コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

わっふーぅ(マリオ風に

ずえりゃあ、コネクトでーす!
そろそろ小遣い稼ぎのためにバイトを始めようと履歴書を買ってきました。
コンビニあたりでバイトしようと思ってるんですが、志望動機ってどう書けばうごごw


さて、今回は学園天国繋録の更新です!
前回、ユウちゃんが学校からの帰り道で瑛斗先生とばったり遭遇。
戸惑う彼女に、瑛斗は何を語るのか…。
そんな意味深な予告とはかけ離れるかもしれない第16話、いってみましょい!




*********


1章第4幕
  第16話 邂逅の少女と青年 by9/2夕刻




夕暮れ時。人々が帰路を急ぎ、家屋からは食事の匂いが漂う時間帯。
「…ど、どうも、灯先生」
「はい、こんにちは。…といっても、今はもうこんばんはかな?」
夕焼けがあたりを照らすこの場所で、ユウは危険とされる人物と出会ってしまった。
男の名は「灯 瑛斗」。セツ曰く「インフェルノに次いで危険な敵」。
事前に友人からそんな通告を受けていては、どうしても信用できない目で見てしまう。
が、この教師は寛大な人物だった。
「…その目、新赴任の僕は信じられないのかな?それもそうか。キミ達とはまだ
たった一日の付き合いなんだからな」
危険といわれてはいるが、話せばなんとも普通な人物だった。
「すいません。みえみえでしたか」
「いやいや、いいさいいさ。新任教師はそういう目で見られるのがオチだからね」
あははは、と朗らかに笑うこの人物が敵だとは、にわかに考えがたかった。



数分歩きながら話していると、知らず知らずのうちにずいぶんと打ち解けてしまった。
「へぇー、灯先生って桜流が初めてだったんですか!」
「ああ、ここに来る前はあの、雪原ちゃんだっけ?彼女が通ってた幾質に実習生として
行ったことがあってね。女の子ばかりって言うのは参ったものだったよ」
いままでの経歴を、面白おかしく語ってくれる。その雰囲気や微妙な距離感は、どこかセツに
似通ったものがあると感じた。
少女と青年は並んで歩きながら、ユウの家の近くの公園に差し掛かる。
と、不意に瑛斗が足を止めた。見やると同時に、喉をさすりながら呟く。
「ん〜、喉が渇いたな……。星川ちゃん、この辺に自動販売機があるか知ってるかい?」
このあたりは小さな頃からしょっちゅう通いつめているため、ユウにとっては既に庭の一角
といっても過言ではない地域になっている。
「あ、はい。えーっと、こっちです」
公園中央の簡易休憩所を指さし、ついて来るよう促す。
瑛斗もそれにしたがい、10秒ほど歩いたところに自動販売機が見えた。
「おぉ、こんなところにあるのか。ありがとう」
「いえいえ、ボクも喉が渇いたところでしたから…」
嘘ではない。恥ずかしい話だったが、ユウはここに至るまで一度も警戒を解ききってなかったのだ。
気づかれない程度に空気を張り詰めさせ、いつ何をされても迅速に対処できるようにしつつ
何気ない会話を展開していくのは、実際かなり骨が折れる。
瑛斗が缶コーヒーを買い、ユウがお金を入れて何を買おうか迷っていると、唐突に瑛斗が
話しかけてきた。
「ねえ、星川ちゃん」
「はい?」
名を呼ばれると同時にオレンジジュースの缶を選択。ごとんと落っこちてきたそれを抜き取りながら、
ユウは瑛斗に先を言うよう顔で促す。
「…キミは、超能力って信じるかい?」
ぴりり、と一瞬硬直してしまった。その一瞬の隙を見計らったかのように瑛斗が立ち上がる音がしたため、
さらにうかつに動くことが出来なくなってしまった。とりあえず、返答を口に出す。
「んー……。私は、信じるほうですかね」
が、返答をしたはずなのに、その先が帰ってこない。恐る恐る、ユウは後を振り向く。
「…あの、灯先生?」
「あ、ごめんごめん!ちょっと準備がしたくってね」
そこには、真剣な表情で100円ショップで売ってそうなおもちゃのナイフに念を込める瑛斗の姿。
どうやら返答がなかったのは、超能力で驚かすためだったらしい。
「よし、来てます来てます…………」
某有名魔術師のセリフを引用しながら、真剣そのものの表情で瑛斗が念を込める。
その真剣そのものな表情に、ついついユウも真剣になってしまう。
そのとき、瑛斗がふと笑った気がした。
何気なく見えただけのはずのその小さな微笑。もしかしたら、成功の意味だったのかもしれない。
が、ユウにはなぜかはっきりと理解できた。アレは、獲物を捕らえたハンターの目。
そんな一瞬の思考が、ビクッと体を完璧に硬直させてしまった。
うかつだった、と思考をめぐらせるその寸前で、ドス!と不快な感触が腹部に走る。
見ると、腹部に黒い針らしきものが突き刺さっていた。血が出ることはなかったが、そこに何かが
食い込んでいるかのような不快な感覚を覚える。
「…………っ!!」
抵抗を試みようと顔を上げたときには、一歩遅かった。
瑛斗の手の内から、ギュンギュン!と風切り音を立てて黒い物体が次々飛来する。
二本の腹部のものよりも太さを増した針が、ユウの両手のひらに突き刺さった。
「ぐっ!?」
攻撃ごとに脳にビリビリと伝わる不快な刺激。さらに襲い来る針が太くなり、先端の鋭角な部分が
ハンマーのように平らな形状に変化。ユウの腹部に強く打ち付けられ、後方にあった木の幹に
両手のひらを貫通していた針が突き刺さり、足の届かない位置に固定されてしまう。
「うあっ……!」
さらに幹に背を打ち付けてしまい、一気に力を奪われてしまう。計算ずくでやってるのなら、
相当の手慣れのはず。しかし、信じたくなかった。
今の今まで自分に優しい声で話しかけてくれていた教師が、敵?
下手をすれば、その人に命をとられる?
セツのいったことが現実であるのに、信じたくないという気持ちが先行してしまう。
だが、動かなければ。行動を起こさなければ。
「……はぁっ!」
「うおっと!?」
裂帛の気合と共に思念で放った炎の塊は、しかし弾道を読まれ避けられた。
「っととと…………ほほう、金色の炎!」
次に向けられたその目つきは、先ほどまでのやさしげな光をともした目とはまるで違うもの。
物を検品するかのような容赦のない目で、ユウの顔を見やる。
ここで怯むわけにはいかない。そう心の中で呟き、ユウは真っ向から瑛斗を見据えた。
「…ふふ、その気合は彼譲りのようだね、星川……否、スターライト」
「なっ……何故私のコードネームを?」
控えめに笑う瑛斗が、数歩ユウに近づく。
「なぜか?簡単さ。……セイバーの情報を盗むことなどな。まして、私の腕を持ってすれば
あのような貧弱なデータベースのセキュリティを突破することなど、容易なものだよ、スターライト」
さらに数歩詰め寄る。ユウはこれ以上の接近は危険と判断し、できる限りの威圧感を与えるために
セツから教わった「熱気」を発生させる。
いまだコントロールは不安定だが、いざというときに役に立つということでセツが教えてくれたこの技が、
まさかこれほど早く役に立つ日がこようとは。内心、歯噛みする。
しかし、瑛斗はそんなもの意にも介さず、スタスタとユウの真正面に歩いてくる。
(止まらない……?!)というユウの焦りもつかの間、瑛斗がユウの右腕をつかんだ。同時に右手のひらに
突き刺さっていたトゲが消滅するが、自由を奪われていることに変わりはない。
「まったく、か細い腕だ……。キミみたいな可愛らしい子が、彼と同じ場所で戦うなんて
想像もつかない。つくづく酷いことをするね、彼は」
控えめな笑いを漏らす態度は変わらない。時間稼ぎをすれば助かる確率は上がるという持論を元に、
ユウは会話で時間を稼ぐ戦法に出る。
「…彼とは、誰のことですか?」
無論、怖い顔は崩さないままで。
「知ってるだろう、君なら。…蒼炎の名を」
「蒼、炎…………」
無論知っている。その名はセツことコネクトの二つ名と常々聞いている。
「……彼は、ともすれば命を落としたであろう状況を幾度も救ってくれました。私は、彼のことを
ひどい人物だとは思ってません」
「だろうな。…だが、それがかりそめの態度だとしたら?」
唐突にそんな問いを突きつけられ、ユウは怪訝な顔をする。
「どういうことですか」
「どうもこうもないさ。そのままの意味だ。……彼は本当にひどい人間だよ。最悪だ」
「そういうことではなく、詳しいことを聞きたいのですっ」
強めにユウが出ると、待っていたといわんばかりに瑛斗が暗そうな顔を覗かせる。
「…キミは、インフェルノを知ってるだろう?」
「……はい、何度か話を聞きました」
「誰に?」
「誰に…といわれても、貴方の知ってる人物にですよ」
そうかと呟き、次いでうんうんと頷く。
「……彼は嘘吐きだ。反吐の出るほどね。私達を貶めるために、こんな場所に身を隠している」
その表情は、なぜか演技とは取れない。もしや、この人の話は本当…?
彼が話す間、ユウは一人思案する。
少し前に友人から聞かされた「セツは笑わない」というあの言葉。
瑛斗のいうことが真実であれば、セツが笑わないのには後悔があるからなのか?
などなどじっくり思案しすぎ、瑛斗が不可解な行動をとったのに気づくのが遅れてしまった。
「スターライト。キミにヤツの真実を見せる。さぁ、このチョーカーをつけるんだ」
はて、真実を見せるためにチョーカーなど必要なのだろうか?
怪訝に思いつつも、開放されたその手でチョーカーを受け取ろうとする。
がその瞬間、ドチュン!という音と共に瑛斗の手にぶら下げられていたチョーカーが吹き飛んだ。
「うわっ!?」
「ぐっ!?」
あわてたユウは再度幹に背を打ちつけ、瑛斗は数歩後ずさる。
「ユウちゃん、それはつけたら痛いんだぜ…?」
と、どこからか声が聞こえた。ユウが周囲を見回すが、声の主はどこにもいない。
「…くっ、誰だ!」
瑛斗が叫ぶと、その声の主が上から「降ってきた」。
ドシャンと盛大に砂を巻き上げ、その人物が着地する。
砂煙が晴れると同時に勢いよく少年が顔を上げ、次いで瑛斗に銃を突きつけた。
「ったく、女の子に乱暴するなんて、男の風上にも置けないな灯先生!」
その人物、ユウには見覚えがあった。
男にしては少々長いつややかな黒髪。不敵に笑う鋭い目は、まるでハンターを連想させる。
手に持つハンドガン「ハイキャパ」が、キラリと輝いた。
「……錬斗、君?」
ユウが名を呼ぶと、その人物「光明 錬斗」が鮮やかな青い目で振り向いた。
「大丈夫か?ユウ」
「う、うん。……どうしてここに?」
思った疑問をそのまま問いかけると、レンは笑う。
「そりゃまあ、俺の家が近いからな。帰り道にのど渇いたからジュース買おうと思ったら、教師が生徒に
乱暴してたから乱入しただけさ」
そこまで話すと、瑛斗が会話を中断させた。
「キミは、光明くんだったっけ?私が何をしてたというんだい」
「しらばっくれても無駄だぜ、『マークアハト』。…よくも操ってくれたな、オイ?」
唐突に出てきた「操った」という単語に、ユウと瑛斗両者が首をかしげる
「…なんのことだい?」
「何度もいうが、しらばっくれても無駄だ。俺がさっき弾いたあのチョーカー、アレには脊椎経由の
洗脳装置が仕込まれているんだろう?…しかも、異能者だけを操る特殊なものが、な」
一度食らったからわかる、とつけたし、再度レンが瑛斗を睨む。
同時に、やれやれといった表情で瑛斗が話し始めた。
「…お見通しか。そうだ、私の持っていたチョーカーは洗脳器具さ。それも光明君が推測したとおり、
異能者のためのな」
あっさりと本性を現す瑛斗に、ユウが只者ではない気配を感じ取る。もっとも、背中は幹なので
退却はかなり困難だが。
「まったく…どうして異能者はこうも邪魔者が多いんだか。任務を遂行する私の立場にもなってほしいよ」
ユウをかばうように立ち位置を変えたレンが、さらに反論。
「そんなこというんだったら、やられる側の立場にもなってほしいな」
「……ふふっ、強気だねキミは。張り合いがいがあるというものだ」
控えめに笑う瑛斗と、強気な笑みを崩さないレン。
両者の膠着はしばらく続いたが、やがて瑛斗が先手を取って動き始めた。
「むん!」
瑛斗の手が閃き、瞬時に黒い塊が無数に出現。鋭さを増して針状になり、有無を言わせぬ速度で飛来する。
「当たるかっ!」
しかしわずかに遅れレンが氷の障壁を形成。ユウごと自分を護る盾を展開した直後、黒いトゲが
ドカカカカッ!と鋭い音を立てて氷の盾の中ほどまでめり込んでくる。
「うわっ!」とユウが悲鳴を上げる隙に、レンは氷の盾をそのままに横っ飛びに跳躍。
追いすがるトゲを持ち替えたグロックで性格に打ち抜きつつ、猛烈な速度で瑛斗に肉薄する。
「せえええいっ!!」
「とぉりゃあああっ!!」
レンはナイフを、瑛斗はロングソードをそれぞれ生成し、けたたましい衝撃音と共に鍔迫り合う。
「まだまだっ!」
レンが地に足をついた瞬間、瑛斗が大量のトゲを生成、一転集中でレンの足を狙うが、
両足を使った高所への跳躍でそれはあえなくかわされる。
しかし瑛斗はそこで諦めない。続けざまに大量の黒い砲丸ほどもある球体を生成し、上空へと逃げたレンへと
次々打ち込んでいく。
「甘いよっ!」
対するレンは脚部にバーニアがついたブーツを装着。一気にスラスターを吹かし、迫る砲丸を紙一重といっても
遜色ないほどの絶妙な間合いで避けて見せた。
「ならばっ!」
瑛斗の掛け声と共に上空へと放り出された砲丸が変形。トゲ状になって再びレンを追跡する。
上空にいては危ないとレンが判断し、バーニアつきブーツをローラー型に変形。
着地と同時に猛烈な速度で車輪を回転させ、盛大な砂埃を上げつつ地上を爆走し、追撃をかわした。
が、無数のトゲは無尽蔵に追いすがってくる。舌打ちしながらレンはアサルトライフルM4A1」と「FAL」を生成。
後ろ向きに滑走しつつ大量の弾丸をばら撒き、所狭しと迫るトゲを砕いていく。
しかし、その一本に瑛斗が乗っていたのは気づかなかった。
砕かれた破片を足場代わりに、レン以上の速度で追跡してきたのだ。
「このやろっ!」
悪態をつきつつM4A1のマガジンをドラム式に換装。リロードの済んだFALと共に再度大量の弾を発砲するも、
瑛斗が両手に持つ二刀一対の双剣で直撃弾のみを切り伏せ、避けてゆく。
内心で見事な剣捌きだと感心するが、それが同時に命の危険を意味しているのは明白だ。
対抗すべく両手の2丁を投げ捨て、新たに両肩に連動発射式のミサイルランチャー、両手には小型のハンドグレネード砲、
両足に多弾頭のロケットランチャーのポッドを展開。
「いっけえええっ!!」
咆哮一発、大量の爆薬を載せた大量の弾頭が一斉発射され、白い尾を引きながら瑛斗への直撃コースに入る。
爆発物となれば、斬撃でかわすことは出来ない。両者そう考え、瑛斗は黒い物質で新たに足場を構成。
それを伝い、迫る爆発から逃れるという離れ業をやってのけた。
さらに追尾する多弾頭の弾も、無数に設置された黒い足場兼障壁に阻まれてしまい、思うように追尾できず
次々と着弾、爆散していく。
「てりゃああああっ!!」
再度舌打ちするレンの頭上から、投擲された剣が飛んでくる。
「あぶねっ!?」
すんでのところで回避しつつ、レンは瑛斗からできるだけ距離をとるべく背部にジェットパックを生成。
爆音と共に上空へと退避し、新たに「RPG-7」を担ぎ弾頭を射出。
爆煙で見えない地面に弾頭が着弾し、さらに視界不良の範囲を広げる。
「…どうだっ?」
念のため、これ以上の体力消耗は避ける。肩で息をしながら、レンは上空から周囲を見回す。
「……まだまだ、青いなっ!!」
が、瑛斗はそう易々と倒れる人物ではなかった。
爆煙を円形に吹き飛ばし、今度は棒の両端に刃の付いた武器を生成。
ズダンッ!と音高く地を蹴り、一気にレンのそばまで飛んできたのだ。
「うおわぁっ!?」
そんなの有りかと悪態をつく暇もなく、瑛斗が二度三度長物を振りぬく。
危ういところで攻撃をかわし、お返しと言わんばかりにハンドガン「デザートイーグル」を形成。
超至近距離からの射撃と同時に、反動を利用して下方向へ一気に離脱した。
「ぐっ!」
腹部付近へ一直線に飛んでいった弾丸は、しかしすんでのところで展開された黒い障壁に防がれる。
ちぃと舌打ちをしながら、レンはさらにサブマシンガン「P90」を両手にホールド。
脚部のブースターを吹かしつつ、瑛斗に向けて何度目とも知れない引き金を引く。
ダララララララララララララララッと勢いよく弾丸の雨が上に向かって降り注ぎ、自由落下に入った瑛斗を
貫くべく爆進する。
「甘いっ!!」
だがしかし、格納された黒い障壁が今度は鋭いローター状に再展開。
鋭い風切り音をたてて猛烈な回転を開始し、着弾寸前の弾丸すべてを真っ向から切り伏せていった。
さらに回転で生まれた推進力を利用し、瑛斗の体が空中で水平に飛行する。
「そうらっ!」
続けざまにローターの中心部からロケット砲弾もかくやの速度で伸ばされたトゲが飛来。
しゃがんで緊急回避したレンのすぐ頭上を、鈍い音を立てて掠めていく。
「っきしょう……だったらぁ!!」
P90を左右に放り投げ、右手にサブマシンガン「MAC10」を、左手には何かの機構が埋め込まれた大型の盾を、
背中には大型推進装置と低反動レールカノン左右二門がついたバックパックを、そして足の裏には
スノーボードに似た物体を生成した。全身ありとあらゆる場所に武装を施した、レン最強ともいえる形態。
「受けて…みやがれぇぇぇぇぇぇっ!!!」
咆哮と同時にボードから風圧が発生、宙に浮いたと同時に背部の推進装置を稼動させ、滞空する瑛斗に向け
彗星のごとく肉薄していく。
敵の本気を悟った瑛斗が、それでも揺るがずに新たな塊を展開。
今度は無数の黒い剣へと形を変え、雨のごとくレンへと飛来してきた。
「うおおおおおおおおおおっ!!」
推進装置の速度を保ったまま、レンは手のMAC10と肩のレールカノンから銃弾をばら撒く。
急迫していた剣が次々撃ち落され、それでも飛来した剣は盾で受け止め、弾丸さながらに突き進む。
「むっ…!」
なおも止まらないレンにわずかながら焦りを覚えた瑛斗が、黒い塊を薄く半球状に展開。
砲撃程度ならガードできる強固な盾とし、そのままレンへと突撃する。
激突を悟ったレンが盾を突き出した数瞬の後、二人は衝撃を周囲に撒き散らしながら激突した。
威力はすさまじく、周囲の木々がみしみしと嫌な音を立てている。
なにより、瑛斗の速度がすさまじかった。落下のエネルギーも加わったにしろ、推進装置の出力を
限界に引き上げても押し戻せないほどの強力な推力は、一体どこから生まれるのか。
などと考えている余裕はない。隙を見せれば、貫かれるのはこちらなのだから。
「…ふふ、これほど熱い戦いは久しぶりだ」
が、警戒とは裏腹に瑛斗が語りかけてきた。体制はそのままに、レンが話に応じる。
「だからなんだよ。殺さないとか、今更言うんじゃねえぞ……?」
「ああ、私もそこまで野暮な男ではないからな。…ここまで熱くなった以上、全力で向かわねばならん」
にやりと瑛斗が口角を吊り上げるのと同時に、レンの口角も吊りあがった。
「だったら、すぐに締めてやるよ。俺は、長丁場はゴメンなんでなぁっ!!」
叫ぶと同時に、シールドの先端をバリアに突きつける。その直後、機構の先に取り付けられていた「偽装装甲」が
音高く弾けとんだ。その内で夕日を受けて輝くのは、2本の鋭利な刃。
「なっ……!」
「くらえええええええええっ!!!!」
瑛斗が引くのとレンがシールドを押し込むタイミングが、完全に同期した。
瞬間、シールドから蒸気が勢いよく吹き上がると同時に、取り付けられた刃が「撃ちだされた」。
一般的には「パイルバンカー」と呼ばれる武装の刃がバリアを突き破り、打ち出されきったその瞬間に先端が
新たに射出。勢いに押された2本の刃が、守る物のない瑛斗の肩口に突き刺さった。
「ぐあああああっ!?」
痛覚を刺激された瑛斗の集中が鈍り、ローターとバリア、さらに展開されていた黒い塊が溶け消えた。
そのタイミングを見計らい、レンは刃の換装を終えたパイルバンカーを、今度は直接突きつける。
「うおおおおおおおおおおおおっ!」
ガシャコン、と機構が蒸気からリボルバーに換装され、炸薬の勢いで撃ち出された刃が
合計6発、瑛斗を貫いた。
突き刺さった刃を強引に引き抜くと同時に、浮力を失った瑛斗の体が地上へと落下していく。
「うぉ……っと」
地面に激突する寸前、レンがその体を抱きとめた。
「…ったく、怪我がないだけ感謝しろよな」
悪態をつきつつ、レンは手ごろな人目のつかない場所に移動。
そうっと瑛斗を横たわらせたあと、自身もそこにへたりこんだ。
異能を行使するには集中力を必要とされるため、続けて使用しているとかなり体力を使うのだ。
少なからず息を切らせつつ、レンは横たわる瑛斗をみる。
目覚める気配がないところを見ると、攻撃を受けたときの痛覚のショックで気絶したのだろう。
それを確認し、レンは立ち上がった。
「……やっぱ、ここまでやらなくてもよかったかもな」
気づくと、ユウの姿がどこにも見当たらなかった。戦闘の最中に隙を見計らって非難したのだろうか。
うーんとひとつ伸びをし、少々疲れ顔でレンは公園を後にした。


 * * * * * * 


――なぜ、あの時加勢をしなかったのだろうか。
戦闘が終わったことを確認し、私―ユウは小山の影から身を出した。
加勢できる力はあったはずだ。それは夏休み前のコトハたちとの一戦で確認済みだ。
ならば、何故この加勢できる状況で加勢しなかったのだろう。
私は、あの戦いに介入することが許されざる行為だと頭で判断していたのだろうか?
それとも、ただ怖かっただけなのだろうか?
数分自問自答した後、これは一人で解決できる問題ではないと判断し、今回は忘れることにした。
「……あれ、レン君が」
物思いから現実に帰ると、レンの姿がどこにも見あたらない。
まさか、非難した私を追ってそのまま公園を出て行ってしまったのだろうか。
まずったと一人愚痴をはきつつ、私は急ぎ足でその場を後にした。


 * * * * * * 


「レンくーんっ!」
それから数分の後、ユウは目の前を歩くレンを発見できた。
「あ、ユウか。…何?」
「ん、いや……お礼、言いたくってさ」
少し息を切らすユウが、かるく腰を折ってレンに頭を下げる。
「ありがとう。…レン君が助けてくれなかったら、今頃どうなってたか」
いきなりお辞儀をされたレンが、あわてながら言葉をつむぐ。
「いやいや、いいさいいさ。俺はたまたま通りかかって戦いけしかけただけだし、なにより
最近異能を使ってなかったから使いたかったんだよ。…気にしないでくれ」
微妙な沈黙に苦笑しながら、二人が並んで帰路に着く。
少し歩いた後、ふとユウが話題を振ってきた。
「ねえ、レン君って異能が使えるようになって、どう思った?」
「ん。んー、そうだなぁ……」
数秒黙考した後、答えが出たことをあらわすかのように指を鳴らして口を開いた。
「最初は正直、なにがなんだかって感じだったな。だって、漫画の中の出来事が実際に自分に起こったんだぜ?
夢かともおもったぐらいだからなー」
苦笑まじりに語るレンに、ユウも微笑みを返す。
「やっぱり、皆最初はそんな感じなんだね」
「多分、大抵のやつはそうだと思うな。こんなことが実際に起きて、すぐに信じられるやつは
そうそういないと思うぜ」
だよね、と口では同意しつつ、ユウの思考は違ったところをたどっていた。
自分は異能を持っているとセツから聞かされたとき、喜んでいたのだ。
単に異能のようなものに憧れていただけなのかもしれないが、あのときの感動はそれとは違う。
あの時脳裏に浮かんだ感想は「やっぱり」というもの。
だが、自分に異能があるという確信など、そのときは微塵もなかったのだ。
なのにそんな感覚。自分には何かあるのではないのか…?
「おーい、ユウ?」
そんな思考をしているうちに、レンが呼びかけていることに気づくのが遅れてしまった。
「あっ、えと、何?」
「考え事は家でやったほうがいいぞ。…俺の家こっちなんだけど、ユウはどっちだっけ?」
レンが指さす方向は、ユウの家とは反対だった。
「あー、ごめん。ボクはあっちなんだ」
「OK。んじゃ、また明日ー」
「うん、また明日ねー」
みじかいやり取りを終えた後、レンはそっけなくスタスタと帰っていく。
あのぐらい思い切ったほうがいいのかなぁなどと考えつつ、ユウも自宅への足を速めたのだった。


―*―*―*―*―*―*―


夜、瑛斗とレンが戦いあった公園。
一人夜の散歩を楽しんでいたリクは、ふと人目につかないところから何者かが起き上がる光景を目撃した。
「っ!」
すばやく足の位置を変え、奇襲に備えていつでも異能を発動できるようにする。
が、起き上がってきた人物を見とめて、リクの警戒はあっさり解かれた。
「あ……灯先生っ?!」
「うん……あぁ、陸道君か」
ふらふらとおぼつかない足で立ち上がろうとする瑛斗に、リクは肩を貸す。
「どうしたんですか、先生。こんなところで……」
「…いやぁ、膝に矢を受けてしまったもんでな」
まだ引退はしないがな、などと笑い混じりに話す瑛斗の体をベンチに預けさせ、お茶のペットボトルを一本
瑛斗に渡す。「すまないな」といいながら受け取ったその人の横に、並んで腰掛ける。
「…なんで、こんなところに?」
リクのいぶかしむようなその質問を、しかし瑛斗はさらりと受け流す。
「ここらへんは、学園からけっこう近いだろう?変な輩も多いと職員会議で知らされてね。
新米は辛いよ、本当に」
見回りか、と言葉通りにリクが解釈し、ふと別のことを尋ねる。
「あの、家はどのへんなんですか?」
「私の家かい?アヤセのマンションに越したばかりだが、それがどうしたんだい?」
平静を気取ってはいるものの、瑛斗の状態ではアヤセに帰るのは厳しいだろう。
リクはそこらへんには敏感だ。だからこそ、容態の怪しいものには気を使う。



「だったら、これから帰るのは結構厳しいです。家は今日人がいないんで、泊まっていったら…どうですか?」
月は淡く輝き、雲なき空から二人を照らしている。


*********


ふっはー、終了!
いやぁ、今回は私的に戦闘シーンにかなり力を入れてみました。
自分の小説を読み返していると、やっぱりというかなんというか、総合的に戦闘シーンが少ないんです。
学園舞台の繋録はまだいいとして、戦闘など任務系が主流のはずのナイツロードでは
割合的に会話のほうが多かったりしちゃってるという大失態w
カルカーロに至っては内容的にもゲーム宣伝的にも重要な戦闘シーンを一部端折るという異常事態まで起こしてます。
どう読んでも戦闘要素少なめです本当に(ry
そんなわけで、今回は頑張ってみました。いやー、いろんな武器が使えるレン君大活躍ですw
重火器は名前だけ豊富に覚えてますからね、それを生み出して戦うレン君は本当に役に立ちます(オイ
さらに、レン君を所有するコルト・ソーコム氏の設定では
「OW(オリジナルウェポン)という名の通りオリジナル兵装を生み出せる」能力があるそうなので、
思い切ってそれをフル活用。その結果がパイルバンカーです。
で、それと互角に戦っちゃうアハト氏改め瑛斗さん(逆かな?)。
セツたちを召喚した組織の役員なので、かなり強めに設定してあります。
ついでに、ご本人であるアハト氏からは「異能は闇で剣も使いたい」と注文を受けておりましたので、今回に至って
劇中みたいな仕様と相成りました。
ちなみにレン君と瑛斗さんの能力は似通っており、違う点は
・生成できる武器(レンは重火器、瑛斗は近接武器全般とそれを応用した武器)
・属性(レンは氷、瑛斗は闇)
・生成方法(レンは氷でできたパーツを組み立てる、瑛斗は塊の形を変えて生成する)
みたいな感じです。これで差別化できてるとは思いますw


ちなみに、劇中の人物は特定の人物を除いて全員が異能を使えます。なんですかこのバーゲンセールw
主要人物たちの強さを比較してみると


ターミナル=インフェルノ>>アストレア>セツ=瑛斗>>ソウ>>ギン>コトハ=トウヤ=リュウジ=メグミ
>>>リク>>>マナ>ユウ


の順列になってます。ユウちゃん弱すぎるw
ただし、強さはどれだけ異能に慣れ親しんで使いこなせているかにも影響されるので、今後
ユウちゃんのランクも上がると思います。いやあげます絶対w


さて、物語後半でリクが瑛斗と親しくなるきっかけを持ちます。
ここは番外編として描写しますが、この邂逅は果たしてこれからの物語にどんな影響を与えるのか……
なんて意味深な描写しても結局次の回にあるであろうのんびりムードでぶち壊しちゃうと思うんですがねw
ですが、ここらへんで出てきた伏線は一応ちゃんと回収するつもりです。
ユウの心境、リクの考え、瑛斗の思惑、インフェルノ復活の噂、ギンの過去、セツが笑わない理由などなど…
とくに、主人公であるユウの板ばさみによる葛藤なんかが書きたいと…ごほん、ネタバレ(?)失敬。
それでは今回はここらへんで。
またあいませうー ノシ