コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

アイラanotherstory―獅子を狩るモノ―

episode5 機神


「どうだ真理、周辺に反応は?」
『現在周辺に該当反応なし。……にしても、なかなか骨が折れるね』
繋と出会い、彼から伝言を経て、おおよそ一か月がたった。その間学校を休んだり早退したりしながら、俺たちは
ヒントとして与えられた「大蛇」を探していた。
ただ、それが何かと聞かれれば答えるのはつらい。なにしろこちらには、それが相対する敵だという確証以外に何もなかったからだ。
今はただ、ファンタズマ警戒がてら周辺の見回りを行っている程度にしか過ぎなかった。せっかく学校を休んできたのだから、
少しばかり遠出しても文句は言われまい。
それに、オルデンからの公認もいただいている。そう考えつつ、俺はイザナギの進路を変える。
「少し予定を変えよう。もう少し遠くまで……いっそ、市外まで出向いてみよう」
『了解。レーダーの範囲を上げておくね』
「助かる」
短くやり取りを終えて、俺は改めて操縦桿を繰る。


―*―*―*―*―*―*―


その反応があらわれたのは、正しく唐突だった。
『――――彰っ!!』
「確認した!…………とうとうお出ましか」
突如イザナギの広範囲レーダーの中に、ひときわ大きな反応が出たのだ。現在起動しているレーダーは、黒獅子が持つという特殊な波長を
とらえて投影するという、特殊なもの。つまりは、黒獅子のお出ましだ。
「真理、全火器のロックを解除!会敵と同時に一斉射撃でいく!」
『了解!バルカン砲砲門展開、ナイフシースロック解除、リボルバスター、セイフティアンロック』
イザナギの武器は三つしかない以上、展開できる武装はすべて展開して交戦に備えるのが効率的だ。仮に接近してナイフを突き刺せる状況で、
ロックがかかっていて開かなかった、など笑いごとではない。
そんなことを考えているうち、眼前に黒い塊が見えた。間違いなく、目標は装機だった。
見たままの感覚でいえば、かなりシンプルにまとまっている。細身の体躯には異形な、背中に下がった巨大な大砲。
口を開けるように発光部を展開し、脈々と光らせる肩。最たる特徴でもある、真っ黒に輝く装甲。


(BGM:Elegant Force http://www.youtube.com/watch?v=82kiIz6av64http://www.nicovideo.jp/watch/sm14183514


『目標識別コード確認!……コードYS-06「天照(アマテラス)」!!』
06ということは、最後に作られた黒獅子か。そう考えつつ、俺はバルカン砲をばらまく。重い着弾音が連続してこだまし、
周辺をガンスモークで埋め尽くしていく。目くらましのついでにダメージをと期待したが、着弾音から見てダメージは薄いだろう。
そんな予測をしながら、俺はイザナギを天高く飛ばす。一定の高度に達したところで急減速をかけ、そのままホバリングしつつ
肩のリボルバスターを展開した。
目くらましからの、必殺の一撃。創作物語でも常套(じょうとう)手段であるその戦法は、シンプルかつ高い成功率を誇る。
『敵機影、ロックオン!』
「くらええぇぇっ!!」
咆哮一発、俺はリボルバスターのトリガーを引いた。光の奔流が砲身からあふれ、そのままスモーク内の相手を飲み込まんと殺到する。
だが、着弾の直前に、俺は信じられない光景を見た。
スモークの中から、一条の光が伸び出たのだ。その白と黒の光が螺旋状に交わり、リボルバスターの光に真っ向から衝突。互いに
高密度のエネルギーをぶつけあい、相殺していく。
やがて勝ったのは、相手の光だった。照射時間が終了したレーザーが途切れ、そこから相手のレーザーが高速で飛来する。
「―――くぉっ!」
すんでのところで回避し、そのまま再度距離をとる。わずかに光を浴びたが、それだけでも肩アーマーの先端が灰になるほどの火力だ。
まともに当たればどうなるかを想像し、改めて身震いする。とんでもない敵に喧嘩を吹っ掛けたなと、今更後悔した。
だが、ここで怯んでいては、あいつの仇をとることはできない。心の中でそう叫んで自身を奮い立たせ、改めて攻撃を開始する。
「真理、ナイフの準備を頼む!」
『高速強襲だね、了解!』
さすが記憶をコピーしただけある。俺が考えた戦法を、即座に察知してくれるのだ。ありがたいと思いながら、俺は
いつか使用した高速ステップを駆使し、天照に肉薄していく。
天照のほうは、様子見のつもりか肩に担いでいた巨大な砲をしまい込んだ。しかし代わりに背中から一振りの剣を抜き放ち、
重い音を引き連れて構える。直後、その刀身がチェーンソーのごとく唸り始めた。
威力に任せてたたき切る型だろう、というあたりをつけ、目視で判明するギリギリの場所まで接近、そこから急加速によって、
天照の真横に躍り出る。
さしもの黒獅子でも、その神速の挙動を見切ることはできなかったようだ。振りぬこうとしたチェーンソーをすんでのところで止め、
こちらのほうに振ろうとするが、遅かった。
ズガン!という炸裂音が響き、伊邪那岐のナイフが天照の肩アーマーに突き刺さった。浅い当たりだったが、それでもダメージだ。
深追いを断念しつつ、天照の後方に抜ける。深追いしてチェーンソーに巻き込まれなどしたら、たまったものではない。
そう考えて天照のほうを向き―――絶句した。
目の前に、うなりを上げるチェーンソーの刃がいたのだ。真理のとっさの判断で直撃は免れたが、その刃は左足首に激突。
猛烈な回転に巻き込まれた左足が引きちぎられ、そのまま蹂躙される。
「――――っ」
身震いした。敵の所持する武器ひとつひとつが、リボルバスターをもしのぐ威力を秘めているのだ。
正しく、相手を「叩き潰す」ためだけに設計された武器に旋律を禁じ得なかったのは、俺だけではなかった。
『……当たったら、どうなるんだろうね』
「さぁ、な……どのみち、一回死ぬどころじゃ済まなさそうだが!」
必死に自分を奮い立たせ、今度はさらに距離をとる。先ほどの白黒レーザーが飛来するのを危惧しつつ、遠距離からの砲撃のために
リボルバスターを再展開した。
が、天照はチェーンソーを用いて追いすがってくる。予想外の行動に驚きつつも、バスターを発砲。近づけまいと連射するが、
そのすべてがかわされ、逆に今度は頭部右側にチェーンソーが突き立てられてしまった。内部の精密機械もろとも引きちぎられる
轟音がコクピットにまで伝わり、同時に右側のモニターから信号が途絶える。振動と衝撃に顔をしかめながら、俺は必死に
イザナギを駆る。結果としてチェーンソーからは逃れたが、頭部の右半分をえぐられる大損害を被った。
「ぐ、うぅっ……真理、アイカメラの修理を優先してくれ!」
『わかった!操縦を委託するね』
修理の命令を飛ばしつつ、とにかくは着地する。その間に相手は距離をとっていたかと思うと、背中に下がっていた大砲を展開。
二つの砲門から白と黒の閃光を連続して放ち、こちらに付け入るスキを与えないつもりだ。
広域にばらまかれる砲弾を、機動力にものを言わせて回避する。だが、このままではジリ貧になるだろう。
舌打ちを一つはさみ、展開していたリボルバスターに弾丸を装填。リロードの完了したバスターの砲身から、再度閃光がほとばしった。
が、天照は相殺することなく、新たに取り出した薙刀に似た槍を使い、あろうことか光の奔流を真っ向からぶった切った。
「『うそぉ!?』」と真理と一緒に叫びつつも、再度バスターを放つ。
一縷(いちる)の望みをかけて撃ち出された複数のレーザーは、しかし槍によってすべてが弾き飛ばされる。
こんなことがかつてあっただろうか。苦笑いとともに、立て続けに殺到した槍を回避した。どうやら、槍は投擲(とうてき)武器としても
使えるらしい。厄介な武装だと歯噛みした直後、異変が起きる。
『―――後ろっ!』
「なっ―――!?」
視認するのも困難なほどの高速移動で、天照はイザナギの後方に躍り出てきたのだ。そのまま投擲した槍をキャッチし、イザナギの背面に
その穂先を叩き込んできた。衝撃がコクピットを襲い、警告音を鳴り響かせる。
「うおわぁぁっ!!」
しかめっ面になりつつも体勢を立て直そうとした、その時だった。
バシュン、と、一瞬だけ機体内がブラックアウトした。すぐにモニターなどが復旧したが、それを受けた俺は困惑する。
「な……どうしたんだ、真理!」
問いかけは、驚愕交じりの声で帰ってくる。
『……うそ、エネルギーを奪われた!?』
帰ってきた答えに、しばし反応することができなかった。真理の言葉が真実であれば、今現在交戦している敵は相手のエネルギーを
奪い取ることができるということなのだ。
とんでもない機体だ。機動力、攻撃力、特殊能力。どれをとっても、最悪と言っても過言ではない相性だろう。
だが、ひるむわけにはいかなかった。こちらから仕掛けた手前、逃げることは許されない。
とにかくは距離をとる。近接武器がナイフ以外にない今、接近戦を仕掛けるのは自殺行為に等しい故、とれる選択は必然的に
相手から離れることだけになる。
しかし、これだけ大量の武装を使用してなお、相手は別の武器を使用した。無数のミサイルが射出され、イザナギに向かって
突き進んでくる。
「くそっ!!」と毒づきながら、バーニアを最大まで吹かせて飛翔する。当然ミサイルである以上こちらを追尾してくるわけだが、
それに関しては問題はない。真理のロックオンがミサイルにも働いているおかげで、バルカン砲を使用して撃ち落とすことができるのは
幸いだった。が、相手のミサイルはまるで尽きることはないと言わんばかりに殺到する。
「真理、この数はどうにかならないのか!」
『ごめん、今は自動ロックが精いっぱい!せめてもう一つ武器があったら……』
「くそっ……!」
きつく悔しさに歯噛みした、その時だった。


System update.
Limiter release.
Removal of the ban on "V system"!


突如響いた真理のものとは違う合成音とともに、各計器がうなりを上げ始めた。
システムのオーバーヒートかと危惧したが、どうやら違うらしい。とにかく状況を知るため、真理に問いかける。
「……何が起こってるんだ?」
『―――――リミッター、解除?……V-System?』
だが、当の本人も知る事象ではなかったらしい。何が起こっているのかわからないまましばらく滞空していたが、やがて
原因を突き止めたらしい真理が声を荒げた。
『―――彰、新しい武装が解禁されたみたい!』
「なにっ!?」
たしかに聞こえた、武装が解禁されたと。
すなわちそれは、逆転の契機が生まれたことに等しい。
俺の意図を汲んだ真理が、解禁された武装の内容をホロウィンドウに表示してくれた。
その内容は武器と言えるほどのものではなかったが、逆転の可能性を十二分に広げてくれるものに違いない。
現在、敵の攻撃は一時的にだが停滞している。仕掛けるなら、今しかない!
「―――いくぞ、真理!」
『了解!……「Vシステム」、起動!!』


(BGM:Fight:http://www.youtube.com/watch?v=cj8o1F0pI98http://www.nicovideo.jp/watch/nm15671548?ref=search_tag_video


真理のコールとともに、イザナギの各部――手甲とふくらはぎ後ろの部分に存在していた、ワインレッドのクリスタルが、
まばゆい緑色の閃光を放つ。同時にコクピット内の各部もアップデートが開始されたらしく、そこかしこから電子音が響く。
電子音が鳴り終わったのち、正面の操作モニタに、一つの文字が表示される。
「…………『V-system』」
その文字が、何を意味しているのかは分からない。だが、それが逆転のための切り札であることは確かだった。
「―――いくぞぉぉっ!!」
咆哮一発、イザナギがとてつもない速度で飛翔した。再発射されて近づいていたミサイルも、超高速で動いた目標を追尾しきれず墜落する。
その速さたるや、緑色に光る残像を残すほどだ。さしずめトランザ……言わないでおこう。
ともかく、その速度を利用して、天照へと急速に接近する。こちらの変貌を察知したらしい天照が再度ミサイルを撃つが、
限界以上の加速を行うイザナギにはまったくもって通用しない。
いつかのファンタズマ戦の時と同じように、急速なベクトル変更による横ジャンプ。さらにそこから前への急加速、続けて180度ターンを行い、
ミサイルの真後ろにつく。墜落させては周囲に損害が及ぶゆえ、ともかくはバルカン砲で撃墜。
続けて飛来するミサイルにも、同じようにブーストジャンプを敢行し、それぞれをバルカン砲で粉砕した。
すべてのミサイルを撃ち落としたイザナギを再度ブーストさせ、今度こそ天照への攻撃を行うために肉薄する。
だが、相手もそうそう黙っているわけではない。先ほどエネルギーを奪い取った槍を再度展開し、今度は迫るイザナギに向けて直接振り下ろす。
その挙動すら緩慢(かんまん)に見えるほどのとてつもない速度で、イザナギは天照の背後をとった。
「――――お返しだぁっ!!」
俺が声を荒げると同時に、イザナギが猛烈な速度でナイフを展開、そのまま先ほどダメージを与えた肩口にナイフを突きつけ、
今度は逃がさないように深々と刃をねじ込む。たまらず天照がひるんだスキに離脱し、今度は周囲を高速で旋回しつつ
リボルバスターを展開、四方八方からエネルギーの激流を叩き込んだ。さしもの天照もこれには耐え兼ね、わずかに死角となっていた
部分から脱出する。すでに黒い装甲のところどころから煙が上がり、もうひと押しをすれば戦闘不能にできるという状況だろうか。
決めるならば今しかない。そう思いつつ、イザナギを再度突撃させる。
その時だった。イザナギの右腕に存在していたクリスタルから、エメラルドブルーの炎が立ちのぼる。
『―――システムアップデート完了!彰、右腕にADVを充填したよ!』
その炎の出どころは、やはり真理の制御だった。ありがたいと一言礼を述べて、イザナギを一層加速させる。
「―――受けろ」
握りしめた拳から、さらに猛々(たけだけ)しく炎が吹き上がる。
目指す敵を貫かんと、烈火はうねる。
「『ヒイイィィィィトォ・スマアアァァァァァッシュ』!!!」
火炎をまとった右腕が、天照へと叩き込まれようとした、その時。
モニターには、天照の拳が映る。
映り込んでいた拳が、モニターを突き破って、俺に触れる。
壊れる。
砕ける。


消える。





 ***



「……きら…………あき……彰っ!」
誰かの呼ぶ声で、俺は目を覚ました。同時に、意識を失う前の光景を幻視(げんし)し、一つ恐怖に叫ぶ。
「う、わあぁ、あぁぁっ!?」
が、混乱は一瞬だった。寝転がっていたのが地面だったおかげで、すぐにその光景とは違う場所だと気づいたからだ。
たまらず体を起こしたその先には、心配そうに俺を見つめる真理がいる。
「……よかった、目覚ましたんだね」
安堵する真理の後ろには、ぼろぼろのイザナギがひざまずいていた。千切れとんだ左足首、末端(まったん)が消し炭になった右肩、
デュアルアイカメラの片方を露出(ろしゅつ)させ、めちゃくちゃになっている頭部。


へこむ―――というより、砕かれたように大穴を開ける、胸のコクピット
それだけで、何が起こったのかを理解した。
だが、理解したくなかった。
事実だと感じるたび、どうしようもない悪寒(おかん)が全身を駆け巡り、意識を刈り取らんと暴れる。
その不気味な感覚を押し殺し、真理に問いかける。否定してほしいと言わんばかりに。
「…………何が、あったんだ?」
真理のほうもまた、口に出すのをためらっていた。だが意を決したのか、毅然とした表情で口を開く。まるで、真実を受け止めろというように。
「……『ヒート・スマッシュ』を打ち込んだ時に、天照がカウンターを入れてきた。それがコクピットに直撃して、
彰は潰された。……もうADVで完治はしてると思うけど、念のためにすこし安静にしておいたほうがいいよ」
現実だった。
全力をつぎ込んで、なお天照に、黒獅子に勝てなかった。
友の敵を討てない。そう断言されたような気がして、絶望が襲いくる。


「…………どうやって戦えっていうんだよ、あんな奴」
口惜しさが、そのまま言葉になって漏れた。


*********


ってことで5話ちわーっす、コネクトにございますー。
またしても彰くんは敗北ですw


そんなわけでVS天照でしたが、さすがにラスボス級に強い黒獅子に勝てるはずもなく……あっさりとコクピット粉砕されました(オイ
そこを破壊されて核は大丈夫なのかと突っ込みが来そうですが、いつか説明した通りリアクター本体はとんでもなくかたいので、
パンチ程度では傷をつけるどころかパンチしたほうの拳が砕けますw
天照のその後は描写してないので、もしかしたら右腕が砕けてるかもしれませんねw


さて、ここからは終盤で解禁された新技「V-system」について解説を。
このシステムはいわゆるトランザムと同じようなもので、リアクター内に溜め込まれていたADVエネルギーを一気に解放、
一定時間の間爆発的な加速力と攻撃力を獲得するためのものとなっています。
使用中は各部の水晶がまばゆいグリーンに光り輝き、その間は特別な武器が使用可能になります。劇中で使用した「ヒート・スマッシュ」が
まさしくそれですね。
また、このシステムが解禁されたことに伴って武装も拡張され、新たにADVエネルギーを使用した武器を使用可能になります。
と言っても純粋な火炎放射くらいしかありませんがねw


というわけで第5話、いかがでしたでしょうか。
次回となる6話でも、引き続き別の黒獅子との対決になる予定です!
残った対戦相手は「大蛇」と「武甕槌」の二機。はたしてどちらと戦うことになるのでしょうか?
そして、天照にトラウマを植え付けられた彰は復活できるのでしょうか?
次回こうご期待!なんちゃってw
それではまたあいませうー ノシ