コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

番外編となります〜(学園)

はいさどうも、コネクでさあ。


今回の話は、7話後半の続きになります。
新たなゲームでユウとセツが再開しますが、その再開までには紆余曲折あって…
そんなかんじですw
以前の告知どおり、今回は一人称視点の練習も兼ねています。
SAOの描写がお見事にもほどがあったのでw
ついでに言うとSAO臭満点ですw
じゃー、更新いきまそー!


*********


 1章第2幕
  挿話 仮想と現実(リアル)



自分が趣味でゲームをやるのは、もしかしたらこれが初めてかもしれない。
私――星川 優は、ふとそんなことを考えていた。
そもそも私はゲームそのものが苦手な性分だ。どういうゲームをやったとしても、
大体誰かに倒されて終わり、というのが普通だった。
だから、私は対戦系のゲームとかはめっぽう嫌っていた。でも、今回は違った。
嫌っているはずなのに、そのゲームからは魅力を感じたのだ。
普段人に対して感じる魅力などとは違う、本質的なもの。
それに、セツさんとゲームの中で合流するなんて思いもしなかった。
ゲーム好きはもう一人いるけど、そっちとは趣向があわないので合流なんてほとんどなかった。
でも、今回は別だ。なにせ、趣味の合う人間との合流だったから。
そう思いつつ、私はパソコンを立ち上げた。




「こんなところかなー…、っと」
パソコンの画面は、ゲームに使われるキャラクター「アバター」の全身を映していた。
ブロンドのポニーテールや目つきなどは一緒だが、体系がかなり違っていた。
同じくらいに設定しているが、やや高く見える身長。
初期装備らしいワンピースがよく似合う、線の細い滑らかな体つき。
同じ感じにしたと思っていた―実際はちょっと願望なんかも入れていた―が、ここまで自分と
かけ離れるとワクワク感よりも気の滅入りかたのほうが強い。
「……やっぱ、作り直そうかな」
そう思ってキャンセルボタンを押そうと思ったが、踏みとどまる。
考えてみれば、大体の人間がこういう風に理想を取り入れてキャラを作っているのだ。
現実の自分と違っていたとしても、そう問題はないはずだ。
などと自己満足にたっぷり浸ってから、「よし!」と一言気合を入れる。
自分の苦手とする世界。戦いのある世界。そう考えるだけで、早速絶望感がひた走る。
いや、大丈夫だ。私ならやれる―――と喝をいれ、よぎった不安を頭の中からたたき出す。
「……いける。いくぞっ!『Star right(スターライト)』!」
最後にもう一度気合を入れつつ、私はスタートボタンをクリックした。




 * * * * * * 




家に帰ってからの行動は、多分普段の作業速度の倍近くだっただろう。
星川と別れてすぐ近くにあったコンビニで夕食を調達(俺は料理のスキルが絶望的なものなので、
食事は大体出来合いのもので済ませている)し、タイミング良く来た列車に滑り込み、
家に着いたときにはまだ6時くらいだった。
すばやくパソコンを立ち上げ、星川から聞いた名を検索エンジンに打ち込む。
一覧の最上に表示されたタブを叩くと同時に別の窓を展開、お気に入りリストの一番上にあった
動画サイトへのショートカットを叩くとすばやく窓を切り替え、
表示されていた「ブレイブハート・オンライン」の公式サイトへジャンプ。
手早く入会手続きを済ませようとしたが、ドラグーン(部で使用しているFPSゲーム)と
同じ会社が運営していたのは以外であり、好都合だった。
もう一度公式サイトを開き、今度は「Client Download(クライアントダウンロード)」を叩く。
表示された画面の文字を半ば無視しつつクライアントを起動し、そこで動作を停止させた。
我ながらなんて慣れきった動きだ、と自虐気味に床に倒れて数分休憩してから、
買ってきた食事を簡素な500wレンジに突っ込み、重量センサーによるオート暖めを選択。
テレビの前のテーブル兼勉強机兼PC台につんのめり、大きく息を吐き出した。
「……なんで、こんなあせっとるワケ?」
普段なら、事前の情報収集をしてからダウンロードに踏み切るところを、今日は
何一つためらわずダウンロードしている。久しぶりに、自分の行動に疑問を持った。
―――というか、自分とつるんでくれる奴がいて嬉しいだけなんだろう。
そう解釈し、暖めが終わったスパゲティを引っ張り出しにいった。


―*―*―*―*―*―*―


食事を終え、バラエティで爆笑しているうちに、ダウンロードは終わっていた。
インストールを手早く完了させ、ゲームを起動させる。幸いアップデートで時間は食わなかった。
「うーっしゃ、アバはどんなにしようかねー」
ゲームをプレイしているといつも以上に独り言が多くなる。ぼそぼそとつぶやきつつ、
取得済みのIDとパスワードを打ち込む。
そのままキャラ作成画面に入り、キャラネーム、性別を設定した後、俺は目を丸くした。
「……ん?『容姿詳細設定』だ?」
聞きなれない単語が表示されていた。何をどう細かく設定するのか見当も付かないが、とりあえず選択する。
システムバーに新しくウインドウが表示され、ナンバーとボタンが出現する。
「へー、16種類かー。キャラかぶりはそう多くないやろなあ」
最近のアバター作成には選択肢がやたら多い。
とあるMMOPRGでは基本的な設定のほか、体系やら身長やらかなりこまごま設定するものなので、
あまりのめんどくささにプレイ前にプレイをやめた珍しい例があったものだ。
適当に流していくうち、大体は把握できた。
どうもこの設定では、容姿の幼さを決めるものらしい。
童顔タイプからしわの寄った老人顔まで、案外いろいろとあった。
もう2,3週したあと、頭の中に記憶しておいたお気に入りの顔のナンバーを思い出し、それを順に吟味していく。
数分唸った後にようやく決まった顔が、あろうことか中性的な顔立ちの容姿だった。
「ま、ゲームの中ではちっとくらいはっちゃけてもいいだろ」
何度かつぶやきながらアバターを作成し終えた。
「……まあこんなんかね、っと。……うわ、まるで女キャラじゃねえか」
自分のチョイスセンスは変態的だと自覚してはいたが、ここまでとは思わなかった。
先ほど選んだ中性的な容姿に、ショートながらどこか少女っぽいスポーティなハネ毛。
システムを深く理解してない奴が見たら、絶対に女キャラを作ったと誤解されそうなかわいらしさだった。
「……いや、いいか。とやかく言われてもシャッフルで作ったっつっとけば大体通るだろ」
自分でも呆れる言い訳に軽く傷つきつつ、次の設定画面に移った。今度は初期装備を決めるらしい。
そしてこちらも案外多岐にわたっていた。基本的なロングソードに始まり、ランス、ボウガン、
メイス、と行き着いた先に、エネルギーソード、ハンドガン、ランチャーなど科学的な武装
その名を連ねていた。その種類、実に19種類。
「おいおい……サーバー持つんかこれ?」
技術的な心配をしたが、そろそろ待ち合わせの9時だ。第一印象で気に入った粒子剣を選択。
同時に服装が自動で決定され、いよいよゲーム内に入れる、といったところで俺は手を止めた。
新しいゲームに挑むときにいつもやっている、高ぶる高揚感を制御する瞑想を10秒間行う。
「…………うしっ、行くかあっ!!」
張り切ってログインをクリックし、期待を高鳴らせると同時に――――――



俺の意識は、ふと途切れた。




 * * * * * *




「…………ん?」
気が付いたら、私は草原のど真ん中に立っていた。
突然だ。何がどうしてこうなったのか、まったく見当が付かない。
「……え、あれ?ボク、どうしたの…………?」
混乱しまくる頭に鞭打ち、状況の整理を始めた。
――自分が今いるのは、見渡す限り平坦な草原だ。
先ほどまでのこの記憶が確かなら、私は自分の部屋にいたはずだ。
自分の部屋でパソコンをいじり、ゲームを開始したところまでは覚えている。
……いや、もう一つあった。この記憶が途切れる直前、画面に映った文字。
真っ黒な画面に唐突に映った


Good Lack


の文字。
血のように真っ赤な文字に寒気を覚えた直後、意識が途切れたのだ。
「……あれ、なんなんだろ」
今でもあの気味の悪い文字が鮮明に思い出せる。またぞっとして、思わずため息をついた。
忘れるために、全身を動かしてみる。
ざく、ざくと音を立てて、誰もいないだだっ広い平原を走ってみる。
柔らかな風が頬を撫でて、かすかな草のにおいが気持ちを高揚させる。
これほどの開放感は、久しぶりに感じただろう。何もかもが、心地いい。
「やっほーう!」
だん!と土を蹴り、そのまま跳躍する。なぜかうれしくなって、歓声を出してしまった。
着地してから、周りに誰かいなかっただろうかと確認する。
見回してみるが、誰にも聞かれなかったようだ。私はほっと安堵を覚える。
「うどおわああああああっ?!」
しかしその直後、どこからか悲鳴らしきものが聞こえた。びくっと身を震わせ、周囲を見回す。
いた。視界前方に、走ってくる人影が見える。が、その後ろにいたものに、思わず思考が凍結した。
「…………ドラゴンんん?!」
直後、悲鳴を上げてしまった。



 * * * * * *



「うどおわああああああっ?!」
少女――否、幼い顔立ちになったセツは、急に現れた怪物から逃走している真っ最中だった。
(――ワイバーン?!神話上の生物が、何でこんなとこにっ!!)
セツを追いかけるのは、緑色の鱗をまとったワイバーン
ギャオオ、と時折咆哮をあげつつ、セツを追いかけ続けているのだ。


事の顛末は、数分前にさかのぼる。
セツは意識が途切れた直後、この草原とは違う、森林地帯のすぐ近くで目を覚ました。
あっけにとられてきょろきょろ見回しつつ歩いていると、近くを通りかかったワイバーンに見つかり――


そして今に至る、というわけだった。
「にゃろう、おっかねえたらありゃしねえ!」
セツは体力にコンプレックスがあったはずだ。しかしこのよくわからない世界では、
なぜか息があがることがない。不思議だったが、今はそれが幸運だった。
足もいつもより軽快に動く。自身のもつあらん限りの力を出して、ワイバーンを振り切ろうと右へ左へ蛇行する。
ふと眼前に目をやると、そこに突っ立っている人がいた。
ブロンドのポニーテール、幼さを残す目、そのふたつが、セツの記憶にいる人物と寸分違わず重なった。
「―――星川っ?!」




目の前から走ってくる見知らぬ少女に自分の本名を呼ばれ、ユウは驚いた。
なぜこの人物は、自分の名を知っているのだ?疑問符が頭の中を走る。
注視しようとしたとき、耳の奥にピピッ、という電子音が響いた。同時に、眼前の少年から
グリーンのサークルが出現する。
――このサークルにはどこか見覚えがあった。かつて一度だけ遊んだMMORPGで、
対峙したモンスターやクリックしたプレイヤーキャラに出現した、緑のカーソル。
―「ターゲットカーソル」。つまり彼女もまた、同じプレイヤーだということ。
さらに、彼女は飛龍に襲われている。
助けなきゃ――。
一つの結論が、ユウの体に始動の命令を飛ばす。
動こうとしたとき、背中から何かがぶつかる音と感触が伝わってくる。
手を伸ばすと、そこには細い何かがあった。かまわず、手にとってみる。
そこにあったのは細剣<レイピア>だった。ふと、ゲームの初期設定を思い出す。
たしかに、記憶の中では初期武装にレイピアを選んだ。リーチと回避力に主眼を置いた、
上級者向けの武器だと説明には書いてあった気がする。
しかし今はそんなことは気にしていられない。ジャキ、と構え、地を蹴った。



目の前にいた人物――ユウと思しき人物が、あろうことかこちらに向かって剣を突きたてんと
突進してきた。
「おいおい、PvP(プレイヤーVSプレイヤー)ってありなのかよ、このゲーム!」
セツは内心歯噛みするが、この進退両難の状況ではどうしようもない。
しょうがないと思いつつ、セツは腰に下げてあったパーツから何かを射出する。
パシッ、と音を立てて手に収まったそれは、一見すればパイプ片にしか見えないものだった。
取っ手についていたスイッチを押すと、片方の底面で光の刃が形成される。
―これこそ、大気中に存在する「フォトン」と呼ばれる魔力により形成される光の刃
通称「フォトンセイバー」と呼ばれるものだった。
右下段に振り下ろすと、ヴォン!と機械的な音を立てる。
自身に来るであろうレイピアの切っ先を捌(さば)くべく、刺突の一点に集中する。
が、次に来た声が、セツの思考を止める。
「よけてくださいっ!!」
「――っな?!」
迫る少女が、唐突に叫んだのだ。
―――こいつは、後ろのワイバーン狙いか!?―――
その考えを瞬時に悟り、セツは横っ飛びに跳躍した。衝撃で、先ほどまでいた地面の土が少し抉れる。
その直後、同じ空間を、大気を切り裂きながら少女の刺突が駆け抜ける。




ズドン!と派手な音とともに、ユウのレイピアが突き刺さった。ワイバーンの眉間を深々と貫く。
「―――っ!」
すぐさまその刀身を抜き放ち、次の動作の構えを作る。レイピアが刺さった場所からは、赤い血のようなものが
盛大に吹き出ている。
ちょっと不快感を抱いたが、今はそんなことを行っている暇はない。ジャリッ、と音を立て、腰を落とす。
――ふと思いつき、なんともなしに、セツが普段やっているように叫んでみた。
「いくぞっ、『デルタ・ブレイク』っ!!」
ユウが叫んだその瞬間、ユウの持つレイピアが水色に輝き始めた。横にいた少女が、びっくりしてその剣を見やる。
「えっ、え――――――」
次の一瞬で、ユウの腕はありえない速度を叩き出していた。スピードガンでもあれば、分速1キロくらいは
出ていただろう。
水色の閃光をまといつつ、細剣を持った右手がひらめき―――


一瞬のうちに、ワイバーンの顔面に三連撃が叩き込まれていた。
ギャオオオオ、と悲鳴じみた咆哮を上げつつ、天に向かっていななく。
「すげえ……」
横にいた少女が、男っぽい口調で感嘆の声をあげた。
ユウ自身、何が起こったのか把握できていなかったが、反撃を浴びせたのは確かなようだ。
「…っし、俺も!」
と横で聞こえたかと思えば、次の瞬間には少女が駆け出していた。
「おおりゃああああああーーーーーーっ!!!」
粒子剣を振りかぶり、怯んだワイバーンに突撃する。
「――せあっ!!」
その一撃は、ユウにも見えなかった。そのくらいに、振り下ろす速度が速いのだ。
「もいっちょぉ!」
右下段に剣を構え、左で大きく踏み込む。逆袈裟懸けに切り上げられた剣が、淡い軌跡を描いた。
「ゴグアアアアアアアアァ!!!」
三発目を叩き込もうとしたそのとき、突然ワイバーンが吼えた。
その口に、チリチリと赤い火の粉が舞い散る。
「な、何がっ――――――」
ユウがたじろぐその前に、それは正体を現した。
ゴバアッ!という炸裂音とともに、ワイバーンの口から揺らめく塊が吐き出されたのだ。
「これは……」
大体把握したころには、もう遅かった。


草原の一角で、紅蓮の爆発が周囲を照らした。


 * * * * * *


周囲一帯は無残に焼かれている。ところどころ土がむき出しになったところから、不吉な黒煙が上がっている。
その一角で、細長い何かが光った。
「げっほお……おいあんた、大丈夫か?」
少女が剣を手繰り寄せつつ、立ち上がっていた。
「はい……えほっ、なんとか…………」
そしてもう一人、ブロンドの髪を持つ少女―つまり私―が立ち上がる。すすけているようには見えない。
「なろう、派手にブチかましやがってよお……どこだ、アンチクショウ!」
その、少女とは思えない言動に、私は仰天した。あわてて、横の少女(?)に問いかける。
「え、えっ……あなた、男性の方、ですか?」
その問いかけに、目の前にたつ少女――否、少女まがいの少年が苦い顔になる。
「あーっと…まあ、あれだ。ランダム機能でこうなったの!」
などと弁解するが、そんなものが毛頭の意味を持つはずもない。
私が少々じとっとした目でにらんでいると、いきなり彼が方向を変えた。
「ま、そのあたりの説明は後だ。……とりまあ、あいつをどうにかしねえとな」
その少年が向く方向には、先ほどまで対峙していたワイバーンがこちらを一点に見据えていた。
さきほどの流血は収まっているらしく、グルル、と喉を鳴らしてこちらを威嚇している。
「…あーもー、いきなりこんな厄介な奴に遭遇とか、ついてねー」
ぱきぽきと首を鳴らしながら、少年が愚痴をはく。
「でも、なんか不思議な感じがしますよね」
対する自分は、微笑さえ浮かべている。何が楽しいのかさっぱり理解できないが、
体の核から高揚感が湧き上がるのをひしひしと感じる。
「……こんなに興奮するのは、久しぶりです」
私の言葉を受け、少年も口もとをゆがませた。ククッ、というかすかな笑い声が耳に入る。
「だなあ。俺もリアルじゃ楽しいかもしれない仕事してるけど、ワイバーンとの対決なんて
ゲーム以外にありえないわ、フツー」
ですね、と心の中で同意すると同時に、こちらを視認したらしいワイバーンが火炎放射の予備動作に入る。
「っし!キミは右に回避だ!両方から同時攻撃をぶち込む!」
「了解ですっ!」
今さっきはじめて飛ばされた命令が、なぜかどこかで聞き覚えがあるように感じた。
命令を受けたわずか0,7秒後に勝手に体が翻り、足が動き出す。
直後、遠雷のような音響とともに火炎がこちらに向かって走ってきた。先の作戦通り、私は右に、
彼は左にそれぞれ横っ飛びに飛ぶ。
その動作にあわせるかのように背を爆風が叩くが、こんなもので顔をしかめていたら作戦は成功しない。
不安定になった姿勢を制御して滑りつつ着地、同時に身を反転させ、ワイバーンの横っ腹めざし一直線に走りこむ。
ワイバーンの足の隙間から向こうも確認できた。同じように、こちらへ駆けてくる。
「いくぞっ!」
「はいっ!」
向こうで発せられたはずの少年の声が耳に狂わず届き、先ほど無作為に繰り出した必殺の技を再度発動すべく、
右手に握るレイピアを勢いよく構える。
「「――デルタぁ、ブレイィイク!!!」」
同時に放たれた二つの必殺技が、ワイバーンの腹をえぐり、引き裂いた。




―*―*―*―*―*―*―




「はーっ、何とか倒したなーっ」
少年が汗を拭い―本当なら汗はかいていなかったはずだが、少年はその仕草をしていた―、感嘆のため息をついた。
「ほんと、信じられませんね。ボクらが、こんな大物を退治しちゃうなんて」
横で力なくへたり込む私も、同意を口にした。
ちなみに、今の私はひいひいと息を切らしている状態だ。いきなりこんなことになったのと、
なれない戦いのせいで緊張して、意気が上がっているのだと推測する。
ちょっと息が整ってきたので立ち上がると、さきほどまでじっと立ちすくんでいた少年がこちらを向いた。
「……………ふーん、その髪型、その顔、一人称……」
まるで舐めるかのような視線を向けてきたので、反射的に目をそらす。
が、次に放たれた一言で、私は閃光のごとき勢いで視線を送る少年の方を向いた。
「―――――星川、だな!」
「へえっ?!」
いきなり本名を言い当てられ、硬直してしまった。ついで、かってに目が泳ぐ。
「え、ええっ!…な、なんで、わた…ボ……ああもう、私の名前知ってるんですか?!」
驚きで呂律の回らない私を見て、少年がククッと苦笑を漏らす。…そういえば、こんな人どこかで――
「―――セツ、さん?」
その一言で、彼が笑みを強くした。ついで「ご名答っ!」と力強く言った。
これは驚いた。たしかに言われてみれば、言動やこのアバターに色濃く特徴が出ている。
少女めいてはいるもののいつもどおりの気だるそうな目、気ままにハネたボサボサ髪。
そこまで考えて、ふと疑問が浮かんだ。遠慮なく口に出してみる。
「……なんで、そんな女の子みたいな格好を?」
ウッ!と返答につっかえた少年――セツが、目をあちこちに泳がせながら途切れ途切れに弁明した。
「えーと…ほら、さっき……ああ、や、もう嘘は不要かね。
うんまあ、端的に言うと、な。パーツ適当に組んだらこうなったの!」
最後は一気にまくし立てた。苦しい言い訳に聞こえるが、だいたいこの人はこういう人だ。
「それにしても、見事に男の娘ですねえ」
ぎい、と機械的にセツが目をそらす。
「……女キャラでプレイするド変態よかマシだと思えコンチキショウ」
最後の反論は、力ないものだった。



 * * * * * * 



「……にしても、ここはどこなんだろうな?」
しばらく続いた沈黙は、セツが咲きに破った。
「…さあ。ボクにもさっぱりです…」
不安そうな顔で、ユウも口を動かす。
またしばらく沈黙が続くんだろうな、とセツが考えたとき、ふいにどこからか警報じみたものが鳴り響いた。
「うおっ?!」
「ひゃっ!?」
そろって飛び上がり、どこから鳴っているのかを目線で探る。
――どうやら、音ははるか天空から鳴り響いてきているようだった。ユウとセツが、空を見やる。
数秒とたたないうちに警報は鳴り止み、続いて機械的なアナウンスが降ってきた。
《…キャラクターネーム『star right』様、および『CONNECT』様。特別テストクリア、おめでとうございます》
「……はあ?」
アナウンスが告げたふたつの名のうち片方は、明らかにセツをさしていた。
とすると、もう一人はだれなのか。その答えは、案外すぐに返ってきた。
「『スターライト』……私のキャラ名だ」
つまり、このアナウンスで呼ばれた二名とは、ユウとセツのことらしい。アナウンスは続く。
《お二人には特別テストクリアの報酬として、『ブレイン・リンク・インターフェイス』が授与されます。
順次ログアウトのうちご自宅へ配布いたしますので、それぞれご自宅にてお待ちください。繰り返します…》
ブレイン・リンク・インターフェイス。つまり「脳を繋げる端末」とでも訳すべきか。
聞きなれない単語の羅列にユウが首をかしげていると、突然眼前に半透明のディスプレイが現れた。
「わっ!……なにこれ」
セツの前にも、同じようなものが出現していた。二人そろって、そこに表示されているものを凝視する。
「ログアウトカウント……ってことは」
「ここって……」


「「ゲームの、中?!」」
二人が顔を見合わせると同時に、ふと意識は途切れた。




 * * * * * * 




「はっ!」
気が付いたときには、私は見慣れた部屋のなかにいた。
起き上がってパソコンのディスプレイを見てみると、「正常にログアウトが完了しました」と表示があった。
「…………ゲームの世界に迷い込んでた?いやまさか……」
首をひねったまま数分考え込んでいると、いきなりインターホンが鳴り響いた。びっくりして飛び上がりつつも、
階下へ駆け下りてドアスコープを除く。
そこには、みなれたセツの顔があった。ほっと安堵し、鍵を開く。
「よお星川、ひさし……って、さっき会ったよな?」
最後のほうが疑問形になっているが、夢じゃないかと危惧しているのだろうとふんでおく。
「あいましたね。……あがってください」
「あ、いいよ。どうせすぐ帰るしさ」
ふと後ろを見やると、濃紺のフォルムを持つ自転車が泊めてあった。ここまで乗ってきたのだろう。
「で、さっきの話だ」
セツが言うさっきの話とは、おそらく先刻のゲームの話だろう。視線をそちらに向け、先を言うよう目で促す。
「…単刀直入に聞く。お前さっき、ゲームの中に迷い込んでたろ?」
大方の推測があたった。なにか隠すことなどないので、私はこくんと頷く。
「あー、やっぱアレ夢じゃなかったのな……」
はあー、と眺めのため息つくセツに、ふと気になった事を問いかける。
「それ聞くためにここまで来たんですか?電話かメールかつかってくれればよかったのに…」
それを口にしたとたん、またセツの目が泳ぎ始めた。
「あ、ままあ、その、なんつうの?……顔がみたくなった、っつったら変だよな、ははは……」
力なく笑うセツの反応が笑いを誘い、私は必死にこらえる。
「……っとと、そういやなんか荷物云々あったなあ。星川んとこには何か来た?」
いいえ、と答えようとした矢先、セツの後ろに誰かが立っているのが見えた。
「すみません、こちらstar light…星川さんのお宅であっていますか?」
格好を見る限り、その男性は配達員らしい。小脇には小さな小包を抱えている。
「はい、私が星川ですが……届け物ですか?」
私が問いかける横で、セツが苦い顔を作る。
「やべえ、家にも来てるかも……星川、また後で連絡するわ!んじゃ!」
一気に話を終え、脱兎のごとき勢いでセツは自転車を押していった。配達員の人もぽかんとしている。
「あの、それで届け物って……」
私が問いかけると男性ははっと我に返り、あわてた様子で話しかけてきた。
「ああ、すいません。えーと、ラディア社からのお届けものですね。ハンコをお願いします」
ラディア社といえば、先ほどプレイしていたブレイヴハート・オンラインの運営を努めている会社だ。
となると、やはりこの小包は先ほど通知されたインターフェイスなのだろう。
そう考えつつ、私は軽くお辞儀をしてその小包を受け取った。




部屋に戻ったあと、手早く小包を開封する。
その中には、発泡スチロールの箱とその中心に収められている物体――正式名称「ブレイン・リンク・インターフェイス」が入っていた。恐る恐る、持ち上げてみる。
それはなんともいえない流麗のフォルムを持つ機械だった。半円型のヘッドフォンのような形の機械の下に、
ハーネスのようなものとバッテリーケースのようなものもついている。
箱の中を探ると、幸い説明書もついていた。目を通そうとしたそのとき、いきなり携帯が鳴り響いた。
「わあっ!?」
びっくりしてインターフェイスを落としそうになった。あわてて抱きかかえ、携帯に手を伸ばす。
今流れているのは「鳥の歌」という音楽だ。いわく「曲調がかっこいい」ことでその人物はお気に入りらしい。
「もしもし、セツさん?」
《おー星川、まいどー》
やはり、声の主はセツだった。そういえば、さっき「後で連絡する」とか言っていたようなと思い出す。
《そっちのとこ、インターフェイス届いた?》
「はい、さっきのがそうでした。セツさんのところにも届いてるんですね」
《あー。ざざっと説明書見たけど、結構面白げだぞ。なんせ『仮想空間に入り込める』とかなんとか》
「さっきの経験で大体判りますよ。もうワイバーン相手は嫌ですけどねえ」
ため息交じりの返答に、電話の向こうの少年がカラカラと笑うのが聞こえる。
《で、ものは相談だ。後で、またあの中で落ちあわねえか?》
その言葉が来ることは大体予想済みだった。苦笑をもらしつつ、OKの返事を出した。


―*―*―*―*―*―*―


「セツさん」
私の声に、目の前にいた少年――セツが振り向いた。
「ういーすスターライト、お久ー」
合流と同時にハイタッチ。その後、二人で苦笑する。
「……ってと。来たはいいけど、何すっかねー」
「あれ、決めてなかったんですか?」
「まあ、純粋にここにきたかったってのもあるしな。特に目的はない」
カラカラと楽天的に笑うセツを見て、私も少々和んだ気がする。
「じゃまあ、安全にログアウトできる町でも探しますかね。ついでにモンスター倒しつつ」
「ですね、賛成します」
こうして、私達の目的が決まった。少々安直過ぎたことを、この後後悔する羽目になるが。


―*―*―*―*―*―*―


「そうら…よっと!」
セツの威勢のいいおたけびと同時に、対峙していたモンスター「リトルボア」の胴体は両断された。
先ほどから何度か見ている獲得経験値とドロップアイテム一覧を確認し、すぐに閉じる。
「……ったく、何でこんなだだっ広い草原地帯でこの集団に気がつかなかったのかねー」
愚痴りつつ、セツが今日6体目のリトルボアを倒しにいく。後20匹強。



事の顛末は数分前にさかのぼる。
調子よくモンスターを倒して行ったおかげで二人ともレベルが上がり、調子づいたのがいけなかった。
ふと目の前で、魔方陣が形成された。何事かと二人で陣を見つめるが、そこから出てきたのはなんでもない、
ただのモンスターだった。
なんだモブか、と安堵しつつついでに蹴散らしてやろうと思い踏み込んだ矢先。
周囲に次々同じような魔法陣が形成され、そこからわんさかと同じモンスターが出てきたのだ。
必死に逃げるもついにあきらめ、結局今こうして戦っている、というわけだった。



でもそんな状況下で、それでもセツは笑っている。その笑顔が、ちょっと怖かった。
怒っているような感じもするが、そうではない。
切った際にモンスターから吹き出す血(のようなエフェクトらしい。セツ談)を見て、ククッと喉を鳴らす。
まるでこうしてモンスターを切り殺すことで快感を得ているかのような、狂気が張り付いた顔。
今はとてもセツに近づく気にはなれなかった。しょうがなく、後方から迫るイノシシもどきに
レイピアの手動連続攻撃を打ち込む。


残る4匹を片付けてほっとした瞬間、
「あっははははははは!!」
と後ろから狂ったような笑い声が聞こえてきた。びくっとなって後ろを振り返る。
見ると、先ほどは数えて14匹いたリトルボアの集団が、すでに残り一匹となっていた。
ばさっ、と前髪を振り上げたセツの顔は、笑っていた。
「THE・ENDだああぁゲホッガホォ!!」
意気揚々としすぎて咳ごみつつ、最後の一匹を一撃で葬り去った。
「っしゃあ!乗り切ったぁ!!」
粒子剣のスイッチを切りガッツポーズを決めたその笑顔は、スポーツ大会で優勝したときのような
満面の笑顔だった。
粒子剣の本体をベルトの鞘(?)に落とし込み、こちらを振り向く。
「後方援護、さんきゅ。スジいいなあ星川は」
などと呑気に言ってきたので、私は思わず笑ってしまった。
「なんだよ!あんで笑うし!」と突っ込むセツが、どうしようもなく笑えた。


―*―*―*―*―*―*―


「お、アレ町じゃね?」
しばらく歩いていると、セツが前方を指差した。
そこには、小さいながらやぐらなようなものが存在した。小さな屋根も見えるあたり、小規模な村だろうと
推測する。だけど、もうそんなことどうでもいい気がして、二人でその村に走りこんだ。


看板に書かれていた名前は「リリアグト」。リリア平原の近くにあるからこういう名前なのだそうだ。
まず私達が向かったのは武具屋だった。お金(この世界ではリフと言うらしい)も溜まっていたので、
とりあえず見るだけみようというセツの提案だった。
「らっしゃい!」と威勢のいいテンプレ台詞が飛んできたので、顔を見合わせて苦笑する。
「ここで売ってる武器を見せてくれますか?」
とセツが聞くと、「あいよ!」と返事が返ってきた。これは以外だ。
と次の瞬間、セツの眼前にホログラフィの窓が出現した。私も覗き込んでみる。
表示されていたのは、武器の一覧と値段だった。ファンタジー風の村なので、セツが持っているような
科学的なものはおいてないらしい。
「色々あるなー…お、プレビュれるのか。どれ……」
呟きつつセツがウインドウを操作すると、ガシャ!と言う音と同時に背中に武器が出現した。
「おー、コレがブロードソードか。なかなかいいねー」
そう言いつつ他のも試すようだ。完全に一人で楽しんでるようなのであえて身を退き、自分も
新たな武器を探すため店主に話しかけた。




数分後、私は「スティールレイピア」を、セツは「マルティアソード」という片手長剣をそれぞれ購入した。
と、ここでそろそろ眠気が襲ってきた。このファンタジーな世界をもう少し楽しみたかったが、それは
明日においておこうと思う。
「そろそろ、終わりませんか?」
「ん、そーだな。多分もう12時近いしな」
ああ明日は寝坊だな、と思いつつ、ログアウトの方法を探す。


と、方法はすぐに見つかった。右手の人差し指で左の手首を二回叩くと、自分のステータスが表示される。
そこにログアウトボタンがありそれ可能ならしいが、セツがもう一つ方法を見つけたので
そちらを試すことにした。その名も「宿落ち(セツ命名)」。
なんでも、宿屋のカウンターにログアウトというと、部屋のベッドで寝るだけでログアウトできると言うのだ。
実際やってみると普通にできた。それぞれ部屋の鍵(と言う名のカード)を渡され、自室に向かう。
「じゃ、今日はさよならだな」
「はい、また明日、今度は学校で」
パシッと一度手を打ち合わせ、そこで私達は別れた。


いつのまにか、この世界が好きになった気がして、ちょっと嬉しくなった。



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終わりでっす〜w
ナニコレSAO?とか言う突っ込みやめ!
ごめんなさいゲームの中という設定を試したかったんですマジすいません。


初めてユウ視点を試してみましたが、いかがでしたでしょうか?
SAOの描写が気に入ったので、今後もこんな感じのをちびちびと入れたいと思います〜
…うーねむw
じゃまた〜 ノシ