今日に限っては惣菜で済ましている。
「ところでコクト君。ここはいつあたりに出るの?」
もぐもぐとサラダを食べつつ、ホムラが問いかける。
「うーん……明後日あたりに、このオラクルが始祖の星に最接近するらしいんだ。
燃料はあるんだけど、なるべく無駄は省きたい。遅くとも明後日には出航だな」
なるほどー、とのんびり納得したホムラと入れ替わりに、今度はゼクスが話しかけてくる。
「このまま始祖の星に向かうのか。…なら、気をつけたほうがいい」
ホムラとは対照的に、ゼクスは何かを警戒しているらしい。
「どういうことですか?」
惣菜のから揚げを飲み込みつつ、コクトが問う。
ゼクスからの返答は、それを知るコクトを戦慄させた。
「…あの星に、ダーカーがいる。それも半端な数じゃない、ハイヴの中ほどはいるだろうな」
ダーカー。久しぶりに耳にした仇敵の名に、背筋を冷たいものが走る。
「……まさか、エクスティオーを?」
「いや、その可能性は薄い。奴らの波長からみて、襲うのは別の場所だ」
ゼクスはハウンドという身体的特徴を生かし、ダーカーの発する脳波を捉えることができるのだ。
一度敵として目の当たりにした能力が、今回はこうして自分達の役に立っているのも皮肉なものだと
内心苦笑しつつ、出航の時間について計算する。
ダーカーがどこかを襲撃するのであれば、その前に食い止めるのが吉だ。
だが、ゼクスの話ではハイヴ級のダーカー軍がいるらしい。
そこにたった3人で飛び込めば、どうなるかはほぼ明白だろう。
だが、ダーカーのしてきたことはコクトにとって決して許しがたいことでもある。
ダーカーを倒そうという使命感と仲間を守る義務感の間で、コクトは頭を回転させて考える。
と、思案に集中しすぎて体が動いてなかったらしい。ホムラにつつかれ、我に帰った。
「…大丈夫?」
「あ、ああ。大丈夫だ」
即興で笑ってごまかすが、
「一人で悩むのもいいが、今のオレ達は仲間だ。頼るぐらいのことはしてもいいと思うぞ」
大部分をゼクスに見抜かれていたらしい。はぁとため息をつきつつ、改めて二人に説明を開始する。
「…俺は、これから始祖の星に行って、可能な限りダーカーの数を減らそうと思います。
見過ごしてどこかに被害が出たら、多分後悔してしまうので」
簡潔な説明だったが、大体は二人に伝わったらしい。
「異論は無い。オレも大方同じ意見だったからな」
「私も。ダーカーっていうのはまだ聞いたことしかないけど、人に危害を加えるなら
その前に倒さないとって考えてる」
意見は纏まった。目的は至極単純、ダーカーの殲滅。
「…ありがとう、二人とも」
小さく呟きながら、揃って食事を再開する。


―*―*―*―*―*―*―


翌日。
ダーカー殲滅のために予定を繰り上げ、アークセンチネルはエクスティオーを発つ。
目指すは眼前の青い惑星。人類の始祖と呼ばれる、美しき水の星。
「…大気圏突入準備。摩擦熱軽減ジェルを底部に展開。船体方向、上27度。断熱シャッターを
全窓に展開し、シャッターをロック。大気圏内出力への切り替え準備、よし…と」
ブリッジ前方の強化ガラスが、摩擦熱から身を守るべく断熱シャッターで閉ざされる。
摩擦熱を底部で受けるべく船体が傾き、冷却ジェルが底部に展開されていく。
「窓はいいが、こういうときには不便なものだな」
それを傍から見ていたゼクスが、苦笑しつつモニターを見やる。大気圏突入のリミットは既に20秒を切った。
「かなり揺れるんで、ゼクスさんもシートに」
「あぁ」
「よし…大気圏突入10秒前。総員、ショックに備えよ」
ホムラは身を固くし、ゼクスは優々と背もたれに体を預ける。
経験の違いから出る余裕の差が顕著なのを見て、コクトが苦笑した。
「突入まで、5,4,3,2,1…」
0とともに、ガクンと船体に衝撃が走る。突入が始まり、機体表面の温度が上昇していく。
「…む、船体角度修正、下11度。ジェル展開に問題なし、攻撃等は見受けられず」
細かい調整を次々とこなす様は、ホムラに言わせれば「かっこいい」ようだ。
「一人でよくやるものだ」とゼクスからもお褒めを頂きながら、コクトは船体のコントロールを続ける。




やがて数十分が経過し、ようやく機体表面の温度が下がり始めた。同時に、かすかな落下感覚がブリッジに伝わる。
「大気圏内出力に切り替え、底部スラスター出力上昇!格兵装、及び装甲に異常なし。
底部ジェルの展開を中止し、落下速0と同時にメインスラスターを点火する」
そこまで言い終えると、ふぅとコクトが一息ついた。忙しい大気圏突入の後は、意外と疲労がたまる。
「お疲れ様、コクト君」
「小型船といえど、よく一人で制御できるもんだ。いい操舵だったぞ」
「ありがとうございます」
二人のねぎらいに軽く会釈し、自分の椅子へと沈み込んだ。
ゼクスが示すダーカーの群れはまだ先だ。しばらく休もうと思いつつ、コクトはうっすら目を閉じる。
疲れが蓄積していたのかはわからないが、コクトの意識はすぐに沈んでいった。


 * * * * * * 


気づくと、そこはカルカーロの市街地だった。
ぼんやりとあたりを見回すコクトは、視界の端にあるものを見つける。
それは、無数の進行してきたダーカー。真っ黒いその体躯が、コクトの全身を戦慄させる。
目の前には、見慣れた母校。その先にいるのは、最近はめっきりと会っていないクラスメート。
食い止めねばと思った矢先、視界がノイズで包まれる。
一瞬静止した後に眼前に映し出された光景は、信じがたいものだった。
「…………え?」
先ほどまで目に映っていた見知った町並みは、もはや見る影も無い。そこかしこで火災が発生し、
逃げ遅れた住民達が血しぶきを上げて狩られていく。
「な…なんでっ、カルカーロは?!」
周囲を見渡しても、広がるのはおぞましい破壊された光景ばかりだ。
と、その一角に何かを見つけた。無数のダーカー、それを相手に戦う少年、手に持つ得物はガンホーク。
あふれる涙を止めもせず戦うその少年は、コクトの脳裏に電撃を走らせた。
「……俺だ…………」
そう、戦っているのは幼き日のコクトだった。
無数のダーカーを相手に単独で立ち回るその姿は、客観的にみて初めて恐ろしいという感想を抱く。
しばらくその戦いに見入っていたが、やがて小さなコクトは群れたダーカーの最後の一匹を屠った。
そのまま遠心力に体を任せ、どぅと倒れこむ。
覚えがある。幼き日のコクトはこの後ダーク・ラグネに襲われ、殺されかけたところを
謎の二人組に救われたのだ。
そして覚えどおり、その光景を見ているコクトの目の前にダーク・ラグネが降ってくる。
「どわっ!?」
巨大なその体躯は小さきコクトを獲物として捉え、その方向へとゆっくり足を進める。
絶望した様子でそれを見ていた幼いコクトの手から、何かが投擲された。
ガンホークだ。孤を描いて飛ぶ緑色の刃が、偶然にもラグネのコアである赤い球体に直撃する。
「…ラグネじゃねえか。また随分と派手に攻撃してやがるんだなぁ、こいつらは」
ふと、すぐ横から男の声が聞こえてきた。その直後に、少女の声も聞こえる。
「精神干渉が効かないわ…。あいつ、暴走してるみたいよ」
「何っ…そいつぁ初耳だ。攻撃されただけじゃそんなに怒り狂わんはずなだが……」
「もう一度やってみるけど…っねえ、あれ!」
「……なっ、逃げ遅れか?!くそっ、行くぞ!」
コクトの真横を通り過ぎる、二つの疾風。
小柄な少女が法撃用の武装「ウォンド」を携えて走るその後ろから、銀の髪と
その手に収まった伝説の名機「ガンスラッシュゼロ」を煌かせ、男が駆け抜ける。




そしてその精悍な顔を、コクトは知っていた。
「――――――アハトさんっ!?」
叫んだ瞬間、再度視界にノイズが走る。次に映し出された光景は、地に伏したダーク・ラグネが
霧と化して消滅していく瞬間だった。
消え行くラグネの向こう側には、傷一つ追っていないアハトの姿が見える。
しばらくその男の悠然とした姿をみていたが、不意にアハトがコクトのほうを向いた。
「っ?!」
たじろぐコクトをよそに、アハトが歩み寄ってくる。
「…久しぶりだな、コクト」
懐かしい声だ。最後に出会ったあの日から、最初に出会ったあの日から、彼の声はずっと変わっていない。
「……お久しぶりです、アハトさん」
周囲の光景は闇に溶け、今は暗闇へと変わっている。
「コネクト。いきなりですまんが、ハウンドに気をつけろ」
唐突に結論から話すクセも、コクトが覚えている通りの彼だ。
「どういうことですか?」
以前からの付き合い方で、コクトは彼に尋ねる。
「…お前の周囲には、ハウンドが2機いるんだ。しかも一機は、あのバカアニキだ」
アハトの指すバカアニキとは、紛れも無くゼクスのことだろう。しかし、もう一機については
コクトにも全く心当たりが無い。
それを問おうとするコクトに先んじて、アハトが口を開く。
「…もう一機は、俺の相棒だ。正式名を『マークノイン』、研究者に付けられたペットネームは…『あめゆぅ』」
今度こそ、コクトが驚愕した。
あめゆぅ――市民名を「雨野ユウナ」というその少女は、カルカーロに身をおく以前からアハトと共に行動していた、
いわば彼のパートナーというべき存在だ。
強力なテクニックによる援護には、コクトや仲間達が幾度も助けられた記憶がある。
その優しい彼女がハウンドだという事実は、受け入れるのに抵抗を感じてしまう。
「…信じたくは無いだろうが、残念ながら事実だ。…知り合いから聞いた話だと、
アイツはテクニックを使えるように素体にニューマンの細胞を移植されたハウンドらしい。だが、
細胞を移植したときに問題が発生してな……」
ふとアハトの表情が、物悲しげなものに変わる。ノイン―ユウナのことを案じているのだろうか?
「移植時になんらかの事故があり、ニューマンとしての人格と素体の凶暴な人格が
一つの体に同居しちまったんだよ。現状からわかるとおり、普段はニューマンのおとなしい子…
いつも俺達が見てたあのあめなんだが、特定条件下でのみ素体の人格が露見しちまうんだ」
「…その条件は?」
「ダーカー達から過剰な精神干渉を受ける、もしくはダーカーへの過度の精神干渉を試みたときだ」
アハトの声が一旦途切れると同時に、周囲の光景が変わる。先ほどまでコクトたちがいた、破壊されたカルカーロだ。
「このときはまだ人格が露見することは無く、あめの人格が記憶を失うだけで済んだ…が」
続けて、また光景が変わる。ダーカー進行を食い止めるべく戦ったアスラクトの大地が映り、
次いでアムドゥスキアが映される。いずれも、ダーカーと戦った地だ。
「アスラクト、アムドゥスキアと二度の精神干渉を受けたあめは、ついにハイヴで
ノインの人格に乗っ取られちまった」
「っ……」
乗っ取られた。それはすなわち、自身の知らないところで何かが行われたことを示す。
そしてその「何か」は、最悪の形でコクトへと告げられる。
「……一撃必殺だったよ。俺ともあろうものが、しくじった」
「なっ…………まさか、アハトさん…」
悲痛な表情になるコクトに対し、アハトは笑ってみせる。
「心配するな、ハウンドをなめちゃいかんぞ。目下復活準備中だ……が、復活にはかなりかかりそうだ」
「…じゃあ、無事なんですね?」
「一応な。だからこうやって、お前に思念を送れているんだ」
アハトは無事。その事実は、自然とコクトに安堵をもたらしている。
しかし、安らいだ頭で考えてみると、不可解な点がいくつか上がってきた。
「ん…それじゃ、あの時脱出したっていうアハトさんの船は、誰が……」
考えると、アハトがもう一度笑う。
「それはおそらく、アイシャだろうな。俺がやられる前にとっとと脱出させたから、それが見えたんだろう」
なるほど、確かにその考えには合点がいった。
コクトが唸っていると、アハトは苦笑しつつ一歩後ろに引く。
「さて、俺はそろそろもう一回寝るわ」
「え、もう時間なんですか?」
なんとなくその言葉になじんでしまったことに若干気後れしつつ、コクトはアハトに問いかける。
「ああ。これでもだいぶ長くいられるようになったんだ。あんまり無茶したら
目覚めたときに絶対体がきしむ」
「なるほど……わかりました。またあいましょうね」
最近はなれてきた微苦笑をアハトに向けると、彼も嬉しそうに笑った。
「おう。…暇になったらまた化けて出てやるよ。覚悟しとけ」
「…奇妙な幽霊がいたと周囲に誇張しておきます」
別れ際、二人は拳を打ちつけた。


 * * * * * * 


「コクト君、起きて!」
少女の声で、視界が開ける。随分深く眠ってしまっていたようだ。
「コクト、今すぐ出るぞ!マズイことになっている…っ」
いつになく逼迫したゼクスの声に、コクトは瞬時に眠気を振り落とす。
「何があったんですか?」
「あれ!窓の外!!」
慌てふためくホムラに促され、コクトはブリッジから地上の様子を伺う。



「………なっ…『ハイヴ』……?!」
コクトたちの眼前には、黒き箱舟が鎮座していた。


*********


終了ーっ!
いやー、満足満足w
何が満足かというと、自分の思い通りに物語を描けたことがです。
ようやく文才もでてきたなぁ、と一人感慨に浸りますw
ちなみにこの回、昨日の7話が完成してすぐに取り掛かってみたらもう出来ちゃった回でもありますww


人類始祖の星と銘打って登場させてますが、ぶっちゃけ星自体の出番はほぼありませんww
なんとなく地球を登場させたかっただけ…あ、言っちゃった。
ゲフン。その通り、ここで出てくる「人類始祖の星」とはつまり「地球」なのです。
エクスティオーが近くにいる理由もなんとなく書いてみましたw
そして、劇中にて「エクエスティオー」という女性用のコスチュームが生まれたとかのたまっておきながら
ホムラが買ったのはアークス研修生の制服です。
共用じゃないので、キャストの女の子が着られる可愛い服があれしかなくって…(落胆
そして後半パート。始祖の星とはかけ離れた場所が舞台に…w
でも、個人的には色々と撒いてある伏線を回収したかったのであえてあんな感じにしました。
アハト氏が書いた「アポカリプス」にてコクトがアハトに「その名前を名乗るな」と激昂した理由、
同じくアハト氏のスピンオフでアハトがあめゆぅに殺された理由、そしてアハト氏のスピンオフにて
ゼクスが言っていた「アハトは死んでいない」という言葉の意味を、ここの中で書いてみました。
全部アハト氏のスピンオフ関連ですw
ちなみに、この物語が進行している最中カルカーロのほうはえらいことになってます。
なにがえらいことなのかって?それは次回ということでw


さて、続いては本編で散々活躍しているコクトの相棒「アークセンチネル」の解説をしたいと思います。
この船はただの高速宇宙艇というわけではなく、
・コクトの部屋以外にも客間、練習場、厨房や冷蔵室を完備(冷蔵室は最近増設)
・単独で大気圏突入と離脱が可能(第1章9話、及び今回使用)
・キャンプシップと同じテレパイプ生成装置を搭載(第1章から使用。オラクル間もこれで移動している)
・鋼鉄の瞳以降、主砲として「クォーツカノン」が搭載(第2章6話で初使用)
・超長期間の使用に耐える堅牢な装甲
という意外とチートな船になってますw
が、厨房や冷蔵室は本編でチラッと言ったとおり賞金稼ぎの船には必ずあるらしく、
艦隊戦のために主砲や副砲を持つ船もよくあります。
さすがに単独の大気圏内外の行き来は他にはありませんがねw
ちなみに、名前や描写は存在しませんが敵艦への突撃用にビームソードを船体前方へ展開できます。
実はカルカーロにてハイヴ突撃の際に使用しているんですww



それじゃ、書くこともなくなってきたので次回予告をば。
コクトたちが降り立った人類始祖の星で発見されたハイヴ。
発進間近のダーカーの母艦をくいとめることはできるのだろうか?!
そして、物語はクライマックスへ。舞台はコクトが駆け巡る宇宙から、少年の故郷カルカーロへと移る!
迎えてくれる仲間達の中、コクトは立場が豹変したある人物と出会う―。
そして明かされるホムラの正体。すべてを知ったとき、少女は何を思い、なにをするのか…。


――相対するコクトと仇敵。それは、あまりにも悲しい現実。
次回「決戦」


サーセンッ!!
格好付けてみたらこんな滑稽なものにw
次回の解説になっちゃいますが、旅を続けたコクトは妙な因果からかカルカーロへと舞い戻ることに。
というわけで、ようやくカルカーロ組とコクト組のストーリーがリンクします!
今まで空気状態だったルチアやユウナ、リクウに神楽が全員登場しますので、乞うご期待!
ではではまた次回〜 ノシ