コネクトの雑記スペース

創作小説、オリキャラ設定などの雑な記事を取り扱うところです。

アイラanotherstory―獅子を狩るモノ―

episode6.5 パイロットのお約束?


「さて、ここらへんで休憩にするか」
「うん」
大蛇との戦いから一週間後。俺たちは、大蛇との最後の通信で得たヒントである「ジェネシス」の手掛かりを探しに、
街へと繰り出していた。すでにあらかたから聞き込みは終わっており、残すは裏通りなど、こまごました場所のみだ。
「……けど、誰も何も知らないなぁ」
だが、ここまで来て、ジェネシスに関する情報はひとつも得られていなかった。唯一推測されるのは、それがファンタズマだということだけだ。
「やっぱり、民間の人は避難してるから何も知らないのかもね。……いっそのこと、市街まで行ってみる?」
「それはまだ無理だな。期末テストが控えてるし、今週は動くに動けない」
人々の敵を討つために活動しているとはいえ、俺だって一般の学生なのだ。最近はまじめに出ていたが、少し前は早退なり休みなりで
かなりの日数を不意にしていることは否めない。加えて、学生ならば絶対にはずせない期末テストが待ち構えている以上、
不用意に遠出をできる状況ではないのだ。ただでさえ時間の合間を縫っての活動である故、一層確率は低くなる。
「……はぁっ、おとなしく缶詰めしかないか」
「だね。テスト勉強、何か手伝うよ?」
「いや、自力でやるよ……お、空いてる」
現在俺たちがいるのは、学校からほど近い場所にある大きな商店街だ。その商店街は十字に広がっており、道がちょうどクロスする場所に
大きなオープンテラスが存在し、行きかう人々の憩いの場となっていた。
真理を座らせて適当に飲み物を買い、休みの人混みをかき分けて俺も椅子に座る。


少しの間休憩がてら行きかう人々を眺め、そろそろ飲み物の残りもなくなってきたあたりだった。
「……おろ、民間パイロット君じゃないか!」
「え?……あ、真さん!」
急に背中側から声をかけられて振り向くと、そこには一週間前の大蛇戦で多大な助けをいただいた、オルデン所属の騎士「鈴木真」がいた。
あの後、個人的に仲良くなりたいと申し出た彼とは、友人のような真柄に収まっていたのだ。
普段着であろうくたびれたコートをはためかせながら、俺と真理に軽く会釈する。
「……どこも空いてねぇなぁー、隣いいか?」
「いいですよ」
席にどっかと座った真は、なにやら大荷物を抱えていた。3等やら4等やら書いていることから、すぐ近くでやっていた福引の景品らしい。
「ずいぶん大荷物ですね?」
「ああ。ちょーっとばかり狙ってたものがあったんだけどなぁ……あいにくハズレさ。残業分が全部吹っ飛んだ」
痛くも痒くもなさそうな困り顔を作るが、直後に何やら鎮痛な面持ちに代わり、独り言をつぶやき始める。
数秒してすぐに顔を上げ―――何を思ったのか俺の両肩をがっしとひっつかんだ。
「―――――ちょっと、個人的な話がしたい」
切羽詰まった様相に、思わずうなずく。


「……それで、話って何ですか?」
真に連れられて、俺はめったに人が入らないような狭い裏路地の中にいた。
張本人である真は、何やら嬉しそうな、それでいて申し訳なさそうな複雑な表情をしている。
だがどういうことか、直後に彼の表情はニヤリと――まるで目の前の俺を獲物としてみるかのような表情で笑った。
ぎょっとしつつ半歩後ずさるが、その行動は時すでに遅く、またもがっちりと肩を掴まれた。
まずいと本能が訴えた、まさにその直後。
「―――こいつを貰ってくれねぇか?」
「……は?」
そういいつつ、渡されたのは二つの紙袋だった。あっけにとられつつもそれを受け取り、中身を確認し―――。
「すみません受け取れません」
「そう固いこと言うな!何も使えとは言ってないから!」
「だからってこんなのどうしろっていうんですか?!」
「二着あったらもう使いようがないんだよ!知人にゃ引かれちまうから頼むぅ!」
真から渡された紙袋の中には、真新しい衣装が2着、入っていた。それがただの服ならまだよかったのだが、あろうことか渡されたのは、
これ見よがしにフリルがあしらわれた、俗にいう「メイド服」と、紫色の何かのコスプレだったのだ。
彼が持つ騎士としての武装である等身大マリオネットに、様々なコスプレが施されていることは彼自身から聞いていたのだが、
まさか今日もそれのためだったとは思いもしなかった。
しかも、当たり前ながら二つの衣装は女性用だ。そんなものを部屋に置いたままの男子など、居ていいのか。
そんな良心が件の衣装を受け取るのを却下していたが、真のプッシュは続く。
「捨てるのも勿体ねぇし、安物だから売れもしないんだよぉ……。頼むぜ、なんなら真理ちゃんに着せちまえばいいじゃないか!」
その一言が、俺の心のどこかを思い切り刺激した。と同時にぐっと言い淀んでしまい、わずかながらスキができる。
「よし決まりだな!んじゃ、俺はこれでっ!!」
いうが先か、俺に二着の衣装を押し付けた真は脱兎のごとき勢いで逃走していった。


「おかえりー……あれ、真さんは?」
「逃げたよ。面倒なもの押し付けられたよ……」
意気消沈しながら帰っていくと、おとなしくぽやんとしていた真理が、俺が持っている袋に目を付けた。
「あ、それ真さんが持ってたの?」
「そうだ。……ったく、どうしろっていうんだよこれ」
うなだれていると、真理が立ち上がってその袋の中身を見ようとしてきた。みられるのはまずいと思い、人生最大の反射速度で
袋を遠ざけた。
「……頼むから見ないでくれ」という俺の逼迫(ひっぱく)した言葉に、真理はえーとむくれる。


―*―*―*―*―*―*―


「ねぇ彰ー、中身なにー?」
「聞かないでくれー聞かないでくれー聞かないでーうわぁぁぁー」
以降、真理の攻撃は熾烈を極めていた。自室に帰ってからも続いていたので、コスプレの袋から離れるに離れられないのである。
観念するという選択肢が、頭の中に浮かぶ。だが、彼女がこれを見たらなんというだろうか。
その複雑な様相を思い浮かべて、ため息をついたその時だった。
「取った!」
「あぁっ!?」
がくりと頭を落としたその隙に、真理が腕を伸ばして袋を奪い取ったのだ。強引にでも取り戻そうと考えたが、
あいにく女の子に乱暴な真似をする勇気は持ち合わせていなかったので、おとなしく観念する。
「……先に言っとくけど、真理が見たら嫌がるだろうなって思って隠してたんだからな」
という言い訳も耳に入らない様子で、真理は嬉々とした表情で袋から衣装を取り出した。あーどうするか、という
諦めに似た思考が展開される。
「……彰、これってもしかしてメイド服?」
「そうだけど」
が、直後に帰ってきた反応は、俺の想像を凌駕していた。
「―――可愛いっ!」
「は?」
聞き違いだろうか?かぶりを振るも、真理の瞳は憧れか何かでキラキラと輝いているのは間違いない。
まさか、変なのとは思わないのか?内心で思い切り焦りながらも、恐る恐る真理に問いかける。
「……かわいい、のか?」
「うん!……ねぇ彰、ちょっと着てみてもいい?」
それに対し真理は、不審がるどころか断言して、あまつさえ着てみたいと宣言したのだ。
その言葉を聞いた俺は、激しく脱力した。
真理の反応がこれほどのものだとは思わなかったので、かなり気を張っていたのである。それがこの反応だったのだ、脱力は無理もないと
一人言い訳じみた考えを心中で吐露する。
「彰ー、着てみていいー?」
そんな俺の胸中のことはいざ知らず、真理は相変わらずかわいらしい笑みで聞いてきた。
「いい……けどちょっとまったここで着替えないでくれ!」
了承を得るや否や、普段から愛用しているパーカーとシャツをさっそく脱ぎ始める、というテンプレなボケを発揮した真理を
とりあえず制止する。目の前で着替えなどされたらたまったものではない。


「じゃーん!」
という擬音を口にしながら、うきうきとした表情の真理がシャワールームから飛び出してきた。その恰好を見て―――。
「……おぉ」という言葉しか出なかった。
そのくらいに、真理に似合っていたのだ。黒と白のシンプルなエプロンドレスと、各所にふんだんにあしらわれたフリル。
ふわりと広がるスカートから伸びる、白いハイソックスで矯正されたなめらかな足。
意図せず、心臓がはねた。愛くるしく微笑むその顔がまぶしくて、直視ができない―――否、したくないというべきだろうか。
みつめでもしたら、顔が真っ赤になっているのがバレてしまうのだから。
あそこまでして隠していた手前、その格好に若干ながら愉悦を覚えているなど、考えたくもない。
そんな俺の胸中を知ってか知らずか、真理はもう一つ―――紫色の何かを手に取る。
「彰、こっちも着てみていいかな?」
「……いいけど」

赤い顔を背けつつ肯定してやると、真理は鼻歌まじりにシャワールームに入っていった。


しばらく――女の子が着替える時間は少し長いのは知っている――経ったが、真理が出てくる気配はない。
少々不審に思いつつ、覗きに行こうかと思ったものの、もし着替える途中なら笑えない事態になる。それこそ、ADVの治療が必要なくらい。
もう少し待ってみるかと思った直後、シャワールームの扉が開く音がした。
のだが、肝心の真理本人が出てこない。どうしたのかと思っていると、頭だけをこちらに見せる格好で真理が姿を現す。
「……どうしたんだ?」と問いかけるが、肝心の真理はしどろもどろするだけだ。
何かあったのかと心配になり、立ち上がって真理のそばまでちかよった、その時だった。
「とりゃあーっ!」
「うおぉお?!」
突如、真理が俊敏な―――それこそ猫か何かのような速度で、俺にとびかかってきたのだ。飛びかかったというよりは、抱きついてきたと
形容したほうが正しいだろうか。
ともかく、華奢な少女が抱き着いてきた衝撃で俺は数歩後退し、足を降ろした位置にあった段差ですっころぶ。
カーペットの上でマウントポジションを取られて―――ようやく、彼女が着ていたものが理解できた。
真理がミニ纏っていたのは、紫色のスーツだった。それもライダースーツのようなものではなく、某機動戦士に乗るパイロットが着るような、
カニカルな「パイロットスーツ」だったのだ。
肩、ひじ、膝のプラスチック製プロテクター(のような何か)が、それっぽさをより一層引き立てている。
が、問題はそこではなかった。
スーツという服装は、大抵体にフィットするような構造をしている。それが何を意味しているかというと―――。
「……彰ー?どうしたの、顔真っ赤だけど?」
問いかけて動くたび、タイトなスーツに引き締められた少女らしい体が、俺の心に確実なダメージを与えていく。
そのまま抵抗する気力も削がれながら、俺は大きく、長い溜息をついた。


(……しばらく苦労しそうだ)
そんなつぶやきを、胸中でもらしながら。


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ぐおぉぉぉぉ誰か塩をくれえぇぇぇぇぇ(切実
ってことでこんちはー、コネクトにございますーw


番外編第二回となった今回ですが、またしても予期せぬ方向に振り切れましたwwww
私の頭の中は一体どうなってんでしょうね?煩悩だらけ?まぁ否定はしませんが(シャキーン


そして前回の初登場回ではチョイ役だった真の兄さんが、今回はこのストーリーの発端になってくれやがりました。
こういう感じのお話を書くときは真さんは便利ですね(問題発言


それでは今回はここまで!
次回、いよいよ黒獅子「武甕槌」との対決!!
ではまたあいませうー ノシ