コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

ガンガン行ってみたいっ!(デュアルフェイス)

う…歌のネタが尽きたああぁぁぁぁぁ




ってことでちはす、コネクトにございますー。
いやー、自分でもそこそこレパートリーはあると自負していたものなんですが、ここにきて尽きてしまいましたw
なので今後、いい歌が思いつかないときは今回みたいに歌なしでお送りさせていただきますー。
や、没にした短編小説とかを引き上げればまだ10曲ぐらいのこってるんですがねw


さて、今回はカルカーロとなります。
文章的には
古版第8話後半部分+アハト氏執筆のダークハウンド第7話+古版第10話前半
となり、次回予定の第7話では
アハト氏執筆のダークハウンド第7話後半部分+オリジナル部分
となり、最終話である8話が
ダークハウンドの残り+カルカーロの残り+オリジナル半分
の構成となる予定です。
頑張って来月中には仕上げたいなー(願望
というか後半になるにつれて一層原案部分が減っていく……w


*********


#06 退廃の地を往く



新たにカスタムを施した相棒が、ビルの壁面を伝って一直線に地表へと降下していく。
顔を直に叩く強風の中、俺―――マークアハトは、ちらと遠方のビルを見やった。
そこには、愛用の武器である刀を足元に置き、腕を組んで、悠然と地表を見下ろすマークゼクスの、兄貴の姿。
傍受した情報は本当のものだったようだ。そうとなれば、一刻も早くあいつのもとにたどり着かねば。
決意も新たに、俺と後部座席に二人乗りしているアイシャはさらに加速する。
地表には、この「惑星ホレイトス」を―――悪夢の戦いの産物を消し去るために派遣されていたキャスト部隊と、
侵攻してきたのであろうダーカーたちの闘争が見て取れた。
が、よく見れば、キャストの一部は味方に攻撃しているらしい。同士討ちかと考えたが、どうやら違うようだ。
なぜならば、味方を攻撃しているキャストの体には、花が咲く前のつぼみのような――あるいはダーカーの核に似た物体が
寄生していたからだ。つまり、相手側に乗っ取られた状態なのだろう。
当たり前の話だ。フォトン適性がない人間がまともにダーカーと渡り合えば、こうなることは目に見えている。
それでも戦い続ける彼らは、ただの蛮勇なのか、はたまた悲壮な決意の表れなのか。
考えつつ、目前に迫った地表を見据えてアイシャに話しかける。
「アイシャ、キャストたちはなるべく生かしておけよ!戦うことになっても、手足をぶった切るかそのくらいにしておけ!」
アイシャはキャストも人だということは理解していたらしいが、次いで疑問――あるいは非難を口にだす。
「で……でも、腕切ったら痛そうですし、かわいそうですよ!」
ここにきて戦うのをためらわれるのは不安だったが、やさしい彼女のことだ、相手のことも考慮した結果の反論だろう。
「いいや大丈夫だ。キャストは機械だから、手足の一本二本なんてオシャレで付け替えられる!
あいつらもそれが本望ってやつだろう、問題ないさ」
「…………なら、安心しました」
俺の説得を聞いて、理解してくれたようだ。内心で胸をなでおろしながら、車体にビルの壁面を蹴らせる。
とたん、襲ってくる浮遊感。幾ばくもしないうちに車体――ひいては俺たちの体が衝撃に震え、なおも止まらずにバイクは
疾駆するために吼える。同時にマウントポーチから「ヤスミノコフ3000R」を射出し、左手でキャッチ。
ハンドル下部に設けておいた、反動抑制と照準固定を目的としたホルスターにホールドし、トリガーを引き絞る。
すぐに炸薬がはじける音がし、装填されていた無数の徹甲弾が撃ち出されたかと思うと、うなりをあげて眼前のダーカーたちに命中。
相手を物言わぬ骸へと変えていく。後ろでは、銃モードにした「ガンスラッシュゼロ」でアイシャが援護を行ってくれている。
「助かるぜ、アイシャ!」
「このくらい、兄さんの相棒として当然ですっ!」
我ながら頼もしい相棒を手に入れたものだ。そう考えながら走るうち、すぐにゼクスが立っていたビルの下へと到着した。
が、厄介なことに、その目前には「ダーク・ラグネ」が群れを成している。
「ち……突っ込むのは無謀か」
一刻も早くゼクスのもとにたどり着かねばならないのに。焦る俺の後ろから、不意に何かが飛来した。
慌てて見やると、その飛行物体は武器のようだった。しかも、筒と刃を合わせたような独特のフォルムは、まさしく
ガンスラッシュ。それもそのプロトタイプである「ガンスラッシュゼロ」が、何十本という規模で飛来してくる。
驚愕もつかの間、無数のゼロはまるで一つ一つが意思を持つかのようにうねり、つらなり、瞬きの間にダーカーを切り裂く。
早業といっても足りないそのゼロがラグネたちを切り伏せた後、転身して一気に俺のほうへと―――
「うおぉぉっ!?」
慌てて上体を倒し、被弾だけは避ける―――のだが、以外にもその波は俺の場所だけを避けて通っていく。
何事かと後ろを振り向いたとき、俺は改めてその光景の異端さに気づいた。
「大丈夫ですか、兄さん?」
気遣ってくれるアイシャの背中から生える羽が攻撃的なフォルムに変化し、その周囲に先ほどの大量のゼロが浮いていたのだ。
まさか。そう思いつつも、俺はアイシャに問いかける。
「ア……アイシャ、まさかそのゼロは、お前が?」
「はい。こっそりと練習していたんです。まだ自由自在には程遠いですけど、兄さんを援護するくらいなら行けますよ!」
アイシャを連れ出した時から薄々思ってはいたが、この力は強大すぎる。
ハウンドとだけ名乗った彼女は、いったい何者なのだろうか―――。


 * * * * * * 


先ほどから、ひっきりなしに爆音と振動が連鎖している。目まぐるしく動く計器類や、各部の状況を示すモニターを
一瞥していきながら、ちっと舌打ちを一つはさむ。
「……フィールドはもう持たないな。まだ脱出できる高度に届かないし……えぇいくそ!」
バーのグリップを殴りながら、俺―――神宮寺コクトは、緊急着陸のためのシークエンスを進める。
この状態から脱出するためには、緊急着陸で強引に降りるしかないのだ。
額に脂汗がにじむ。このような窮地は幾度となく味わってきたのだが、どうにも慣れない。
素早くテンキーを使って機体制御のプログラムを立ち上げ、そこからサブスラスターの項目を確認。
使用可能なスラスター数が表示されると同時に最大出力まで上昇させ、一気にスロットルを引く。
急激な減速によって、対G加工を施したこのブリッジにもかすかにGが伝わる。窓の外を流れる景色の速度は少しずつ緩やかになるが、
それでもこの高度から落下すれば小さな被害では済まないであろうことは明白だ。
一瞬、船を乗り捨てることも考えたが、即座にそれは却下する。
この船は、いわば今の俺の生命線だ。船を失ってしまえば、万一二人がいなかったときに追撃することが困難になり、
帰還の術も失うことになる。それだけは避けねばならなかった。
被害を免れないというならば、せめて最小限に抑える。強く目を見開き、操縦プロセスを普段の5割増しで遂行する。
幾許かののち、船を大きな衝撃が襲った。




「…………っつつ」
船体底部の破損を知らせるアラートの音で、俺は目を覚ました。
すぐに意識を覚醒させて計器類をチェックするが、そこまで損傷が広がっていないところを見ると、気絶していたのはほんの
数分だったのだろう。それを確認すると同時に、ダーカーによる外部からの浸食を防ぐために搭載しておいた「フォトン防護膜」を
展開し、ブリッジを後にする。
予備のマウントポーチと、その中の武器を取りに行っている暇はない。ダッシュで機体格納庫までたどり着くと、
衝撃の影響で横倒しになったバイクを起こし、格納庫を開放する。
すでに周囲はダーカーによって黒い海が形成されつつあった。突破するには、爆発的な火力が必要だ。
「……上等」
一つごちり、俺はマウントポーチから大剣にカテゴライズされる武器「キャリバー」を、バイク本体から伸びてきたアームに
つかませる。いつかのようにアームは複雑に回転し、キャリバーの柄を収納する形でバイクの前方にマウントした。
続けてマウントポーチから、パルチザンにカテゴライズされる「アルバグレイヴ」を射出。こちらは左手に持ち、右手で
バイクのハンドルを握った。
「さぁ、」
ダーカーたちが、一斉に俺へととびかかる
「俺は最初から最後まで」
始動するべく、相棒が吼える。
「クライマックスだぜ!」
瞬間、俺は光の矢となった。


 * * * * * * 


飛来するのは銃弾。
叩き落とすは無人の刃。
周囲を浮遊する無数のガンスラッシュゼロに護られつつ、俺は先へと進んでいた。
傍らには、この浮遊剣の持ち主でもあるアイシャが併走している。
「……兄さん、前から!」
アイシャの言葉に、俺は後ろに注意を向けていた目を前に引き戻す。見ると、ダーカーに浸食されたのであろう
機甲種エネミーのほか、大小さまざまなキャストがエレベーターと思しき場所をふさいでいた。
「……あのエレベーターを使う。アイシャ、エネミーとダーカーの浸食核だけをピンポイントで狙えるか?キャストのほうは、
最悪手足を切り落としてからでも構わない」
私情を挟んで行動するのはもってのほかなのだが、今はそうもいっていられない。一刻も早く打開策を見出さなければ、
遠くで頑張っているのであろうキャストたちともどもジリ貧だ。
そんな俺の心情を察してくれたのは、アイシャは親指を立てて口を開く。
「お任せください。……兄さんは、先に行ってください。後から追いつきます!」
「すまないな……頼んだ」
彼女の意図を汲み、自身の心情を汲み、俺は機械の機能を一時的に混乱させるために特殊な改造を施した対電子グレネードを
投擲する。スパルダンAの一体に衝突すると同時に、炸裂したグレネードからスモークが広がる。
電子機器の作動を阻害する目的の粒子雲が広がった只中を、俺は一気に駆け抜けた。
滞留性の低い雲が途切れると同時に、俺はアイシャに向けて声を荒げる。
「アイシャ!エレベーターが作動するまで足止め頼む!」
「はいっ!」
頼もしい返答を聞きながら、俺はエレベーターを作動させる。
扉が閉まるのがやけに長く感じた。その間、扉の外では無数の剣が舞い、機械たちを爆発四散させていく。
「―――絶対に追いついてこい!!」
閉まりきる寸前、俺は自然とその言葉を叫んでいた。


―*―*―*―*―*―*―


「……早かったじゃないか、アハト」
エレベーターはまっすぐ屋上に向かい、そこで俺は兄貴の背を見つけた。駆け寄る寸前、その声が響いて思わず足を止める。
「人を待たせるの嫌いな性分でな」とだけ返すと、不意にゼクスはこちらを振り返った。
その眼は、好奇心に満ち溢れた少年のように輝いている。昔、二人でよく遊んだ時から何ら変わっていない、やさしい瞳。
まるで、敵であるはずの俺と出会ったことを心の底から喜んでいるかのような。
直後、ゼクスが怪訝な顔をして問いかけてきた。
「……それで、どうやってあそこから脱出した?見張りをつけていたはずだが」
「見張り……ってのはアイシャリアのことか?あいつなら、俺が上手いこと言いくるめて頂戴しておいた。
ほかの見張りなら、俺が全部ぶった切っておいたぜ」
地下基地から脱出する際、持っていた武器はナイフだけだった。見張りがすべてダーカーだったおかげで
フォトンコーティングの一撃ですべて切り伏せることができたのは、不幸中の幸いというべきだったのだろうが。
そんなことを思い返していると、ゼクスがクククと控え身に笑った。
「何がおかしい?」
「いや、お前のやることだなと思ってな。……そうか、あの出来損ないを連れて行ったのか」
出来損ない?とおうむ返しに呟くと、律儀に兄貴は答えてくれる。
「……彼女は、お前が予想した通り、ハウンドの一人だ。生まれながらにして戦闘の力を持ち、戦うためにいるだけの存在。
だが、あいつは精神が人間に寄りすぎた。ハウンドとしては使えないとする一方で、潜在能力の高さを利用すべきだと言われ、
隔離されていた。そこで、お前に出会ったというわけだ」
「……あいつは、アイシャは人間だ。ハウンドなんかじゃ……ダーカーなんかじゃない」
弄ぶかのように生み出されたアイシャに憤りを感じて、俺は静かに反論する。
確かに、ゼクスの、兄貴の言う通り、彼女はハウンドなのだろう。だが、だれがハウンドだと「決めつけた」んだ?
本人が望むならば、たとえ人外の存在だとしても「人として」生きることはできる。
その言葉は、かつて俺の師でもあった、目の前の人間――兄貴が言ったことだ。
まさか、こいつがその言葉を忘れたわけではあるまい。そう信じつつ、俺は兄貴の言葉を待つ。
「……あいつがそう思うのならな。まぁ、いまさら失敗作のことはどうでもいい。ほしいならくれてやる」
どうやら、忘れてはいなかったようだ。内心で少しだけ安堵しつつ、「ならありがたく」と返す。
そのあとに、思い出したかのようにゼクスは口を開いた。
「そうそう、だれかさんのおかげで、アハトのお友達に出会ったぞ。……なかなか元気な少年じゃないか。昔のお前みたいで」
ゼクスがさしている少年とは、すなわちコネクトのことだろう。そういえば差し向けていたな、と今更ながらに思い出す。
「……コネクトのことが、どうかしたか?」
「いや、何でもないさ。ただ、つくづく面白い少年だなと思っただけだ」
同意できる節があった。最初こそ頼りないガキだと思っていたが、いざ共に戦ってみると仲間が思いつきそうにもない突飛な作戦を
次々と立案しては、時々失敗を含めながらことごとく仲間を救ってきた。
一年たった今では、立派に諜報役として働いてくれているので、その突飛な作戦を見ることは少なくなったものの、
相変わらずあいつの戦い方には飽きない。
「そうだな。あいつはいろいろ、特別だ」
「だが、まだ青い」
「ああ」
そこまで言って、不意に別のことに気付いたようだ。そういえば、というつぶやきが耳に入る。
「……お前、アキシオンを忘れていったろう?彼に、届けてやってくれとたのんでおいたぞ」
「…………あぁ、そういえば。しかしまぁ、ごくろうなこったな。兄貴も、俺が武器をストックしてることぐらいわかってるだろ?」
そういいつつ、俺はマウントポーチをいじって二本目の「アキシオン」を取り出して見せる。
俺のアキシオンを見ながら、ゼクスはなおも笑う。
「そういってやるな。どうせ何も言わずにずかずか出てきたのだろう?会ってやったらどうだ」
「…………」
そこで、しばらく言葉が途切れる。互いに、かけるべき言葉が見つからない。
沈黙を先に破ったのは、兄貴のほうだった。
「……彼なら、俺たちの意思を継いでくれるだろうか」
その言葉に、俺は思わず郷愁(きょうしゅう)の念を覚えた。


思えば俺たちがこうして離れ離れになっていたのは、「求める正義の形」が違ったからに他ならなかった。
正義を達するために愚直(ぐちょく)に力を求め、やがて俺たちは違う道を歩み始めた。
その後、俺は海賊として、兄貴は英雄として、正義を全うするべく歩んでいたのだ。
そんな、俺たちにとって因縁の深い「意思」は、再びこうして俺たちをめぐり合わせている。
「……兄貴は、まだ正義の味方になろうとしてるのか」
「むろんだ。……お前も、そのつもりなんだろう?自分の正義を貫くために、お前は今こうしているんじゃないのか?」
図星だ。もっとも、見抜かれることは想定しているので、対して動揺するべき事態でもない。
「そうさ。……俺の中でくすぶってる正義の炎が、お前を倒せと轟(とどろ)き叫んでいやがる」
「…………ふふ、そうか。ならば……!」
「答え合わせといこうか!」
直後、ビルの屋上を閃光が彩った。


 * * * * * * 


吼える相棒のハンドルを右手で握り、左の手でアルバグレイヴを振り、俺は流星となって突撃する。
向かうはただ一つ、先ほど屋上で閃光がきらめいた、真正面のビル。
推測が正しければ、そこに彼は、彼の敵はいる。
「――――どけぇっ!」
咆哮一発、俺はアルバグレイヴを振りぬき、とびかかってきたダガンたちを一刀のもとに伏す。先ほどから漆黒の海の中を
突き進んではいるが、一向に対岸のビルは近づかない。タイヤがスリップしているわけでもなく、ダーカーによって足止めされるでもない、
ただの錯覚だ。が、その錯覚は、俺に不安を掻き立てさせるのに十分な力を持っている。
(……早く行かないと)
どうにも、不安がぬぐえなかった。このまま追いつかなければ、アハトがどこか、遠い所に行ってしまいそうな気がした。
焦燥感に駆られ、俺はさらに相棒を加速させる。


数分後、ようやく漆黒の海を抜けることができた。間髪を入れず、眼前に迫ったビルの入口へと突入し、マシンを横倒しにして
急停止する。ここからはバイクを使うことはできない以上、徒歩で屋上まで向かうほかはない。
念のためにバイクに取り付けておいたキャリバーも収納し、バイクを停車させて先へと進む。
が、いくばくもしないうちに新手はやってきた。軽く毒づきながら、アルバグレイヴを駆って敵をなぎ倒す。
惑星リリーパ系列の敵とはあまり戦った経験がないが、その行動ルーチンはダーカー族のダガンと酷似している。
ゆえに、「スパルダン」としてカテゴライズされる四足歩行型の機械は、俺にとってさしたる脅威ではなかった。
真っ向からアルバグレイヴをふりおろし、正面からスパルダンの顔――に相当する部分だと思われる――を切り裂く。
後方から迫ってきた大型の人型兵器「ギルナス」のコア部分を蹴り飛ばして転倒させると同時に前方へと跳躍し、新手の波を
通り超える。
「―――減らない!」
焦燥感がまし、俺の躰をせかせる。余裕のなくなった俺の聴覚に、ふと何かの音が聞こえた。
よく耳を澄ますと、それはキャタピラに似たホバーの音らしい。しかも生半可な大きさではないことを、音の遠さと大きさで知覚する。
これほどの巨大な兵器が、まだ稼働しているというのか。しかも、ダーカーに浸食されつつあるこの惑星で稼働しているということは、
おそらくは乗っ取られた後のはず。
数瞬の後、俺は近くにあった個室と思しき場所に逃げ込んだ、その刹那。
背後から、すさまじいばかりの大音響が俺の体をたたく。廊下を粉砕してのそりと姿を現したのは、視界に収まらないほどの巨躯だった。
ここまで大きな機甲種を見るのは初めてだ。大型といえばリリーパの可変戦車「トランマイザー」や人型機動兵器「ギルナス」が
代表的だったが、これは正直言って規格外といっても過言ではないだろう。
が、どうやらこの超大型機甲種、動きから察するにこのビルを使用して上昇しているらしい。
その拍子に下にいた機甲種たちを踏み潰している様を見て、ふとひらめいた。
「―――おぁっ!」
その巨躯に設けられていた段差にアルバグレイヴを叩き付け、その装甲へとめり込ませる。と同時に急速なGがかかり、
俺は進行方向へと吹っ飛んだ。


考えとしてはこうだ。
まず、前方を疾走する超大型機甲種――のちに聞いた話では、ビッグヴァーダーという名前がついていたらしい――にしがみつく。
そこから何とかして機上の比較的安全な場所へと移動し、降り注ぐガレキや機甲種の残骸から身を守る。
先ほどまで俺を追いかけていた機甲種たちはまとめてビッグヴァーダーにつぶされるので、必然的に俺は安全に
頂上へとたどり着くことができる、という算段だ。
だが、この方法が成功するには、いくつか課題がある。
一つは安全地帯の有無だ。むろんあるに越したことはないのだが、ない場合は場合で、襲いくるもろもろを避けるすべを考えねばならない。
二つ目が一番の問題なのだが、そもそも機上に乗りかかれるスペースはあるのだろうか。
とびかかったのはいいものの、目下としてはそれが一番の問題だった。
一抹の不安を覚えつつ、強風に煽られながらも上へ登ってみると、予想とは全く違うスペースが広がっていた。
ひどく広かったのだ。普通ならば、このスペースはタレットやらミサイル口やらが積載してあり、ごった返して人のいるスペースなどは
存在しないはずなのだが―――という疑問は、次いで視界に入ったものに打ち消される。
人の上半身を象ったかのような武装――と思しきものが、縦横無尽に広大なスペースを駆け巡っていたのだ。
つまりこのスペースは、この場所に上ってきた外敵を駆除するために、意図的に設けられたものということになる。
そして、ここに上ってきたのは俺一人。
刹那、大型のコアと思しきそれがこちらを向いた。ホバリングの挙動を駆使して、こちらへと近寄ってくる。
迎撃するしかないか―――と思った次の瞬間、機上をひときわ大きな衝撃が揺り動かす。
「うぉわぁぁっ!?」と悲鳴を上げる暇もなく、衝撃をもろに受けた俺の体は宙に投げ出された。
それだけならまだよかった。自由落下に入った俺の下には―――床はなかった。


いや、正確に言えば、地面はあった。だが、そこは既に地上から数十メートルも離れた場所。高所から投げ出されてしまえば、
後はどうなるかなど自明の理だ。
(―――南無三っ!)
そう唱えると同時に、俺の視界は上へ流れ始めた。


 * * * * * * 


「シッ!」
ゼクスの放った無数の斬撃が飛来する。
一つは体をひねって避け、一つは手に持ったフォトン相殺用の「対フォトンフィールド」を起動させて打ち消し、一つは
右手のアキシオンで力任せに引きちぎった。
先ほどから、俺たちは堂々巡りの長い戦いが続いている。お互いに傷の一つをつけることさえままならず、じりじりと
体力を消耗するだけの小競り合いが続いていた。
細く息を吐きながら、俺はふと思いついた挑発の言葉を投げかけてやる。これで少しでも乱れが出てくれればいいのだが。
「……ったく、どうしたんだよ兄貴。さっきから俺に傷の一つもつけらんねぇなんて、年取っちまったんじゃないのか?」
淡い期待を込めてゼクスを見据えるが、兄貴は動じる様子もない。
「たわけ。お前こそ俺に一太刀も見舞えないとは……未熟にもほどがあるぞ」
それどころか、こうして挑発を返してくる始末だ。幸い熱くなる前にゼクスが突進してきたので、慌てて思考を冷やしながら
互いの剣を打ち付けあう。
さすがゼクス、真正面という俺の本領を発揮するこの場においても、斬撃の重さが恐ろしい。もっとも、兄弟であるがゆえに
得意分野がある程度似通っているのは否定できないが。
ギン、ギンと高速で剣を打ち付けあいながら、俺は怨嗟を込めた皮肉を吐く。
「偉大なる英雄様に傷をつけるなんて…………恐れ多いさっ!!」
対するゼクスも、俺に向けて軽蔑交じりの暴言を飛ばす。
「悪名高い天下の宇宙海賊風情が―――何をバカなことをぉっ!!」
その時。幼少のころに二人の口癖となっていた言葉が、それが出るたびに喧嘩になっていた言葉が、俺の頭を真っ白にした。
今まで立てていた戦略がすべて白紙になり、相手にそのまま返すためだけに、思考は恐ろしい速度で回転する。
「……今、なんつった?」
半ば本気の声色で返すが、当のゼクスはどこ吹く風だ。それどころか、
「相ッ変わらずお前は、筋肉バカでバカ正直で単純バカで無能なバカで」
「ッ………………四回バカっつったなぁ……?」
何かが切れた。口角が引きつり、額にうっすら青筋が走る。
「バカっつったほうがぁ…………」
策などもうない。
「バカなんだよぉぉっ!!!」
そのまま、ただ速いだけのこぶしを繰り出した。バシィ!という痛々しい音をさせながら受け止めたゼクスは、まるで勝ち誇ったような
殊勝な表情を浮かべている。
「お前今バカといったな!……つまりそれはお前がバカと認めたようなものだぞ、このバーカ!」
「―――ぶっ殺ぉぉす!!!!」
「おーう殺してみろ!バカ以外とりえのないお前が勝てるかな?」
「今お前もバカっつったろ!お前もバカってこと認めたぞこのバーバーカバァーカ!!」
「兄に向ってバカとは何だ!お前が大バカなだけだろうこのバカ助!」
「黙ってろバカ兄貴!バーバーカ!アークス流に言うならバーバータ!!」
「下らんぞこのバカ者!まぁお前みたいなバカにはぴったりだろうな、このバーバータ!」
「下らねぇっつったくせに気に入ってんじゃねえよバカ兄貴のバーカ!」
ほとんど口論に等しい状態だ。すでに武器も捨てて、ノーガードでただただ殴り合う。
はた目から見れば変なことをやっているだけにしか見えないだろうが、俺は今、なぜか充足感に満たされていた。
「―――貴様、前にオレのトリメイトを勝手に飲んだろう!」
「おー飲んださだからなんなんだよ!いつまでも戦争前のこと根に持ってるなんざ、ケツの穴ちぃせーんだよバカ兄貴!」
「黙れ!あれがオレの人生最後のトリメイトだったんだよ!それをお前が勝手に飲んだから!俺はっ!」
「黙るのはテメーだバカ野郎!なんだ、たかだか一本逃してそんなに根に持てるなんて、幸せもんだなぁ兄貴は!」
「この絶望感を味わったことのないお前に―――言われたくないっっ!!」
「そんだけで絶望すんじゃねぇよ!これ終わったらいくらでも奢ってやらぁ!それでいいだろこのバッキャロォォッ!!」
顔面を殴り、腹を殴り、頭突きをかまして蹴りを放つ。もはや子供のけんかといっても過言ではないことをしていたが、
俺は不思議とスポーツをやっているかのような充足感に満ち溢れていた。
もはや、この戦闘の発端になった理由など忘れている。賛辞にも似た罵倒を浴びせあいながら、俺たちはただ殴り合った。
VRミッションで……俺はテメェに16勝したぞ!こンのバカ兄貴ぃ!!」
「オレは……17回勝ったぞこの雑魚!ついでに言えば、アムドゥスキアでも勝ったから18勝だ!恐れ入ったか!」
「だったら今ここでぇ……2回以上死にやがれこのバカヤロォォォォォ!!」
何分続いたのだろうか。長く長く続いた戦いは、闖入者によって終止符が打たれた。
突如地面に亀裂が入ったかと思うと、そこから床を食い破って、巨大な機体が姿を現したのだ。
衝撃に巻き込まれて、俺とゼクスは残された床に着地する。
「……っとぉ。なんだ、こいつも兄貴の仲間かよ?」
「たわけ。俺の仲間なら俺を巻き込もうとなどしないはずだ」
「それもそうか」
出てきたのは、超大型機甲種として高名な「ビッグヴァーダー」だった。ビルに衝突しながら来たせいか、ところどころ
黒く焦げている。残念なことに砲台はすべて健在なようだ―――というところまで考えて、不意にひらめいた。
「―――兄貴、こいつで決着つけようじゃねえか。どっちが多く砲台をぶっ壊せるか、勝負と行こうぜ」
提案を聞いたゼクスは少しばかり驚いていたようだったが、すぐに殊勝な顔に戻る。
「……いいだろう。この弾丸の雨の中を、お前が抜けられるとは思わないがな」
「甘く見てもらっちゃ、困るのは兄貴のほうだぜ。力の差ってやつを見せつけてやるよ!」
「ふっ……そうでなくちゃ困る。なら、機上コアはいただこうじゃないか」
俺は口の中にたまっていた血を吐き出した。ゼクスは懐から一枚の金貨を取り出し、俺に告げる。
「こいつが合図だ。床に落ちた瞬間から、スタートだぞ」
「おうよ。……さっさと始めようぜ」
その言葉に、ゼクスはほくそ笑んでうなずいた。すぐに金貨はトスされて、俺たちの目の前で金の軌跡を描く。


「「――――ゴゥ!!!」」
金貨が床につくわずかな音が聴覚に届くと同時に、俺とゼクスは全く同じタイミングで地を蹴った。


*********


ふぃー、終了!
これは……あれですね、鋼鉄の瞳の終盤の更新スパートを思い出しますねw


今回のお話ですが、この長さでまさかの三日作成という突貫工事っぷりですw
なぜこんなに更新が早くなるのかはコネクト本人の理解も及ばないところなんですが、おそらくは
最終回が近い=思いついた最終回を形にできる日が近い=これは早く更新しないと!=更新速度上昇
ということだと思われますw
それ以前に、なぜ今まで更新を停滞させていたんだと自分を問い詰めたくなりますw


それでは語ることもないので今回はここまで!
またあいませうー ノシ