コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

短編小説 Fas

時は西暦2146年。人類は、突如として現れた未知の生命体「ディノダイン」により、危機にさらされていた。
古代に地上を支配していた王者、恐竜の姿を借りたディノダインは破壊の限りを尽くし、地上は瞬く間に焼土と化してしまう。
種の全滅を逃れるべく、人類は要塞型浮遊都市「アヴァロン・シップ」を建造。天空へと逃れるのだった。


それから約半世紀が経った、西暦2299年。
人類は、自らの体を飛ばす術を見出し、ディノダインへの反撃を開始しようとしていた。





≪イーグル中隊、スクランブル!繰り返す、イーグル中隊スクランブル!!≫
スピーカーから流れるオペレーターの声が響く通路を、俺たちイーグル中隊のメンバーは走っていた。
「アスカ准尉!今回、第4分隊の指揮はお前に任せる!接近するプテラノ級は任せたぞ!」
「了解っ!」
隊長である髭の男性に命じられ、少年――アスカは、はっきりと答える。



戦闘ロッカーと呼ばれる小規模格納庫から、アスカたちは四角いバックパック状の機械を引っ張り出した。
ベルトを腕に通して背負い込んだ後、内部機構を作動させるスイッチを親指で押しこむ。
瞬間、バカン!という炸裂音とともに、バックパックの背部が勢いよく左右に解放された。次いで内部から、複雑に折りたたまれた何かが
駆動音を引き連れて展開される。その奥からさらにせり出てきたバーニアが続けて展開され、さらにその上から
先がU字に曲がったアームが伸びる。
先端がアスカの首元に触れると同時に軽く絞まり、外れないように固定されたと同時に、通路が一気に開けた。
横に広いその空間には天井から伸びたアームがあり、アスカたちは順次そのアームに背中のユニットを取り付ける。
取り付けが完了した者から宙吊りになり、全員が空中に固定された段階で、アスカが左耳に取り付けたインカムのスイッチを入れた。
「イーグル第4分隊、全員の出撃準備完了!出撃の許可を求む!」
≪了解。では、改めて作戦の通知に入る。今回、貴官たちに課せられた任務は、本船上空に出現した『プテラノ級ディノダイン』の殲滅、
および周囲に展開してるプテラノ級の撃滅だ。本作戦が失敗すれば、わが船団は事実上の壊滅となる。心してかかってほしい≫
イェッサー、という唱和が響くと同時に、アスカ達「イーグル第4分隊」の眼前にある壁が、上へとせりあがっていく。
そこから見えるのは、どこまでも青い海と、海と混じって一つの蒼穹を生み出す空。そして、そこを悠然と飛ぶ大きな翼竜だった。
「―――イーグル第4分隊、作戦行動を開始する!総員、カタパルトアウト!!」
アスカがコールを唱えると同時に、5人で編成される第4分隊が蒼天の空へと撃ちだされた。



勢い余ったせいか、全身にかなりのGがかかる。
強風にあおられて落下しながら、アスカは思考で「開け」と唱えた。
それと同時に、アスカが背負っていたユニットから展開されていた箱状物質が、勢いよく左右に開いた。
ウィング状に開かれたユニットの背部からは虹色に発光する粒子が吐き出され、徐々に落下の勢いを軽減していく。
Gを感じなくなる程度の落下速度になると同時に、アスカはバーニアを点火した。
ボゥッ!という燃焼音が耳に届き、すぐに落下が収まる。そこからアスカは点を振り仰ぎ、ウィングからの粒子によって
勢いよく天空へと跳躍した。


アスカたちが飛び出した場所は、アヴァロン・シップの外壁だった。そこから市街部へと到達するには、最短でも1分だ。
だが、今回ここから出撃したのはわけがある。先に伝えられた作戦内容通り、アスカたち第4分隊の任務は周囲のディノダイン殲滅だ。
よって市街へは行かず、周辺からの奇襲に対抗する。それが、今回の任務だ。
正直言えば、アスカはその内容が不服だった。襲撃しているプテラノ級以外に、ディノダインの反応は確認されていない。つまり、
周辺からの襲撃が来る確率は極めて低いのだ。
故に、戦闘がないことに対する不満が募っている。まだ入りたてだという自覚、未熟だという自覚はあるのだが、それでも
前線に参加できないのは悔しいものだ。
哨戒を行いながらため息をついていると、不意にレーダーの感知音が鳴り響いた。若干動転しつつ、インカムに耳をそばだてる。
≪緊急連絡!北東方向にプテラノ級観測、数4!イーグル第4分隊、迎撃に当たれ!≫
突如として現れた反応に、司令部も慌てたようだった。そんな指令を尻目に、アスカは首を回して周囲の味方に無線を送る。
「聞いた通りだ!第4分隊、各機発進!プテラノ級4体を撃滅するぞ!」
≪≪イェッサー!!≫≫
飛んでくる返事を流しながら、アスカはウィングから粒子を吐き出しつつ、矢のごとく飛び出した。



「イーグル4−1、プテラノ級確認!これより撃滅行動に移る!各機、バトルシステム用意!」
指令を送りながら、アスカは腕に巻いたブレスレットからホログラムを出現させ、その中から戦闘用の突撃銃「バトルカービン」を
実体化させた。粒子が凝縮し、アスカの手の中に突撃銃が落とし込まれる。
同時にウィングからの粒子量を調節し、相手の周囲を旋回するための出力に調整する。
敵は太古の翼竜プテラノドン」と酷似した骨格を持つ「プテラノ級」だ。高い旋回性と高密度のプラズマ息を吐く強敵だが、
息の届かない場所からカービンを叩き込めば、そう脅威ではなかった。
「くらいなっ!」
小さく叫ぶと同時に、アスカはバトルカービンのトリガーを引き絞る。粒子で構成されたビームが断続的に射出され、
粒子の槍が連続でプテラノ級の全身を穿つ。肉が焼けるにおいが風に乗って届き、続けて打ち込まれたグレネード弾頭が着弾。
甲高い音とともに爆発が巻き起こり、プテラノ級はあえなく沈む。
それを確認した直後、上方から別の一体が飛来する。口を開きながら接近してくるということは―――。
瞬間、アスカは体をひねって離脱した。直観に従って動いた結果だったが、正解だったようだ。
ほんの少し前までアスカがいた空間を、高密度のプラズマが薙いだのだ。直撃を食らえば全身が焼け爛れるだけで済まないことを察し、
背筋に悪寒が走る。小さな舌打ちを一つはさみ、アスカは飛来してきたプテラノ級へと再突撃をかける。
(―――一気に決める!)
心に決めた直後、バトルカービンが粒子となって消失。その粒子が形を変え、アスカの手に新たな武器を握らせた。
古代の戦争で頻繁に使用され、最近ではファンタジー物の作品にもひっぱりだこな「剣」の鍔から下が実体化し、本来鋼鉄の刀身がある
部分には、代わりにレーザーで構成された刃が取りついている。
「らぁぁっ!!」
咆哮一発、アスカのブレードがすれ違ったプテラノ級の頭を叩き割った。耳障りな悲鳴を上げながら落下するプテラノ級にさらに接近し、
右の翼をぶった切る。そこからさらに肉薄し、とどめと言わんばかりに長い首を切り落とした。
悲鳴を上げる暇もなく落下するプテラノ級の体を蹴り、落下を追った分下がった高度を取り戻すべく上へとジャンプする。
同時に翼から粒子を、バーニアノズルから紅焔を吹かし、跳躍の勢いをブースト。一気に仲間たちが作戦を遂行している宙域まで戻り、
得物を再度バトルカービンに変える。その直後、異変が起こった。
≪うあぁぁぁぁぁぁあっ!!≫
悲鳴に驚きつつ、無線が発された方角を見やる。見ると、分隊の一人がプテラノ級のプラズマ息を浴びせられていたのだ。
プラズマが炸裂する音がノイズとなって無線に響き、同時に声にならない悲鳴を上げる仲間が焼かれていく。
「ちぃっ……!」
毒づきながら、アスカはカービンの銃口プテラノ級の頭に合わせる。ロックすると同時にトリガーを引き絞り、相手の頭部を爆砕した。
「イーグル4−4!」
アスカが手を伸ばしながら滑空する――――が、名を呼ばれた仲間が動くことはなかった。答えるのは、愚直に粒子をふかしながら
仲間の体を浮かせるユニットの駆動音のみだった。
「――――てめぇっ!!」
怒りに瞳を燃やし、最後の1体となったプテラノ級を強くにらむ。バーニアを吹かし、急旋回ののちに突撃をかけた。
≪イーグル4−1!無茶をしないでくれっ!≫
仲間が静止を呼びかけるが、それさえも振り切ってアスカは一筋の流星となる。仲間の命を焼いた、敵を屠るために。
その意志に呼応したかのごとく、カービンが再度姿を変える。続けて実体化したのは、おおよそ空中戦には向かない武器だった。
レーザーソードと同じように実体化された鍔は先ほどよりも一回り大きく、そこから延びるのは合金製の実体刃。
身の丈ほどもある鋼鉄の刃は、さながらバスターソードのごとき様相を見せる。
「らあぁぁぁあぁぁぁっ!!」
雄たけびを上げつつ、アスカがバスターソードを振るう。遠心力を利用し、体を使って思い切り振りぬく。
その刃にからめとられたプテラノ級の胴体は、真っ二つに切り裂かれた。



≪市街上空のプテラノ級、全滅を確認!周囲から接近する熱源、なし。総員、状況終了!被害報告は順次行う……≫
バスターソードをぶら下げながら、アスカは思索に浸っていた。
何故突如プテラノ級が現れたのか。
何故ディノダインは生まれたのか。
何故仲間が死なねばならないのか。
なぜ、何故、と自問自答を繰り返していると、不意に後ろから肩を叩かれる。振り向くと、そこには仲間がいた。
「お疲れさん、隊長。……ナイスガッツ」
それだけ伝えると、仲間はさっさと「箱舟」へと飛び去って行った。その光景を眺めながら、一人小さく思案する。
(…………まだ、悩むべきじゃないか)
悩みぬくのは、すべてが終わってから。
考えるのは、ディノダインから地表を取り戻してからでも遅くはない。


ディノダインを殲滅し、地表を取り返す。
胸中に固く決意しながら、アスカはユニットを駆り、自らの故郷へと帰投した。


*********


終了!
やっぱ、歩兵が強大な敵に立ち向かう構図はかっこいいですよね!進撃の巨人とかマブラヴとか!


実はこの小説、半年くらい前からずーっと温めておりましたw
それがいまさらになって小説家なんですから、自分の脳内がどうなってるのか改めて想像がつきませんw
イデアの元ネタとしては、マクロスFに登場した「EX-ギアシステム」が発祥です。
そこに俺流飛行動力理論を叩き込んで、めでたく本編の兵器が誕生しましたw


それでは今回はここまで!
またぬー ノシ


おまけ:本編中の解説いろいろ


ディノダイン
人類の敵である、未知の大型生命体。太古の昔に地表に存在していた恐竜の姿と酷似しているが、口から熱線を吐いたり
全身電流が漏れていたりなど、人知を超えた能力を持っていることも確認されている。
どこから生まれたのか、なぜ人類のみを襲うのかは不明。また種類にもよるが、粒子兵器に対して極めて弱い性質を持つ。
イデアもとは特になし。ディノダインという名前になる前は「Dレックス(正式名称Die REX)」という名前だった。


アヴァロン・シップ
ディノダインによって全滅の危機に立たされた人類が、種の存続のために建造した超弩級浮遊要塞都市。
市街区、産業区、政治区、戦艦収容区の4つのブースが連結して構成されており、粒子フィールドシステムにより
翼竜型ディノダインによる襲撃にも対応可能。
市街区には何千万もの人間を収容でき、新たなブースを建造すれば億単位の人間も収容可能。
劇中では日本が建造した「斑鳩(いかるが)」が登場しており、日本人と日本と友好関係を持った国(基本的に留学していた外国人や
観光にきたり、日本に住んでいた外国人などのみ)の人間が収容されている。
閉鎖環境なのでオタク文化がさらに発達している。そろそろ萌えに侵略されそうな勢い。


Fas-システム
ファス・システムと読む。正式名称「Flight armored soldier system(フライト・アーマード・ソルジャーシステム)」。
歩兵の体を空中に浮かせ、飛行することでディノダインから戦局的優勢を取るべく開発された、日本独自のシステム。
ハドロン粒子を使用した飛行理論が組み込まれた初めての兵器でもあり、現在も改良が進められている。
ユニットはバックパック式フライト・ユニット、ブレスレット式ウェポンラック、戦闘服(軍服)の3点で構成されているが、
最悪フライトユニットのみでの戦闘も可能な構造になっている。
操縦方法は脊椎コントロールシステムであり、訓練をすれば誰でもそれなりに扱うことが可能。
航行は基本的にウィング部分からの粒子による推進力によるものであり、バーニアは補助、もしくは粒子推進装置の故障の際に使用する
予備推進装置となっている、両方を併用することで超推力を得られるが、代わりにパイロットには多大なGがかかる。
粒子フィールドシステムも小型ながら搭載されており、緊急時にはパイロットを防護する役割も持つ。
携行武装に関しては腕部のブレスレット式ウェポンラックに、粒子変換されて携帯されている。どれか一つの形態を選んで使用する方式で、
こちらも脊椎コントロールによって随時形状変更が可能。
また、オリジナルの武装も携帯可能であり、劇中ではアスカがバスターソードを展開していた。
基本携行武装は、粒子ビームを連射して断続的にダメージを与える「バトルカービン」と、粒子を収束させて剣状に展開し、
標的を切り裂く「ハドロンレーザーソード」の二つ。
推進剤は空気中のハドロン粒子であり、大気圏内であれば事実上半永久的に稼働させることが可能。
ただし、一度に大量の粒子を放出してしまうとオーバーロードを起こしてしまい、約10秒の冷却が必要となる(その間は滑空のみになる)。


戦艦
劇中未登場の、対ディノダイン用の空中戦艦。
日本製の戦艦は72口径の大型炸裂砲弾砲塔を主砲としており、あくまでもメインはFas-システムを使用した機動部隊という構成。
機動部隊の空母として運用されている面もある。


アスカ
劇中の主人公。本名は「鷹名城 明日香(たかなき あすか)」。
17歳にして順位となり、Fas-システムを使用した機動部隊「イーグル中隊」に所属する若年兵。
幼いころの翼竜型ディノダイン襲撃で家族を亡くしており、ディノダインに対しては強い憎しみと怒りを持つ。
普段は温厚かつケンカ嫌いという、任務中とはおおよそかけ離れた性格。
強烈な一撃を与えて、一瞬で戦闘不能に追い込むスタイルを好んでおり、オリジナル兵器であるバスターソードもその一環。
劇中(第4分隊を率いているとき)でのコールサインは「イーグル4-1」で、中隊行動の際には「イーグル7」となる。




このまま連載になっちゃいそうな設定量はどうしましょうかねw