コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

アイラ another storyー獅子を狩るモノー

≪緊急警報発令!緊急警報発令!市内全域に、特ファンタズマ警報が発令されました!市民の皆さんは、直ちに最寄りのシェルターへと
非難をお願いします!ファンタズマの進行速度は低速につき、安全かつ迅速な非難をお願いいたします!繰り返します……≫


時は2045年。地球に、一つの隕石が落下することになった。


「総員聞こえたか!敵はカテゴリー:ゴッド『インドラ』だ!地上からの狙撃一斉射で、瞬間殲滅を狙うぞ!」
「「イエッサー!!」」


隕石による被害の規模も小さく、またよく飛来するごく小さな天体だったため、科学者は誰も気に留めなかった。


「こちら司令部。ファンタズマ=インドラの構成を確認した!出現地は唐笠山山頂付近、進行方向は北北西!
進路上には唐傘高等学校が存在する。人民の被害は、最小限に抑えろ!!」


だが、直後に異変は起きた。世界各地でワイバーンや妖精、果ては恐竜さえもが出現し、人々を瞬く間に蹂躙していったのだ。


「こちらグラディエーター1、同小隊は目的地に到着。これより迎撃態勢をとり、ファンタズマを撃滅する!」
≪隊長!俺たちの意地と鬱憤、全部ぶつけてやりましょうぜ!≫
「無論だ。……作戦準備、各機展開!!」


摩訶不思議な力を持つ、強大な異種生命体。人は現れた彼らを、「ファンタズマ」と呼称した。



そして、そんなファンタズマの襲撃が始まってから、16年の歳月が経った、ある日。





episode1:邂逅


「おいおいおいおい、ちょっとマジかよ彰!マジでファンタズマ来るのかよ!!」
「来るっつってるから来るんだろうな!わかったらちゃっちゃと走れこのバカ恵介!」
「ひっでー、親友にバカたぁなんたる言い草だ!俺は傷ついた、謝罪と賠償を請求するぅー」
「黙れ蹴っ飛ばすぞ!いいからとっととシェルターだシェルター!」
「賠償しやがれこんにゃろー!」
「謝罪だけならいくらでもしてやるから走れっつってるんだよ!」
がみがみと文句を言いながら、俺―――彰(あきら)と友人の恵介(けいすけ)は、学校の廊下を走っていた。
すでに特ファンタズマ警報が発令されており、ほかの生徒は三々五々にシェルターに駆け込んでいる。残っているのは、俺と恵介くらいだ。
が、その恵介が「ファンタズマを見たい」などとのたまい、揚句俺も連行された末に、ここから逃げるのがおくれたのだ。
内心で思い切り毒づきながら、俺たちはばたばたと廊下をかける。が、どうやら間に合わなかったようだった。
「おい、あれ!!」と恵介が指差した方角には―――あまりにも巨大な、雷雲。
そしてその下に見える、黄金の巨人だった。僧侶のように複雑な文様を持った装束を着込み、中世的な顔はどこか遠くを見つめている。
さらにその手前には、つい最近世界に発表され、世界を守るプロパガンダ的な存在となった人型兵器「装機(そうき)」の部隊が
陣取っていた。方は、確か量産型の狙撃特化機「千里」だったか。恵介がよくしゃべっていたのを思い出しつつ、窓を見ながら駆ける。
瞬間、装機の持つ大きなライフルが火を噴いた。ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、たくさん。
それらの爆炎はすべてがファンタズマに直撃し、そこかしこから紅蓮の炎が上がる。だが、インドラは止まることを知らないかのように
ゆっくりと歩みを続ける。平均全長が17mはある装機さえもゆうにしのぐ巨大な体には、さしもの装機も回避するほかなかったようだ。
「おい、これマズくないか?」
「だからさっさと避難しようって言ったんだよ……。えぇい、こっちだ!」
普段避難訓練に使われているのは、大人数を全員収容できる第一シェルター。だが、この学校にもう一つシェルターがあるのを、俺は知っていた。
現在地から鑑みれば、そちらに滑り込んだほうが生存率が跳ね上がるのだ。少なくとも、命の危険を冒してまで避難する必要がない。
すぐ近くにある第二シェルターへと駆け込むべく、俺は恵介の手を引いた。



第二シェルターに通じる扉は、案外すぐに見つかった。入り組んだ場所にあって生徒の人目に付きにくいので、ここを知っている人間は
数えるほどしかいないだろう。まして普段の避難訓練には第一シェルターが使われるので、その人数はさらに減ることになると思われる。
そんなシェルターの扉を開ける。案の定誰も入っていなかったらしく、扉はガチンという音を立てて、重々しく開いた。
「…………なぁ彰、ほんとに入るのか?」
「当たり前だろ。ここに避難しなきゃ、どのみち校舎と一緒にミリミリグチャッだ」
「うわ、ヤだなーその擬音」
相変わらずの軽いノリで、俺たち二人はシェルターの中へと入った。扉のロックをかけると、通路の蛍光灯が白から緑に変わった。
安全区域であることを示す緑の蛍光灯が、ぼんやりと通路を照らしている。
不気味な場所だと二人で震えながらも、恐る恐る前に進む。生き残るために。


数分歩くと、広い場所に出た。そこの広さは、第一シェルターと同等、あるいはそれ以上の広さを誇っていた。
「……なんだこりゃ、でかすぎないか?」
「まぁまがりなりにもシェルターだ。このくらいでかいほうが、被害も分散されるんだろ、たぶん」
持論を述べながら進む恵介に若干不安を覚えながらも、俺たちは進んでいく。正面は、蛍光灯にぼんやりと照らされた闇だけが続く。
また数分歩いていると、今度は振動が伝わってきた。おそらく、ファンタズマがすぐそこまで来ているのだろう。
「まずいな。ここも壊されかねない」
「はぁ?お前、シェルターがあんぜんだっつったのは誰だよ!」
「俺だ。ほかに行く当てもないだろうに」
恵介の文句に即答しながら、とりあえずは避難用の備品を探す。シェルターである以上、水や食料、毛布なども設置されているはずだ―――が。
広すぎるのだ。横幅も50m、縦に至っては30mはあろうかという巨大なシェルターが、どこまでも続いている。
これほど広いのは想定外だった。この中から、備品を探すことは難しいだろう。
「……おとなしく第一まで走ったほうがよかったかな」
「だから言ってるんだ!あー俺らここで餓死るんだぁー」
口でそんなことを言いつつ、顔は余裕の表情をたたえている恵介を軽くこづきながら、俺たちは進もうとした。だが。
ひときわ大きな振動。そしてシェルターに走る、強烈な衝撃。
直後、頭上の隔壁から、巨大な手が降ってきた。シェルターが、ファンタズマによって破られたのだ。
「マジ―――」
「かよぉっ!?」
二人で悲鳴を上げながら、前方5m付近に振り下ろされた手から逃げ延びるべく、そろって走り出す。俺たちが走り出してすぐに、
巨大な手は隔壁をめきめきと切り裂き、俺たちとは逆方向に向かっていく。しかし、安心する余裕はなかった。
「――――彰あぁぁぁっ!!」
駆け込んでくる恵介。
上を向く視界。
降ってくる灰色の塊。
衝撃。
轟音。


破砕音。







「…………っつ、うぁ……」
がらがらと瓦礫が崩れ落ちるさまを、俺は打ち付けた全身の痛みに悶えながら見届けていた。
少しして音が収まると同時に、俺は悟った。恵介が、いない。
「―――恵介!どこだ、恵介ーっ!!」
返事は、最悪の形だった。
「……っ!」
瓦礫の下から、わずかにのぞく肌の色。手の形をしたそれは、間違いなく先ほどまで生きていた――――。
悲鳴を上げることもできなかった。ただ、現実を受け入れられずに、くずおれることしかできなかった。
涙さえもでない。現実だと、認めたくない。
こんな形で友人を失うなんて。
俺が、ここに連れ込んだばかりに。
お前のせいだ、お前のせいだという声が、静かに頭の中を駆け巡る。
「―――――うああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁっ!!!」
咆哮が、こだました。




短くとも、果てしなく感じる時間の中、俺は絶望に打ちひしがれていた。何度も何度も何度も冷たい床を叩き、悔しさにまた吼える。
どうして恵介が犠牲にならなければいけなかった。そう、神様に問いかけるように、俺は吼える。
その咆哮に合わせて鳴り響く轟音に、しばらく気づくことがなかった。
「…………?」
めちゃくちゃに喚いたせいで赤くなった顔を、恐る恐るそちらに向ける。
そこには、装機がいた。いや、装機に似た鋼鉄の機体が、ゆっくりと俺に向けて歩いてくるのだ。
形状から見積もっても、そのフォルムが軍のものだとは思えなかった。装機にしては、細すぎるフォルムなのだ。
細い二の腕に釣り合わない、武骨に膨れ上がった腕。全身を支えるには心もとない、華奢(きゃしゃ)な脚部。
まるでできそこないのプラモデルのような形をしたそれは、確かな足取りでこちらに進んできている。
ゴーグルともバイザーとも取れる半透明のスリットからは、光り輝く双眸(そうぼう)が見えた。その眼は、間違いなく俺をにらんでいる。
しばらく固まっていることしかできなかったが、やがてその装機は俺の目の前にたどり着き、俺の前で跪(ひざまず)いた。
その胸にある白いカバーのようなものが持ち上がり、球体上に露出した部分が、左右に割れて開かれる。
中には、装機のコクピットと思しきものが見えた。間違いなく、この巨人は装機なのだ。
「……乗れ、っていうのか?」
小さくつぶやく。その声に返事をするかのように、コクピットのシートがせり出てきた。
だが、俺は装機の操縦方法などかけらもわからないのだ。死んでしまった恵介がいたら少しは変わったのかもしれないが、ともかく
今の俺には、目の前の装機を行使する力がなかったのだ。だが、状態は有無を言わせずに進行する。
先ほどのファンタズマのものと思しき手が、またしても隔壁を突き破ってきたのだ。しかも今度は、その装機めがけて。
だが、装機は誰かが乗っているかのような挙動で軽々と回避を行って見せた。心なしか、悔しげにファンタズマの手が持ち上げられる。
それを見つめる俺の体が、後ろから伸びてきた装機の手にがっちりと拘束された。
まさか、是が非でも俺をパイロットにするつもりだろうか?暴れる余地すらなく、俺は装機のコクピットに飲み込まれた。



さまざまな電子音がひっきりなしに鳴り響き、わけのわからない俺の精神をごりごりと削っていく。
「だから……俺じゃ無理だっての!」
装機は、俺を乗せた後も飛来する手から逃げ回っていた。エネルギーは大丈夫なのだろうかと心配していたが、そんな暇はなかった。
まだ操縦系統を託されているわけではないので、おそらく今の俺はこの機体に保護されている状態なのだろう。
揺れに揺れるコクピットでため息をついていると、ふと目の前にあったモニターが点灯した。
ぼんやりと光るそのモニターに映されたその内容に、俺はそっと息をのんだ。


『復讐したいですか?』


まさか、この装機は俺の心中を読んでいるのだろうか?そう思っていると、まさしくその通りだといわんばかりに文字が続く。
『私とともにファンタズマを倒してください。』
ファンタズマは人類を脅かします』
『私なら、ファンタズマと戦えます』
『友人の仇を取りましょう』
何か、黒いものが混じっている気がした。どうにも、この問いかけはきな臭いと感じる。
だが、今は迷っている余裕がなかった。ファンタズマの脅威は、すぐそこにまで迫っている。
直後に表示されたのは、回答を入力するためのウィンドウだった。同時にモニターの下からは、薄っぺらいキーボードがせり出てくる。
はいと入力すれば、どうなるのだろうか。そんな不安を覚えながら、俺はキーボードを取り「どうすればいい」と打ち込んだ。
すると、本当に意思があるかのようにモニターに新たな文が浮かび上がる。
『あなたの応え次第』という文は、まるで何かを促しているように感じた。だから。
「……虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってな」
キーボードを使い、「力を貸してくれ」と打ち込んだ。その瞬間。
後ろのシートから伸びてきた何かが、俺の首筋に取り付く。そこからちくりと痛みが刺したかと思うと、全身が焼けるような痛みに襲われた。
「ぐ―――お、ごあぁぁっ!?」
まともな悲鳴を上げることもままならなかった。暴れることは新たに出てきていた拘束用の器具によってかなわず、しばらく
地獄のような痛みを味わった。
ほんの数秒だったが、痛みは長かった。脳の回路に若干ダメージを受けたのか、視界がかすみがかってよく見えない。
朦朧(もうろう)とする意識をどうにか引き戻すと同時に、視界もはっきりしたものに変わった。だが、どうにも体から違和感が抜けない。
全身を確認するが、特に変わったような場所は見受けられなかった。ならばなぜという思考は、再三降り注いだ腕に中断させられる。
「まずっ―――」
思考を回転させるよりもはやく、体が半ば自動的に動いた。テンキーで左右に表示されていた姿勢制御プログラムを素早くコントロールし、
バク転の要領で後方に飛びのいて回避する。ガシャン!という硬質な音を響かせて着地した直後、俺は違和感の正体に感づいた。
「……操縦、できる?」
そう、確かに俺は、装機を操ったのだ。操縦のそも知らないはずの、知らなかったはずの俺が、確かに。
どうなっているのか、さっぱり理解が追い付かなかった。だが、巨大な手はなおもせまりくる。
「―――くそっ、やるしかないか!」
タイプライターにも似た左右のテンキーを素早く操作し、装機を駆る。右へ左へと走って逃げる俺を、巨大な手は摑まえんと追いすがる。
「ち、武器はないのかよ!?」
叫んだ直後、前方のモニターの下にあった機械からホロウィンドウが飛び出した。そこに表示されていたのは、三つの項目。
「バルカン砲」と「アサルトナイフ」はまだわかるが、「リボルバスター」というのはなんなのだろうか?
ともかく反撃に転ずるため、空いた左手でディスプレイを操作。「バルカン砲」を選択すると、モニターに映る装機の腕が前に突き出た。
瞬間、装機は180度反転し、足を床に押し付けて着地。同時に腕を巨大な手に向けて、テンキーから外した手で操縦桿のトリガーを引く。
ドラララララララ!!という重い銃声が連続して空間内に反響し、巨人の手に炸裂した弾丸がガンスモークを噴き上げる。
そのまま弾切れまで打ち続けると、周囲はガンスモークで視界不良の状態になっていた。
まずいと思ったのもつかの間、目の前からはかすり傷程度にしか傷ついていない大腕が飛来する。逆さ張り手の要領でぶっ飛ばされ、
ガシャンガシャンドガンガランゴトングワシャンバリンドゴォン!!といろんな音を引き連れながら、装機は離れていた壁に激突した。
衝撃がコクピットにまで伝わり、背中を打ち付けたせいで乾いた息が漏れる。
やってくれる。胸中で毒づきながら、テンキーを操作して軽やかに装機を起こして、攻撃に移るため武装を切り替える。
ナイフを使用して接近するのは、先ほどの状況からかんがみて不利だろう。なので、残っている「リボルバスター」を選択した。
装機の背部に取り付けられていた擲弾筒(てきだんとう)のようなアームが展開し、右肩の上で固定されると同時に
砲身がガコンという音を引き連れて伸びる。それを右のマニュピレーターで保持すれば、展開完了だ。だが、一つ問題があった。
現在俺が戦闘を行っているのは、第二シェルターと称される巨大な地下空間だ。こんなところで肩担ぎ型の砲を撃って、万が一外れれば
何が起こるか分かったものではないのだ。戦闘経験、まして操縦経験もない俺にでもわかることなのだ。そんな馬鹿な真似はしない。
幸い、現在手は一旦引いている。ならばこの隙に、手がぶち抜いた大穴を通って外へ出て、そこへ戦うのが得策だろう。
テンキーをいじると、装機に装着されていることはまれだというブースターユニットが見つかった。即座に起動を行うと、体が
後ろに引っ張られる感覚とともに装機が全身を始めた。かなりの速度だが、制御しきれないほどではない。難しいことに変わりはないが、
ともかく今は外への脱出が先だ。
「いけえぇぇぇぇぇっ!!」
ノズルを操作し、装機は流星となって大穴を飛び越える。



外は相変わらずの晴天だったが、その空を全長50mはあろうかという巨人が覆い隠していた。俺、ひいては装機を睨みつけながら、憎々しげに
咆哮する。攻撃を撃ち込むなら、今が最大の好機。
「くらえええっ!!」
咆哮一発、俺は操縦桿のトリガーを引いた。連動して腕部のマニュピレーターが動き、キャノン砲のトリガーを引き絞る。
瞬間、砲口からは一条の太いレーザーが生まれ出た。爆発的な光の奔流が、再度飛来していた巨人の右腕を焼いていく。
数秒間の極太レーザー照射を終えると同時に、キャノン砲に搭載されていたリボルバー銃のシリンダーに似た部分がガシャコン!という音とともに
開店した。つまり言えば、リボルバー式に先刻のビームを撃ち出す武装なのだ。
モニターの残弾数を確認すると、5/6と書かれていた。つまり、バスターの装弾数は6発ということになる。
今は死力を尽くす時だ。そう考えてバスターを構えなおした矢先、突如横殴りの衝撃に襲われる。
制御不能のアラートを引き連れて吹き飛ばされる中、モニターに映ったのは、右手のひじから先を失い、残る左手を突き出した格好の
巨人だった。あちらもやられまいと必死なのだろう。
回る視界のなかで必死にテンキーをいじり、どうにか足で着地することに成功した。が、問題はここからだ。
すでに巨人は、俺を最優先目標に据えている。一瞬でも隙を見せれば、その瞬間に張り倒されることだろう。
どうやって反撃に出ようかと舌打ちを挟んだその時、突如として戦局は一変した。
巨人の顔面から腹部にかけて、無数の爆煙が立上ったのだ。衝撃で、巨人がたまらずよろめく。爆発を起こした主は、直後にわかった。
≪そこの未確認機、大丈夫か!≫という声が、コクピット内に響く。次いで、再度巨人に向けて「ロケットランチャー」が降りかかった。
飛来した方角には、展開していた軍の部隊がランチャーを構えて集結していた。その砲身からは大量の弾頭が撃ち出され、次々と
巨人にダメージを与えていく。
≪先ほどの戦闘を見させてもらった。われらの武器では歯が立たない、君の力を貸してくれ!≫
無線の主は、どうやら現在展開している装機部隊の体長だったようだ。確かに見たところ、彼らの抵抗は巨人の目くらましにしかなっていない。
だが、それは同時にチャンスでもあった。今現在、巨人からは俺のことが見えなくなっているはずだ。ならば!
「任せてください!」と答えながら、テンキーを操作して装機を天高く舞い上げる。
巨人の頭さえも飛び越し、さしずめ60mに達しようかというところで俺は停止した。そのまま、肩のキャノン砲を構えて、砲口を
巨人に向ける。
「死にたくないやつは……俺の射線から失せろおぉぉぉぉっ!!」
無線にどなりつけると同時に、リボルバスターが光を噴いた。一条の太いレーザーが、巨人の右腕を焼き切った時のように
一直線に照射される。そのまま巨人の左肩に着弾し、そこから先を容赦なくチリに変えていく。
だが、リボルバスターの攻撃は終わらない。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
照射が終了し、シリンダーが開店すると同時に再度引き金を引く。それにこたえるように再度リボルバスターが光を吹き、今度は
巨人の左足を焼く。
再度シリンダーが回ると同時に、今度は右足を狙って引き金を引く。狙い通りにレーザーは右足の付け根に直撃し、その先を消しとばした。
三回目の回転を終え、砲身は巨人の腹をロックする。再び迸った光の本流は、たがわず巨人の腹をえぐった。
四度目の回転。つまり、装填してあった弾の最後の一発は、顔面に浴びせる。もがく手段を失った巨人はそのまま顔面を焼かれ、溶かされ、
鎖骨付近一帯を残して完全に消滅した。だが、落下する巨人の残骸が、突如として姿を変える。
まるで全身真っ黄色のムカデのような姿になった後、わさわさと妙に機敏な動きで逃走を図ったのだ。
立ちふさがった軍の装機を長い体で一蹴したのち、そのムカデは森林の中に消えてしまった。



「……やった、のか」
装機の中で、俺は茫然としていた。自身のやった行為にも、それによって生まれた被害にも、生き延びたことにも。
白紙に戻ったように白い頭の中で考えるのは、失った友人のこと。
敵を討つことに失敗した以上、俺のやることは一つだけだった。
「…………そうだ。この力があれば、復讐できる」
奴らに、ファンタズマに、復讐できるのだ。その事実を受け止め、俺は薄く笑う。
「あぁ、そうだ。俺が復讐すればいいんだ。世界中で家族を失った人のために、友達を亡くした人のために、俺が復讐するんだ」
言い聞かせるように、自分の口からは怨嗟の響きが生まれる。それを聞いたのか、最初のようにディスプレイに文字が浮き出た。
『違うよ。あなたが復讐するのは黒獅子』
「……黒獅子?」
おうむ返しに呟く。文字を入力したわけではなかったが、装機は聞き取ってくれたようだ。
ファンタズマの尖兵。装機に化けて、人を取り込もうとする黒いけだもの』
聞いたことがなかった。黒獅子という言葉も、ファンタズマの尖兵がいたということも、まるで実感がわかない。だが、なぜか
この装機のいうことは真実に思えた。
『信じてる。あなたなら、私と、「イザナギ」と、黒獅子を壊してくれると』
衝動的にキーボードを取ろうとしたとき、突如無線から声が響いた。
≪そこの装機のパイロット!事情を聴きたい、できればこちらに来てもらえないか≫
見ると、そこには勝利を喜ぶ軍の人間と、こちらを固く見据える隊長と思しき人物が立っていた。







「……つまり話をまとめると、君はあのファンタズマに襲われたところをこの装機に助けられ、パイロットになって
ファンタズマを撃滅した、ということでいいかな?」
「はい、大体そんな感じです」
数分後、装機から降りた俺は、フェンリル中隊の隊長である「飛鷹士郎(とびたかしろう)」という男性に尋問を受けていた。
と言ってもやさしいもので、なぜ装機に乗ったのか、あの装機は何者なのかといった質問ばかりだったのだが。
「うむ。君のほうの事情は大体理解した……と言っても、民間で装機を所有するのは法律に抵触する恐れがある。ゆえに、機体は
こちらのほうで接収させてもらう。……もしまた使用するときが来たならば、この番号に電話をかけてくれ」
「あ……はい。ありがとうございます。……いいんですか?俺みたいなどこの馬の骨とも知れない子供に、こんなことして」
素朴な俺の疑問は、父親のようにやさしい笑みを浮かべる士郎の言葉に解消された。
「心配はいらない。……むしろ、今は少しでも戦力がほしい。ファンタズマを消滅まで持っていけるような戦力を、みすみす処分はしないさ。
…………それに、こうして私のいうことを素直に聞いてくれるような少年が、とても悪に落ちる人間だとは思わないさ」
そのまま、士郎は豪快に笑う。どこか安心できるその豪胆な言葉に、俺は少しだけ安堵を覚えた。
思っていたよりも、ずっと物腰の柔らかい人物だったことに、少し引け目を感じてはいたが。そんなことを考えていると、不意に俺の装機を
調べていた隊員が、悲鳴じみた声で士郎を呼びつけた。
「たっ……隊長!これを!!」
その切迫ぶりを不審に見たらしい士郎が急ぎ足で装機に駆けていくのに、俺も続いた。曲がりなりにも俺の装機だ。何があったのかを
確かめる権利くらいはあるだろう。


「……なんだ、これ」
その光景を見た俺は、そんな言葉を紡ぐのに精いっぱいだった。
俺が先刻座っていたシートに―――生まれたままの姿の、年端もいかないような少女が、丸くなって横になっていたのだから。


*********


ってことでちわーす、コネクトですー。久しぶりにまえがきをカットして、最初から本番に入ってみましたw


実はこのたび、盟友であるアハト氏が執筆している「アイラ」の二次創作小説を作ることと相成ったのです!
むろんアハト氏に許可もとってありますので、オリジナル解釈でガンガン進めていきますよー!
基本的には「アイラ」の世界を踏襲しつつ、物語は「本編主人公が民間軍事企業『オルデン』に入社する同時期に起きたある事件」として
進んでいきます。本編とは関係が薄い故、本編に登場した装機や人間は登場しない予定なのでご容赦ください。


さて、お次は劇中でさっそく大暴れしてくれた主人公機についてちょこっと解説。

外見はこんな感じで、装機としては異例のもやしっぷりです。胸にある水色の部分が、劇中で乗り込んだコクピットに相当します。
対インドラで使用した「バルカン砲」は腕部(の突起の中)にあり、ここからバルカンを発射してダメージを与えるという設定です。
で、こちらが目玉である「リボルバスター」!

名前の通りリボルバー機構を採用した光子バズーカ砲であり、劇中ではカートリッジに詰められたエネルギーをごん太レーザーにして
射撃を行っておりました。装機用武装としては破竹の威力を誇り、さらに装弾も容易なチート兵器ですw
ネタバレですが、実はこの武器もう一段階進化するんですよね…w


というわけで、今回より新しく「アイラ another story―獅子を狩るモノ―」の連載が開始されることを、ここに告知します!
本編に合わせて強烈にぶっ飛んだ作風にする予定なので、どうぞよろしくお願いいたします!
……え、ほかの小説はどうするのかって?や、や、やだなぁ忘れてませんよ!たぶん


それでは今回はここまで!
またあいませうー ノシ